魔法少女まどか★マギカ 廻天の物語   作:Otorii

1 / 2
希望の始まり/悪魔ほむら

 

【プロローグ:希望の始まり】

 

――。

 

「やっぱり、自分勝手にルールを破るのって、悪いことじゃないかな?」

 

いつの日だっただろうか。

繋ぎ止めるのに必死な私に、まどかはそう言った。

 

「そう…。なら、いずれあなたは、私の敵になるかもね。」

 

そう。たとえまどかの敵になったとしても…。

 

「え…?」

 

キョトンとしたまどかに構わず、私は続けた。

 

「でも構わない。それでも、私はあなたが幸せになれる世界を望むから。」

 

そう。望んだんだ。覚悟の上で。

 

「ほむら…ちゃん…?」

 

私はまどかの髪に手を伸ばす。

 

「…ふっ。やっぱり、あなたの方が似合うわね。」

 

まどかに、あの、赤いリボンを結んであげた。

 

 

これで良かったんだ。

 

良かったんだ…。

 

ねぇ…そうだよね??

 

なのに…。

 

どうして…。

 

 

 

【第1話:悪魔ほむら】

 

「杏子!!」

「あいよ!!」

 

さやかが投じた剣に貫かれ、ナイトメアは、真っすぐ、杏子の下へと飛んでいく。

 

杏子は編み込みを展開済み。あとは、ナイトメアを捕縛して、槍で一突きだ。

 

勝負は決着が見えている。

 

「…っ!!」

 

しかし、その刹那、ドス黒い暗雲に飲み込まれるように、ナイトメアは跡形もなく散った。

 

カッカッ…。

カッカッ…。

 

ヒールの小気味良い音と共に、鉄骨むき出しの建物に、2人は降り立つ。

建物の壁には、「安全第一」と「建設中」の横断幕。

 

2人ともやるせないといった表情で俯く。

しかし、その表情も長くは続かない。

 

「あら。惜しかったわね。」

 

私が姿を現すと同時に怒りに変わる。

 

「っ…!てっめぇ!!邪魔すんじゃねぇ!!」

 

まるで猫のように、杏子がギャーギャーと言ってきた。

隣のさやかは、まるで闇に潜む猫のように、私を強い眼差しで睨んでくる。

 

「あなたたち、お似合いね。」

「は?質問に対して答えやがれ!!」

「あらあら。いつあなたは私に質問したのかしら。少しは冷静になったらどう?そんなんだから、私に先を越されるのよ。」

「くっ…!!」

 

ギリっと、杏子は歯ぎしりを立てる。

 

「でもまぁ、今回は惜しかったわね。次こそ、私に獲物を越されないよう、せいぜい頑張ることね。」

 

「…っ!!このっ…!!」

「そこまでよ!2人とも。」

 

チッ。思わず舌打ちしてしまう。

 

「いつも邪魔をして、どういうつもりかしら?」

「…。」

 

巴マミ。かつて私を出し抜いた強敵。かつて魔女に喰われてこの世から解脱した"強敵"。

 

でも、彼女のことなんてどうでもいい。

私が見ているのはもう一人の、ピンク髪の少女。鹿目まどか。

巴マミの後ろで肩をすくめている様は、小鹿そのものだ。

 

「っ…、ねぇ、辞めようよ…!どうしていつも、こうなっちゃう…かな?」

 

あぁ。どうしていつもいつも。あなたは、こうしてやってくるの。

あなただけは…。あなただけは、救われてほしいのに。

 

「一体どういうつもりかしら。後輩を育てることも、私の役目なのよ?」

「…。」

 

まどかを見つめていると、巴マミが邪魔をする。

 

チッ。2度目の舌打ち。

まどかの前で"争い"は見せられない。

 

私は、おとなしくその場を後にした。

 

 

 

――。

 

 

「不思議な子よね。」

 

ほむらが去った今、一息つくように、マミが言った。濁り一つない陽だまりのようなその可愛らしい目は、空虚な空を見つめている。

 

「なんなんだあいつは。薄気味悪いったらありゃしねぇ。」

 

あぐらをかいて頬杖をつきながら、杏子が悪態をつく。

 

「でも…。私、あの子と仲良くなれる気がするの。」

「はぁ?何言ってんだまどか。あいつは、いつも後からやってきて、キューブを掻っ攫っていくんだぞ?」

「そっ…そうだけど。でも…。」

「でも…?」

「悪い子じゃない気がするの。」

「…。」

 

杏子は面白くないものでも見る目でまどかを見つめる。

 

「ふふっ…。」

思わず吹き出したのはマミだ。

 

「確かに、悪い子って気はしないわね。」

確証が持てないまどかを、マミは優しく包み込む。

 

「ちぇっ。呆れた。マミもまどかの味方かよ。」

「こーら。そんなこと言ったら『め』よ。あなただって、鹿目さんが言ってること、少しはわかるでしょ?」

 

マミの優しい眼差しに惹かれて、杏子は黙り込む。

 

「不思議よねぇ。どうしてか分からないけれど、確かに鹿目さんの言う通り、悪い子じゃない気がするわ。なんだか、いつか仲良くなれる気がするの。」

 

すると杏子は面白くなさそうに、口を開いた。

 

「2人とも優しすぎるんだよ。なぁ?さやか?てかお前、さっきから黙ってないで、ちっとは参加しろっつうの!」

 

そう言って杏子は後ろを振り返る。

いつも通りの会話。いつも通り、杏子は逃げるように、さやかに助けを求めた。

ただ、いつも通りじゃないと杏子が気がついたのは、後ろを振り返った後だった。

 

「…ない…。」

「おい、さやか…?」

「…なれるわけない…。なっちゃ…いけない!!」

「おい!」

「仲良くなんかなれない!!あいつは…!あいつは!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『悪魔』だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――。

 

「っ…、ねぇ、辞めようよ…!どうしていつも、こうなっちゃう…かな?」

 

クッ…!!

 

「そこまでよ!2人とも。」

 

チッ…!!

 

後から後から追いかけてくる。

 

なんだか、巴マミに負けたみたいで、惨めで悔しい。

 

でも、そんな悔しさも怒りも閉じ込めて。

 

はぁ……。

 

あぁ。愛おしい。全てが。なんて可愛い子たちなのかしら。

 

私に向けられる、怒りも、嫌悪も、憎悪でさえ。その全てが、まどかを守るためだと思うと、こんなにも愛おしいなんて―。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。