「手を貸さないんじゃなかったのかい?」
キュウべぇが性懲りもなく、尋ねてきた。
他方、私は街角の影から、遠ざかる5つの影を眺めていた。
「あんなお粗末なもの、見てられないわ。あんなに魔法少女がいて、攻撃が防げないなんて。」
「それはまどかも含むのかい?」
「…。」
カッと怒りが込み上げてくる。
外面だけ可愛さを装う、こいつの顔が、余計に私をその気にさせる。
でも、それでは奴の思う壺だ。
私は、フッと視線をそらした。
「それに、彼女だって魔法少女だ。使い魔の1つや2つ、食らったところでどうってことないのに。」
私は、踵を返して歩きだす。まるで、彼女らに背を向けるように。
「あなたには言ったわよね。もう誰にも、背負わせないって。」
奇跡を掴んだ代償として、戦いの運命を課された私たち。
その末路は、この世に絶望を撒き散らす存在、魔女であった。
終わりなき絶望。
そんな私たちを救ってくれたのが、まどかだった。
消滅による救済。
円環の理に導かれることで、全宇宙、過去と未来、全ての魔法少女は、絶望の因果から解脱する。
でもそれは、まどかの犠牲あってのもの。
これ以上、まどかを苦しめない。
あの子が、そんな残酷で、理不尽な使命を果たす前に、私がこの手でナイトメアを駆逐する――。
「でも、全てを背負い込むなんて、いくらなんでも無謀だと僕は思うな。」
「あなたが常識ぶるなんて、一体どんな風の吹き回しかしら。」
「僕はこれでも、ほむらの心配をしてるんだけどなぁ。ナイトメアをキューブに戻す力。確かに魅力的だけど、いつかその有り余る能力を制御しきれなくなるかもね。」
「構わないわ。そうなった時には、改めて、彼女らの敵になってあげる。」
2つの影は歩みを止めない。
彼女らの間に流れる、鈍く重苦しい空気は、清々しい朝の空気に馴染めない。
淀んだ殺気を前にして、キュウべぇは構わず続ける。
「でも、君は気付いているだろう?ナイトメアの強さに。」
トン…。
無意識に足が止まる。
「…。」
確かに、最近みるみるうちに、ナイトメアは凶暴化している。使い魔を有するものが現れ、結界まではって……。
まるで…。まるで…。
「"そろそろ"気をつけたほうがいいんじゃないかな?」
「……!!まさか!?」
無性に全身を駆け巡る焦燥、戦慄。
――僕が君に対して最も愚かだと思うところはそこじゃない――。
そこじゃない――。
そこじゃない――。
こいつ、まさか…。
惰性で口を開いた時だった。
「……きた…!!」
ピキピキ…。
パリッ…!!
「…!!!」
反射的に後ろを振り返る。
何なの…?
殻が割れるような…。
まさか…。
頭に過る一つの可能性。
美樹さやか…!!