闘争好きな少女のアーカイブ   作:ゆったり好きな物を書くコウ

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ゲヘナ側原作キャラ登場します。


激闘の末

 乾いた連射音が戦場に響く。

 マユの駆るグフ・カスタムのガトリングの発射音だ。

 

 狙う先は……ヒバナのトールギスである。

 

「(面倒ですわね。これほどの防御力とは……)」

 

 マユはトールギスの防御能力に舌を巻いていた。

 ヒバナは回避行動を中心にしており、ガトリングをまともに受けないように立ち回っている。

 

 マユの与り知らない所ではあるが、実はグフ・カスタムのガトリングではトールギスの装甲は抜けない。

 トールギスは、実験段階で105㎜マシンガンを受けても無傷という結果が出ている。

 一方のグフ・カスタムのガトリングは75㎜。

 幾ら発射レートが違うとはいえ、このガトリングでトールギスの堅牢な装甲を抜くことはまず厳しい。

 なお、伝達不足でヒバナもその事を知らない。

 

カラカラ

 

「(弾切れですか……)」

 

 ガトリングが空回りし始めた。

 弾切れの証拠である。

 マユの目に映るモニターにも、残弾なしと表示されていた。

 

 そして、それを見逃すヒバナでもない。

 

「! 貰った!」

「っ……!?」

 

 トールギスのバーニアが火を吹き、グフ・カスタムに体当たりを敢行する。

 不意の特攻に、マユは対処し切れず、グフ・カスタムにトールギスの巨体が直撃した。

 

「つぅ……お返しですわ!」

 

 マユはグフ・カスタムの腕を振りかぶり、ガトリングで思いきりトールギスを殴りつけた。

 弾切れとなったガトリングはただの足枷だ。

 なら鈍器にしてやろうという精神である。

 そして、ヒバナはそれに対処し切れず、不意打ち返しを喰らった形になった。

 

「むちゃくちゃやる……」

 

 ヒバナは思わずそう呟いた。

 弾切れとなった銃器を鈍器にする。

 良く考えると合理的な手段だが……中々予想が付かない一手だ。

 

「これはもう、無用ですわね」

 

 そう言ってマユは、グフ・カスタムからガトリングをパージする。

 そして、残ったシールドの裏からヒートサーベルを取り出した。

 

「白兵戦か……」

「お付き合い……頂けますでしょうか?」

「……」

 

 それを見ながら、トールギスもシールドの裏からビームサーベルを抜く。

 お互い、白兵戦で決着をつけるつもりなのは同じらしい。

 

 トールギスがバーニアを吹かし、グフ・カスタムに斬りかかる。

 お互いのサーベル同士がぶつかり合い、火花が飛び散る。

 機体重量ではグフ・カスタムが圧倒的に上。

 だがトールギスはそれをものともしないレベルの推力を誇る。

 現に、グフ・カスタムは徐々に押されていた。

 

 だが……マユは曲がりなりにもパクスの最精鋭の一角。

 

「っ……この!」

「?!」

 

 トールギスに蹴りを入れた。

 推力は化け物クラスだが、本体が軽いのは変わらない。

 結果、トールギスはバランスを若干ながら崩した。

 

 

 代わりに、グフ・カスタムの蹴りを行っていない側の足が破損したが。

 

「!?」

 

 足が折れたことで、グフ・カスタムはその場に倒れ伏す。

 圧倒的な推力のトールギスの近接攻撃を受けながら蹴りを入れる(=片足立ちになる)のは、グフ・カスタムの足には厳しすぎたらしい。

 

 そして、蹴り程度でトールギスを撃破出来る訳もなく……

 おまけに、その隙を見逃す程ヒバナも甘くはない。

 

「っ……貰った!」

 

 なんとか起き上がろうとしていたグフ・カスタムを、トールギスのビームサーベルが貫く。

 

「……」

「負け……ですか。次は必ず……」

 

 その言葉を最後に、グフ・カスタムから火が上がった。

 

***

 

 一方の、ミクルとマナの戦闘は……

 ミクルがひたすら引き撃ちに徹していた。

 

 ミクルが搭乗しているのは先行量産型ゲルググ。

 パクスでは唯一のビーム系の近接武器を装備している機体だ。

 そして、ビームライフルとの両立も出来ている。

 同じようにビーム兵器を装備できる機体はハイザックやジンがいるが……

 両機とも射撃武器と近接武器の両方をビーム兵器にするにはジェネレーターの出力に問題があった。

 コストを一旦度外視して開発されたのがこのゲルググだ。

 当然、先行量産型という名前に反して建造されたのは1機のみである。

 アマネがゲヘナのMSの鹵獲を通達したのも、これが要因である。

 

 そんな機体を使ってミクルがしている戦術が……引き撃ちである。

 絵面は地味だが……リーオーの射撃武器はシールドで防げる上、ゲルググはビーム装備なので当たれば一撃ないしは致命傷を負わせられる。

 なので実は結構合理的。

 

「(近付けない……射撃も防がれるし……)」

「……」

「(もしかして……詰み?)」

 

 ミクルは、ゲルググの体を最大限シールドで隠し、その裏からひたすら射撃している。

 しかも、闇雲に撃つのではなく1発1発、正確に狙ってくる。

 マナはそれらの射撃を必死に回避している訳だが……

 

 現状は膠着状態。

 マナの中で見えていた勝ち筋は、ビームを掻い潜ってビームサーベルで斬りかかるくらいだった。

 間違いなく自分より強い相手の射撃を搔い潜りながら近接戦闘を仕掛ける。

 なんて、言うは易しな手段しか勝ち筋がないのにマナは軽く絶望しているが

 

 だが、そんな事を思っていても状況は変わらないので、マナはビームサーベルを抜いた。

 

「(突っ込んでくるつもり?)」

 

 ミクルの口角が、少し上がった。

 白兵戦は、相手に近付かなければ行えない。

 対処は簡単だ。

 引いて撃ち続ければいい。

 白兵戦用MSでもない限り、自分から近接戦を挑むのはある種の愚行だ。

 

 だからこそ、ミクルはそれを面白いと感じていた。

 ビームライフルを腰部に、シールドを背部にそれぞれマウントする。

 そして、腰部から1つの柄を取り出した。

 

「っ……ビームサーベル」

「さて、上から目線だけど……付き合ってあげる」

 

 柄の両端からビームの刃が展開される。

 ゲルググの近接兵装であるビームナギナタだ。

 

 マナのリーオーはそのままビームサーベルをゲルググに振り下ろす。

 それをゲルググは、ビームナギナタの柄で受け止める。

 そこから2機は斬り合いに発展した。

 

「(この人……白兵も行けるの?!)」

 

 ゲルググの巧みなナギナタ捌きに、マナは思わず心の中で叫んだ。

 ミクルの操縦能力……ゲームでいうステータスはバランス型。

 特筆すべき点はないと言える伸び方をしているが……

 それは謂わば何でも一通り熟せるという事。

 おまけに、ミクルは、既にパクス最強のMSパイロットと呼ばれている。

 万能型の化け物という、ある意味一番相手にしたくない相手だ。

 おまけに、ビームナギナタという扱いにくい近接武器を平気で使い熟している。

 

「つぅ……」

「そこ!」

「!?」

 

 ゲルググのビームナギナタがリーオーの右腕を斬り飛ばす。

 ビームサーベルを握っていた方の腕である。

 

「さて……まだやる?」

 

 ビームの切っ先がリーオーのコックピットに向けられる。

 死なないとは分かっている。

 だが、マナはその光景にどうしようもない恐怖を覚えた。

 

「あっ……あ……」

「(戦意……喪失したかな?)」

 

 ミクルとしては、これ以上の追撃を加えるつもりはなかった。

 片腕が破損した以上、まともな抵抗は出来ない。

 それに、マナ自身も、恐怖から言葉を紡げておらず、ミクル自身もそれを感じ取っていた。

 だから、戦意喪失と判断している。

 

 さてどうしようかと、ミクルが考えていた……その時だった。

 

「マナ!」

 

 ゲルググとリーオーの間に、一条のビームが着弾する。

 ゲルググがその場から飛び退くと、リーオーを守るようにトールギスが立ち塞がった。

 

「(さっきの白いMS……じゃあマユは負けちゃったか……)」

「次は……私が相手になる」

「……」

 

 ヒバナは戦う気でいた。

 後ろに戦えない仲間がいるから。

 

 一方のミクルは、これ以上の戦闘の意義を見出せていなかった。

 トリニティ本隊は撤退済み。

 目の前のMS単機で、本来の作戦目標を達成出来るとは思えない。

 それに、対ゲヘナの戦線の様子も気になっている。

 

「退いて、それなら追わない」

「情けのつもり?」

「じゃあ、あなただけでパクス軍とやり合う?」

「……」

 

 ヒバナから言葉は返ってこなかった。

 流石に単機で自分の何倍もの敵を相手にするのがどれだけ無謀な事かは、容易に理解出来る。

 トールギスがリーオーの脇を抱え、ヒバナはそのまま離脱していく。

 ミクルはそれを、ただ見つめるだけだった。

 

***

 

「……」

「マナ……大丈夫?」

 

 さっきから、マナは黙ったままだ。

 私の声掛けにも、反応が返って来ない。

 

「ヒ……バナぁ」

「大丈夫、もう敵はいないよ」

「ほん……とぉ?」

「本当、今からトリニティに帰るよ」

 

 マナに優しく声を掛ける。

 さっきまで、コックピットにビームサーベルを向けられていた。

 死なないとは分かってる。

 ビーム攻撃でやられた味方は一杯いるけど、死人はいない。

 キヴォトスでそう簡単に死人が出られても困るけどね。

 でも……だからこそ、死への忌避感も、恐怖も強い。

 

「わたし……むいてないの……かも」

「……無理する事はないよ。怖いなら、機体から降りるのも選択肢の一つ。別に総力戦やってる訳でもないんだし」

「……うん」

 

 口には出しちゃいけないくらい酷い事考えるけど、マナの代わりは幾らでもいる。

 なにせ、トリニティ生で軍に志願する生徒はそれなりに多い。

 これまではゲヘナに向いてた矛先が、4年前の敗北からパクスに向くようになったから。

 まだ総力戦体制にはなってないけど、それだってシスターフッドやヨハネ派とかの目があるからだろうし。

 それに、今回の件でゲヘナも信用が出来なくなる。

 同盟相手を後ろから撃(・)っ(・)た(・)んだから。

 だから、下手にゲヘナに隙を見せたくないから、学園の消耗が大きい総力戦はおいそれと選択出来ない。

 

 

 

 

 

 ……戦争は、いつまで続くんだろう。

 

***

 

「大丈夫?」

「……」

「意気消沈しちゃってるかぁ……」

 

 私はそう言いながらマユをコックピットに収容する。

 初実戦でだったからね。

 それに負けたという事実が乗っかっちゃった感じか。

 

「ミクル隊長……」

「どした?」

「私は……弱いですか?」

「……一般パイロットに比べれば十分強いよ。そこらのエースの域を出てないのは……否定しないけど」

「そう……ですか」

「まだ1年なんだから、伸びしろはあるじゃん。こっから、成長して行けばいい。雪辱を果たすのは、それからだね」

 

 私はそう言って、視線を前に戻した。

 最後に見たマユの目は、先程までとは打って変わっていた。

 

***

 

 同時刻、パクス・ゲヘナ戦線

 

『敵の進撃、止まりません!』

『防衛ラインを死守しろ! これ以上進ませるな!』

 

 司令部からの死守命令が防衛部隊に飛んでいく。

 一方の防衛部隊は、言われなくてもと言わんばかりに熾烈な市街地戦をゲヘナと繰り広げていた。

 だが、市街地というある種の密集地帯で、ゲヘナ方面という警戒が薄い地域に配備されていた部隊が侵攻を前提とした部隊相手に上手く立ち回れるかと云えば……

 実際、建物の影に隠れていた戦車や対戦車兵に撃破されるモビルスーツが少なからず存在していた。

 

 一方のゲヘナ側はというと……

 

『進軍が止まった? 何をしている!』

『敵の抵抗がこれまで以上に激しく……それに増援も次々と到着しています!』

『後方部隊が到着次第、全面的に攻勢をかけろ!』

 

 進軍が停止した事に、焦りが見え始めていた。

 電撃戦は、スピードが命だ。

 時間がかかればかかる程、敵の数が増えて短期決戦が難しくなる。

 

 両軍共に激しい戦闘を繰り広げる中、戦場となっている市街地を、一人のゲヘナ生が駆けていた。

 

『っ……ゲヘナ?!』

「!」

 

 不意に、曲がり角からジンが顔を出した。

 ジンは即座に突撃銃を生徒に向けて発射する。

 

『……やったか?』

 

 着弾により発生した煙で、ゲヘナ生の様子は伺えない。

 だが、重戦車を容易に鉄くずに変える攻撃だ。

 流石にやれただろうとパイロットは判断した。

 

 その瞬間、煙を割くように飛んできた弾丸が突撃銃を破壊するまでは。

 

『なっ!?』

 

 その少女は建物の壁を駆け上がり、ジンに向けてマシンガンを構える。 

 

 そして発射された弾丸はジンの首元に集中し、モノアイから光が消えた。

 目を失ったジンは右往左往し始めたが、生徒は容赦なくバーニアを銃撃して破壊する。

 

 背後の爆発に煽られたジンは、そのまま倒れ伏した。

 

「……はぁ」

 

 生徒が、一息吐く。

 彼女にとって、MSは勝てない相手ではない。

 だが、面倒な相手ではある

 先程のように無力化に近いやり方でしか撃破した事がないのだ。

 そこら辺は、今後の研究云々で変わってくるが。

 

「どうして、パクスに侵攻したのかしら、雷帝は」

 

 白い髪が、風に揺られる中、彼女はそう呟いた。

 彼女は反雷帝側の生徒だ。

 今は水面下で動いている為、表向きは従う振りをする。

 今回の侵攻に参加したのも、そういう事情がある。

 因みに招集に拒否権はない。

 

「まぁ……今はいい」

 

 そう言って、思考を切り替える生徒。

 雷帝がパクスを敵に回すのは、むしろ好都合だった。

 なにせ、パクスが自分達の敵になるリスクが無くなったも同然になったから。

 

 背中の翼を広げ、愛銃を構えて、彼女──空崎ヒナは再び市街地を駆け始めた。




MS-07B グフ・カスタム
機動戦士ガンダム第08MS小隊に登場したジオン軍の陸戦用MS。
薄い水色をした機体で、左腕のガトリングガンが目を引く。
大体の武装はグフと同様のもの。
ただし、左手のフィンガーバルカンは外され、通常のマニュピレーターになっており、装備の自由度は上がっている。

YMS-14 先行量産型ゲルググ
機動戦記ガンダムに登場した汎用MS。
ジオン軍のゲルググの先行量産型。
シャアが搭乗していた機体(シャア専用ゲルググ)も、先行量産型に当たる。
今作では先行量産されていない、名前に反した試作機。
ビームライフルとビームサーベルの両立を目指した機体。
その為か、コスト度外視になっている。

OZ-00MS トールギス
新機動戦記ガンダムWに登場したOZのモビルスーツ。
騎士然とした見た目の純白の機体。
作中世界のMSの始祖とも言える機体で、ガンダムW世界のガンダムも、リーオーもこの機体が大元。
一方、機動力は人を死に至らせるには充分な代物となっており(キヴォトス人だから死人が出てないだけ)、実際に作中でトールギスを動かして死亡する描写も登場した。
リーオーの大元だからかプロトタイプリーオーとも呼ばれている。

OZ-06MS リーオー
新機動戦記ガンダムWに登場した量産型MS。
ガンダムW世界のザクポジションの機体。
汎用性は高く、またパイロットによって防御力が変わるとネタにされている機体。
一応理由はあり、装甲は部位における強弱の差を意図的に強調しており、これによって総合防御力と重量のバランスを解決してあるため、防御時には装甲の厚い部位で敵の攻撃を受け流す、独特の動きを要する為。
今作ではトリニティの主力機として登場した。
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