代償があるタイプの異能持ち女の子vsチートヒーラーvsダークライ 作:らっきー(16代目)
「やっぱり俺の仕事が増えてないか……?」
これを言うのも何度目か分からないが、俺の仕事は学校の保健室の先生……一応代償者が成人しているという事を考慮しても産業医というところだろう。要は健康管理とそれに伴うアドバイスぐらいが仕事のはず。
「俺は別にアイツらの保護者でもなんでもないんだが……寧ろ同僚ぐらいのはずじゃないか……? そんな感覚は確かに無いけども」
日報。分かりやすく言うとちゃんと代償者全員寮に揃ってますよ〜ということや、ざっくりこんな事をして課業時間を過ごしてましたよ〜という報告書。ある意味戦時中であると考えれば、兵士の健康状態だの待機中の様子だのを報告させられるのは分からなくは無いのだが。
「最近までアイツらが自分でやってたじゃん。なんで俺がわざわざ……」
ぶつくさ文句を言ってみても当然返事は返ってこない。部屋に入り浸って邪魔してくる彼女らは「親睦会」をしにアマネを連れ出して外出中だ。一応俺も誘われはしたが断った。大人が居たらリラックス出来ないだろうし。あと外出申請がダルい。縛着とかしたくないし。絶対無くすから。
「まあアマネ関連のなんかだろうな……治療報告書もせっつかれてるし」
なんならアマネを捕食者との戦いに出せカスってせっつかれてもいる。治療中じゃボケ黙ってろって返信した結果が、じゃあ治療の進捗と何時から戦えそうか、そもそも完治は可能なのか答えなさいという命令。今は適当な進捗で誤魔化してる……んだが、メッセージがしつこいな。
どこからかと言えば勿論国から……と言いたいところなのだけど、『キサラギ』からメッセージが届いてる。一企業が兵隊を管理してる施設に直接メッセージ送れていいのか……? 国お抱えだから国営企業なのか……?
「『年頃の女の子の治療経過なんて詳細に書けません。プライバシーを尊重しているので』……大体、ある程度は伝えてるんだから満足しとけ」
まあ内容は普通にリハビリしてたら声出るようになりましたけど貴方達は何やってたんすか(笑)みたいな内容だが。……流石にこんな文面じゃないぞ?
「というかマジに治せる奴居ないんだな……どういう仕組みなのかね代償って」
ついでに俺のチートも。科学的にチートを再現出来たらいろんな問題が一気に解決するような気もするが……出来るか分からんことの為に実験動物になる覚悟を決められるほど聖人君子じゃないんだ。
「うお、返信早……」
『では治療の風景を見せてもらうことは出来ませんか?』とのこと。見たところで何にもならないと思うが……というか、既に治してしまってるから見せるも何も無い。突っぱねるしかないんだが……
「『応じていただけるならこちらの代償者の研究についての成果を共有します』ねぇ……」
必要かどうかで言えば正直必須ではない。代償者について大して知らない今でも治療に何の支障もないしな。だがしかし、今後もそのままでいいかというと微妙なところだ。もしかしたら、研究成果とやらと組み合わせれば今はチートでも治せない物を治せるかもしれないし。
応じるべきか……? それならそれでチートを誤魔化す言い訳を用意する必要はあるが。ついでに逃げる手段も。万が一にも拘束されでもしたらたまらんし。まあそんな強硬手段に出てくるならとっくに俺は攫われているだろうが。
「『つきましては、製造と廃棄のどちらを見たいか知らせていただけると──』ロクでもねぇこと書いてないか?」
外部の人間に送るメッセージとして0点だろこれ。企業倫理とかないんか? 廃棄って何する気だよ……胸糞悪い想像しか浮かばねぇぞ。
「そんじゃ、アマネさんの転入を祝して……」
「「かんぱーい!」」
「かん、ぱい……?」
カツン、と大きくぶつけられる三つのコップと、ワンテンポ遅れて控えめにぶつけられるもう一つのコップ。大分声も出るようになっては来ているが、流暢になるのにはもう少しばかり時間がかかりそうだ。
「さあさあ遠慮せずに! ……って言っても食べ放題だけど」
「まあ私達が普通に注文したらとんでもない値段っすしねぇ……そりゃ払えはするっすけど」
「若い、ねぇ……」
「アマネさんはあんまり食べないほうですか?」
「……それなり?」
代償者は普通の人間を圧倒的に上回る身体能力を持つ。であるからして、その身体を動かすのには当然普通の人より多くのエネルギーが必要となり……食べる量も多くなる。少食の代償者は存在しないのだ。
「でも声出るようになって良かったねぇ。文字で会話は大変そうだったし」
「ご迷惑、を、おかけしまして……」
「迷惑とは思ってませんよ。こちらこそこの子がノンデリで……」
「そ、そんなことないし。せんせーよりマシだし」
「比較対象としていいんすか?」
女が三人で姦しいとは言うけれど、四人もいればもう手に負えない。それがティーンとなれば尚更に。自己紹介はあっという間に済み、軽い雑談。そして共通のその場に居ない知人の話へ。
「先生、は……どんな人?」
「そうだねぇ……どう思う……? よし、せーの」
「ムッツリ」「童貞」「恩人」
「ええ……?」
三者三様の答え……をお互いに聞いて、それについてもやいのやいのと言い合う。
「いくらなんでも失礼じゃないっすか!?」
「でも事実ですし……本人から聞きましたから」
「というかそれは良い子な答え過ぎない? 私のは、ほら。せんせーお風呂上りのシャツ一枚の時に会うと露骨に視線がさ」
「無い物は見ようがないから安心していいと思うっすよ」
「あ゛ぁん?」
「仲良し、だねぇ」
ちょっとだけアマネには羨ましい。彼女はこんな風に軽口を叩ける仲間は居なかったから。そもそも異能が集団での戦いに向いていないというのもあるが。一対多なら得意なんだけど、と思っていたかは分からない。
「アマネさんは? せんせーの第一印象、どんな感じ?」
「それは結構気になりますね」
「えっと……」
言われてしばし思い返す。アマネにとって先生は……まず、明らかな異形の腕を見ても嫌悪感の欠片も見せなくて、書くという動作になる分どうしても時間のかかるコミュニケーションに当たり前のように合わせてくれて、初めて労わってくれた人で、大人になるしかなかった自分を、当然のように子供として甘えさせてくれた人で──
「カッコイイ、大人……かな」
「お、乙女の顔してる……同担が増え……?」
「そういうん、じゃ……どう、だろ?」
「歓迎しますよ? 一緒に先生を落としましょう。なぁに、一回抱かれてしまえばこっちのもんですって」
「だか……!?」
「真っ昼間っすよ」
元々三人で狙っていたから今更一人増えたところで、というある種の余裕のある年下。小さい頃から大人をしていたせいで情緒が育ちきっていない人間一年生の年上。こういう話題に関しては前者の方が強いようで。
「ほら、私達っていつ死ぬか分かんないし? まあ先生がいるおかげで代償で死なないだけ恵まれてるんだけど……命懸けの仕事だから。後悔しないように生きなきゃ」
「そうですね。そのためなら多少強引にアプローチするぐらい許されますよ。……全部躱されてますけど。ヘタレだから……」
「無理矢理襲って嫌われたくないだけっすよね? 痛っ!」
「す、すごいね……私、遅れてる?」
「やー……結局私達もその、未経験なことに変わりないから……」
「好きな人の為に取っておいてるだけですが」
「ムキにならないの。……アマネさんは?」
「え?」
「恋愛経験とか……なんかこう、浮ついた話!」
「あー……私、ほら。腕が、ね?」
上手に隠してはいるが、素肌を晒すような状況になれば当然異形の腕が目に入るわけで。だからこんな自分が誰かに好かれるなんてことは有り得ないと──
「あー、かっこよすぎるもんね。釣り合う男が居ないかぁ」
「そもそも代償者に釣り合う相手なんてそうそういませんよ? 先生はほら、異能みたいなの使えますし」
「あれ何をどうやってるんすかね……? 適当にはぐらかされるっすけど」
「怖く、ない……の?」
「え?」
「私の、腕」
「別に怖くは? 最悪捕食者になっても私なら多分斬り落とせる……ぁ痛っ!」
「こーら、本人にそんなこと自慢気に言っちゃだめでしょう。というか刃物持ち歩いてるんですか?」
「やべ」
恐れるわけでは無く、かといって哀れむわけでも無く。カッコイイで済ませるのはもしかしたら無知故と言われることではあるのかもしれないが。
「……良い子、だね。君達」
「先生みたいなセリフだ。褒めてもドリンクバーしか行ってこないよ?」
「私達の分もお願いします」
「一人で四つはむりー」
上手くやっていけそうだな、と思わせてくれるのだった。
感想、全部読んでます。更新を優先してて返せてないのはすまん
評価、お気に入りは引き続きよろしくお願いいたします。
次話はちょっと遅れるかも
誰が話してるか何となくでも
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分かる
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分からん