翌日の放課後。いつもの、見滝原中学の屋上。
「百江なぎさです!よろしくお願いします!」
小学生である彼女。
深々とお辞儀をすると、彼女のウェーブがかった白い長髪が、その小さな身体を包み込む。
顔を上げると、栗色の大きな目。
「ちっちゃくて可愛い!」
「うわぁっ!」
思わず、まどかがなぎさに抱きつくと、突然の出来事に、なぎさは当惑した。
「どうやって、連れてきたんだ?」
杏子がマミに質問する。
「どうやってって?」
「だって彼女、どう考えたって小学生じゃん。」
現に赤いランドセルを背負っている。
「それは、ひ・み・つ。」
「何じゃそりゃ。」
マミの内緒のポーズにも目もくれず、杏子は納得いかないようだ。
「だって。みんなに早く紹介したかったんだもん。」
「……。」
マミのあざとい顔に、杏子の目がだんだん細くなる。
それと同時に、マミの顔がだんだん赤くなる。
「んんっ。まっ…まぁとにかく…?その…。こーら。鹿目さん。自己紹介が先でしょう?」
マミは、無理矢理いつものマミに舵をきる。未だになぎさに抱きつき、ほっぺをすりすりしているまどかを窘めた。まどかは、なぎさからパッと身体を離す。
「えへへ。可愛くてつい。ごめんね。私、鹿目まどか!よろしくね!」
「はっはい!えっと…なぎさは大丈夫なのです!」
「え?」
「急に抱きつかれても、動じないのです!ウェルカムです!」
「あ…。うん…。」
恥ずかしさで急激にしぼむまどかとは対照的に、やけにたくましい姿を見せるなぎさに、今度は杏子が覗き込んできた。
「ほぉ~。しっかりしてんじゃん。これはさやかよりも見込みがあるかもな?」
「ちょっと杏子?あんたもうかうかしてられないよ?あと一月もすれば、あんたのことも抜いてやるんだから。」
「何を〜?できるもんなら抜いてみな〜」
マミとまどか、そしてなぎさの周りを周り始める2人。
はぁ、まったくもう…とため息をつくマミ。
「まぁ。いつもこんな感じだから、気にしないでね。」
と諦め笑い。
2人は走り回ったまま、思い出したかのように付け加えた。
「私、佐倉杏子!よろしくな!」
「あたしは美樹さやか!よろしく〜!」
――。
「混ざらなくていいのかい?」
「ええ。」
今私は、インキュベータとともに時計塔の上にいる。
ここからだと、見滝原中学の屋上がよく見える。
「そんなに混ざりたいなら、混ざってくればいいのに。」
眼前に広がるのは、仲良しこよしのお気楽な空間。
でも、そこに"異物"が一つ。
「彼女のこと、気になるのかい?」
そう。
美樹さやか。
私の記憶操作もかいくぐり、現実に抗おうとする愚かな少女。
今はまだ、あの出来事を思い出してはいないみたいだけれど。
でも、今日のような"演技"も長くは続かないはず。いずれ、あの輪に溶け込めなくなるだろう。
「彼女は気づき始めてるのかもしれないね。」
「ええ。」
美樹さやか。
なんとかしなければ。
でもなぜだろう。
私はちっとも怒りが湧いてこない。
私は今、寂しさばかりが込み上げてくる。
「まぁ、僕としては、その方がありがたいんだけどね。」
インキュベータのその言葉も、私の耳には届かなかった。
こんばんは。オオトリです。
第3話いかがでしたでしょうか。
初心者でわからないことだらけですので、ご感想をいただけると嬉しいです。
明日も20:00投稿予定です。
引き続きよろしくお願いいたします。