転生先がサイヤ人だったので、好きに生きることにした 作:二次創作マン
風を切って飛ぶ感覚は、何度味わっても最高だ。
頬を打つ冷たい大気、眼下に広がる深い緑の山並み。空気に交じって、未知の宇宙船が撒き散らす焦げたような独特のエネルギー臭が漂ってくる。
山あいの開けた平原に着陸した巨大な宇宙船は、無機質な漆黒の金属膜に覆われていた。そのハッチが重々しい音を立てて開くと、中からゾロゾロと奇妙な集団が姿を現す。
紫色の皮膚に、昆虫のような異質な外骨格を纏った宇宙人たち。手には旧式のビームライフルを持ち、周囲の木々を無差別に焼き払っていた。
「ヘッ、大した生命反応もねぇ原始的な星だな。手頃な資源惑星として売り飛ばせそうだ」
「おい、あそこにガキがいるぞ?」
俺が空中から静かに舞い降りると、連中は下品な笑い声をあげながら包囲してきた。リーダー格らしき、巨漢の宇宙人が一歩前に出る。
「おいガキ。命が惜しけりゃ大人しく……」
「なぁ」
俺は相手の言葉を遮り、首を小さく傾けた。
「お前ら、名前は? フリーザの部下か? それともスラッグかボージャックの残党か何か?」
前世の知識を掘り起こしてみるが、こいつらの顔立ちには見覚えがない。おそらくゲームのモブ敵か、俺の知らない設定のスペースデブリみたいな連中だろう。
「ああ……完全に『原作外』の雑魚か。良かった」
俺の口元から、自然と笑みがこぼれた。
原作のメインキャラクター――例えば、これから現れるであろう桃白白やピッコロ大魔王なんかだと、悟空の成長イベントとして残しておかなきゃならない。だが、こいつらは違う。俺がここで完跡形もなく消し去っても、未来のストーリーには1ミリも影響しない。
「ガキが……舐めた口を叩いてんじゃねえぞ!」
リーダー格の合図とともに、数十発のエネルギー波が一斉に俺めがけて放たれた。ドカァン! と激しい爆発音が響き、周囲の土煙が空高く舞い上がる。
「ハハハ! ざっとこんなもん……」
「遅いな」
煙の中から、俺の静かな声が届いた瞬間、奴らの笑顔が凍りついた。
俺の身体には、傷一つついていない。集中的に集めた「気」のバリアで、衝撃すら完全に殺していた。
「な、なんだと……!? スカウターの数値じゃ戦闘力たったの数千……」
「数値に頼るから足をすくわれるんだよ」
俺は一歩、踏み込んだ。
ドォン!!
地響きと共に、足元の岩盤がクモの巣状に割れる。
次の瞬間、俺はリーダー格の巨漢の目の前に立っていた。瞬きする隙すら与えない速度。
「……あ?」
ドガッ!!
胸元への軽い一撃。それだけで巨漢の巨体が空を穿ち、背後の山肌へと激突して落石に埋もれた。
「ひっ……! な、なんだあいつは! 一斉に撃て! 殺せーっ!」
パニックに陥った雑兵どもが必死に引き金を引く。だが、俺は最小限の動きでそれを全て見切り、軽く掌打を叩き込んでいくだけで、次々と宇宙人たちを倒していった。
楽しい。たまらない。
自分の身体が、イメージ通りに、いやイメージ以上に鋭く動く。
すると、宇宙船の奥から恐ろしく禍々しい気が爆発的に膨れ上がった。
「――ほう、なかなか骨のあるガキがいるようだな」
船内から歩み出てきたのは、他の雑魚とは一線を画す威圧感を纏った男だった。全身に傷跡を持ち、赤いマントを羽織った老戦士。その気は、惑星ベジータのベジータ王すら優に超えている。
「我が名はナバロ。銀河を荒らす掠奪団の頭目だ。ガキ、貴様……ただの地球人ではないな?」
ナバロと名乗った男が、獰猛な笑みを浮かべながら気を高めていく。周囲の空間が歪み、バリバリと赤い稲妻が走った。
(ナバロ……? 知らねぇ名前だな。アニオリの没キャラか、ゼノバースのタイムパトロールクエストに出てくるような裏設定の奴か)
だが、強さは本物だ。今の状態の俺が「素の力」だけで戦えば、少し骨が折れるかもしれないレベル。
俺の胸の中で、サイヤ人の血が熱く脈打ち始めた。
「いいぜ……久しぶりに、ちょっとだけギアを上げるか」
俺は深く息を吐き、静かに両脚を広げた。
肩甲骨の間に、温かい「気」を集める。あの幼少期から何度も何度も反復し、体に染み込ませた感覚。蓄積されたS細胞が、一気に反応を示す。
「はぁぁぁぁ……っ!」
ナバロが目を見開く。
「な……気が、急激に膨れ上がって……!? くだらんハタリを――」
「ハタリかどうか、試してみるか?」
――ドォォォォン!!!
黄金の光柱が空を突き抜けた。
激しい風圧が周囲の樹木を薙ぎ払い、地表が黄金色のオーラで照らし出される。
逆立った黒髪が神々しい金髪へと変わり、瞳は澄んだエメラルドグリーンへと染まる。
超サイヤ人。
ただ変身するだけじゃない。長年の日常化修行によって、苛烈な怒りではなく、穏やかながらも圧倒的な密度を持った「完璧にコントロールされた超サイヤ人」の姿だ。
ナバロはガタガタと膝を震わせ、後ずさりした。
「金色の……髪……!? 伝説の……超……!?」
「名前くらいは聞いたことあったか」
俺は黄金のオーラを揺らめかせながら、ニヤリと不敵に笑った。
「原作の流れを守るために普段は隠してるけどな……お前みたいな『番外編』の相手なら、いくら全力を出しても誰にも怒られないんだよ」
俺は軽く拳を握り直し、ナバロに向けてすっと構えを取った。
「さあ、第一ラウンドだ。俺の修行の成果、たっぷり味わってくれよ!」