俺だけレベルアップな件 × 名探偵コナン 【 水篠旬は、米花町へと迷い込む 】   作:冷凍シャケ

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第二十二話 地図と探偵と交わされた『視線』

 

 

ペナルティと、突如として現れ始めたモンスターとの関連を探る――それが水篠旬の当面の最優先事項だった。

 

三度目の失敗が起きた山荘周辺。

 

群馬県境付近の、人が立ち入らないであろう山岳地帯や廃墟。

 

ペナルティが実行された直後から異変が始まった以上、まずはその周辺から調べる価値はある。

 

それらの情報を得るため、彼は都内でも有数の規模を誇る大型書店に足を運んでいた。専門的な地図や郷土資料が豊富に揃っていると聞いたからだ。

 

地図コーナーで、人目を避けながら、該当地域の詳細な地形図や古い記録を熱心に調べていると、不意に背後から声をかけられた。

 

「あれー?シュンさんじゃん!こんな所で会うなんて、またまた奇遇だな!」

 

振り返ると、そこにはボーイッシュな魅力を持つ女子高生探偵、世良真純が立っていた。彼女は洋書コーナーに用があった帰りらしい。

 

「地図なんて見て、どうしたんだ?どこか旅行でも計画中?」

 

世良は人懐っこい笑顔で、しかし探るような視線を隠さずに尋ねてくる。

 

「…いや。少し、興味があってな」

 

旬は地図から目を離さずに短く答える。

 

自分が何を探しているのか、悟られるわけにはいかない。

 

「へぇ、興味ねぇ。シュンさんって、普段何してる人なんだ?仕事とか、学校とか」

 

世良は矢継ぎ早に質問を繰り出す。彼女の探偵としての本能が、目の前の男の巨大な謎を解き明かしたいと囁いているのだ。

 

「…今は、探し物をしている」

 

「探し物?何を?」

 

「個人的なものだ」

 

旬は、いつものように鉄壁のガードで質問をかわしていく。

 

世良は、ちぇっとつまらなそうな顔をしたが、すぐに別の角度から切り込んできた。

 

「そういえばさ、コナン君のこと、どう思う?あの子、どう見てもただの小学生じゃないだろ?シュンさんもそう思わないか?」

 

コナンの名前が出た瞬間、旬の纏う空気がほんの少しだけ変わったのを、世良は見逃さなかった。

 

旬は、少し考えるように視線を宙にさまよわせた後、口を開いた。

 

「…ああ。あの少年は、確かに面白い」

 

その声には、わずかながらも本物の興味の色が窺えた。

 

「歳に似合わぬ頭脳と、妙な度胸を持っている。それに、あの小さな体で、何か大きなものを背負っているようにも見えるな。…底が見えない」

 

先日のコナンとの対峙が、旬の脳裏をよぎる。

 

『君が本当のことを話せないように、俺にも話せないことがある』

 

あの言葉を向けた時の、コナンの反応。

 

やはり。

 

あの少年には何かがある。

 

「だろー!?やっぱりシュンさんもそう思うよな!」

 

世良は、旬がコナンの異常性を認識していることに、我が意を得たりとばかりに頷いた。

 

旬が他人のこと、特にコナンのことについてこれほど話すのは珍しい。

 

世良は、そこにも彼の謎を解くヒントがあるのではないかと感じていた。

 

そこで、世良はさらに踏み込んでみることにした。

 

「そういえばさ」

 

世良が、旬の顔を覗き込む。

 

「最近、コナン君と何かあったのか?」

 

旬の視線が僅かに動く。

 

「あの子、前よりずっとシュンさんのこと気にしてるみたいなんだよな。」

 

探るような目。

 

旬は、それを正面から受け止める。

 

「さあな」

 

短く答えた。

 

「俺は何も知らない」

 

(……今の間)

 

世良は僅かに目を細めた。

 

やはり。

 

何かあった。

 

だが、これ以上問い詰めても無駄だろうということも分かっていた。この男は、自分から話すつもりがなければ、テコでも口を割らないタイプだ。

 

「そっか。まあ、変な事件が多いからな、この街は!シュンさんも気をつけろよ!」

 

世良は、あっさりと話題を変え、明るく笑ってみせた。

 

「…ああ」

 

旬はそれだけ言うと、購入した数点の地図を抱え、足早に書店を後にした。

 

(…あの女子高生探偵も、妙に勘がいい。それに、江戸川コナンとの繋がりも深いようだ)

 

書店を出て歩きながら、旬は考える。

 

彼女もまた、今後の展開の中で、危険な事態に巻き込まれる可能性は十分にある。

 

(…厄介事に首を突っ込みかねないな)

 

世良はコナンと同じく、自分から危険の中へ入っていくタイプだ。

 

旬は、自身の影に意識を向けた。

 

念のため。

 

世良真純に対しても、何か異常が起きた時に察知できる程度の、目立たない監視を付けておくことにする。

 

水篠旬は、モンスターが現れ始めた原因を探る準備を進めながらも、この世界で関わりを持った人々への、自身でも予期しなかった責任感を、少しずつ育て始めていたのかもしれない。

 

そして。

 

彼が地図を広げ、異変の発生源となり得る地域を絞り込もうとしている間にも。

 

彼の知らない場所では。

 

この世界に存在するはずのない何かが。

 

静かに。

 

確実に。

 

動き続けていた。

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