ユリモニニニヨニヨスルミヨ   作:岡ノ下

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台詞確認のため始めたリマスター版にハマッて身動きが取れないので初投稿です。


第5話「経年」

ミヨです。シノンへと帰って来ました。

 

モニカ様との初対面から色々ありましたが、なんとかその日のうちに戻って来られました。

 

ロアーヌ城と開拓村シノンの距離は「夜に馬を飛ばせば日が昇る前に辿り着く」くらいなので、まぁやろうと思えば日帰りも可能なわけですね。

流石に日も暮れてきましたけど……

 

まだ寝る時間じゃないだろうということで、ベントの本家に向かいます。

 

バァン!(大破)

 

クソデカサウンドを響かせて扉を開け放ち、第一声

 

「お祖父様~~~ッ!」

 

「なっなんだぁっ」

 

目当ての人物はすぐ見つかった。

 

「て め ぇ 様 は 、 何 を し て く れ ち ゃ っ て ん だ ス ギ ?」

 

「ミ、ミヨ!? いったいなにを……」

 

「こっちの台詞なんですよォ! あなたは侯爵様に何を吹き込んでるんですか!

 誇りに思ってもらえるのは嬉しいけど、孫自慢はほどほどにしてくださいよ!

 話をしている間「ベントの才女」「ベントの才女」って……恥ずかしくて死にそうでしたよ!」

 

「そんな、それはありのままを伝えただけであってだな──」

 

「いいえ絶対過大評価されて伝わってました!

 私が目指してるのはねぇ、メアリ・スーでもおもしれー女でもないんですよ!

 こ↑こ↓で地味に歳下の子たちを見守る後方保護者面でいたかったのにッッッ!

 侯爵様にお会いしたせいでシリアスやらなきゃいけなくなったでしょうが!

 ただのシリアスじゃねぇぞ……ド級のシリアス、ドシリアスだ! わかる? この罪の重さ」

 

「信じて城に送り出した孫娘がおかしくなってしまった……」

 

ショックを受けるお祖父様に構わず、言いたいことを吐き出した私はスッキリして話を続ける。

 

「それで向こうでの仕事を始める前に色々と済ませたいことがあるんですけど──」

 

「うわぁ急に落ち着くな!」

 

「すいませんね、これだけは言いたかったもので。

 でもちゃんとわかってるから大丈夫ですよ。

 おじーちゃんが私のことを考えて今回の話をまとめてくれたんだって」

 

「……ミヨ」

 

私はこの村が好きだ。そして現ロアーヌ候フランツ様が私たち開拓者によくしてくださっていることを知っている。

この世界は人が住んでいる土地の外にはモンスターがいる。

村でも自警団を結成しているが、彼らの出番がほとんどなく、それでいてモンスターに襲われず開拓作業、生産業に従事できている。それはフランツ様の号令のもと、国の兵士の皆さんがモンスターを倒してくれているからだ。

恩を返せるものなら返したい。

 

平民の身でできることなんてないし、ゲーム知識に凝り固まった思考でゴドウィン※の反乱は起こるものだと当然のように考えていただけで……いや頭悪すぎかよ。

※ミカエルの従兄弟。

 こいつが反乱を起こし、解決のために主人公たちが動くことでゲームが始まる。

うろ覚えだが、ゲーム開始の3ヶ月前に起きたフランツ様の死……あれは、ゴドウィンによるものだったという話を見た気もする。最早こうなれば割り切ってあの侯爵家に尽くし、できる限り反乱を防げるように立ち回ろう。

小娘一人が何をできるかわからないし、防げた場合ユリアンとモニカが出会う可能性も著しく低くなってしまうが……私は二人の運命と己の初志を信じる!(クソみたいな開き直り)

 

ロアーヌ内部のいざこざがどういう結果を迎えるかに関わらず、13年後にはアビスゲートからの影響が強まり、モンスターが今よりも活発化する。

更に、時間の経過と共により強大なモンスターが現れるようになる。

そして、ロアーヌ領の中にあるタフターン山には四魔貴族ビューネイのアビスゲートがあり、この国の空は彼女の配下モンスターで溢れ返ることになるのだ。

どうあってもアビスゲートを閉じれるように、職を辞して国外へ出るためのプランを何通りか考えておくべきだろう。

 

当初の希望通りユリアンとモニカが駆け落ちしてくれたら、それに同行して出て行くつもりだが……(人間の屑)

 

「仕事の引き継ぎと挨拶回りが終わったらロアーヌへ行きます。待っていると言われましたしね」

 

「あぁ。話を持ちかけておいてなんだが、寂しくなるな」

 

「馬を飛ばせばすぐの距離だし、都合つけてなるべく顔を出せるようにしますよ」

 

ユリアン達と疎遠になるのは嫌だ。

それに、サラが大きくなってから「誰?」とか言われたら泣いちゃうからね。

 

 

 

4日後。

 

両親にはしっかりやるように激励され、

子供の頃からお世話になった人たちに挨拶して、

特に一緒に遊んでいたトーマス、エレン、ユリアンとは時間の許す限りお話をした。

馬や牛たちにしばしの別れを告げ、これまで私がしていたお世話を引き継ぐ従業員へ感謝を伝え、この子たちをよろしくお願いしますと頭を下げる。

 

「ミヨ姉ちゃん……もう行くの……?」

村から出ることを伝えてからずっと泣き続け、今もグスグスと鼻をすするエレンを抱きしめる。

「もう泣かないで。ほんのちょっと住むところが変わるだけなんだから」

 

「さすがにこれまでみたいに毎日顔を合わせるってことはできなくなるけどね」

トーマスが横からやや不満そうな声で言う。

目が潤んでいた。

「まぁ、毎日はちょっと無理だけどね。なるべく帰ってくるから……

 エレンとユリアンのこと、よろしくね。トーマス」

 

「わかったよ。姉さん」

 

「うん。ありがとう。

 ……それで、ユリアン」

 

「……」

エレンほどではないが、ユリアンも泣いていた。

まだ妹を亡くしたトラウマが癒えきっていない彼にとって、近しい人が日常から消える経験をさせてしまうのは少し酷(こく)だったかもしれない。

 

「さっきも言ったけど、なるべく帰ってこれるようにするからね。

 たくさん遊んでたくさん食べて、元気になったら──あなたのお父さんみたいに、カッコいい大人になれるよう、ちょっとだけ頑張ってみて」

ゲーム解説によると、大人になってから見せるユリアンの正義感と意志の強さは、父の教えがあったかららしい。

ノール家のおじさんは私が事前情報から想像していたよりも寡黙で、尊敬できる人だった。

娘を喪った悲しみを抱えながらも、それを表に出さず、家族を守るために朝早くから働き続ける。

入村して1年経った今、村の誇るべき仲間として認められている人なのだ。

 

「……うん! わかった! でも本当にちゃんと帰ってきてよ?」

ユリアンの元気なお返事に嬉しくなり、頭を撫でた。

このショタ子が13年後、20歳になった時私の知る熱血漢のユリアンになっているのかどうか……そんなことより、まずは健やかに育ってほしいと思う。

そのうえでモニカ様といい感じになってくれたら言うことはない(人間の屑)。

 

さて、あまり時間をかけても別れが惜しくなる。

そろそろ出発するべ。

 

「それじゃあ、みんな──行ってきます!」

両親から餞別として譲り受けた馬に跨る。

この子はロアーヌの厩舎に繋ぎ、私が里帰りするたびに使っていいとのことだった。

 

村の皆の見送りの声に手を振りながら馬に合図を送り、駆け出す。

 

 

 

ロアーヌへはまだ日が高いうちに到着できた。

本格的な仕事は明日からになるが、まずは何よりも大切な方へ挨拶しなければならない。

 

「ミヨ・ベント。本日よりあなた様の護衛兼侍従としてお仕えさせていただきます。

 何なりとお申し付けください。モニカ様」

 

「ミヨさん! おまちしておりました。 よろしくおねがいします」

 

「ああそんな、さんなど付けずに。ミヨとお呼び捨てください。よろしくお願いいたします!」

 

新生活、がんばるぞ!

 

──と、気合を入れたはいいが、まだアビスゲートが活発化するまで13年ある。

その間の出来事をねっとりやっているといくら時間があっても足りないので……

 

カットしよう!(関西チャラ男)

 

年ごとにあった出来事には軽く触れていきます。

 

 

【1年目:残り12年】

モニカ7歳 ミヨ15歳

 

「オラァ! 刺客テメェこの野郎! それで隠れたつもりかクソがバレてんぞ!」

 

ドスッバタッちーん(笑)

 

ミカエル様とモニカ様のご歓談中、柱の陰からご兄妹を狙っていた刺客に槍を投擲。

ゲス野郎は脳天をぶち抜かれて絶命した。

 

個人的に槍と言えば投槍こそ最強の使い方だと思うのだが、ロマサガ3においてそれらしい技は天高く跳躍して投げつける最上級クラスの「流星衝」のみである。

よって今の攻撃に技らしい技は無い。

 

刺客が死ぬところを見たモニカ様は何も言わず悲しそうに目を伏せていた。

私がこの職に就く前から、もはや慣れっこなのだろう。

こんな幼女に対して許せねぇ……許せねぇよ……。

私の口も悪くなろうというものである(責任転嫁)

 

「いつもながらお前は刺客を見つけるのが早いな。

 私が察知できなかった不甲斐なさから言い訳するわけではないが……

 まだ奴から殺気は漏れていなかったと思う」

 

「まぁまぁ……私はちょっと、隠れてる人を見つけるのが得意なんですよ」

 

護衛のお役目を果たすにあたり、非常に役立つものを私は持っていた。

昔は微妙だと思っていた転生特典、「ステータス閲覧機能」である。

「ステータスを見るぞ」と念じ、対象の名前に宿星に得意武器、能力値を可視化するこの力。

対象を限定せず自らの視界全体に対して働かせれば、隠れた人間のステータスを表示させ、目印として扱うことができた。

ユリアンたちとかくれんぼで遊んだ時に気付いてしまい、クソゲー化するため封印していた使い方だが、まさか仕事で役立つことがあるとは。

会ったことも無い神様ありがとう。

 

 

【2年目:残り11年】

モニカ8歳 ミヨ16歳

 

「ミヨ……この2年、君の仕事ぶりを見てきたが、よくやってくれているようだな」

 

見回りの最中、フランツ様に呼び止められた。

 

「今だから言うが、初対面の時は本当にこの子を迎え入れていいか心配だった」

 

「それはそうでしょうね。当然の感想かと」

 

全く言い訳もできないので肯定する。

 

「だが、今ではモニカに信頼され、ミカエルも君を頼りにしているようだ」

 

「ありがたいことです。これからも粉骨砕身お仕えいたします」

 

「そこで……このロアーヌに伝わる聖剣──」

 

「武 器 は 槍 し か 使 え な い ん で 遠 慮 し ま す ね !(食い気味)」

 

懐から何かナイフのようなものを取り出されそうになったので、全力でインターセプトする。

今何出そうとした? わかっている。

初代ロアーヌ候妃であるヒルダ様が聖王より授かり、代々"候妃に"受け継がれてきた聖剣……

『マスカレイド』だ。そんな重要なもん平民娘に渡しちゃあいけない。

もっとこう、ロアーヌの貴族で相応しい娘がいるはずだ。そうでなくてはならない。

 

「い、いやしかしだな。槍では護衛の任を果たすにも取り回しが利かないこともあるだろうし」

 

「そんな状況に備えて最近体術も鍛えてるので。恥ずかしながら、2つの技術を並行して鍛錬できるほど器用でもなければ時間もありません。それはどうか別の方に」

 

「むぅ……」

 

前世から考えていたことがある。

マスカレイドの本来の持ち主──そしてこの世界でも持つべき人物、カタリナについてだ。

悪名高き通称「ヤリ逃げダイナミック」事件によってまんまとマスカレイドを盗まれてしまう彼女だが、何故そんな隙だらけだったのだろうと。

公式に、彼女がマスカレイドを持つに至った経緯はモニカの護衛として"フランツ候から"託されたとある。候(・)妃(・)に(・)受(・)け(・)継(・)が(・)れ(・)て(・)き(・)た(・)聖(・)剣(・)を(・)侯(・)爵(・)直(・)々(・)に(・)渡(・)す(・)ということはつまり、お前を息子の相手、将来の候妃候補として見ているぞというメッセージ……そう受け止めたとして、誰も彼女を責めることはできないのではないか。

実際のフランツ候の真意はわからない。

ただ剣の腕が立つカタリナに良い武器を持たせて、娘を守ってほしかっただけかもしれない。

ロアーヌ名家の出であり、家柄としても申し分ない相手だったのでやっぱり候妃候補として渡したのかもしれない。

どちらにせよ、幼い頃からミカエルのことを想っていたカタリナはマスカレイドを受け取ることでそ(・)う(・)い(・)う(・)つ(・)も(・)り(・)であり、ミカエルも同意の上だと思っていたなら──だからこそあの夜、ミカエル(偽)にあっさり引っかかっったのではないか。そう考えると筋が通るのである。

 

まぁ長々と語ったが、マスカレイドを受け取ると候妃候補に見られかねない。

私にその気は無いということだけハッキリさせておけばいい。

 

「しかしこれはやはり君にこそ──」

 

「ねーホントムリムリムリムリ、ねぇ、やー、ふー、うー、ああーッ!!(ひで」

 

強硬にお断りし続ける私にフランツ様の方が先に折れ、マスカレイド貸与の話は流れた。

それから数日は侯爵父子との間の空気が若干気まずかったが、今ケリを付けることで後々こじれずに済んだと考えることにする。

 

 

【3年目:残り10年】

モニカ9歳 ミヨ17歳

 

「ねぇ、ミヨ。私もそろそろ馬術を覚えたいわ」

 

「そうですねぇ。じゃあまず私の馬に乗ってみますか?

 頭のいい子なので初めての相手にも優しくしてくれますよ」

 

「お願いできるかしら」

 

「慣れてきたら私の実家に相談して、モニカ様のための馬を用意してもらってもいいかもしれませんね」

 

欲を言えば夜の森でも駆け抜けられる馬がいるといいけど……

 

 

【4年目:残り9年】

モニカ10歳 ミヨ18歳

 

「本日よりお仕えさせていただきます、カタリナ・ラウランです。よろしくお願いいたします」

 

眼前には一人の美少女。

顔立ちにやや幼さを残すものの、引き締まった肢体と隙のない立ち姿から、相当な剣の使い手だとわかる。

 

「よろしくね。カタリナと呼んでも?」

 

「はい。もちろんでございます」

 

私がお仕えし始めた時から徐々に人へ指図することにも慣れ、元から備えていた気品に加えて侯爵家の人間として風格を身につけ始めたモニカ様。

新たな侍女兼護衛として就くことになるカタリナに対して、優雅に微笑んだ。

あぁ^~

 

「私はミヨ・ベントです。同僚としてよろしくお願いしますね」

 

先輩風を吹かすほど大した存在じゃないので、普通に挨拶する。

 

「カタリナ・ラウランです。

 ……あなたのことは父からも聞き及んでいます。ミヨ先輩とお呼びしてもいいですか」

 

向こうから先輩と呼ばれてしまった。うぅん。

ラウラン家はロアーヌ貴族の中でも完全なミカエル様の支持派で、多方面でサポートしてくれている大変ありがたい存在だ。おそらく、私が刺客を防いだりアレコレ手を回していることについて、名前を聞く機会があったのだろう。

 

「もちろんいいですよ。じゃあ私はカタリナって呼びますね」

 

「はい! よろしくお願いします!」

 

主人公勢7人目との顔合わせは穏やかに終わった。

残るは流浪のイイ男だが……今のところ凄腕傭兵トルネードやら曲刀カムシーンやらの名はこの地まで届いていない。

田舎のシノンまで名が轟くくらいだから相当派手にやったのだろうが、まぁなるようになるか。

 

 

【5年目:残り8年】

モニカ11歳 ミヨ19歳

 

「今日は何をいたしましょうか、モニカ様?」

 

「そうね……天気もいいし、ひなたぼっこに付き合ってくれる?」

 

「ウッス!」

 

…

……

………

 

「 ポ カ ポ カ 」

 

「あぁ^~~! 生ポカポカの音ォ~~!!」

 

 

【6年目:残り7年】

モニカ12歳 ミヨ20歳

 

私もついにこっちの世界で二十歳(はたち)かぁ。

前世のように成人式的イベントはないが、なんとなく区切りとして気分が引き締まる。

先は長いけれど、知り合った人たちと愛すべきこの世界のために頑張っていこう。

 

あとはそう、酒だ。

以前子供だからダメと禁じられてからなんとなく機会も無いし避けていたが、二十歳になればさすがにいいだろう。

ゲームで主人公たちの一部が集っていたロアーヌの酒場に顔を出し、聖地を訪れた感動を押し殺しながらエール(麦酒)を呷った。

ビール! ビール! 冷えてるか~? バッチェ冷えてますよ!

 

 

【7年目:残り6年】

モニカ13歳 ミヨ21歳

 

「ただいま~! あ! エレン! 元気してた?」

 

「ミヨ姉! うん、おかえり!」

 

「その後ろにいるのはサラちゃんね。大きくなっちゃって~子供の成長はほんと早いわ」

 

「またそんな年寄り臭いことを……」

 

里帰りの日。なるべく早く着いて長く過ごせるように馬を飛ばして来たのだが、村に入ってすぐカーソン姉妹に出会った。どうやら家の仕事の手伝い帰りらしい。

 

「あっ、あ、あの……こんにちは」

 

「はい、こんにちは。サラちゃんはおば…お姉ちゃんのこと覚えてる?」

 

やべえ……精神性が中年~壮年に近付いてナチュラルにおばちゃんとか言いそうになったわ。

 

「うん……ミヨさん……お姉ちゃんがよく「ミヨ姉早く帰ってこないかな」って言ってる」

 

「ちょっと、もう! やめてよ! サラ!」

 

「ひぅっ」

 

「がわ゛い゛い゛な゛ぁ゛二人とも」

 

その後、機会があってサラ(9さい)と二人で色々お話した。

最近はお姉ちゃんとユリアンがお嫁さんごっこをしなくなっただの、トーマスは更に忙しそうになっただの、他愛ない話だ。

 

「そろそろお城に戻らないと。またお土産持って来るから」

 

時間が来たのでサラの頭を撫で、ひとまずの別れを告げた。

 

「うん! お姉ちゃんと、トムとユリアンと……一緒に待ってる」

 

「これからも幼馴染四人組で仲良くね」

 

この娘は過酷な運命を背負っている。

せめて、今はできるだけ多く笑わせてあげたいな。

 

 

【8年目:残り5年】

モニカ14歳 ミヨ22歳

 

カタリナがフランツ様からマスカレイドを託されたらしい。

 

「おめでとう! カタリナには私が里帰りするたび護衛の負担かけてるし、何か奢らせてよ」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

心配事が一つ片付いたぞ! いやーめでたい。

 

 

【9年目:残り4年】

モニカ15歳 ミヨ23歳

 

「一昨年実家で産まれた白毛馬が母離れしたので、モニカ様に是非ってことで連れてきました」

 

「まぁ、かわいらしい! でも、これまで乗せてくれた馬は……?」

 

「まだ走りたそうですし、ちょっと大変ですが交互にお世話して慣らしていきましょう。

 気遣いのできる馬なので後輩に色々教えてくれると思いますよ。

 あと2,3年したら実家の放牧地に戻してゆっくり休ませようかと」

 

「わかったわ。それでお願いね」

 

モニカ様も最初の馬には愛着を持ってくれたようだが、いかんせん体力の衰えが見え始めてきた。

可能な限りゴドウィンの反乱を潰すよう動いているものの、事が起きた時にこちらの馬で脱出してもらうのは不安が残る。念には念をということで考えた措置だ。

 

「放牧に出した後も会えるかしら? ミヨのご実家──シノンにも、いつか行ってみたいの」

 

「えぇ、歓迎させていただきますよ。紹介したい仲間たちもいますし」

 

「仲間?」

 

「幼馴染でして。兵士の皆さんにばかり負担をかけられないって見回り組を結成してモンスターと戦ってるんです。とっても腕が立つんですよ」

 

 

【10年目:残り3年】

モニカ16歳 ミヨ24歳

 

「なんかゴドウィン男爵の娘さんがラドム将軍に嫁いだそうですね。

 これでラドム将軍はあっちの派閥ってことですか」

 

「そう単純な話でもないと思うが。彼は忠義に篤い男だ。

 ……お前はゴドウィンを特に警戒しているな」

 

「ほぼほぼミカエル様が次の侯爵で決まってるとはいえ、目下最大の対抗馬ですからね~。

 最近遠回しに侯爵に相応しいのは自分だ的な発言も多いし、野心隠してないでしょ?」

 

本当はゴドウィンと組んでいる大臣も牽制したいのだが、何分普段は領地にいる男爵と違ってこちらは同じ城内で働く者同士だ。

敵意を悟られて動き辛くなるのは避けたいといった面倒臭い事情があった。

 

ミカエル様と書類を片付けながら雑談を続ける。

主な書類の内容はゲームでも簡易的に触れられた予算の割り振り。

産業に力を入れるか、軍備はどうするか、税率は上げるか下げるかそのままかといったものだ。

 

「こういった苦労も知らずに玉座だけを欲しがられても困る。

 面と向かって言ってやりたいほどだ」

 

「ほんとですよね」

 

ドッッ!!!

 

天上の梁に隠れていた不審人物を突き殺す。

刺客なのか情報を抜きに来た間諜なのかは定かでないが、どのみちロクな目的ではないだろう。

 

「──とまぁ、こういうのを送り込んでるのも多分ゴドウィン男爵です。用心してくださいね」

 

「ハハァ……」

 

呆れたような目で見られる。

もう10年の付き合いになればお互い慣れたものだ。

 

 

【11年目:残り2年】

モニカ17歳 ミヨ25歳

 

「トルネード?」

 

「あぁ。ファルスとスタンレーの小競り合いでスタンレー側に付いた傭兵がめっぽう強くてな。

 曲刀を振り回して陣形を崩壊させたとかなんとか」

 

城下町の酒場。

5年通って顔見知りになった常連から、ついに8人目の主人公の情報が飛び出した。

ファルスとスタンレー※ってあいつら飽きねぇな。

※簡単に言うと仲の悪い2つの街。ゲームでも戦争でどちらにつくか選択するイベントがある。

 

トルネードさんは主人公中最高のがめつさ(隠しパラメータ)を誇る人物だ。

戦場と金を求めて次はどちらへ向かったのだろうか……。

ゲームでは流浪の傭兵でありがならロアーヌ国内の権力関係について把握済だったし、

その耳の早さでこの国に近づく戦乱の気配を感じ取って移動してきているかもしれない。

 

【12年目:残り1年】

モニカ18歳 ミヨ26歳

 

どうも最近、モンスターの活動報告が微増している。

1年後頂点に達するアビスゲートの影響が徐々に強まっているのだろう。

フランツ様、ミカエル様ともに、モンスターの脅威から国民を守るため兵士を指揮する姿が多く見かけられるようになった。

 

ゴドウィン男爵にも自分の領地とその周辺を守るよう動員令が届いているはずだが、なにかにつけ言い訳をして動きが鈍い。

ラドム将軍はそれと足並みを合わせず精力的にモンスター狩りを行ってくれているようだ。

 

私はこの年一度しか里帰りできず、幼馴染たちにあまり危険を侵さず、それでいて腕を磨くよう無茶な注文をした。

フランツ様、兵士の皆さんが懸命に働いてくれていることは肌で感じているらしく、嫌な顔一つされなかった。ありがたいと思うべきか、申し訳ないと思うべきか……。

 

 

【13年目:物語の始まる年】

モニカ19歳 ミヨ27歳

 

ついにこの年になってしまった。

ゲームではフランツ様が亡くなって3ヶ月、侯爵となったミカエル様があえてモンスター征伐の遠征を行った際に、狙い通りゴドウィンと大臣が連携して反乱を起こしたはずだ。

 

今日、フランツ様はまだまだお元気で、去年から更に数を増したモンスターを討つため軍を率いて外に出ている。

ミカエル様は別の隊を率いて逆方向の土地に向かうらしい。

お二人が不在となったロアーヌ城。私はモニカ様の剣術の稽古にお付き合いしていた。

 

ちょっと不安だが、この一年よくあった状況でもある。フランツ様周りに関しては暗殺の類を防げるよう最大限の手を尽くしているし、できればこのまま──ん? 雨?

 

「モニカ様、そろそろ切り上げて室内に入りましょうか」

 

「ええ」

 

「雲が黒くて分厚い……こりゃ雷雲かな。風も強くなってきましたね」

 

「雷が鳴ると耳の良い馬が怯えてかわいそうだわ」

 

お優しいモニカ様……しゅき……

 

「本当に雷が鳴り出したら馬の様子を見に行けるよう、厩舎の鍵は戻さずにおきましょうか。

 まぁ雷光はモンスターの活動を抑える面もあるので、お父君と兄君様は少し落ち着けると思いますよ」

 

モニカ様と言葉を交わしながら城内に入った。

何かが頭の片隅に引っかかっている。

 

「そこで止まっていただけますかな」

 

大臣が兵士を引き連れて私たちの目の前に立ちはだかった。

 

「……大臣? これは何の真似ですか」

 

「無礼な! 道をお開けなさい!」

 

──雷──もうすぐ夜──

 

「あ」

 

《雷光が闇を照らし出す嵐の夜、ゴドウィン男爵と大臣は謀反を起こした》

 

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

 




なんとか始まったな! ヨシッ!
この主人公無能すぎんよ~~
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