新世代
私が生徒会長になって、もう3年。
今年はソルちゃん達が入学する年だ。
さっき入学式は終わったとこ。
毎年祝辞をやってきたから、最早慣れた物だ。
……普通は高校生活で1回とかの筈なんだけどなぁ。
なんでだろ? ←飛び級した上にそのまま生徒会長になった所為。
コンコン
「はーい」
「会長、失礼します」
入ってきたのは副会長さん。
学年は一緒だけど、年齢は普通に上。
因みに、保険として私と同等の権限を与えてる。
「どうしたの?」
「いえ、新規設立予定の部隊についてなのですが……本当に必要なのですか?」
「んー……カッコいいからいいじゃん」
「……あのですね。これ学園から費用が出るのですよ? それなのにそんな私的な理由は……もっとまともな理由を──」
「大丈夫大丈夫。私費から出すから」
「そういう問題じゃないんですよ……」
んー何が問題なんだろ。
別に問題はないのに。
「それじゃあ完全に私兵です。会長が私費を出す必要はありません。財務が謎にノリノリなので。なのでまともな建前だけでも用意しておいてください」
「はーい」
その後も、副会長さんの話は続いた。
主に予算とか予算とか予算とか……
新設部隊。
一応、私含めた生徒会幹部の護衛任務が主になる予定だ。
要は親衛隊だね。
まぁ、ソルちゃん達が入る前提だし。
皆が自由に動けるようにするつもりだから、任務内容は完全に建前になるけど。
***
パクス連邦学園:入学式の翌日
「うぅ……この格好、キツイ」
「自分から志願したのです。文句は言わない方がいいですわよ?」
「マユちゃん厳しい……」
厳しいも何も、当然のことですわ。
軍とは違った武装組織への志願募集。
私達はそれに応募しました。
同じように応募した子は大勢いたのか、かなりの人数が講堂に集まっています。
そうしていると、講堂のステージに登壇する人物が見えました。
生徒会長である高原アマネ会長です。
その立ち姿は、同い年とは思えないほどの風格があります。
「皆さん、今日は集まってくれてありがとうございます。皆さんが応募してくれた募集について、今日は話すつもりです」
アマネ会長はまずそう切り出しました。
内容を話してくれるのは、正直ありがたいです。
「今から試練だ!」なんて言われても困りますもの。
「まず、今回募集したのは、生徒会直属の部隊……要は親衛隊です。これからのパクスの戦力の一翼を担ってもらう予定の組織になります。
主な任務は生徒会幹部の護衛ですが……前線で敵軍を引っ搔き回す遊撃軍としての能力も期待しています。なので、簡単に言えば精鋭です。訓練は生半可な物は予定していません。ここが最後の分岐点です。辞めるも進むも、あなた達の自由です」
会長はそう言って話を閉めました。
周りを見回すと、不安が顔に出ている者もいました。
ですが、口角を緩める者や、覚悟に満ちた表情の者も多数見えますね。
フフフ……やる気が漲ってきましたわ。
あれだけの事を言ったのです。
訓練でも振るい落としは当然あるでしょう。
ならば親衛隊の籍、必ずや手に入れてみせましょう。
***
「……」
「凄いな、殆ど残ってる」
「受けてる側が勝手に見ないでよソルちゃん」
自宅で私は、親衛隊の候補生リストを確認していた。
不適格とされたのは、最初の志願者の内一割もいなかった。
……皆やる気あり過ぎじゃない?
「トップは誰にするんだ?」
「最高指揮権限は私だよ。実働のトップは……ソルちゃんかなぁ。この中で一番強いし」
「了解、肝に銘じておく」
ソルちゃんの返事。
それに私は頼もしさを感じていた。
それから、私はもう一つのリストに目をやる。
親衛隊の上位部隊。
名前はまだ未定。
ソルちゃんやミクルちゃん達が所属予定の部隊だ。
候補生の中からも、優秀な子をスカウトするつもりでいる。
「そっちは、俺達の部隊か?」
「うん、そう」
「へぇ……このマユってやつ」
「この子がどうしたの?」
「MS操縦、光るものを見た。まぁ、そこら辺はミクルに聞いた方が早いだろうが」
へぇ……
まぁ、私がこの子達を直接採点するのはまだ先。
その時を、楽しみにしとこ。
「なぁアマネ」
「なに? ソルちゃ──」
えっ
気付いたら、ソルちゃんが私の上にいた。
「???」
「いやぁ……家でも仕事仕事で、ちょっとつまんないもんだからな」
「いやいやいやいや?! ちょっと待って?!」
「はーい、目を瞑りましょう」
次の瞬間、ソルちゃんの手で目を覆い尽くされる。
「ま、待ってソルちゃん!」
「何が?」
「いやいやいや! 何する気なの?!」
「何って、これだが」
「ん?!」
私の唇に、何か柔らかいものが触れた。
これって……
「?????」
「ははははっ! 混乱してやんの」
「だってソルちゃん! 今き、キスした?!」
「んー? なら見てみるか?」
そう言って、ソルちゃんは目を覆っていた手をどけた。
そこには、人差し指を立てるソルちゃんの姿が……
「……」
「くくくっ……残念、触れたのは俺の唇じゃなくて人差し指だ」
「……」カーッ
「顔真っ赤じゃねえか」
「バカバカバカ!」ポカポカ
「でも、リラックス出来たろ?」
「出来てない! むしろ疲れた!」
もう!
ソルちゃんのバカ!
私はそのまま、拗ねた。
それはもう、膝を抱えて丸まって。
その後、自分の寝室へ逃げるように入り込んだ。
「……表面だけでも、甘いもんだな」
***
1ヶ月後
「会長、選抜、完了しました」
「このリストの子達?」
「はい、そうなります」
リストにはソルちゃん含めた皆の名前は当然ある。
その他にも、募集メンバーの中から優秀な子も選抜されている。
「全員、指定の場所に集合済みです」
「分かった。ありがとう」
私はそう言って、席を立った。
「こんにちは皆。そして、おめでとう! 今日から君達はパクスの最精鋭です!」
「いや、2,3年の先輩方に私達より優秀な方はいらっしゃりますでしょう?!」
私の祝辞に、1人の隊員の子が鋭くツッコミを入れてくれた。
あの子は……灰原マユちゃんだね。
「確かにそうだけどね……将来的な最精鋭は皆だから」
「は、はぁ……」
ここにいる子達は全員1年生。
つまり、将来性は2,3年の皆よりもあるのだよ。
3年になった時が楽しみだね!
「ねぇ皆」
「「「?」」」
「私にはね、夢があるんだ」
突然何?と言わんばかりにキョトンとしてるのは、元から入るのが決まってた子以外の子だ。
フフフ……私の夢語り。
こう見ると久しぶりだなぁ。
「今のキヴォトスって、窮屈じゃない? 暴力がまかり通ってるのに、中途半端に秩序が敷かれてる。皆、やりたい事を好き勝手できない」
「そこまでいう程ですかね?」
「だって、そうでしょ? 今のキヴォトスで好き勝手出来るのは、一握りの問題児だけ。大部分は体制っていう大きい組織に縛り付けられてる」
私の言葉に、結構な子が首を縦に振った。
共感してくれる子は多いみたい。
「個々の闘争に、体制側が介入して無理矢理終わらせる。当事者は消化不良で終わる上に牢屋に入れられる。私、そんな社会が嫌い。だから……」
「だ、だから?」
「今の体制を破壊して、皆が自由にやりたい事を好きにやれる社会を作る!」
「おぉ……」
何人か、口角が上がってるね。
不安そうな子もいるけど。
「あ、あの……その世界だと……弱者はどうなるんですか?」
「何にもないと、ただの食い物だね」
「そ、それは……」
「でもね……私自身は弱者を食い物にしたい訳じゃない。むしろ庇護対象。それに……
弱者を守りたいなら自分の力で守れば良いんだよ。それが、やりたい事なら」
その言葉に、不安を口にした子の表情が変わった。
ニヤリという音が聞こえてきそうな雰囲気だ。
「フフフ……私達『
「……辞めるなんて……しませんよ」
「ちょうど、弱いくせに偉そうな連中が気に入らなかったんだよね。連中を引き摺り降ろせるなら、喜んで手を貸すさ」
「心躍る強者との戦い。それが……いつでも出来る……?」
皆、覚悟は決まったかな。
「ふふ……じゃあ、ニューオーダー、始動だね」
あぁ……ここから3年間が、とっても楽しみ。
***
ゲヘナ学園:生徒会室
「……」
「閣下、お呼びでしょうか」
「ええ、待っていましたよ」
目の前にいる人物はゲヘナ正規軍のトップ。
今回、私が呼び出したのは、極秘に進めていたある計画について。
「どうです? パクス侵攻計画の進捗は」
「イレギュラーさえなければ、成功は確実かと。パクスがこちら側に警戒を見せてないのも大きいです」
「……トリニティの方は?」
「乗ってくれましたよ。まさか、こうも上手く行くとは思ってもいませんでしたが」
「それだけ、パクスが憎いのでしょう。では、首尾よくお願いしますね。作戦実行に関する権限はあなたに一任します」
「はっ、必ずやご期待に応えて見せます。では、失礼いたします」
そう言って、彼女は部屋から退出した。
パクス連邦学園。
我がゲヘナ学園とは長年の同盟校。
それ故に、他の学園に比べれば対処は容易い。
それに、こちらでもMSを用意しました。
これでMSという優位性は崩せます。
ふふ、精々糧となることを期待しますよパクス。
この雷帝……いえ、ゲヘナが、キヴォトス全てを支配する、その糧に。
***
トリニティ総合学園:ティーパーティーテラス
「遂に……我がトリニティの手にもMSが入りましたわ」
「ええ、これでパクスにも対抗出来る」
「あの角付きどもから提供された技術が基なのが、唯一気に食わないですがね」
ふふ、確かにその点は気に入りませんわ。
ですが、技術が手に入ったという事は、ここからトリニティだけでMSはいくらでも作れる。
今は、パクスを潰す方が先決ですわ。
ゲヘナなど、その後で幾らでも相手できる。
「連邦生徒会長も、都合よく持ってきましたわね。このエデン条約とやら」
「はい、これを利用すれば……」
「いずれ、連邦生徒会を上回る力も得られる」
「そうすれば、キヴォトスはトリニティの物に……」
「それを実現するには、ゲヘナと憎きパクスを下さねば」
「まずはパクス、それから……ゲヘナだ」
パクス連邦学園……これまで散々、トリニティの顔に泥を塗ってきた。
その雪辱も、今回の戦いで晴らしてみせますわ。
そして、私はこの戦争を終結に導いた英雄として……歴史に名を刻むのですわ。
***
「凄いこと聞いてしまいましたわね」
決起集会擬きが終わった日の夜。
私は自宅でそのような事を呟いた。
誰もが自由に生きられる。
己の意思に従って……生きられる世界。
弱肉強食……ですが、闘争を至上とする者達や戦場でしか生きられない者達にとってはこの上ない
……私は戦いが好きだ。
自分と互角か、それ以上の強さを持つ強者。
例え格下であっても、粘ってくれれば充分。
私はただ、楽しい闘争がしたいのです。
お互いに全力を出し合う、本気の戦いが。
「実戦の日が、楽しみですわね」
それに、アマネ会長も強者の雰囲気を纏っていました。
そして、ニューオーダーの現場指揮官となったあの小沢ソルという少女。
彼女の強さは……あの場の誰よりも上だった。
まさしく、私が追い求めていた強者そのもの。
「そうと決まればトレーニングですわ。生身でもパイロットとしても、鍛えなければ闘争は楽しめませんし」
訓練の結果、私はMSパイロットとしての適性がある事が分かったんですの。
現状、他校にまともなMS戦力は存在しない。
となると……この学園の同僚となる訳ですが……
「生身最強はソル隊長で間違いないですわ。ですが、MSの操縦となると誰なんでしょう」
私は、それだけが気になった。
早く、会ってみたいですわ。
***
「ハックション!」
「? 風邪か?」
「そうかなぁ? 急にムズムズしてきて……」
「誰かが貴様の噂をしていたりしてな」
「まっさかぁ」
全く、何を言ってるんだこの幼馴染は。
私が噂される?
ないない。
「私、メンバーの中じゃ一番影が薄いんだよ?」
「えっ?」
「はい?」
「何2人とも、何か変な事言った?」
「ミクル。現状私達の中でMS操縦技術ならトップは誰だと思う?」
「アシュラとか? あいつクソ強いし」
「貴様だ馬鹿垂れ」
「はぁ?」
いやいや……アシュラでしょ絶対。
MSとは思えない変態機動するんだよあいつ……
それに平気で追随するアヤカもいるんだし。
「何でも扱える貴様が、操縦技術は間違いなくトップだ。アシュラは近接一辺倒。アヤカも汎用型だが、どちらかというと射撃寄り。何でもそつなく熟せる。口で言うは易しな事を貴様は平気で熟しているのだぞ」
「だから私らもテストパイロットとしてミクルを頼ってるわけ」
「そうかねぇ……」
シオンもニアも、私に対して評価が高い。
「そういえばニア、何の設計図書いてるの?」
「モビルスーツ。一応は親衛隊用だ」
「へぇ」
「後ミクル用の専用機」
「待て待て待て、早いよ?!」
「早いに越した事はないだろ? まっ、まだデザインとか全然出来てないけどな。納得行くのが思い浮かばん」
「それまでは、S型ザクで我慢だな」
「了解了解ー」
ん?
しれっと私が最強問答が流されなかった?
いや流したの私か。
灰原マユ
パクス親衛隊に入隊した生徒。
アマネ達とは同い年。
リメイク前は一親衛隊隊員だったが、今作ではリメイク前の親衛連隊ポジションに所属することに。
リメイク前同様戦闘狂。
雷帝
パクスを吸収して、一気にゲヘナの力を強めようと画策中。
遺産も投入するつもり。
なお、技術提供した上に攻撃を示し合わせているトリニティにはハナから期待していない模様。
アマネ率いる組織の名称。
リメイク前の親衛連隊ポジション。
ニューオーダーの意味は新秩序や新体制。
なお、本人達が目指す世界は秩序も体制も何もない世界である模様。