………。
「何?今の…。」
立ち尽くす5人を前にして、最初に口を開いたのはさやかだった。
「一瞬で消えちまった…。ぶわって。」
杏子は、徐々に頬を緩ませる。
そして、身体が自然になぎさの肩を掴んだ。
「すげぇな!お前!あんなの見たことねぇよ!」
「うわんうわんうわん…。ちょっと!辞めてくださいなのです!」
杏子に肩を強く揺さぶられ、なぎさは目をグルグルと回した。
少し間をおいて、さやかも杏子の後に続く。
「ちょっと!あんな大技隠してるなんて!ずるいぞ〜、なぎさ!」
「ひゃっ!」
今度は背後から、さやかが抱きつき、頭をグリグリする。
もう、なぎさはなすがままだ。
「本当に、なぎさちゃん、あんな技を…。」
他方、目を丸くする2人。
驚きで信じられないといった様子だ。
「だって、なぎさが目ぇ合わせた瞬間に消えたじゃねぇか。マミたちも見てたろ?」
なぎさの頭をグリグリしながら、杏子は2人に念押しする。
「まぁ他に考えられることもないし…。あんな能力を隠してたなんて、なぎさも隅に置けないわね。」
マミは顔に手を添えて、そんなことを言っているが、辺り一帯を一瞥すると、少し誇らしそうにしていた。
不意打ちで襲ってきた使い魔は、もうどこにもいない。なぎさが目を合わせた瞬間、綺麗さっぱりいなくなったのだ。
気がつけば、元いた見滝原へとすっかり戻されていた。
東の空をみてみると、地平線から燃え上がるように、陽の光が差しはじめていた。
橙色に染まった気持ちのいい空。もう、朝が近い。
「かぁぁ!なんだか生き返るぅ〜!!」
さやかが大きく背伸びする。
「きれい…。」
陽の光を映す、なぎさの瞳は、みなぎるように輝いていた。
「きれいだね、なぎさちゃん!!」
「はい!!!」
まどかが、なぎさの身長に合わせるように、屈み込むと、嬉しそうに答えた。
そこにいたのは、先程までのたくましい魔法少女ではなく、等身大の小学生だった。
その光景に、まどかも、みんなも思わず笑みを浮かべる。
だが、このままでは終わらすまいと、さやかはニヤリと無気味な笑みに切り替えた。
「いやぁ〜、なぎさ大活躍だったね〜、マミさん!」
「?」
さやかが、杏子に目配せすると、彼女は即座に理解した。思い出した、といったほうが正しいかもしれない。
「いやぁ〜確かに大活躍だったね〜。こりゃ、盛大に祝ってやりたい気分だな〜。」
「おっ!いいこと言うじゃん杏子!なぎさも賛成だよね?」
「はい!なぎさも大歓迎です!パーティー大好きです!」
よそよそしい芝居をうったかと思えば、3人はわざとらしい、期待の眼差しをマミに向ける。
理解したのか、はぁと一息つくと、
「ふふっ。仕方ないわねぇ。私の家、来る?」
「「「やったぁぁ!!」」」
一同はマミの家に向かう。
その足取りは、あまりに軽い。一刻も早く、着きたいといった印象だ。
「よくやったぜ、さやか!」
「いやいや〜、お手のもんよ!それに2人があたしの芝居に付き合ってくれたから、掴み取ったのさ〜」
「なぎさは、お菓子のためならなんでもやるのです!」
「私も、マミさんの紅茶飲むの久しぶりだし、すごく楽しみです!」
「おっ、まどかも乗り気だね〜」
「4人とも??やるからには、盛大にお祝いしないと駄目よ?」
「マジですか!?マミさんやる〜!!」
「マミさん、良いんですか?」
「ええ。もちろん!大きなチーズケーキに、ダージリン…。なぎさには、アップルティーを用意してあげる。だからみんな、準備手伝ってよね?」
「「「「はーい!!」」」」
――。
薄気味悪い"結界"の内側とは違って、広く晴れた青空。澄み切った空気を吸い込むと、自然と楽しい会話が弾んでく。
そんな5人の魔法少女は、マミの家に向かって、遠ざかっていく。
もう朝だ。日はみるみるうちに昇り、彼女たちの影もだんだん短くなっていく…。
そんな見滝原の街に、色濃く影を落とす存在が2つ。
「手を貸さないんじゃなかったのかい?」