昨日ラスダン近くでテイムしたでかぱい淫魔。レベルが足りず全然言うことを聞かない 作:好きなポケモンはユキハミとゴーリキー
1話だけちょっとシリアスですがあとは基本エロコメです
魔王城へと続く最後の道、デーモンズロード。
強大な悪魔たちの住まうその場所は、立ち入ったら最後、生きて帰ったものはいない。
危険度はSSS級。
普通なら真っ先に冒険者ギルドによる立ち入り禁止がなされるところであるが、魔王討伐という人類の悲願を達成するために、規制は一切されていなかった。
——だからこそ毎年のように、俺たちみたいな無謀なD級パーティが現れてしまう。
「……まったく、だから俺は反対したんだ。
デーモンズロードなんて、俺達には早すぎるって」
その言葉を聞く人間は、もういない。
信頼していたパーティメンバーは全員、俺を置いてどこかに走っていった。
奴らが最後に残した言葉は足手纏いだとか何とかの身勝手な言葉。
……つまり囮にされたってことだ。
テイマーである俺は手数だけは多いからな。
奴らとしても、囮にするのは好都合だったんだろう。
まったく、貧乏くじを引かされたものだ。
俺は今、とある洞窟に身を寄せている。
奴らに置き去りにされた後、必死にモンスターから逃げ回った際に見つけた、小さな洞窟だ。
「せめて、ここら辺のモンスターをテイムできたら……いや、俺のレベルじゃ不可能か」
そんなことを呟きながら、洞窟の壁にもたれかかったとき、隣から声がした。
「すららーっ、すらっ、すらら?」
「なんだ、慰めてくれるのか。
……ははっ、お前らも災難だったな。
こんな俺についてきたんだから」
「ばう、ばうう、ばう!」
「はいはい、まったく、こんなときも撫でてもらいたいのか。もう、仕方ないな」
おしくらまんじゅう状態になりながら、俺は手を伸ばす。
スライム、ウルフ、ゴブリン、ドラゴンキッズ。
目の前にいるのは四匹のモンスターだ。
悪魔たちの住まうこの土地にはまるで似合わない愛らしさを秘めたこいつらは、今の俺の唯一の仲間。
そう今までに俺がテイムしてきたモンスターである。
テイムしたモンスターのことはパートナーモンスター、縮めてパトモンと呼ばれている。パトモンにはニックネームがつけられ、テイマーの腕の見せ所でもあるのだ。
ちなみに、故郷にいた住所不定のモンスターおじさんによるとパトモンは全部で150匹まで仲間にできるらしい。
……多分嘘だ、あの爺さんホラ吹きで有名だったしな。
おっと、今はそんなことどうでもいいか。
こいつらはもともと魔王による支配を受けていたモンスターだ。
精神を支配され、人間へ牙を向いていた。
あまり知られていないことだが、この世界のモンスターというのは全て、魔王の支配が原因で人間を敵対視しているのだ。
そして、その支配を唯一解くことができる職業。
それがテイマーである。
テイム魔法によって、俺たちはモンスターたちの洗脳を解くことができる。具体的には、魔法を使うと魔力でできた玉が現れ、それをぶつけることで低確率で洗脳を解くことができるのだ。
俺たち、テイマーにとって一番大切なのはパトモンとの信頼関係だ。
だからこそ、ご飯を食べるときも、風呂に入るときも、寝るときだって、常に一緒である。
魔王の洗脳が解けたモンスターは寂しがり屋な奴ばかりで、ちゃんと手を焼いてやらないとすぐに拗ねてしまう。ま、そこが可愛いんだが。
テイマーとパトモンの繋がりは強い。
……いや、強すぎると言ってもいい。
そこにはただの主と従者とか、そんな言葉では表せられないものがある。
——だって、もしパトモン化したモンスターがいる状態で、主のテイマーが死ぬことがあれば、そのときは。
テイマーのパトモンも、一緒に死んでしまうのだから。
「ほんと、世話になったなお前たちには」
「ごぶ?」
だから、こんな状況になったテイマーにやることは一つだ。
死を直面にしたテイマーがパトモンたちのためにできる唯一のこと。
「スラリス、ウルフン、ゴブタロウ、ドラドラ。
……達者に生きろよ。
これからは、拗ねても慰めてやれないからな」
それは、テイム状態を解除し、パトモンたちを解放することだ。
テイムを解除すれば、パトモンたちはまた、魔王の支配下に戻る。
俺との記憶も消えて、普通のモンスターとしてこの地で生きていくのだろう。
それがこいつらにとって幸せなことかは分からない。
が、少なくとも、ここにいるモンスターたちに襲われることはなくなる。
俺が死んだときの道ずれになることだって、避けられるのだ。
「ほら、さっさと行け。
お前らはもう、俺の仲間じゃないんだ」
「ご、ごぶ? ごぶっ! ごぶぶ!」
ゴブタロウは、まるで抗議をするかのように、俺に向かって叫んだ。
既にパトモン化の契約は打ち切ったはずだが……まだ、記憶が残っているのか。
いや、それもすぐなくなるだろう。
俺は洞窟を出るため、立ち上がった。
ここにいれば、記憶をなくしたこいつらに襲われることになる。
……それに、これ以上顔を見るのは辛いしな。
そう思って、足を踏み出そうとしたときだ。
「ばうぅぅうっ!!!」
聞きなれた咆哮が、洞窟の出口へ向かって、放たれた。
……なに?
この咆哮は、緊急事態になったとき、ウルフンが俺たちに知らせるもの。
でも、こんなに大きな咆哮は初めてだ。
「ばうっ、ばううう!」
……出口のとこに、なにか、いるのか?
必死に訴えかけるウルフンを見て、洞窟の出口へと俺は視線を向ける。
だが、その瞬間。
——まるで閃光のような速さの黒い影が、空気を切り裂いた。
影の狙いは、おそらく。
「——スラリンっ! 避けろっ!」
必死に叫ぶが、間に合わない。
俺は洞窟の床を全力で蹴りつけ、震えているスラリンの方へと飛び込んだ。
「っ、ぐ」
抱えて、転がる俺の身体。
攻撃はなんとか避けたようだが、場所が悪かった。
目の前に迫るのは硬い岩石、止まろうとしても、慣性で動く俺の身体にブレーキは効かない。
まずい、ぶつか——
「すらっ!」
俺が目を瞑ろうとしたと同時、スラリンが前に飛び込んだ。
瞬間、大きく広がった液状のクッション。
俺はなんとか、そこに向かって飛び込むことで、岩石への衝突を避けた。
「助かったよ、スラリン」
とりあえずの危険は回避した。
しかし、状況は変わっていない。
むしろ悪化している。
目の前に存在する黒い影。
あまりにも早すぎた、目で追うことすらできなかったその存在が、今、姿を現した。
決して小柄ではない俺の身長を余裕で上回る巨体、褐色の肌を露出させた肉付きこ良い身体に、全てを飲み込むほど黒い瞳。
……間違いない、こいつは。
悪魔だ。
「……にんげ、ん」
震えている。
この場にいる全員が、弱虫のスラリンも、高貴なウルフンも、聡明なゴブタロウも、龍の子であるドラドラさえも。みんな、心の底から震えあがっていた。
当然、俺も、だ。
——悪魔。
それも、とんでもなく高位の大悪魔だ。
今までも何匹かは見たことがあるが、人語を話すやつなんで、始めてみた。
というか、なんで、こいつ。
——スラリンを、攻撃したんだ?
モンスターは、モンスターを攻撃しない。
この世の、絶対的常識である。
それを破ることができるのは、きっと、魔王だけだ。
ならおそらく、この悪魔が特殊なんじゃない。
なにかあるとしたら、こちら側だ。
そのとき、俺は気づいた。
……スラリンのパトモン化が、続いている?
「——まさか、お前ら。
契約の打ち切りを、拒否したのか!?」
「ばう、ばううふ」
「どら! どらどらら!」
俺の言葉に呼応するように、震えていたパトモンたちが、話しだす。
……パトモン側が契約の打ち切りを拒否するなんて、聞いたことがない。
こんなこと、ありえるのか。
いや、それよりも、こいつら。
——戦う気、なのか。
「……全員、まだだ、命令まで待機しろ」
だが、どうする。
ここで、この悪魔と戦って、勝てるわけがないだろう。
皆殺しにされて、悪魔の餌になるのがオチだ。
それなら、俺は判断しないといけない。
「——命令だ」
そうだ、自分が何をすればいいか。
……この場で、最も命を守ることが出来る方法とは何かを。
「ここから出て、仲間を呼んできてくれ。
頼りなる、強い仲間を。
それが、最も勝算のある方法だ」
——生き残るなら、俺じゃなくて、こいつらだ。
今、奴がいる反対側。
確か、小さな穴が開いていたはずだ。
人間はともかく、こいつらなら容易く外に出ることができるだろう。
「俺は大丈夫。
こんな淫魔程度、敵じゃないさ。
お前らのマスターなんだから、当然だろ?」
「ご、ごぶ……」
四匹のモンスターは、戸惑っている。
仲間なんて、どこにもいないと。
それに、マスターはどうするのかと。
「早くしろっ!!
こいつは、俺が抑える」
だが、俺が命令を変えることはない。
目の前の悪魔がいつ動き出すか分からない、だから、早く動け。
「——命令だ。
頼む、俺の判断を信じてくれ」
「……ばうっ! ばうばう!」
「す、すらっ、すら!」
「ごぶ、ごぶぶ」
「どら、ら」
そうして、俺はあいつらを見送った。
俺を信じて、洞窟から仲間を見つけに駆け出した、あいつらのことを。
……その信頼を利用したことは、少し、胸に来たがな。
——これだけ離れたら、契約の打ち切りを拒むことはできない。
「テイム、解除」
俺は、あいつらとの繋がりを完全に断ち切る。
これでもう、俺が死んだときにあいつらが道ずれになることはない。
……良かった、これで、心置きなく死ねる。
「悪いな、ずいぶんと、長く待たせてしまった」
俺は目の前の悪魔に向き直す。
「……にん、げん」
……あいつらを見送る間、こいつが攻撃をしてこなかったのはなぜだろうか。
高位の悪魔は、優れた知恵を持つと聞く。
またそれ故に傲慢だとも。
遊んでいるって、ことか。
「ころさ、ないと」
「物騒だな。
せっかくの可愛い顔が台無しだ」
悪魔が俺に腕を向ける。
途端、感じたのは膨大な魔力。
……黒魔術か。
分かる。
俺はこれから死ぬ。
こいつの手から放たれる魔力によって、魂ごと焼き払われて、消滅する。
もし、こいつから逃げることができても。
結局俺は死ぬ。
パトモンたちを失ったテイマーは無力だ。
一晩もせずに、そこら辺のモンスターに身体を食われて死ぬ。
——だが、諦めるのは、性に合わない。
あいつらに、胸を張れないしな。
「……ただでは死なねえよ」
どんだけ泥臭くても、精一杯足掻いてやるのが——俺、ルード・リーフリアの生き方だ。
チャンスは一回。
それも、運だよりの、分の悪すぎる賭けだ。
成功率は限りなく0に近い。
だか、やらなければ、生存はないのだ。
「——テイム魔法」
その言葉を発した瞬間。
俺の手から、球状の魔力が放出される。
「これが、俺の隠し玉だ。
せめて、時間稼ぎくらいにはなってくれよ」
——目の前の悪魔が、玉に包まれ、姿が見えなくなる。
テイム開始の合図だ。
無論、仲間にはなるわけない。
しかし、少なくとも玉に入ってる時間は、身動きは取れないはずだ。
「——行くぞっ」
目指すは奴が入ってきた出口。
玉に入っているところを横から抜けるのだ。
玉は最高四回、音を立てて揺れることがある。
それがテイムの経過を示す合図だ。
そして、揺れる回数は——運だけで決まる。
「——うおおおおおおぉっ!!
頼むっ! 揺れてくれえっ!」
俺はひたすらに走る。
走りながらも、耳を向け続ける。
一回目、音が聞こえた。
——よしっ、まず、一回。
ピコ、という高い音が、洞窟中に反響する。
運が良い。
これほどまでの相手なら、一回も揺れないのが普通なのに。
だが、まだ出口までは半分も行っていない。
辿り着くには、あと二回は必要だ。
そう思ったとき。
二回目、音が聞こえた。
——まじか。
逃亡が現実味を帯びる。
だが、揺れは数を増すほどに、次の揺れの確率は下がる。
だから、勝負は、次だ。
そして、出口まで三分の一を切ったとき。
三回目、音が聞こえた。
——ついた。
同時、俺は出口に辿り着く。
暗い夜空が俺を迎え、何かの唸り声が耳をつんざいていた。
……ここで止まらなかったら、逃げ切れる。
もちろん、外は魔物だらけだが、でも一時的に命を繋ぐことはできる。
だけど、どうするんだ。
結局、ここで逃げたところで、俺は、死ぬんじゃないのか。
——だったら。
俺は足を止める。
そして、振り返った。
そこには、玉に包まれた悪魔がいる。
三回目の揺れを終え、最後の抽選に入った、奴の姿が。
あと、一回だ。
あと一回だけ揺れたら、全て覆る。
確率は今までで一番低い。
三回揺れて、最後で出てくるなんて、今までごまんと経験したことがある。
だが。
俺のテイマーとしての性分が、言っている。
ここで、結果を見届けて死ぬならば、本望だと。
「……頼む、頼む、頼む」
もう、俺に逃げようという気持ちはなかった。
——ピコン。
テイム完了:リリスティア・インフェルノ
・ニックネームをつけてください
「——わたしの、あるじ?」