ユリモニニニヨニヨスルミヨ 作:岡ノ下
ミヨでございます。
……ンアアアアアアアーッ!
突然全感覚にロリモニカ様の存在をぶち込まれた私はそりゃもう錯乱した。
モニカ様の美しさを目にしては「コ゜ッ!(昇天)」と気絶し、
モニカ様の美声を耳にしては鼻血を吹き出し、
モニカ様に触れられては吐血する。
その狂態にフランツ様は困惑していた。
金髪の美少年は(大丈夫か? いや大丈夫じゃねぇよコイツ)という目で見てきた。
モニカ様は私を心配して撫でたり擦ったりして下さった。
お優しい。女神。尊い。死ぬ。死んでしまうぞミヨ!
このお方にいきなり知らん女が眼前で変死したトラウマを植え付けてしまってもいいのか!
(すでに手遅れの可能性あり)
気合を入れてなんとか意識を保つ。
「ン゛ン゛ン゛ン゛ッ……(クソうるさい咳払い)大変失礼致しました。
これほど高貴な方にお会いするのが初めてで、緊張の余り混乱してしまったようです。
どうかお許しください」
「あ……お、おう、うむ」
「ミヨさん、もうだいじょうぶですか? おちつきましたか?」
さすが一国の主というべきか。
フランツ様は早くも立ち直り、先程のアレを無かったことにしてくれるらしい。
モニカ様はまだ私を心配していた。
死ぬ。死んでしま(ry
金髪の美少年は(お前マジか……それで今のをスルーできると思ってるのか……)
という目で見てきた。
もう言っちゃうけど、ミカエル様ですよね。
未来のロアーヌ候の前でとんでもないものをお見せしてしまった。やべぇよやべぇよ……
そこからはなんとか普通に、私が護衛兼侍従になる方向で話が進んだ。
ミカエル様は「お父様!? 何言ってんですか! やめてくださいよ本当に!」とフランツ様に食い下がっていたが、残念ながら私も同意する。
あのやらかしを見た後で大事な娘の側に置くなんてぶっちゃけアリエナーイと思うのだが、
どうもお祖父様との関係を考慮してまだ様子を見るべしと判断されたらしい。
あの人メッサーナ王家にも伝手があるからね。
首の皮一枚繋がった形ではあるけれど、正直なところを言えばご破算になった方がよかった。
ロリモニカ様を間近で見れる機会を捨ててしまうのは惜しいが、死ぬほど惜しいが、
私がここで護衛兼侍従の座に収まってしまうと後々の変数が大きくなりかねないのだ。
本来この役目はロアーヌの名家の娘、8人の主人公の一人、カタリナのものだったはずだ。
それも彼女が15歳、モニカ様が10歳の頃に就くことになっていた。
この予定を約4年前倒ししてしまっている……今の私の歳は当時のカタリナとほぼ同じだが、
モニカ様の側を見ればまだ6歳だ。どうしてこんなことに?
「では、また会おう」
「は……」
一度村に戻り、家族友人に挨拶をした後本格的な城務め開始ということで話はまとまった。
フランツ様のお言葉に一礼し、玉座の間から退出する。
言うの忘れてたけどここ玉座の間だったわ。血で汚してよく斬首にならなかったな……
まぁ将来ここでモンスターと戦闘する不敬罪※に比べたらマシか(現実逃避)。
※ゲームにおいてミカエル・カタリナ(選択次第)・未登場のイイ男を主人公に選んだ場合、
玉座の間での戦闘がプロローグの〆になる
扉の外で待機していた兵士さんから荷物を返してもらった。
武器を含め荷物を抱えたまま侯爵の前に出るわけにもいかないので預けていたのだ。
…
……
………
「ミヨ・ベント。そこで止まれ」
城の外へ出るべく、大扉に向かって歩を進めていると、背後から声をかけられる。
ミカエル様だ。
いやまぁ玉座の間を出て少し経ってからついてきたのは知ってたけど……何事?
内心の疑問を押し隠し、すぐに振り向いてひざまずく。
「よい。顔を上げろ。
先程はロクに話せなかったが、私個人としてそなたに少し聞きたいことがあってな」
「は……。
では、改めましてミヨ・ベントでございます。
高貴なお方のお名前をお聞かせくださいますか」
「そうだな。まだ名乗っていなかった。
ミカエル・アウスバッハ・フォン・ロアーヌである。お前が仕えることになるモニカの兄だ」
無論、彼が何者なのか知っていたが、目下の礼儀として通さなくてはならないやり取りだった。
──それにしても、兄と来たか。
ロアーヌ候の息子であるより兄であることが大切だと考えているのか、それとも妹を心配する兄としての話をこれからするぞという意思表示か。
両方有り得そうだ。この人は妹が駆け落ちしても追手をかけたりしないし、連れ出したユリアンのもあっさり許すし、エンディングでは神采配を炸裂させるしで結構なシスコンなんだよなぁ。
「場所を移そう。こちらに小部屋がある」
これはあれか。
テメェうちの妹に変なモン見せやがってちょっと体育館裏までツラ貸せオォン!?
ということだろうか。
案内されたのはゲームでプリンセスガード※が詰めていた部屋だった。
※後々結成されるモニカの護衛部隊。
扉を開け、部屋の中を確認したうえで先にミカエル様をお通しした。
中には誰もいない。続いて私も部屋に入り、扉を閉めた。
「さて────」
「っ!!!」
キィン!!
瞬間、腰に佩いていた小剣を一閃し打ちかかってくる。
その動きを予想していた私は、服の袖に潜ませた隠し短槍で弾いて対応する。
矢羽が無い打根(画像検索してみてね)のような、ほぼ暗器といった心許ないサイズの代物だが、
ミカエル様も本気ではなかったのだろう。どうにか防ぐことができた。
「ほう……そのようなものを仕込んで私たちの前に立っていたのか。危なかったな」
「謁見の前には外してましたよ! 兵士さんはちゃんと武装解除確認してます!
部屋を出た時に返してもらったんです!」
「まぁ、信じよう。兵の精勤も、そなたの武術の腕もな」
「普通、立ち姿見てわかんないです? 強さぐらい」
心の準備をしていた流れではあったものの、実際に打ち掛かられるとビビるもんはビビる。
私は自然と不満を訴える口ぶりになっていた。
「口調が崩れているぞ──とはいえ、先に非礼を働いたのはこちらだ。許そう」
「それはどうも……いえ、順番の話で言えば謁見の際に私がやらかしたのが先ですし」
「あぁ、そうだ。お前の腕を確かめたかったのもあるが、それが聞きたかった。
アレは一体何だったんだ」
後ろめたさがあり、許してもらえそうな流れだったのについ余計なことを言ってしまう。
ん? ミカエル様も元からその件について聞くつもりだったようだし、何も言わずともこうなっていたってことか……ああ逃れられない!
こうなったら正直にぶちまけてやる!
「いや、その……モニカ様、かわいいじゃないですか」
「?」
「だからですよ」
「何を当たり前のことを……? 話が繋がっていないぞ」
なぁにぃ!? 当たり前? 当たり前っつったか今!
おのれ……!
「モニカ様の魅力(24)はねぇ! 世界でも三本の指に入る※奇跡なんですよ!
ミカエル様は見慣れているから当たり前で済ませられるのでしょうが!
私のようなド平民にとっては劇物なんです!
耐性を獲得するまで数度の
※主人公組が宿星と武器をいじらない限り、吸血鬼(27)と深窓の令嬢(25)に次ぐ第三位
「と、とうとし? いやわからん! 何もかもがわからん!
大体見た目を言うならお前(23)だって相当……」
「ああモニカ様! モニカ様は美しい! モニカ様は可愛らしい!
モニカ様は素晴らしい! モニカ様は尊い! モニカ様モニモニしたいお!」
「!?……幼い妹に対してなにを貴様、やはり危険人物かッ────!」
再び小剣を抜いて打ちかかってくるミカエル様にこちらも応戦する。
もうどうにでもなれや!
どたんばたん。
ロクに防音措置もされていないただの部屋でこんな大騒ぎをすれば城中に響く。
「何事だ!……ミヨ!? お主まだ帰らずにいたのか! ミカエルまで!?」
「侯爵様お下がりを!」
数人の兵士を引き連れてフランツ様がやってきた。
「はぁ、はぁ……あぁ、父上?
ミヨが血を吐いたのはモニカが可愛すぎたからだそうです」
「!!?!?!??????????」
それから。
各々呼吸を落ち着かせ、私たちは誰からともなく言い出した。
「今日はもう少し話すべきことがあるようだ」と──
話し合いの場所は、そのまま元いた小部屋が使われることになった。
部屋の外にはフランツ様が連れてきた兵士の人たちがそのまま陣取り、人払いをしてくれている。
部屋には机が一つに椅子4個。貴人を座らせるには見合わない品だったが、とりあえずお二人には上座に座っていただいた。
入口を背に、私も下座へと着席する。
「では……え~、まず、先程ミカエルが言っていたことだが」
「事実です。裏も表もありません。
私ことミヨ・ベントはモニカ様が可愛すぎて吐血しました」
「えぇ……(困惑)」
「父上。理解しようとするとこちらも狂気に引き込まれます。
これはもうそういう生き物だと思ったほうがいいです」
聞きづらそうに切り出すフランツ様にハキハキと答える。
ミカエル様がひどいことを言っている気がするが無視した。
「こちらからも質問いースか?(コキ……
本当は聞かずに帰るつもりでしたが、モヤモヤが残ってしまいそうなので」
謎に手首を鳴らしつつ、私の方からも質問を切り出した。
「どんどん態度がでかくなるな、お前」
「これでお務めの話が流れるならそれはそれです。
偉い方からの命令だから、お祖父様にも話が通っているからと一応納得していましたけど、
やはり考えるほどにモニカ様はまだ幼すぎます。
専属をつけるにしてもまだ先──10歳くらいからではないでしょうか?
今、あえて平民の私を選ばれる理由をできればお聞かせ願いたい」
ミカエル様のツッコミを軽く流して、本題について聞く。
フランツ様は何かを考えるように少し目を
「……そうだな、お主はミカエルとモニカの今の立場について、どの程度知っている?」
? ミカエル様も関係あるのか?
立場ってそりゃ侯爵様の息子でモニカ様はその妹で……?
あぁ。
前世において、攻略本で読んだ知識が脳裏に浮かんだ。
「なるほど。本当の目的は国内権力の何れにも拠らない、お二人の味方を増やすことでしたか」
「さすがだな、ベントの才女。今の問いかけ一つで気付くとは」
「父上は一体何を言われるのか! まるでこの奇人が我ら兄妹を守るかのような……
モニカの護衛の中のたかが一人ではないのですか?」
「声を抑えるのだ、ミカエル……ミヨ。説明を頼めるかな?」
息子を嗜めるフランツ様から言葉を引き継ぎ、ミカエル様に語りかける。
「かしこまり! じゃあ説明させていただきますけど、その前に一つ。
私がこれから申し上げることについて、誰かを侮辱する意図はございません。よろしいですか」
「わからんが、わかった。話せ」
「単刀直入に言いますね。おニ人の御母堂は平民出身の第2夫人であり──」
ガタッ!
「落ち着け」
立ち上がりかけたミカエル様をフランツ様が制する。それを眺めながら言葉を続けた。
「そのことを理由に爵位継承を良しとしない複数の貴族がいて、既にその攻撃は始まっている。
……先程、軽く手合わせした際に、なんとなくわかってました。
ミカエル様、命を狙ってきた刺客を返り討ちにしたことありますよね?」
そう。私が思い出した情報とはこのことだ。
ミカエルとモニカは側室の子供であり、ミカエルが父の位を継ぐことに反対する者も多く、
共に幼い頃から何度と無く命を狙われている──といった記述があった。
「そんなことまで、わかるのか……お前は」
「わかりますよ。私も野盗を殺してますからね」
驚愕に目を見開くミカエル様。
私はあえて軽い調子で、なんでもないことのように語る。
今、重要なことは私たちが殺人経験者かどうかの話ではない。
「余計なこと言っておいてなんですけど、話を戻します。
ミカエル様とモニカ様が狙われる状況は今後も続くでしょう。
国内の権力者が相手である以上、完全に信頼できる護衛もそう多くは揃えられない。
数を増やせばどこの息がかかっているかわかったもんじゃないのが紛れ込みますからね……
そこで、死食の時にちょっと目立っちゃったシノン村の私に白羽の矢が立ったというわけで」
これで合ってます? という具合にフランツ様に目を向けると、深く頷かれた。
「そうだ。死食が起きるはるか前から、それを乗り切るために行動し、
見事被害を最小限に抑えたベントの才女──ミヨ。
その視野の広さと思慮深さ、武人としての強さで、我が子らを助けてほしいのだ」
とんだ買い被りだ。
私がやったことなんて、原作知識に頼っておじいちゃんに甘えての結果でしかない。
まぁ戦うのはそこそこできると思っているが。
あまり期待されても困るので謙遜(というか事実)を言っておく。
「被害を抑えられたのは9割9分お祖父様の財力と発言力と知己の多さのおかげでしたけどね」
「だが、その祖父を動かしたのはお主の言葉だろう。
それで? 答えを聞かせてもらえるかな?」
「……はぁ~~~~~~~~~(クソデカため息)」
思い出しちゃったもんは仕方ない。
私が知っているミカエル・モニカ兄妹は無事暗殺を切り抜けて大人になった姿だ。
だが、私という異物が存在して少しでも影響を与えてしまったこの世界において同じ未来に辿り着けるかは断言できない。
「本当ならフランツ様が鶴の一声で反対勢力黙らせて、
お二人の安全を保障してくださいよと言いたい所さんですが……」
「無論、私もできればそうしたい(所さん?)」
「わかってますよ。
今は死食での被害が各地で広がっていて、復興のためには腹に一物抱えた貴族でもなんでも
協力してもらって動かなければならないって。
だからあまり強く押さえつける方法は採ることができない。そうでしょう?」
「その通りだ。父親として情けない限りではあるがな」
「で、先程の質問に対する答えですが……ミカエル様?」
「──ハッ!? わ、私か?」
私とフランツ様の会話をボーッと見ていたミカエル様が、いきなり話を振られてビクッとなった。
「先程の私、モニカ様についてなんて言いましたっけ?」
「? あぁ。モニカは可愛いだの、モニカは尊いだの、モニモニしたいだの」
「モニモニは置いといて。そうです。モニカ様は尊いんです。眩いんです。
この世で最も幸せになるべきお方なんです」
「お前怖いぞ」
「お黙りください。だから、まぁ──そんなモニカ様を不幸な目に遭わせようって輩は、ね?
私がこの手でアビスに叩き込んでやりますよ。誰に命じられたからでもなく、己の意思で。
そのついでにミカエル様のことも守ってあげます。
……こんな答えでどうでしょう?」
「結構。大変頼もしい答えだ……では、今度こそ村に帰り支度を済ませたまえ。
君が正式に城へ来る日を楽しみにしている」
話を切り上げるようにフランツ様が立ち上がる。合わせて私も席から立った。
あれっ? いつの間にか「お主」から「君」にランクアップしてる?
本当に好みの回答だったらしい。
「私はついでか」
「ついでですよ。十分な腕前をお持ちのようですし」
苦笑いするミカエル様にニヤリと笑いかけ、軽く一礼。
「それでは、今日のところは失礼いたします」
こうして私、ミヨ・ベントの就職が決まったのであった。
侯爵父子が寛容だったのは主人公の魅力23が多少役立ったってことでお兄さん許して!
礼儀作法等に関してはサーフ系ボディビルダーのアワビ並にガバスカなので見逃してください。