ユリモニニニヨニヨスルミヨ   作:岡ノ下

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読み飛ばしてもいい話なので初投稿です。

本気で読み飛ばす方へ(半透明字によるネタバレ)
この世界における宿星と得意武器は占い師に見てもらえる設定になっており、主人公は転生チート「ステータス閲覧」能力があります
(これだけ抑えておけば他は無視しても問題)ないです。


第1話「子供」

こんにちは。ミヨです。

 

プロローグにてひとまずの目標を定めた私……

 

突然ですが、ここから時間飛びます。5年くらい。

 

アラサー女の精神が入った赤ん坊が下の世話されたりする描写とか誰も得しないからね。

一般に物心つく年齢になるまで、ひたすら栄養を頂いては眠るしかできないのだ。

 

――そして5年後――

 

5歳。

 

ここはシノン村の中央広場。ようやく一人で歩けるようになった私ことミヨがいます。

自力で歩けるようになった私はこの世界に身を馴染ませるような気持ちで、村の中をちょろちょろと動き回った。

 

2年前、早い子は言葉を覚えて物心がつくと周囲に思われる3歳から、あれこれ人に話しかけて情報収集を開始した。

まだトーマスは生まれていなかった。

計算した結果、私は彼より5歳年上ということになる。ユリアンとは7歳差だ。

 

※原作開始時点の年齢

ユリアン(20)

モニカ(19)

トーマス(22)

ミカエル(27)

 

うーん……つまり……ロアーヌ侯国の主ミカエル様と同い年か。

精神年齢的には……いや、やめよう。悲しくなる。

 

それよりシノンですよシノン! 開拓村シノン!

 

ゲームの中で知っていた場所とはいえ、この村の出番は序盤も序盤のうちだけである。

しかも画面に出たのは酒場の外観と中身だけ。

見る場所の全てが新鮮だった。

 

「おぉ、あの酒場がユリアンとモニカが運命の出会いを果たすプレイスなのね。そうなのね?」

 

感動だ。

 

元いた世界の都市とは比較にならない狭き村だが、5歳児視点からすればとてつもなく広い。

 

私は村の大人たちに挨拶しながら散策を続けた。

 

「ふぅ……」

 

見渡す限り緑に溢れた美しい世界。

電気どころか蒸気文明にも届いていないし色々不便だけど、本当に美しい。

何より平和だ。

 

「でもなぁ……将来、死食が起こるんだよな」

 

死食とは、300年に一度、太陽を「死の星」が隠し、大地を暗闇で覆う日食のことだ。

プロローグでも説明を入れたが、ここでおさらいしておこう。

 

死食には向こうの――私が元いた世界の日食とは異なる点がふたつある。

 

ひとつ、死食は1年間続く。つまりずーっと真っ暗。

ひとつ、死食の間に生まれた赤子は一人を除いて全て死ぬ。

 

おい、ふたつ目……ひどすぎだろ……ひとつ目と合わさることで最悪のキワミである。

 

人間に限って言うならその1年間に子供が生まれないように調整すれば、新生児が亡くなるという悲劇は防げるはずだ。が、そうも単純にいかないのが世の中だ。

 

全ての人が300年という周期を正確に測れているわけではないし、

子供の私が注意して回ったところで頭のおかしい娘だと扱われるのがオチだろう。

食料や生活範囲を照らす灯りの問題もあるので、歴史から学んだ為政者の層は一定のアタリをつけてある程度備蓄を増やすなど対処していると思われるが……

 

精神が大人だとこういう時に足踏みしてしまう。自分でも嫌になる。

ラノベの主人公なら何も考えず人助けのために突っ走って、成功させてしまうのかな。

 

「……このことはまた後で考えよう」

 

考え事を後回しにして私は村の中を歩き続け、今の我が家……ベント分家の庭に戻った。

 

あれこれと自由が利くようなったことだし、

新しい体(この言い方にも抵抗がある)の性能について確かめてみようと思ったのだ。

 

ここでまたまた突然ですが、私は一応転生者である。

神様らしき存在との面接も何も経ていないが、少なくとも以前の体とは違う器に魂が入った状態だ。

不運な事故か何者かの故意によるものか判定はできないものの、転生者と分類していいと思う。

 

自由に体を動かせるようになり、色々ゲーム本編の知識とも照らし合わせて試してみたところ……

この身には転生者特典と呼べるものが備わっていることに気付いた。

と言っても、ショボいというかイマイチ微妙なものだ。

 

その特典とは、「ステータス閲覧機能」である。

 

この世界、たしかに私のよく知るゲーム「ロマンシング・サガ3」の世界なのだが、

仮想現実とかそういったものとは断じて違う。紛れもなくリアルに生命が息づく現実の世界だ。

一晩眠れば体力全快、傷も元通りなんてことはない。

(ちなみにロマサガ3は戦闘終了するたびにHPが全快する)

 

しかし、ゲームに準拠している部分もある。

それがステータスだ。

 

ロマサガ3はRPGであり、

「ちから」や「すばやさ」といったステータスが存在しているが、それらは成長しない。

成長するのはHP(0になると気絶する)・WP(必殺技を使うと減る)・JP(魔法的な力であるところの「術」を使うと減る)と、各種戦闘技術の扱いに関するレベルだ。

例えば生まれつきの腕力で勝るものに対し、劣るものがいくら鍛えても上回ることはできない。

(ひでー世界だ)

 

あくまで単純な力比べの話であって、強さという意味では努力次第なのが救いか。

 

さて、自分の宿星(星座のようなもの?これでステータスの大部分が決まる)

と適した武器については占い師に見てもらうことができる(ここオリジナル設定)。

 

前置きが長くなってしまったが、私の目は意識的に「ステータスを確認しよう」と見ることで、

自分や他人の能力(才能)を数値化して閲覧することができる。これが転生者特典のようだ。

 

それとなく両親や他の大人に話を聞いてみたが、宿星・適正武器による格差については認識されていても、その差を明確に数値として把握している人は誰もいなかった。

この(ステータス)画面が見えているのは私だけということだ。

とはいえ、今のところどう役立てればいいか全く分からないが……

 

まぁ、原作だと主人公以外の宿星や得意武器はマスクデータであり、ステータス画面では参照できない仕様だった。

その分得をしたと思えばいい。

 

ちなみに私のステータスはこんな感じだった。

数値の優劣基準は、村の人達十数人のステータスを見比べたうえで出したものであり、

あくまで個人的印象であるが……

14より下は苦手、15~17あれば人並み、18~20で優秀、21以上は稀だと思っていいだろう。

 

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宿星:鎮星

得意武器:槍

 

腕 力:20(優秀)

器用さ:18(ちょっと得意)

素早さ:18(ちょっと得意)

体 力:16(人並み)

魔 力: 8(お察し)

意志力:14(よわい)

魅 力:23(すごい)

 

HP:85

 

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魔力ェ……せっかくファンタジーの世界に来たんだし、どかーんと術を使ってみたかった。

だがここまで極端だと術一本で身を立てるのは諦めた方がいいだろう。

魔力が影響しない補助術もあるにはあるが、それだけでやっていくには厳しいのがこの世界だ。

 

意志力が若干低いのはまぁ、冒頭からウジウジと悩んでいた姿をご覧頂けば納得されると思う。

 

魅力いらね~。魅了に関する特殊攻撃の成功率と回避率「のみ」に関連するステなのだが……

たしかに終盤の魅了攻撃はヘビィなステータス異常だけど、魅力が高くともかかる時はかかる。

自分で魅了の術を使うくらいならさっさと攻撃した方がマシ。それがこの世界のバランスだ。

あとこれ、あくまで容姿の出来を表しているようで気に入らないんだよね。

 

ユリアンの魅力の低さとかさぁ、人間的魅力を考慮してないよね。

あ、エレンからすぐモニカに乗り換えたチャラ男とかいう議論は受け付けてません。

きっちりフラれた後だし、弱った女の子に優しくして何の問題ですか?(レ

 

他のパラメータはほぼほぼ満足のいく値だと考えていいだろう。

体力がもう少し欲しかったところだけど、贅沢は言えない。

 

この体とこれから付き合っていくのだ。

 

 

それからと言うもの、ベント分家の庭で棒を槍に見立てて振り回す幼女の姿が見かけられるようになった。

いや私のことなんだけど。

 

 

……幼い子供の成長は、一度大人を経験した身からすると驚くほど早い。

日々が過ぎるにつれて変わっていく己と周囲の環境。

大変に思うことはあったが、辛くはなかった。

全てが新鮮だった。

 

 

 

それからしばらくして。

 

トーマスが生まれた。

分家筋の私達家族も呼ばれ、大きなお祝いの宴が開かれた。

トーマスは可愛かった。

 

うーん、このぷにぷにした赤ん坊が……宿星と武器の選択次第で作中最強の魔力持ちになるのか。

あ、レオニード伯爵がいるけど、あのお方は普通の術が使えないしなあ。

※その場合の魔力値は27。この主人公(笑)の3倍以上である。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

2年後。

 

こちらの世界に生を受けてはや7年。前述の通り私はユリアンの7歳年上。

つまり、そろそろ彼が生まれる頃だ。

 

「……」

 

私は一人、村の外れの小高い丘で風を受け、岩に座りながら考え事をしていた。

 

そろそろ心を決めよう。と。

 

 

元の世界に心残りはある。しかし、人は環境に慣れる生き物である。

 

友人に会いたい。後輩とまたお茶がしたい。

……そして、両親に逢いたい。元気でやっていることを伝えたかった。

そんな気持ちは消えずに残っているけれど、別の気持ちも大きくなっていることも否定できない。

 

「お父さん……お母さん……」

 

ふと呟き、思い浮かべたのはどちらの両親の顔だったのか。

 

たった7年。されど7年。

最早、私にとってこちらで築いた人間関係も捨てられるものではなくなっていた。

 

向こうの両親に対する愛情が薄れたわけじゃない。

でも、こちらの両親も同じくらい愛情を込めて私を育ててくれて……

いや、どっちが上とか下とか同じとか、そういう問題じゃない。私はどちらも愛している。

 

苦しい。

いい歳こいて憧れの異世界召喚とか考えていた過去の自分をぶん殴りたい。

召喚だったとして、その後行方不明になった私を心配する人の気持ちを考えていなかった。

 

「……」

 

戻れる方法のアテがあればな。

そんな考えが湧いてくるのを止められない。

私は聖人じゃない。むしろ俗物の中の俗物だ。

ダブスタ上等、できるものならそうしたい。

 

しかし……

 

「美代。ほらケーキ買ってきたから一緒に食べましょ? 先に好きな方選んでいいよ」

「ミヨは可愛いわねぇ。親の贔屓目じゃないのよ? 将来、本当に美人になるわ」

 

私は元の世界にいた時、あまり子供の頃のアルバムを見返したりしなかった。

もう今はこの顔が自分の顔だと認識できる。

それが良いことなのか悪いことなのかは分からないが、事実は事実だ。

 

「就職おめでとう。美代。父さんも経理には毎度伝票の提出が遅れて世話になって…ゴホン、大変な仕事だぞ。頑張れよ」

「ミヨは頭がいいな。もう算術を覚えたのか」

 

私とトーマスの祖父にあたる爺様の元で経理の本などを読んでいると父に褒められた。

いやー、元の世界ではそういう仕事をしてましたんで……

 

「「美代。結婚も仕事も無理しなくていい。健康にだけは気をつけて」」

「「ミヨは自慢の娘だよ」」

 

幸い、異世界転生にありがちな、年齢に合わない成熟した知識や精神性によって親や周囲から気味悪がられるようなことは無かった。

 

牧場経営はとにかくやることが多い。

体の動かし方を知っていてある程度機転の利く私は重宝され、私も役に立てることが嬉しかった。

 

「ミヨちゃんおはよー」

 

「ミヨちゃん、この前はうちのカミさんが世話になったな」

 

「ミヨ、トーマスがお前に会いたがっているぞ」

 

村人のみんなも私を受け入れてくれている。

そもそも私はこの中で生まれたのだから、外から来たもののごとく受け入れるという言葉を遣うことが間違っているかもしれないが……

 

私は幼くともできる仕事をこなし、忙しく楽しい毎日を過ごしていた。

あまり遊ばなかったのは、同年代の子供が村にいなかったせいもあるんだけど。

 

生活の一部と化していたロマサガ3をプレイできなくても何のその、

私はそのタイトルさえ思い返さないことが多くなっていた。

そんな自分に気付いて驚くことを繰り返し、その度に元の世界のことを想う。

この2年間はそんな調子だった。

 

……カーソン農場の奥さん、主人公の一人であるエレン・カーソンのお母さんがおめでたと聞いた。エレンとユリアンは同い年だ。そろそろ彼も生まれるだろう。これ言うの2回目だな。

もしかするともう生まれているかもしれない。

死食が起きる前のユリアンとその両親――ノール家はここから離れたヨルド海沿岸に住んでいたということだから、確かめる術は無いが……とにかく、今年がある意味区切りの年だ。

 

この機会に気持ちをはっきりさせよう。そう思いこの丘に走ってきたのだ。

 

今いるこの世界で、長年愛したゲームの人物たちと付き合っていくのかどうか。

 

5年後、死食の起きるこの世界で。

 

悲劇は避けられないだろう。

私一人の力などたかが知れている。

転生者だとはいえ、何の能力特典も無いのだ。

あるのは原作知識だけ。

 

そう、私はこの世界にこれから起きることを知っている。

知っているからこそ、知り合ってしまったからこそ、見て見ぬフリなどできない。

 

今決めるべきは世界と向き合う己の姿勢。スタンスだ。

 

死食の後、世界は徐々に魔物の脅威に覆われ、ある一点を境に崩壊する。

その時、もし誰も「解決の手段」に辿り着いていなかったら。

それまでに、私は元の世界に戻る方法を見つけることができるのか。

 

いいや違う。

「その時」が来るまで、私は一人、世界を救うために戦う「彼ら」に背を向けていられるのか。

自分だけが助かる方法、元の世界に戻る手段を求めることに専念していられるのだろうか。

 

できるわけがない。

 

知っているが故の苦しみだとか、悲劇のヒロインぶるつもりは無い。

知っているなら戦わなければとか、英雄的責任感からでも無い。

 

私の意志は弱い。

 

世界の終わりまで帰還の方法を探したとして、それを見つけたにせよ見つけられなかったにせよ、

この世界にできることがあったんじゃないのかと後悔する。そうなることがわかるのだ。

 

私の意志は弱い。(意志力14)

 

だから、それを理由に元の世界を望むことを諦めよう。

そんな自分の狭量さ、非情さを、言い訳ばかりな弱さを認めよう。

 

認めて、一本の道を前に進もう。

 

 

「……この世界を、選ぶ」

 

 

口に出した瞬間、不思議なほど落ち着いて、その気持ちを受け入れることができた。

心残りが引っかかっていただけで、答え自体はずっと以前に出ていたのかもしれない。

 

お父さん

お母さん

 

花嫁姿を見せることができなくて、孫を抱かせてあげられなくてごめんなさい。

 

そりゃあなあ、休暇はゲームばっかりの女じゃ出会いも無いよなぁ。

……本当にごめんなさい。

 

思えば、私がロマサガ3にハマったのはクリスマスにお父さんが買ってくれてからだね。

まさかこの歳までやり続けた挙句、その世界に転生することになろうとは。

 

恋には恵まれなかったけれど、

最高の両親のおかげで幸せな人生でした。

もしまた何かの拍子でそちらの世界に戻ることができたら、

そのことに精一杯のお礼を言いたい。

 

でもこれから私が選ぶ道では、そんなもしもを考える余裕など無いだろう。

 

だから、ひとまずのお別れを言わせて下さい。

 

お父さんは言っていましたね。

 

「美代はこれだ!って決めたらそれ一筋なんだなあ。

 それで苦労もするだろうけど、一途なのはいいことだ。

 お父さんは美代のそういうところ、好きだぞ」

 

違うんだよ、お父さん。

 

私は意志が弱いから、努めて一つのことに決めて動かなければ人並み以下なんだ。

そのことを悟るまで散々迷って失敗して、よく落ち込んでたんだ。

そんな時、お父さんは何も聞かずパフェをご馳走してくれたっけ。

本当は気付いていたのかもしれない。気付いた上で、私を褒めてくれたのかな。

 

ありがとう。こんな平凡な娘をたくさん褒めてくれて、愛してくれて。

私もお父さんが大好きです。

 

お母さん。優しく、厳しく家事を教えてくれて、ありがとう。

こっちはこっちでやり方が違うこともあったけど、お陰で覚えが早いと褒められました。

女の嗜みとして旦那様に尽くすことはできませんでしたが、感謝しています。

こちらの家を掃除をする度、お母さんが教えてくれた時の声が聞こえるような気がして、毎回泣いてました。

 

でも、今日で泣くのは終わりにします。

 

これからこの世界にはとてもつらいことが起きるから。

後から生まれてくる子達の誰かが、もしくは皆が戦わなければならないから。

私はこの世界のことを知っている一人として、この世界に生きる一人として向き合うと決めました。

 

腰を下ろしていた岩から立ち上がり、空を睨みつける。

 

私の心に応えるように、強い突風が吹きつけた。

 

「さよなら! お父さん! お母さん! あなた達のこと、ずっと愛してる―――っ!!!」

 

魂ごと絞り出すような大声は風の中に消え、村にいる誰の耳にも届かなかった。

溢れた涙も風が拭い去ってくれた。

目が痛かった。

 

さて、これにて長ったらしいプロローグその2はおしまい。

いや前回で済ましとけや……1話って言うたやろ……

 

この物語は私こと三代美代ことミヨ・ベントが、ユリアンとモニカ、二人の恋愛劇を間近で肉眼でニヨニヨして見守るのがメインである。誰がなんと言おうとそうする。

観察者たる私の愚痴が入るのはもうこれが最後でいいだろう。

 

元の世界でアラサー、こっちでもアラサー(物語が動き出す頃には)。

ユリモニを求めつつ世界の平和も目指します! 一応!

 

そんな私のくだらない話ですが、よろしければどうかお付き合いいただきたい。

お暇な時でいいので。




「なんで入れる必要なんかあるんですか」とKMRに言われても仕方ない主人公立志編でしたね。
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