俺だけレベルアップな件 × 名探偵コナン 【 水篠旬は、米花町へと迷い込む 】 作:冷凍シャケ
三度目のクエストは。
これまでとは少し違う場所で始まった。
東都大学。
多くの学生や研究者が行き交う、その広大なキャンパスで。
研究データの盗難事件が発生していた。
盗まれたのは、工学系研究室が進めていた最先端技術に関するデータ。
さらに。
その研究を指揮していた教授が、大学構内で何者かに襲われている。
幸い命に別状はなかったものの。
教授は頭部を殴られ、一時入院。
研究室からは。
重要なデータが保存された記録媒体の一部が消えていた。
警察は。
内部犯。
研究データを狙った産業スパイ。
教授個人への恨み。
複数の可能性を視野に入れて捜査を始めていた。
そして。
そんな事件とは本来何の関係もない男が。
大学の正門前に立っていた。
水篠旬。
「……大学か」
旬がキャンパスを見上げる。
大学という場所そのものが珍しいわけではない。
だが。
この世界へ来てから。
ホテル。
住宅街。
事件現場。
その辺りを歩くことばかりだった。
大学へ足を踏み入れるのは初めてだった。
もちろん。
観光に来たわけではない。
目の前には。
いつもの青白いウィンドウ。
『緊急クエストが発生しました』
【盗まれた研究の真相を追え】
『東都大学内で発生した襲撃・窃盗事件に関与し、その真相解明に貢献してください』
報酬:ランダムボックス×1
失敗条件:
・事件解決前に現場を離脱する。
・真相解明への貢献が認められない。
「またか」
旬は。
もう驚かなかった。
この世界へ来てから。
システムが旬に与えるクエストは。
ほとんどが。
人間の起こした事件に関係するものだ。
モンスター討伐でも。
ダンジョン攻略でもない。
犯罪の真相を。
見つけろ。
それが。
この世界でのシステムのルールらしい。
(今回も赤い光を探せばいい)
前回までで。
大まかな攻略法は理解した。
システムが。
事件解決に重要な物を。
旬にだけ分かるように表示する。
それを見つけ。
探偵や警察へ気づかせれば。
真相解明への貢献として認められる。
問題は。
報酬だった。
一度目。
使い古された包帯。
二度目。
空き缶。
「……」
思い出しただけで。
少し虚しくなる。
だが。
ランダムという以上。
必ずしも。
全てが外れとは限らない。
この異世界へ自分を送り込んだのが。
システムなのだとすれば。
いずれ。
元の世界への帰還に関係するアイテムが。
報酬に含まれていてもおかしくない。
(それまでは続けるしかないか)
旬は。
大学構内へ入った。
◇
事件の中心となった研究棟の周辺には。
警察車両が何台か停まっていた。
完全に封鎖されているわけではない。
授業も続いており。
学生たちも。
何事かと噂をしながら建物の前を行き来している。
旬は。
騒ぎを避けるように。
少し離れた場所から建物を観察する。
警察。
研究者。
学生。
大学職員。
誰が事件と関係しているのか。
旬には分からない。
人間の犯罪捜査は。
やはり。
ダンジョンとは勝手が違う。
その時。
「ねえ、そこの人!」
声を掛けられた。
旬が振り返る。
短い黒髪。
中性的な顔立ち。
高校生くらいの少女が。
こちらへ歩いてくる。
「君、ここの学生じゃないよね?」
少女は。
人懐っこい笑みを浮かべていた。
だが。
旬の目には分かる。
(笑ってるが……見てるな)
視線は。
旬の顔だけではない。
肩。
腕。
腰。
立ち方。
足の位置。
さらには。
相手がいつでも動けるかどうかまで。
確かめるような目。
コナン。
服部平次。
この世界へ来てから。
何度か。
似た目を見た。
相手を。
観察する人間の目。
「学生ではない」
旬が答える。
「やっぱり」
少女が笑う。
「ボク、世良真純」
自分を『ボク』と呼ぶ。
「探偵をやってるんだ」
「探偵?」
旬は僅かに眉を上げた。
また。
探偵。
この世界。
本当に探偵が多い。
「世良真純。帝丹高校二年」
少女――世良が。
軽く手を上げる。
高校生探偵。
毛利蘭と同じ帝丹高校へ通う少女で。
推理力だけでなく。
截拳道――ジークンドーの使い手でもある。
今日。
世良が東都大学に来ていたのも。
例の襲撃事件が気になったからだった。
公になっている情報だけでは。
どうにも腑に落ちない。
そう感じ。
独自に周辺の聞き込みをしていたのである。
「で」
世良が。
旬を見る。
「君は?」
「水篠旬」
「水篠……」
名前を。
一度頭の中で転がすように呟く。
「この事件に何か関係あるの?」
「ない」
「じゃあ、何しに大学へ?」
「少し用事がある」
「どんな?」
「言う必要はないだろ」
「はは」
世良は楽しそうに笑う。
「警戒されちゃったな」
だが。
退く様子はない。
「昨日さ」
世良が続ける。
「この大学の教授が襲われたんだ」
「知っている」
「ニュースで?」
「ああ」
「それで興味持って見に来た、とか?」
旬は答えない。
「……」
世良は。
ほんの少し。
目を細めた。
(なんだろう、この人)
嘘をついている。
そんな感じとも違う。
むしろ。
質問に答える必要性そのものを。
感じていないような態度。
そして。
もう一つ。
世良には気になることがあった。
(強そうだな)
ただ。
筋肉があるとか。
身体が大きいという話ではない。
隙がない。
立っているだけなのに。
どこから攻撃しても。
何事もなく対処されそうな。
そんな奇妙な感覚。
「ねえ」
世良は。
少し踏み込む。
「君、何か格闘技やってる?」
「いや」
「ほんと?」
「ああ」
世良が。
旬の肩から足元まで見る。
「でも普通の人の立ち方じゃないんだよな」
旬が。
世良を見る。
今度は。
逆に。
少女の姿を確認する。
重心。
足運び。
手の位置。
(この子もか)
鍛えている。
しかも。
多少というレベルではない。
「あんたもだろ」
「え?」
「格闘技」
一瞬。
世良がきょとんとする。
そのあと。
口元を上げた。
「へえ」
楽しそうだった。
「分かるんだ?」
「ああ」
「やっぱり君も普通じゃないじゃん」
「……」
墓穴を掘った。
そんな旬の沈黙を。
世良が。
面白そうに眺める。
「ますます気になるなぁ、水篠旬君」
その時だった。
「世良さん」
穏やかな声。
二人が振り返る。
そこに。
一人の男が立っていた。
細い目。
眼鏡。
落ち着いた笑み。
「こんなところで何を?」
「昴さん」
世良が振り返る。
男の名は。
沖矢昴。
東都大学工学部の大学院生。
普段は。
工藤新一の家である工藤邸に住んでいる。
だが。
それは。
表向きの姿に過ぎない。
その正体は。
FBI捜査官――赤井秀一。
黒ずくめの組織へ潜入した過去を持つ。
極めて高い戦闘能力。
射撃技術。
推理力。
情報収集能力。
その全てを兼ね備えた男。
現在は。
自らの死を偽装し。
沖矢昴として生活していた。
当然。
旬は。
そんな事情を知らない。
ただ。
男を一目見た瞬間。
それまでより。
僅かに意識が変わった。
(……こいつ)
強い。
この世界へ来て。
初めて。
旬が。
はっきりとそう判断した人間だった。
もちろん。
旬と同じ領域にいるという意味ではない。
比較する必要すらない。
だが。
戦闘経験。
殺気への慣れ。
相手を見る目。
その全てが。
これまで出会った一般人とは明らかに違う。
特に。
目。
表面上は。
細められ。
穏やかに笑っている。
だが。
その奥では。
こちらを。
正確に観察している。
(喫茶店の男と似ているな)
安室透。
あの男にも。
同じようなものを感じた。
この世界。
マナを持つ人間はいない。
しかし。
だからといって。
強い人間がいないわけではないらしい。
「こちらの方は?」
沖矢が。
世良へ尋ねる。
「水篠旬君」
世良が答える。
「事件と関係ないって言ってるんだけどさ。研究棟の周りを見てたから、ちょっと話を聞いてたんだ」
「そうですか」
沖矢の視線が。
旬へ向く。
「沖矢昴です。この大学で工学を学んでいます」
「水篠旬」
短い挨拶。
表面上。
それだけ。
だが。
二人の間には。
僅かな沈黙が落ちた。
(手にタコ)
沖矢は。
旬の手を見る。
しかし。
単純な格闘家のものとも違う。
さらに。
身体全体。
無駄な緊張がない。
鍛えられているのは間違いない。
だが。
武術。
軍人。
警察。
そのどれとも。
少し違う。
(何者だ?)
一方。
旬も。
沖矢を見ていた。
(大学院生……だけじゃないな)
それだけは。
すぐに分かった。
「昴さん」
世良が。
二人を交互に見る。
「知り合い?」
「いいえ」
沖矢は。
穏やかに笑う。
「初めてお会いしましたよ」
「ふーん」
世良は。
少し納得していないようだった。
「なんか二人とも、初対面って感じしないけど」
「どういう意味です?」
「さあ?」
世良は笑う。
旬は。
それ以上会話を続けず。
「俺は行く」
と言って歩き出した。
「えっ、ちょっと!」
世良が呼び止める。
だが。
旬は振り返らない。
沖矢は。
その背中を。
静かに見送っていた。
◇
研究棟周辺。
旬は。
赤い光を探しながら歩いていた。
事件の手掛かり。
前回。
前々回。
それは。
比較的分かりやすい場所にあった。
だが。
今回は。
簡単には見つからない。
研究室そのものへ。
勝手に入るわけにもいかない。
警察が。
立ち入りを制限している場所もある。
旬は。
建物の外側を回る。
駐車場。
裏口。
搬入口。
研究棟と別棟を繋ぐ通路。
その途中。
少し人通りの少ない。
中庭側へ出た。
「……」
足が止まる。
植え込み。
その奥。
何かが。
赤く光っている。
(あった)
旬が近づく。
落ち葉。
土。
植木の枝。
その間。
泥に汚れた。
黒い小さな物体。
USBメモリ。
旬の目には。
はっきりと。
赤い光を放って見える。
(これか)
研究データが盗まれた。
事件内容。
そして。
USBメモリ。
ほぼ間違いなく。
関係している。
問題は。
また。
どう発見させるか。
自分で拾い。
警察へ届けてもいい。
前回も。
それでクエストは成功した。
だが。
旬は。
ふと後ろを見る。
少し離れた場所。
世良が。
まだ。
こちらを見ていた。
「……」
旬と目が合う。
世良が。
にっと笑う。
(ずっとついてきてたのか)
面倒な探偵だった。
このまま直接USBを拾えば。
間違いなく。
「どうしてそこにあると分かった?」
と聞かれる。
旬は。
少し考える。
すると。
制服を着た警察官が。
中庭を通りかかった。
事件発生後。
構内を巡回している警官らしい。
ちょうどいい。
旬は。
一歩下がる。
「すみません」
警官が振り返る。
「はい?」
旬は。
植え込みを示す。
「あそこ」
「?」
「何か光ったように見えた」
「光った?」
「金属か何かじゃないか」
警官は。
少し不思議そうな顔をする。
だが。
事件現場の近く。
何か落ちているというのなら。
確認しないわけにもいかない。
「ちょっと見てみます」
警官が。
植え込みへ入る。
数秒。
「あれ?」
屈み込む。
「……USB?」
世良の表情が変わった。
「!」
旬は。
何でもないように。
その場を離れようとする。
だが。
「待って」
世良が。
すぐに追いついてきた。
「君」
旬が振り返る。
「何だ」
「今の」
世良が。
植え込みを見る。
警官は。
無線で誰かに連絡している。
「本当に光って見えたの?」
「ああ」
「へえ」
世良は。
旬の顔を見る。
「変だな」
「何が」
「あのUSB」
世良が言う。
「泥だらけだった」
「……」
「日陰の植え込みの奥。太陽の光が反射したとも思えない」
旬は。
何も答えない。
世良が。
少しだけ。
笑みを消す。
「君さ」
「……」
「あれがそこにあるって、最初から知ってたんじゃない?」
旬と。
世良の視線が合う。
数秒。
沈黙。
旬が。
口を開く。
「知らない」
「即答だね」
「知らないものは知らない」
「ふーん……」
世良は。
それ以上。
追及しなかった。
ただ。
その目には。
明らかに。
興味が増していた。
(面白い)
水篠旬。
最初は。
事件現場付近をうろつく。
怪しい男。
それだけだった。
だが。
どうも。
それだけではない。
そして。
さらに少し離れた場所。
沖矢昴も。
一部始終を見ていた。
(光った、か)
植え込み。
位置。
太陽。
角度。
どう考えても。
不自然。
さらに。
水篠旬は。
USBが見つかった瞬間。
驚かなかった。
まるで。
見つかることを。
分かっていたように。
「……」
沖矢の細い目が。
僅かに。
開いた。
◇
USBメモリは。
すぐに警察へ渡された。
内部には。
盗まれた研究データの一部が保存されていた。
さらに。
表面から。
関係者の指紋も検出された。
だが。
それだけでは。
犯人確定には至らない。
USBを。
誰かが故意に捨て。
別の人間へ罪を着せようとした可能性もある。
警察は。
防犯カメラ。
研究室への入退室記録。
関係者の証言。
そして。
教授が襲われた時間。
それらを。
改めて洗い直す。
世良も。
集められた情報から。
独自に推理を進めていた。
「……なるほど」
彼女が。
何かに気づく。
USBの中身。
削除されたファイル。
教授が襲われた時間。
研究員たちのアリバイ。
その一つに。
僅かな矛盾があった。
そして。
沖矢も。
同じ矛盾に気づいている。
ただし。
彼は。
積極的に前へは出ない。
あくまで。
大学関係者として。
必要最低限の助言をするだけ。
その結果。
捜査線上に。
一人の研究員が浮かび上がった。
犯人は。
外部の産業スパイではなかった。
教授の研究チームに所属する研究員。
自身が開発の中心だったにもかかわらず。
成果の多くを教授のものとして発表されると。
一方的に思い込み。
強い不満を募らせていた。
別企業へ。
研究データを持ち出そうとしたところ。
教授に気づかれ。
揉み合いとなり。
衝動的に殴ってしまった。
逃げる途中。
USBの一つを紛失。
それが。
植え込みに落ちていた。
警察に。
決定的な証拠を示され。
研究員は。
やがて犯行を認めた。
事件は。
解決。
そして。
旬の目の前に。
待っていた表示が現れる。
――ピコン。
『緊急クエスト完了』
『真相解明への貢献を確認しました』
『クエスト成功!』
報酬:
ランダムボックス×1
「……」
旬は。
静かに表示を消した。
三度目の成功。
後は。
報酬。
包帯。
空き缶。
次は。
少なくとも。
使い道のある物が欲しい。
それだけだった。
◇
事件が一段落した頃。
旬は。
大学を出ようとしていた。
「水篠君!」
後ろから。
世良の声。
旬が立ち止まる。
「まだ何か?」
「いや」
世良は。
笑いながら追いつく。
「一応、お礼」
「礼?」
「君がUSB見つけなかったら、もう少し解決に時間かかってた」
「俺は見つけてない」
「ああ」
世良が。
わざとらしく頷く。
「『光って見えたから、警察に教えただけ』だったね」
「……」
「まあいいけど」
世良は。
旬の前へ回る。
「でもさ」
一瞬。
声が。
少し低くなる。
「君、何者?」
「普通の人間だ」
「それは嘘だ」
即答。
旬が。
世良を見る。
世良は。
笑っていた。
だが。
目だけは。
探偵のものだった。
「だって普通じゃないもん」
「根拠は?」
「いろいろ」
世良が。
指を折る。
「立ち方」
一本。
「人の見方」
二本。
「事件が起きても全然動揺しない」
三本。
「それに」
旬を見る。
「何より」
僅かに。
間。
「君からは、怖さを感じる」
旬の目が。
少しだけ変わる。
「怖い?」
「うん」
世良は。
意外にも。
真面目な顔で頷いた。
「でも」
そして。
すぐ笑う。
「悪い人には見えない」
旬は。
少し。
黙る。
何を根拠に。
そう思うのか。
よく分からない。
「変な探偵だな」
「それ褒めてる?」
「さあ」
旬は。
再び歩き出す。
「じゃあね、水篠君!」
世良が手を振る。
旬は。
振り返らなかった。
その後ろ。
大学の建物から。
沖矢昴が。
静かに旬の姿を見ていた。
(世良さんが興味を持つのも無理はない)
事件とは無関係。
そう見える。
だが。
事件解決に必要な証拠を。
偶然発見した。
あまりにも。
都合が良すぎる。
そして。
何より。
短時間。
近くで観察して。
沖矢には。
一つ分かったことがある。
(水篠旬)
あの男は。
自分よりも。
遥かに。
戦闘というものに慣れている。
それが。
軍人なのか。
殺し屋なのか。
それとも。
まったく別の何かなのか。
判断できない。
普通なら。
その時点で。
何かしらの経歴が見える。
歩き方。
癖。
装備。
言葉。
だが。
水篠旬には。
それがない。
まるで。
この社会のどこにも。
所属していないかのような。
奇妙な違和感。
「……興味深いですね」
沖矢は。
小さく呟いた。
◇
その夜。
ホテル。
旬は。
机の上へ。
三つ目のランダムボックスを置いた。
「……」
期待は。
しない。
前回学んだ。
期待すると。
空き缶が出る。
旬は。
迷わず箱を開けた。
光。
そして。
表示。
『アイテムを獲得しました』
旬が。
何気なく文字を見る。
そして。
動きが止まった。
『帰還の羅針盤のレシピ(上)』
「……」
一秒。
二秒。
旬は。
表示を見つめたまま。
動かなかった。
「帰還……?」
すぐに。
アイテムの詳細を開く。
『帰還の羅針盤』
『異なる次元間の境界を探知し、元の世界へ至る道を指し示す特殊アイテム』
「……!」
今度こそ。
間違いない。
旬が。
この世界へ来てから。
初めて手に入れた。
明確な。
帰還への手掛かり。
「やっとか」
その声には。
僅かに。
安堵が混じった。
だが。
すぐに。
次の表示が出る。
『現在、このレシピは不完全です』
『帰還の羅針盤のレシピ(下)が必要です』
「……」
旬の表情が。
元に戻る。
「そう簡単にはいかないか」
しかし。
包帯とも。
空き缶とも違う。
確実に。
前へ進んだ。
上があるなら。
下もある。
そして。
これがランダムボックスから出た以上。
今後のクエストを成功させ続ければ。
いつか。
レシピ(下)を入手できる可能性がある。
旬は。
レシピを。
インベントリへ収納する。
メインクエスト。
異世界の真相。
システムの目的。
分からないことは。
まだ多い。
だが。
少なくとも。
元の世界へ帰る方法は。
存在する。
「……なら」
旬は。
窓の外。
米花町の夜景を見る。
「続けるだけだ」
クエストを。
事件を。
そして。
赤く光る。
真相への手掛かりを。
帰還するために。
ただ。
旬は。
まだ知らなかった。
自分が。
この世界について知ろうとしているのと同じように。
この世界の側でも。
彼について。
調べ始めている者たちがいることを。
江戸川コナン。
安室透。
服部平次。
世良真純。
そして。
沖矢昴――赤井秀一。
水篠旬という。
本来この世界に存在するはずのない男を巡り。
静かに。
疑念の輪が。
広がり始めていた。
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