俺を馬鹿にしてくる女全員の好感度が100%なのだが――よし、下げてみよう   作:冷凍シャケ

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第2話 作戦・蛙化現象

俺の名前は、須加零也。

 

現在の目標は――。

 

【橘朱里 好感度:100%】

 

この数字を。

 

【0%】

 

にすることである。

 

      ◇

 

「最悪」

 

朝。

 

教室に入った瞬間、橘朱里が俺の顔を見てそう言った。

 

「おはよう」

 

「朝から話しかけないで。今日一日の運気が下がりそう」

 

「まだ何もしてないだろ」

 

「存在してる」

 

「存在罪?」

 

「自覚あるなら反省して」

 

【好感度:100%】

 

「…………」

 

「何よ、その顔。キモい」

 

やはり意味が分からない。

 

どう聞いても嫌われている。

 

好感度が見えなければ、俺はこいつに親の仇くらい嫌われていると思っていただろう。

 

「何ジロジロ見てんのよ」

 

「いや」

 

「キモ」

 

俺は今日、こいつを徹底的に分析する。

 

何をされれば嫌なのか。

何を言われれば腹が立つのか。

 

そして。

 

確実に。

 

好感度を――。

 

「ゼロにする」

 

「は?」

 

「なんでもない」

 

「朝から独り言までキモい……」

 

まずは実験だ。

 

    

 

――昨夜――

 

 

 

俺は自室でスマホを握っていた。

 

『好きな人 急に冷める 行動』

 

検索。

 

「…………」

 

画面をスクロールしていく。

 

そして、一つの言葉が目に入った。

 

『蛙化現象』

 

「蛙化現象……」

 

好きだった相手への気持ちが、何らかのきっかけによって急激に冷めてしまう現象。

 

「なるほど」

 

――俺はスマホを置いた。

 

――理解した。

 

 

 

 

 

 

 

【――蛙になればいいのか――】

 

   

 

 

 

――翌朝――

 

ガラッ。

 

教室の扉が開く。

 

「…………」

 

橘が顔を上げた。

 

「…………」

 

俺は無言で教室へ入った。

 

蛙の格好で。

 

「…………」

 

全身緑。

 

頭には巨大な蛙の目。

手には水かき。

足にも水かき。

背中には、意味もなく丸い斑点までついている。

 

「…………」

 

教室が静まり返った。

 

だが、俺は気にしない。

 

目的は橘だ。

 

俺は無言のまま、橘の机の前まで歩く。

 

「…………」

 

「…………」

 

そして。

 

――見つめてみた。

 

「…………」

 

「…………何?」

 

「…………」

 

「ちょっと」

 

「…………」

 

「何なの?」

 

俺は一切答えない。

 

徹底的に無視する。

 

蛙。

 

プラス。

 

無視。

 

二つ同時なら、効果も二倍。

 

――完璧だ。

 

「いや、なんで蛙!?」

 

「…………」

 

「朝から何してんのよ!?」

 

「…………」

 

「喋れ!!」

 

「…………」

 

いいぞ。

 

かなり嫌がっている。

 

「その格好で黙って見てくるの怖いんだけど!」

 

「…………」

 

「何か言いなさいよ!」

 

「…………」

 

「鳴くとか!」

 

「…………」

 

「やっぱ鳴かなくていい!!」

 

忙しい奴だ。

 

俺は数字を見る。

 

【好感度:108%】

 

「…………」

 

上がっている。

 

「何よ、その目」

 

「…………」

 

「だから何か言え!」

 

「…………」

 

まだだ。

 

ここで喋れば無視作戦が崩れる。

 

よし。

 

もっと見つめよう。

 

じーー。

 

「見るな!」

 

じーー。

 

「見るなって言ってるでしょ!腹立つぅぅぅぅぅ!!」

 

その時だった。

 

「…………」

 

橘の動きが止まった。

 

「…………は?」

 

視線が、俺の横へ移動する。

 

「…………」

 

そこに、一匹。

 

蛙が増えていた。

 

「…………」

 

俺。

 

蛙。

 

隣。

 

蛙。

 

「…………」

 

「…………」

 

二人並んで。

 

じーー。

 

「…………ちょっと待って」

 

「…………」

 

「…………」

 

「なんで校長まで蛙なのよ!!」

 

校長だった。

 

【校長 好感度:100%】

 

「…………」

 

「…………」

 

俺と校長は、無言で。

 

じーー。

 

「なんなのこの状況ぉぉぉぉぉぉ!!」

 

橘の絶叫が教室に響く。

 

その直後。

 

「…………」

 

さらに、俺たちの後ろに一人。

 

担任が立っていた。

 

「…………」

 

俺。

 

蛙。

 

校長。

 

蛙。

 

担任。

 

真顔。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

三人で無言。

 

数秒後。

 

担任が俺の襟首を掴んだ。

 

続いて、もう片方の手で校長の襟首も掴んだ。

 

「…………」

 

「…………」

 

ズルズルズルズル。

 

俺と校長が引きずられていく。

 

「…………」

 

「…………」

 

抵抗はしない。

 

無視作戦中だからだ。

 

「いや何か言えよ!!」

 

橘のツッコミだけが、廊下まで響いた。

 

      ◇

 

二限。

 

生物室。

 

「私、カエルの解剖ってあんまり好きじゃないのよね」

 

橘が露骨に嫌そうな顔をした。

 

「朱里でも苦手なものあるんだ」

 

「苦手じゃないわよ」

 

「じゃあ好き?」

 

「好きでもない」

 

「怖いんだ」

 

「違う!」

 

同じ班の女子に弄られ、橘が眉を吊り上げる。

 

「ただ、ああいうのって……ちょっと気持ち悪いじゃない」

 

「つまり怖い」

 

「違うって言ってるでしょ!」

 

その時。

 

ガラガラガラガラ――。

 

教室の後ろから、何かが運ばれてきた。

 

「?」

 

「諸君!」

 

白衣の男が高らかに声を上げる。

 

生物教師。

 

通称。

 

マッドサイエンティスト。

 

本人だけは、その呼び名を気に入っている。

 

「本日の授業は予定を変更する!」

 

「また?」

 

「今朝、極めて貴重な生物を二匹捕獲した!」

 

「二匹?」

 

「そう!」

 

眼鏡の奥で、目が輝く。

 

「全長およそ百七十センチ! 直立歩行可能! そして何より――」

 

バンッ!

 

「一言も鳴かない!!」

 

「それカエルなの?」

 

「間違いない!!」

 

「根拠そこ?」

 

ガラガラガラガラ。

 

解剖台が、橘たちの班の前で止まった。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

そこには、俺がいた。

 

蛙の格好で。

 

仰向け。

 

両手両足。

 

完全固定。

 

「…………」

 

橘と目が合う。

 

「…………」

 

「…………」

 

数秒。

 

「……なにしてんの……」

 

「…………」

 

「なんで解剖台にいるのよ」

 

「…………」

 

「須加」

 

「…………」

 

「喋れ」

 

「…………」

 

「今は喋れ!!」

 

俺は黙った。

 

無視作戦中だからだ。

 

ここで喋れば、すべてが無駄になる。

 

「やはり鳴かない!」

 

生物教師が歓喜する。

 

「これは新種だ!」

 

「…………」

 

違う。

 

「人間と酷似した外見!」

 

「…………」

 

人間だからな。

 

「極めて高い知能を持っている可能性がある!」

 

「…………」

 

だから人間だ。

 

「では早速、中を確認してみよう!」

 

「…………!」

 

カチャ。

 

銀色の器具が、解剖台の横に並べられた。

 

「…………」

 

俺は橘を見る。

 

「…………」

 

「何よ」

 

じーー。

 

「…………」

 

じーー。

 

「まさか」

 

橘が眉をひそめる。

 

「助けろって言ってる?」

 

コクコクコクコクコク!!

 

「そこは喋れよ!!」

 

しかし、命には代えられない。

 

コクコクコクコク!!

 

「はぁ……」

 

橘がため息を吐いた。

 

「ほんっと、しょうがないわね……」

 

解剖台へ近づく。

 

「今回だけだから」

 

俺の右手の固定具に触れる。

 

カチッ。

 

一つ外れた。

 

橘。

 

なんだ。

 

意外といい奴――

 

「勘違いしないで」

 

「…………」

 

「目の前でアンタが解剖されたら、夢見が悪いだけだから」

 

やっぱり違った。

 

カチッ。

 

左手も外れる。

 

その時。

 

隣の班から、小さな声が聞こえた。

 

「そこは、私のおたまじゃくしだよ?」

 

「…………」

 

俺の動きが止まった。

 

橘の動きも止まった。

 

声量が小さかったため、聞こえたのは俺たちと、隣の班にいた女子数人だけ。

 

「…………」

 

「…………」

 

恐る恐る、隣を見る。

 

そこには、もう一匹。

 

巨大な蛙。

 

解剖台に縛りつけられた。

 

校長だった。

 

「…………」

 

女子生徒たちが、無言で校長を見る。

 

「…………」

 

校長。

 

笑顔。

 

「…………」

 

女子生徒。

 

真顔。

 

「…………」

 

橘が静かに口を開いた。

 

「あっちはもう解剖していいから」

 

「橘君!?」

 

隣の女子が頷く。

 

「了解」

 

「待ちたまえ!」

 

「先生、こっちからでいいですか?」

 

「もちろんだ!」

 

「教師ぃぃぃぃ!?」

 

カチャ。

 

女子生徒が器具を手に取る。

 

「いや待って! 今のは違う! 言葉の綾というものが――!」

 

キラッ。

 

「ちょっ!?」

 

「校長先生」

 

「な、何かな!?」

 

「動かないでください」

 

「ぎゃああああああああああああああああ!!」

 

校長の断末魔が、生物室に響き渡った。

 

「…………」

 

俺は聞かなかったことにした。

 

カチッ。

 

最後の固定具が外れる。

 

「ほら!」

 

橘が小声で言う。

 

「今のうちに逃げなさい!」

 

俺は勢いよく起き上がった。

 

「おおっ!?」

 

生物教師の目が輝く。

 

「自力で拘束を解除したぞ!!」

 

「…………!」

 

「素晴らしい! やはり高い知能が――!」

 

俺は解剖台から飛び降りた。

 

ダッ!

 

「あっ!」

 

生物室の扉へ走る。

 

「待て!」

 

ガラッ!

 

廊下へ飛び出した。

 

「待てえええええ! 貴重な標本一号ぉぉぉぉ!!」

 

背後から叫び声。

 

俺は、ついに無言を解除した。

 

「誰が標本だあああああ!!」

 

全力疾走。

 

廊下を駆け抜ける。

 

「捕まえろぉぉぉぉ!!」

 

「嫌だああああ!!」

 

なんで俺は、学校の教師から命懸けで逃げているんだ。

 

その時。

 

「!」

 

廊下の先。

 

一人の女子生徒が歩いていた。

 

氷室玲奈。

 

「…………」

 

俺は走りながら考えた。

 

これは、チャンスだ。

 

どうせなら、蛙化現象が橘以外にも通用するのか。

 

確かめられる。

 

「氷室!」

 

呼びかける。

 

その瞬間。

 

ズルッ。

 

「え」

 

水かきが床を滑った。

 

ズザアアアアアアッ!!

 

「ぐおっ!?」

 

盛大に転ぶ。

 

スポンッ!

 

衝撃で、蛙の頭が外れた。

 

さらに。

 

ズボッ!

 

着ぐるみのズボンまで脱げた。

 

「ぐっ……!」

 

顔を床に打ったせいで、目が開けられない。

 

背後から。

 

「待てえええええ!!」

 

マッドサイエンティストの声。

 

「まずい!」

 

時間がない。

 

俺は目を閉じたまま、床に転がった緑色の物体へ手を伸ばす。

 

「こっちか!」

 

掴む。

 

頭に被る。

 

スポッ!

 

「よし!」

 

何を被ったのか確認している暇はない。

 

俺は目を閉じたまま立ち上がり、とりあえず前へ走った。

 

タッタッタッタッタッ!!

 

「氷室!」

 

前を歩いていた氷室が、足音に気づいた。

 

「…………?」

 

振り返る。

 

「…………」

 

そして。

 

固まった。

 

「…………」

 

廊下の向こうから。

 

何かが。

 

全力疾走で迫っていた。

 

首から上に。

 

頭がない。

 

代わりに。

 

二本の巨大な蛙の足が、生えている。

 

走るたびに。

 

ぶらん。

 

ぶらん。

 

「氷室ぉぉぉぉぉ!!」

 

「…………」

 

喋った。

 

「待ってくれえええええ!!」

 

「…………」

 

しかも。

 

自分の名前を知っている。

 

「俺だあああああ!!」

 

「…………っ」

 

氷室の顔が、見る見る青ざめていく。

 

「氷室!」

 

「いやあああああああああああああああああああ!!」

 

絶叫。

 

普段。

 

無口。

 

無表情。

 

冷静沈着。

 

そんな氷室玲奈が、学校中に響くほどの声で叫んだ。

 

そして。

 

白目を剥いた。

 

バタッ。

 

「氷室!?」

 

倒れた音を聞いて、俺は慌てて目を開けた。

 

「…………?」

 

真っ暗だった。

 

何も見えない。

 

「…………」

 

おかしい。

 

さっきまで被っていた蛙の頭なら、ちゃんと目の部分から前が見えるはずだ。

 

「なんで?」

 

俺は走りながら、自分の頭に手を当てる。

 

ぷに。

 

「…………」

 

何か柔らかい。

 

もう一度触る。

 

ぷに。

 

そのまま手を上へ滑らせる。

 

「…………」

 

水かき。

 

「…………」

 

俺が頭に被ったのは、蛙の頭ではなかった。

 

蛙のズボンだった。

 

「…………」

 

つまり。

 

今の俺は。

 

頭から二本の蛙足を生やした。

 

謎の生命体だった。

 

「…………」

 

その時。

 

背後から、猛烈な足音。

 

「見つけたぞおおおおおおお!!」

 

「!」

 

「標本一号ぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「ぎゃああああああああああああああああ!!」

 

【――第1作戦――失敗――】

 

 

 

 

 

――放課後――

 

「結局、何も分からなかった……」

 

俺は教室で一人、今日の結果を振り返っていた。

 

蛙化現象――失敗。

 

橘の好感度――むしろ上昇。

 

氷室――気絶。

 

 

 

 

 

校長――消息不明。

 

「成果ゼロだな……」

 

「何ブツブツ言ってんのよ」

 

「お前には関係ない」

 

「じゃあ喋らないで」

 

「お前から話しかけただろ」

 

「うるさい」

 

橘は教卓の上に置かれていた大量のプリントを抱えた。

 

「それ職員室?」

 

「そう」

 

「結構あるな」

 

「見れば分かるでしょ」

 

「手伝おうか?」

 

「いらない」

 

「そうか」

 

橘が歩き出す。

 

その瞬間。

 

「あっ」

 

ガッ。

 

足が机の脚に引っかかった。

 

「…………」

 

「…………」

 

バサバサバサバサッ!

 

大量のプリントが、床一面に散った。

 

「…………」

 

「…………」

 

静寂。

 

橘がゆっくり俺を見る。

 

「見るな」

 

「見てない」

 

「見てる!」

 

「派手だったな」

 

「うるさい!」

 

橘が慌ててしゃがむ。

 

「…………」

 

俺もしゃがんだ。

 

目の前の一枚を拾う。

 

「ぷっ」

 

「笑った!?」

 

「笑ってない」

 

「今絶対笑った!」

 

「ちょっと面白かった」

 

「死ね!」

 

一枚。

 

二枚。

 

プリントを拾っていく。

 

「……いい」

 

「何が?」

 

「私が落としたんだから、自分で拾う」

 

「二人の方が早いだろ」

 

「いいって言ってるでしょ」

 

「なんで?」

 

「いいから」

 

声が変わった。

 

いつもの悪態とは違う。

 

本気で嫌そうだった。

 

「そういうの、ほんと嫌い」

 

「そういうの?」

 

「勝手に助けて、いい人ぶるやつ」

 

「…………」

 

その瞬間。

 

【好感度:108%】

 

 ↓

 

【93%】

 

「…………」

 

数字が動いた。

 

【76%】

 

「お」

 

「何よ」

 

【58%】

 

「きた」

 

「何が?」

 

【43%】

 

「きた……!」

 

「だから何がよ!」

 

「下がったあああああああ!!」

 

「うるっさい!!」

 

「よっしゃあああああああ!!」

 

「何なのよアンタ!?」

 

108%。

 

それが。

 

43%。

 

一気に落ちた。

 

俺は拳を握る。

 

「見つけた……」

 

「は?」

 

「お前の弱点」

 

「意味分かんない」

 

「親切だ」

 

「は?」

 

「親切にすれば嫌われる!」

 

「何言ってんの!?」

 

ついに、攻略法を見つけた。

 

蛙になる必要もない。

 

解剖台に縛られる必要もない。

 

氷室を気絶させる必要もない。

 

普通に親切にすればいい。

 

「こんな簡単だったのか……」

 

「何がよ」

 

「今までの苦労は一体……」

 

「こっちの台詞なんだけど!?」

 

その時、橘が俺の手からプリントを奪った。

 

「……ほんっと最悪」

 

「?」

 

「あんたに助けられるなんて」

 

吐き捨てるように言う。

 

「最悪……」

 

かなり本気だった。

 

だから、俺も咄嗟に言い返した。

 

「別に助けてねぇよ」

 

「……は?」

 

「お前が盛大にドジったのが面白かっただけ」

 

「はぁ!?」

 

「それに」

 

最後の一枚を拾う。

 

「お前が一人でチンタラ拾ってたら、見てるこっちがイライラするだろ」

 

「…………」

 

「恩売ったつもりもないよ」

 

プリントを差し出す。

 

「ほら」

 

「…………」

 

橘が受け取る。

 

「悔しいんなら、次から落とさないようにするんだな」

 

「…………」

 

「何だよ」

 

「……別に」

 

橘は顔を逸らした。

 

「先帰って」

 

「はいはい」

 

「二度と話しかけないで」

 

「それは助かる」

 

「死ね!」

 

俺は上機嫌で教室を出た。

 

好感度43%。

 

ゼロまで。

 

あと少し。

 

「…………」

 

ようやく。

 

光が見えてきた。

 

――翌朝――

 

俺は昨日の成功を思い返しながら学校へ向かった。

 

「親切か……」

 

攻略法は分かった。

 

あとは簡単だ。

 

橘にひたすら親切にする。

 

荷物を持つ。

扉を開ける。

椅子を引く。

消しゴムが落ちたら拾う。

 

何なら靴くらい磨いてやってもいい。

 

「今日中にゼロもあるな」

 

完璧だ。

 

教室へ入る。

 

「おはよう」

 

「…………」

 

橘がこちらを見た。

 

「何よ」

 

「いや」

 

まずは数字を確認する。

 

【好感度:120%】

 

「…………」

 

目を擦る。

 

【好感度:120%】

 

「…………」

 

昨日。

 

43%。

 

今日。

 

120%。

 

「…………」

 

「何よ、その顔」

 

「…………」

 

「朝からキモいんだけど」

 

「なんでだああああああああああああああ!!」

 

「朝からうるさい!!」

 

俺の攻略法は。

 

一晩で。

 

崩壊した。

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