つぎはぎだらけの一本槍   作:・ダクエル・

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第7話:試行錯誤と小さな躓き

 

「ザジさん、ありがとうございました。あなたと過ごしたこの数日間、俺は一生忘れません」

 

「うんうん! 免許皆伝だ! 君にもう教える事は何も無い! ……なんて大袈裟だよサウザー君。結局俺、何も教えてないしねぇ」

 

呆れたように笑うザジさんに深々と頭を下げ、俺は彼と別れた。

 

自分の足で立ち、自分だけの戦い方を組み立てる。

その第一歩として、俺は武器屋へと足を運んでいた。

 

現状の俺の装備は、片手剣一本と皮の鎧のみ。

カイル達と組んでいた時はこれで十分だった。だが、ソロで戦うとなれば話は別だ。

火力の補正、中距離での牽制、魔力を温存するための物理的な遠距離手段……どれも圧倒的に足りない。

 

(火力を補うなら、貫通力のあるショートスピアか? 刺し込んだ後に『雷撃(ショック)』を流し込めば効果的だ。遠距離なら投擲か小弓。盾を持つなら、魔法の印を結びやすい腕装着型のバックラーか……)

 

だが、武器屋で並べられた品々の値札を見た瞬間、現実に引き戻された。

 

「……高い」

 

懐の硬貨を数える。ソロになってからのジリ貧生活が響いていた。

ショートスピアや投げナイフまで買い揃える余裕はない。

 

悩んだ末、俺は手持ちの金でギリギリ買えた「木製の腕装着型小盾」と「中古の小弓」だけを購入した。

買えなかった武器の代わりに、ポケットには川原で拾った手頃な石ころを数個詰め込む。

 

「まずは、この組み合わせで試してみよう」

 

◇

 

街の外、湿った森の奥。

D級モンスター《牙猿》を相手に、俺は新装備のテストを開始した。

跳躍力が高く、木々を渡りながら襲いかかる厄介な魔物だ。

 

ガサッ。

 

頭上の枝が揺れ、牙猿が飛び降りてくる。

 

「『風刃(ウインドカッター)』!」

 

足を狙って初級魔法を放つ。動きが一瞬鈍った。

 

(よし、今だ……!)

 

間合いを取るため後退し、背中の小弓を引き抜き、矢をつがえようと左手を引いた――その瞬間。

 

「っ……!?」

 

左腕に固定した小盾の縁が、弓の弦と干渉した。

可動域が狭まり、矢をつがえる動作が露骨に遅れる。

スムーズに技が繋がらない。

 

牙猿が体制を立て直し、一気に距離を詰めてくる!

 

(くそっ、盾が邪魔だ!)

 

矢を諦め、咄嗟にポケットから石を取り出して投げつける。

ガツンッと頭部に命中し、牙猿が怯んだ。

その隙に低く踏み込み、片手剣を深く突き刺す!

 

「『雷撃(ショック)』!」

 

剣身から放たれた電撃が牙猿の巨体を大きく震わせる。

痙攣して動けない隙に喉元を切り裂き、どうにか討伐を完了した。

 

「……はぁ、はぁ……」

 

勝利はした。だが、呼吸は荒く、全身に嫌な汗が滲んでいる。

 

立ち回りが重い。

技の繋がりが最悪だ。

 

俺はそこら辺の切り株に腰掛け、懐から買ったばかりの革表紙のノートを取り出した。

ペンを走らせる。

 

『課題:左腕の小盾。防御力は上がるが、可動域が殺される。小弓の構えがコンマ5秒遅延。魔法の発動動作にも干渉。』

 

ノートを見つめながら、俺は苦笑した。

 

自分の“つぎはぎ戦闘”は、圧倒的な手数の速さと、自由な可動域が命だ。

防御力を優先してつけた小盾は、俺の最大の強みである「軽快さ」と「柔軟性」を根本から壊していた。

 

もし無理をしてショートスピアや投げナイフまで装備していたら、さらに武器同士が干渉して、今頃牙猿の爪に引き裂かれていただろう。

 

「……失敗したな。この盾は中古屋に売ろう」

 

左腕から小盾を外し、地面に置く。コトン、と軽い音が響いた。

 

防具を減らし、身軽になること。それが今の俺の正解だ。

装備の失敗も、データとしてノートに書き留めればただの敗北にはならない。

 

森の爽やかな風が吹き抜ける。

小弓を背に戻し、ノートを懐に収めて歩き出した。

 

その日から、オレは試した。

 

風魔法で足を止める。

石を投げる。

弓を撃つ。

剣で追い込む。

 

一つ一つは弱い。

 

だから、どう繋げれば相手が動けなくなるのかを考えた。

 

何度も失敗した。

何度もやり直した。

 

この愚直な試行錯誤の繰り返しこそが、自分の本当の基盤となっていくと俺は確信していた。

 

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