俺を馬鹿にしてくる女全員の好感度が100%なのだが――よし、下げてみよう 作:冷凍シャケ
次の攻略対象。
氷室玲奈。
俺と同じクラス。成績優秀。物静かで、普段はほとんど俺に関わってこない。
教室で俺が騒ぎを起こしても、一度、冷たい目で見るだけ。
橘みたいに止めに来ない。
姫川みたいに面白がって寄ってもこない。
ただし。
図書室では別だった。
氷室は図書委員をしている。
そして、俺が図書室を使おうとすると。
「須加」
「何?」
「出ていきなさい」
「入ったばっかなんだけど」
「関係ないから。さっさと出て」
「何で?」
氷室が本から目を上げた。
表情は変わらない。
「いい加減にしてくれない?」
「何が?」
「授業中は寝てる。テストの点数は最低水準。学校では問題ばかり起こす。その度に教師や周囲を巻き込んで、それでも本人は反省した様子もない」
「結構見てるな、俺のこと」
「見たくなくても目に入るの。同じ教室に居たらそのくらい分かるでしょ」
冷たい。
「図書室は、あなたみたいな人が暇潰しに騒ぎに来る場所じゃない」
「今日は静かにするぞ」
「信用できない」
「即答?」
「今までの自分の行動を思い返してから文句を言いなさい」
「…………」
「それに」
氷室の目が、俺をまっすぐ捉える。
「あなたが当然のような顔でここに居座ると、ここがそういう人間まで好き勝手していい場所だと勘違いされかねないから」
「俺、図書室の治安を一人で破壊してる?」
「自覚がないなら、なおさら悪質ね」
「…………」
怖いな。
普通に。
【好感度:100%】
「…………」
これで、100%。
意味が分からない。
「氷室」
「何?」
「俺のこと嫌い?」
「…………」
氷室の眉が、わずかに寄った。
「いちいち言葉にしないと分からない?」
「確認したい」
「なら教えてあげる」
本を閉じる。
「嫌いよ」
即答。
【好感度:100%】
「…………」
「授業中に寝るところも。何か起こす度に『仕方なかった』みたいな顔をするところも。周囲が迷惑しているのに平然としているところも」
「待って。増えてない?」
「聞いたのはあなたでしょう」
「そうだけど」
「それとも」
氷室が少し目を細めた。
「自分から聞いておいて、都合の悪い答えは聞きたくない?」
「…………」
「そういうところも大嫌い」
「追加された」
「まだ続ける?」
「いや」
「なら」
本を開く。
「くだらないことを聞いてこないで。私はあなたと違って暇じゃないの」
「分かったらさっさと出ていって」
終了。
「…………」
絶対嫌われてるだろ。
なのに。
【好感度:100%】
一ミリも下がっていない。
橘もそうだった。
姫川もそうだった。
なら、氷室の100%にも、俺には分からない何かがある。
まあいい。
こいつを0%にする。
そして、堂々と図書室を使う。
◇
昼休み。
「氷室って静かだよな」
近くで男子二人が話していた。
「騒がしい奴とか絶対嫌いだろ」
「マシンガントークする奴とか、一番無理そうじゃね?」
「…………」
俺は氷室を見る。
今日も一人で本を読んでいる。
マシンガントーク。
「……それだ」
◇
放課後。
図書室で、氷室が本を読んでいた。
コツ、コツ。
足音。
顔を上げる。
「…………」
俺を見る。
一度、本へ戻る。
そして、もう一度見る。
「…………何、その格好」
全身黒。
黒いシャツ。
黒いズボン。
黒い帽子。
サングラス。
右手には、黒いアタッシュケース。
俺は答えない。
向かいへ座り、ゴトッとケースを置く。
右。
左。
誰も見ていない。
身を乗り出す。
「……おい」
「何?」
声を潜める。
「例のブツだ」
「ハァ……また騒ぎを起こす気? 学習しないわね」
「静かにしろ! ヒソヒソ!」
「あなたの方がうるさい」
「誰かに聞かれる! ヒソヒソ!」
「…………」
氷室が、本当に嫌そうな顔をした。
「それ、面白いと思ってやってるの?」
「何が?」
「もういいわ」
「待て待て」
ケースを押す。
「受け取れ」
「いらない」
「まだ中身見てないだろ」
「あなたが持ってきた時点で見る価値がない」
「いい物だぞ」
「あなたの価値基準で言われても何の参考にもならない」
「一回だけ」
「嫌」
「先っちょだけでいいから」
「…………」
氷室の動きが止まった。
「須加」
「何?」
「今の言い方」
「うん?」
「もう一度したら、そのサングラスを顔に埋め込む」
「なんで意味分かるんだよ……」
「あなたが知ってることを私が知らないはずないでしょ」
「ハハーン! さてはムッツリ――」
「死にたいの?」
「怖っ」
「冗談に聞こえた?」
「…………」
氷室が本を閉じる。
「帰る」
「待て!」
立ち上がる。
「まだマシンガントークしてないだろ!」
氷室の足が止まった。
「…………何?」
「だから」
俺も立つ。
「俺とマシンガントークしようぜ!」
「…………」
ゆっくり振り返る。
「須加」
「何?」
「確認するけど」
「おう」
「あなた、マシンガントークの意味分かってる?」
「当然だ」
「なら説明して」
「マシンガンを使った会話」
「…………」
「…………」
「本気で言ってる?」
「俺が本気じゃないとでも?」
「…………」
氷室は目を閉じた。
一秒。
二秒。
「…………頭痛くなってきた」
「大丈夫か?」
「あなたのせい」
「薬いる?」
「原因が話しかけないで」
歩き出す。
「氷室!」
「ついてこないで」
「まだ話終わってない!」
「私の中では終わった」
「始まったばっかだぞ!」
「私は始めることに同意してない」
「氷室!」
俺は氷室を追いかけ、そのまま二人で図書室を出る。
そして。
机の上。
黒いアタッシュケースが、ぽつん。
完全に忘れていた。
◇
数分後。
受付のおばさん。
「あら?」
ケースを見る。
「忘れ物かしら」
持ち上げる。
「重いわねぇ」
机へ置き、カチッ。
「…………」
中。
真っ黒なサブマシンガン。
「…………え?」
恐る恐る触る。
むに。
「…………」
もう一度。
むにむに。
「何よ」
持ち上げる。
軽い。
柔らかい。
「水鉄砲じゃないの」
黒く塗装されているだけ。
近くで見れば、ただの玩具。
そう。
近くで見れば。
本棚の向こう。
男子生徒。
「…………」
おばさん。
黒いサブマシンガン。
「…………」
顔が青ざめる。
おばさんが気づく。
「あ、ちょっと」
銃を持ったまま近づく。
「これ、さっきの子に渡して――」
「ひいいいいいいいい!!」
「え!?」
男子、逃走。
「銃うううううう!!」
「違うのよ!」
おばさんも追う。
サブマシンガンを持ったまま。
「待ちなさい!」
「撃たれるううううう!!」
「水鉄砲なのよおおおお!!」
静かな図書室は。
終わった。
◇
そんなことなど知らず。
俺は氷室の横を歩いていた。
「…………」
氷室が速くなる。
俺も速くなる。
「…………」
さらに速い。
俺もさらに速い。
突然、止まった。
「須加」
「何?」
「何度言えば理解するの?」
「何を?」
「ついてこないで」
「まだ作戦が終わってない」
「私はあなたの作戦に付き合うなんて一言も言ってない」
「でも」
一歩近づく。
氷室が下がる。
「止まって」
「何で?」
「止まれと言ってるの」
さらに一歩。
氷室の目つきが変わった。
「須加」
「はい」
「あと一歩近づいたら」
静かに。
「蹴る」
「警告してくれるんだ」
「後で被害者面されたくないから」
「親切だな」
「その解釈ができる頭が怖い」
【好感度:100%】
「…………」
下がらない。
というか。
「氷室」
「何?」
「顔赤くない?」
「…………」
一瞬、固まった。
「赤くない」
「赤いぞ」
「黙りなさい」
「耳も」
「須加」
声が一段低くなる。
「それ以上言ったら本気で蹴る」
「梅干しみ――」
「須加」
「やめます」
怖い。
その時。
「見つけたわよおおおおおお!!」
「?」
二人で振り返る。
廊下の向こう。
図書館のおばさん。
全力疾走。
両手には、黒いサブマシンガン。
「落とし物よおおおおおお!!」
「…………」
「…………」
遠目では、完全に本物。
氷室の顔が強張る。
「……何、あれ」
「銃」
「見れば……分かるわよ……そのくらい……!」
珍しく声が大きくなった。
「待ちなさああああああい!!」
銃口。
こっち。
氷室の顔から、一気に血の気が引く。
「きゃああああああああ!!」
バタン。
「氷室!?」
気絶。
「またかよおおおおお!!」
後ろ。
「待ってええええええ!!」
「くそ!」
俺は氷室を抱き上げ、走る。
「待ちなさあああああい!!」
「無理だああああああ!!」
◇
その頃。
姫川莉愛は廊下を歩いていた。
考えていたのは、須加のこと。
この前、勝手に自分を調べた。
勝手に人へ聞き回った。
勝手に写真の誤解まで解いた。
嫌だった。
今でも、嫌だったと思っている。
でも。
噂が消えたのも、あいつが動いたからだった。
何人にも聞いて、あちこち走って。
そこまでして、自分のために。
「…………」
だからって、許したわけじゃない。
でも。
ただ嫌だった。
それだけで終われるほど、単純でもなかった。
「……須加」
ぽつり。
「マジで……何なん」
その時。
「うわあああああああ!!」
「!?」
向こうから、須加。
猛ダッシュ。
「…………は?」
黒服。
サングラス。
腕には氷室。
後ろには。
「待ちなさああああああ!!」
サブマシンガンおばさん。
「はあああああああ!?」
姫川も走った。
「須加!!」
「姫川!?」
「何これ!?」
「知らん!!」
「なんで銃持った人に追われてんの!?」
「急に来たんだよ! 俺は無実だっ!」
「怖っ!!」
並走。
「てか黒服何!?」
「作戦だ!」
「いつ着替えたん!?」
「昼休み!」
「何の作戦!?」
「マシンガントーク!」
「意味分かんねーし!! 何その作戦!?」
腕を見る。
「てか、なんで玲奈抱えてんの!?」
「気絶した!」
「また!?」
「まただ!」
「今度は何したんだよ!」
「今回は俺じゃない!」
「『今回は』ってなんだよ!! やっぱいつも須加のせいなのかよ!」
後ろ。
「待ちなさあああああ!!」
速い。
めちゃくちゃ速い。
「須加! 先生呼べって!」
「誰を!?」
「校長とか!」
「無理だ!」
「なんで!?」
「消息不明だ!」
「は!?」
「この前、生物教師に持っていかれてから見てねぇ!」
「それガチの消息不明じゃん! なんで誰もその事触れないんだよ!!」
「教頭もいない!」
「学校終わってんじゃん!!」
「俺に言うな!!」
「じゃあどうすんのこの状況!!」
距離が縮まる。
「…………」
仕方ない。
「あのマシンガンババア止めるにはこれしかねぇ!」
「何!?」
「俺の切り札!」
「嫌な予感しかしないんだけど!?」
息を吸う。
「召喚!!」
「は!?」
「来い!!」
「ネコおじさああああああああん!!」
一秒。
二秒。
三秒。
「…………」
姫川。
「来ないじゃん!」
その時。
後ろ。
「きゃあああああああ!!」
生徒たちが次々と道を開ける。
その中心。
四足歩行。
猫耳。
レオタード。
魔法のステッキ。
「ニャアアアアアアアア!!」
爆走。
「来た!」
「ホントに来るのかよ!!」
ネコおじさん、猛追。
「てか何であの変態学校にいんの!?」
「飼ってる」
「誰が!?」
「生物教師」
「人間だろ!?」
「元いた場所に返す途中で生物教師に会ったんだよ」
「最悪の組み合わせじゃん!」
「気に入ったらしい」
「だろうな!」
「今は鶏小屋で飼ってる」
「警察呼べよ!!」
「本人楽しそうだぞ」
「そこじゃねーし!!」
ネコおじさんが俺たちを追い越す。
そのまま、おばさんの前へ。
四つん這い。
「ニャアアアアア……!!」
「きゃあああああ!!」
おばさんが反射的に銃を向ける。
バシュッ!!
「!」
俺は目を閉じた。
「…………」
何も起きない。
開ける。
ネコおじさん。
無傷。
「…………」
俺は息を吐く。
「不発か……」
「今、水出たよね!?」
「玉詰まりだろ」
「水だっつーの!!」
「今だ!」
氷室を床へ下ろす。
姫川。
腰のポーチ。
「姫川」
「何!?」
「借りる!」
「は!?」
奪う。
「ちょっ、須加!!」
投げる。
「ネコおじさん!!」
「ニャ!?」
「JKの私物だ!!」
目を見開く。
「取れたら!」
姫川を指差す。
「持ち主のJKからの罵倒が貰えるぞ!!」
「勝手に約束すんなあああああ!!」
「ニャアアアアアアアアア!!」
突進。
進路。
おばさん。
「え?」
ドゴォォォォン!!
「きゃあああああ!!」
激突。
転倒。
「…………」
額の汗を拭う。
「ふう……」
「ふう、じゃねーし!!」
「これで一安心だ」
カラカラカラ。
黒いサブマシンガンが、俺の足元で止まる。
「…………」
「あれ?」
拾う。
軽い。
銃口が濡れている。
引き金。
バシュッ。
水。
「…………」
「…………」
見覚えがある。
「…………あれ?」
「何?」
「これ」
黒い塗装。
雑な塗りムラ。
「俺が図書室に忘れた水鉄砲じゃね?」
「…………」
姫川。
無表情。
「は?」
「たぶん」
「須加が、持ってきたの!? じゃあ何で逃げてたんだよ!!」
「本物だと思って」
「自分で持ってきたくせに!?」
「遠目じゃ分からんだろ!」
「分かれよ!!」
その時。
「…………」
氷室が目を覚ました。
「……ここ」
「氷室」
ゆっくり起きる。
「大丈夫か?」
「…………」
俺を見る。
姫川を見る。
自分を見る。
「…………須加」
「何?」
「私」
「うん」
「さっきまで、あなたに抱えられてた?」
「そうだけど」
「…………」
無言。
顔が少し赤くなる。
「どうした?」
「触らないで」
「もう触ってないぞ」
「記憶からも消して」
「無茶言うな」
「ならあなたごと消す」
「殺意高くない?」
「誰のせい?」
いつもの氷室だった。
そして、俺の後ろを見る。
「…………」
ネコおじさん。
四つん這い。
「……猫?」
目を細める。
猫耳。
レオタード。
魔法のステッキ。
胸毛。
顔。
「…………」
沈黙。
「須加」
「何?」
「猫……じゃない……」
氷室の顔が引きつる。
ネコおじさんが振り向く。
「ニャア」
「…………」
「きゃあああああああああ!!」
バタン。
「またかよおおおおおお!!」
◇
数十分後。
正座。
俺。
目の前には、腕組みした体育教師。
「須加」
「はい」
「何が悪かった?」
「水鉄砲を黒く塗りました」
「それから?」
「アタッシュケースに入れました」
「それから?」
「図書室に忘れました」
「それから?」
「自分の水鉄砲なのに、本物だと思って逃げました」
「よろしい」
ため息。
「図書館の方に謝ること」
「はい」
「怖がらせた生徒にも」
「はい」
「氷室にも」
「三回も?」
「増やすぞ」
「すみませんでした」
「先生」
「何?」
横。
ネコおじさん。
「ニャア」
「あのおじさん差し上げるんで許してくれません?」
「いらない」
「恋愛対象として」
「もっといらない」
「マッチングアプリより手っ取り早――」
「殺すぞ!!」
その時。
「あらぁ~」
白衣。
生物教師。
「あらあら」
ネコおじさんを見つける。
「こんなところにいたんですかぁ」
「ニャア」
首根っこを掴む。
「勝手に鶏小屋から出ちゃダメですよぉ~」
ズルッ。
「今日は実験のお手伝いの日でしょう?」
「ニャ?」
固まる。
「さあ、行きますよぉ~」
「ニャアアアアアアア!!」
ズルズル。
ネコおじさん。
全然楽しそうじゃなかった。
「…………」
俺は体育教師を見る。
「先生」
「何」
「あっちの方が問題では?」
「今はお前だ」
「はい」
ちなみに。
図書館のおばさんは、最初から最後までただ忘れ物を届けようとしていただけだった。
◇
一方。
橘朱里は、一人で校舎の外を歩いていた。
少し前、図書室で見た。
黒い格好をした須加が、氷室を追って出ていくところ。
「…………」
別に、どうでもいい。
同じクラスなんだから、話すことくらいある。
誰といようが。
誰を追いかけようが。
自分には関係ない。
なのに、図書室に残る気にはなれなかった。
「……何なのよ」
【好感度:8%】
少し前まで。
須加は、ただ気を遣わなくていい相手だった。
嫌なら嫌と言える。
ムカつけばムカつくと言える。
死ねと言えば、変な返事が返ってくる。
あいつの前では、何も考えなくてよかった。
でも最近、少しだけ。
それだけじゃない気がしている。
須加といると、腹が立つ。
呆れる。
疲れる。
なのに。
楽しい。
「…………」
首を振る。
「違う」
好きとか、そういうんじゃない。
一緒にいて楽しいだけ。
「そう」
それだけ。
「そんなんじゃない」
花壇の前を通り過ぎようとした。
その時。
「待ちなさい」
「!」
低い声に、朱里の足が止まる。
「君にとって、本当に彼は、ただ都合がいいだけの存在なのかい?」
「…………」
「私も最近まで気づかなかった。自分の中で、こんなにも校長という存在が大きくなっていたことに」
風。
花が揺れる。
「ただの仕事仲間だと思っていた。毎日顔を合わせ、くだらない話をして、時にはぶつかって」
少し、声が沈む。
「でも、いなくなって気づいた」
「…………」
「話したい」
「…………」
「会いたい」
「…………」
「もう一度、顔が見たい」
朱里の目が、わずかに揺れる。
「人の気持ちというものは」
声の主が小さく笑った。
「案外、自分自身が一番分かっていないものなのかもしれないね」
「…………」
「だから君も」
優しく。
「自分の気持ちに正直になるんだ」
「…………」
朱里はゆっくり、声のする方を見る。
「…………」
「…………」
「……何してんの」
花壇。
パンジー。
花。
花。
その間。
教頭の頭。
「やあ」
「…………教頭先生」
首から下、完全に土。
「なんで埋まってんの……?」
空を見る。
「もうすぐ収穫期だよ」
「何の?」
「私の」
「…………」
「上半身が育つか、下半身が立派に実るか」
爽やかな笑顔。
「五分五分だ」
「…………」
「できれば下の方には、たわわに――」
朱里。
無言。
ポケット。
飴。
一個。
教頭の頭に、ちょこん。
「…………」
「おや」
鼻を動かす。
「甘い匂いだ」
目を閉じる。
「匂いフェチの私にとって、現役JKからの飴も良質な肥料だよ。しばらく幸せな気分でいられそうだ」
「…………」
「ありがたい」
バサッ。
「?」
鳥。
一羽。
飴を見る。
バサッ。
二羽。
五羽。
十羽。
「…………」
教頭が目を開ける。
「橘君」
鳥が一斉に飛ぶ。
「これは――」
バサバサバサバサ!!
「ぎゃああああああああ!!」
襲撃。
「痛い痛い痛い!!」
朱里は歩き出す。
「橘君! 今の発言は撤回する!」
無視。
「飴を!」
歩く。
「せめて飴を取ってくれ!」
歩く。
「頭を重点的に狙われている!!」
「橘くううううううううん!!」
朱里は振り返らなかった。
ただ。
少しだけ笑った。
「……バカみたい」
【好感度:8%】
↓
【好感度:15%】