これでも昔は本が好きだった。
剣と魔法の冒険の世界。
お姫様を魔王から救う勇者の話。
いつからだろう?
これらの話が嫌いになったのは?
◇
「サウザー、右から来るぞ! 抑えろ!」
「任せろ! ――『土壁(ストーンウォール)』!」
カイルの叫び声に応じ、俺は地面を蹴った。
掌から放った魔力が大地へと潜り、突進してきた大型魔獣――オルガベアの足元から岩壁がせり上がる。
ドンッ!
進路を塞ぐように現れた土壁へ、オルガベアが真正面から突っ込んだ。
だが。
「ぐっ……!」
ミシミシと嫌な音を立てた直後、巨大な前脚が振り下ろされる。
バギィンッ!
土壁は、あっけなく粉砕された。
「ちっ……時間稼ぎにしかならないか!」
俺はすぐに次の魔法を発動する。
「『筋力強化(ブースト)』!」
全身に魔力が巡り、筋肉が一段階だけ軽くなる。
地面を蹴る。
一気に間合いを詰め、片手剣へ炎の魔力を纏わせた。
狙うのは――膝裏。
真正面から斬っても、あの分厚い毛皮と筋肉ではまともに通らない。
ならば、動きを止める。
「そこだ!」
滑り込むように踏み込み、関節へ刃を叩き込む。
ザシュッ!
鋭い手応え。
だが――浅い。
「……硬っ!」
刃は肉を裂いたものの、奥まで届いていない。
その瞬間。
オルガベアの巨体が傾いた。
「サウザー!」
「分かってる!」
咄嗟に飛び退く。
振り抜かれた爪が目の前を通り過ぎ、風圧だけで頬が裂けた。
「くっ……!」
「サウザー、怪我を!」
「ルミア! 頼む!」
「任せて! ――『中級回復(ヒール)』!」
背後から飛んできた青白い光が頬の傷を包み込む。
焼けるような痛みが引いていく。
その隙に、頭上から声が響いた。
「――ハァッ!!」
金色の髪が舞う。
カイルだ。
騎士の家系に生まれた彼は、幼い頃から剣を学んできた。
俺と同じ片手剣を使っている。
なのに――同じものには見えない。
一歩。
二歩。
三歩。
踏み込みから斬撃へ至るまでに、一切の無駄がない。
「『聖光斬』!」
白い閃光を纏った剣が、オルガベアの首筋へ深々と食い込んだ。
ズバンッ!
「グオオオオッ!」
魔獣が咆哮する。
そこへ。
「逃がさないわよ!」
赤い髪が翻る。
ディアナが杖を掲げていた。
「焼き尽くしなさい――『爆炎波(インフェルノ)』!」
轟音。
巨大な炎の奔流がオルガベアを飲み込む。
数秒後。
黒く焼け焦げた巨体が、地面へと崩れ落ちた。
「……ふう」
ディアナが杖を下ろす。
戦闘終了。
「仕留めたな」
カイルが剣についた血を払いながら、こちらへ歩いてくる。
「ナイスカバーだったぞ、サウザー。お前が足止めしてくれなきゃ、俺も一撃もらってた」
そう言って、爽やかな笑顔で俺の肩を叩いた。
「……役に立ったなら良かったよ」
俺は笑って、剣を鞘に納めた。
自慢じゃないが、俺は何でもできた。
剣も。
槍も。
体術も。
攻撃魔法も。
回復魔法も。
補助魔法も。
冒険者養成学校にいた頃は、どの分野でも同期より早く技術を身につけた。
先生たちからも期待されていた。
「君は将来、どんな冒険者にもなれるだろう」
そう言われた。
……その言葉を、当時の俺は嬉しく思っていた。
けれど。
今なら分かる。
「どんな冒険者にもなれる」という言葉は、
裏返せば、
「何者にもなれない」ということだった。
俺は、どの分野でも中級までは人一倍早く辿り着ける。
だが――そこから先へ進めない。
上級剣技。
上級魔法。
上級回復術。
上級補助術。
どれだけ鍛えても、どれだけ学んでも、そこには見えない壁があった。
カイルには剣がある。
ディアナには魔法がある。
ルミアには神聖術がある。
そして俺には――
その全部を少しずつ。
戦える。
魔法も使える。
傷も治せる。
仲間の補助もできる。
だけど。
何一つ、彼らには届かない。
俺は前衛と後衛の間を走り回る。
敵の足を止める。
味方を強化する。
撃ち漏らしを倒す。
足りないところを埋める。
便利だ。
器用だ。
役に立つ。
でも――
「極める」ことだけができない。
「最強の冒険者になりたい」
子供の頃、本の中の勇者を見て抱いた夢。
それはいつしか、胸の奥に押し込められていた。
諦めたつもりだった。
……つもりだっただけだ。
俺は今でも、あの頃の夢を捨てられていない。
だからこそ。
仲間たちの強さを目の前で見るたびに、胸の奥が痛む。
俺は――
このままでいいのか?
昔からあった妄想ネタですが、
文章化出来ないので最近AIなる物を知り、
補助を受けながら執筆してみました。