俺だけレベルアップな件 × 名探偵コナン 【 水篠旬は、米花町へと迷い込む 】   作:冷凍シャケ

20 / 20
第二十話 見えざる脅威と、信じる瞳

 

 

阿笠博士の家は、一見すると平穏を取り戻していた。博士自身も、襲われたショックは残りつつも、身体的にはすっかり回復し、いつものように発明に没頭しようとしていた。だが、あの不可解な事件が残した爪痕は、コナンと灰原の心に深く刻まれていた。

 

コナンは、博士が「刺された」と主張する腹部を改めて調べさせてもらった。もちろん、そこには傷一つない。しかし、何度見ても、その部分の皮膚だけが周囲と比べて不自然なほど滑らかで、新しく再生したかのように見えるのだ。

 

(やっぱりおかしい…。ただの打撲やショックで意識を失っただけなら、こんな風にはならないはずだ。博士は確かに『何か』に攻撃された。そして、その傷は『何か』によって完全に消された…?)

 

彼の脳裏には、一人の男の姿が浮かんでいた。

 

水篠旬。

 

人間離れした身体能力を持ち、気配を消し、そして…あるいは、未知の力で傷を癒すことすら可能なのかもしれない、謎の男。

 

考え込むコナンに、地下のラボから上がってきた灰原が声をかけた。

 

「まだ博士のこと、調べてるの?」

 

「ああ…」

 

コナンは頷く。

 

「どうしても引っかかるんだ。あの『見えない何か』に刺されたって話…それに、水篠さんのことだ」

 

コナンは、灰原に向き直った。

 

彼女は、水篠旬について何かを知っている。それは間違いない。前の会話でも、今回の事件の後でも、彼女の反応は他の誰とも違っていた。

 

「なあ、灰原。博士のことなんだが…やっぱり気になるんだ。あの『見えない何か』ってのは、一体何なんだ?水篠さんが関係してるのか?お前、何か知ってるんじゃないのか?」

 

コナンは、真剣な眼差しで問い詰める。

 

「あいつが敵じゃないってのは、俺だって信じたい。廃工場じゃ、実際に俺のことを助けてくれた。だけど…今度は博士があんな目に遭ったんだ。水篠さんが何か知ってるなら、このまま何も知らないふりなんてできねえよ」

 

灰原は、コナンの視線を受け止め、静かに答えた。

 

「…彼は、敵じゃないわ。それは、前よりもはっきり言える」

 

その声には、以前にはなかった確信のようなものがこもっていた。

 

「なんでだよ!?」

 

コナンの声が大きくなる。

 

「どうしてそんなことが言い切れるんだ!?俺だって、敵じゃないって信じたいさ!助けてもらったことだって分かってる!でも、あの『見えない何か』について、あいつが何か知ってるのは間違いないだろ!」

 

灰原は黙っている。

 

「商業施設の時だってそうだ!急に何かに気づいたみたいに飛び出していって、『今日は帰れ』って、それだけだ!そして、その日の夜には博士が襲われた!」

 

コナンの拳が僅かに握られる。

 

「なのに、何も話さない!あいつは、自分のことを何も明かさないし、やってることも人間離れしてる!博士まで狙われたのに、このまま何も知らないままでいいのかよ!」

 

「…私にも、正直わからないわ」

 

灰原は、少しだけ視線を伏せて言った。

 

「論理的な根拠なんて、何もない。彼が何を考えて、何を目的にしているのかも、本当のところは知らない」

 

「じゃあ、なんで…!」

 

コナンが食い下がる。

 

「…ただ」

 

灰原は再び顔を上げ、コナンの目を真っ直ぐに見つめた。

 

「あの時…彼が私に『敵ではない』と告げた時の目が…少しだけ、あなたに似ていたからよ」

 

「俺に…似てた…?」

 

コナンは、予期せぬ言葉に戸惑った。

 

「ええ」

 

灰原は静かに頷く。

 

「何かを、絶対に護ろうとする時の…あなたの目に。理由は分からない。でも、あの瞳に嘘があるようには、私には思えなかった。だから信じる、というわけではないけれど…少なくとも、彼が私たちを害そうとしているとは思えない。…今はね」

 

彼女は、水篠旬が「モンスター」について語ったことや、「護る」と誓ったことまでは話さなかった。それは、まだ話すべき時ではないと判断したからだ。

 

コナンは、灰原の言葉に反論できなかった。

 

彼女が、論理ではなく、直感と、そして相手の瞳の奥にあるものを見抜こうとして判断したこと。

 

それは、時としてどんな証拠よりも雄弁なことがあるのを、コナン自身も知っていたからだ。

 

(灰原が、あそこまで言うなんて…)

 

彼は思考を巡らせる。

 

水篠旬は敵ではない、のかもしれない。

 

廃工場で自分を助けてくれた時の行動も、博士を(おそらく)救ったであろう行動も、敵意のある者のそれではないだろう。

 

だが、腑に落ちない点は多すぎる。

 

(じゃあ、あの商業施設で、彼が急に飛び出していったのは何だったんだ?あの時も、『見えない何か』を感じていたのか?だとしたら、なぜ僕らに何も言わなかった…?)

 

彼の行動は、常に謎に包まれている。

 

コナンは、もどかしい気持ちを抱えながらも、一つの結論に至りつつあった。

 

水篠旬は、信用できるか分からない。

 

彼の力は未知数で、危険な存在である可能性も否定できない。

 

しかし、少なくとも現時点では、彼を明確な「敵」と断定することはできない。

 

むしろ、彼が対峙しているかもしれない「見えない脅威」に対して、自分たちはあまりにも無力であり、彼の存在が、結果的に自分たちの助けになっている可能性すらあるのだ。

 

(…もっと知る必要がある。彼のこと、そして、彼が関わっている『何か』のことを…)

 

警戒は解かない。

 

だが、アプローチの方法は変えなければならないかもしれない。

 

コナンは、灰原の言葉を胸に刻み、水篠旬という巨大なパズルに、新たな角度から向き合う決意を固めるのだった。

 

そして、彼らがそんな葛藤を抱えている間にも、人知れぬ山奥で開いた『ゲート』は、確実にそのエネルギーを高め、世界に破滅をもたらす瞬間へと、刻一刻と近づいていた。その事実を、まだ誰も知らないまま…。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

ONE PIECE 〜船大工レイン〜(作者:ペンギンって可愛いですよね)(原作:ONE PIECE)

表紙イラスト↓▼【挿絵表示】▼幼少期のレイン(プロフィール)↓▼【挿絵表示】▼ONE PIECEを愛し、世界中の誰よりも考察してきた男は、不運な事故によって命を落とした。▼だが死後、神に気に入られた彼は、望んでいたONE PIECE世界への転生を果たす。▼選んだ時代は、原作開始の40年前。▼「本編までに全部揃えておきたい」▼そう語る男は、悪魔の実すら拒否し、…


総合評価:987/評価:6.6/連載:222話/更新日時:2026年09月21日(月) 21:00 小説情報

白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。(作者:キング・クリムゾン!!)(原作:ONE PIECE)

とんでもなく長い話にする予定なのでどうかよろしくお願いします。


総合評価:668/評価:7/連載:26話/更新日時:2026年09月21日(月) 19:07 小説情報

転生者な元ギャング組織幹部の娘と米花町日常録(作者:アクドニアデフジム)(原作:名探偵コナン)

極々平凡な人生を歩んでいた俺っちは不運なことに土木系の仕事中に起きた事故によって死んでしまったが、気が付いたら橙色の髪をした赤子に転生していた、しかも女子として。▼しかも今世での両親はガチでヤバイ犯罪者であった母親は麻薬売人で、父親はギャング組織の幹部であり、俺っちは思わず親ガチャ失敗案件ではないかと訝しぐ。▼だが、嘆いていも仕方ないので、俺っちはこの血生臭…


総合評価:332/評価:7.78/連載:7話/更新日時:2026年09月19日(土) 08:00 小説情報

死神の息子(作者:ころころさん)(原作:暗殺教室)

伝説の殺し屋【死神】。▼そんな彼には、死神をも上回る殺しの才能を持った息子がいた。


総合評価:523/評価:8.77/連載:6話/更新日時:2026年04月30日(木) 18:30 小説情報

帰還者、玄界の生活を満喫するってよ(作者:ユンケ)(原作:ワールドトリガー)

8年前、近界に拉致された1人の男が帰ってきた。▼帰ってきた男は、元の世界で幼馴染と遊んだり、戦闘狂と戦り合ったり、セレブが作る料理を食べたり、セクハラエリートと風俗に行こうとしたり、ゲーマーおっさんと変なトリガーを開発したりと自由気ままに生きていくのだった。▼彼が織り成す物語が始まっていく。


総合評価:1369/評価:7.91/連載:24話/更新日時:2026年08月16日(日) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>