代償があるタイプの異能持ち女の子vsチートヒーラーvsダークライ 作:らっきー(16代目)
「あー……すまん、結局初めまして、でいいんだよな……?」
「う……はい。まだ初対面です……ね……あの、せめて先生って呼ぶのだけは許していただけると……」
「それは全然全く構わないが」
『まだ』初対面とは? 写真とか資料でだけ俺の事を知ってたとか? あぁ、いや違う。気づいてしまえば単純な話で彼女の異能は──
「もしかして俺達、結構仲良くなる未来があるのか? それを既に見ている?」
「……! はい! その、すみません、最初にそこから説明するつもりだったんですけれど……つい……いっぱい練習もしたのに……」
「そ、そうか……ありがとな……?」
なんかイメージと違うんだが。未来が視える系の人ってもっとこう……超然としてるもんじゃないのか? 何が起きるか全部知ってるから何も面白くないとか、所詮予知通りか……みたいに見下してたりとか、最善の未来の為に周りの人を駒としか思ってなかったりとか、そんな感じで。
目の前の女の子、それと真逆なんだが。すっごい不安そうにこっち見てくるし。若干ホムラに似てるかも。あっちはアホで元気な大型犬で、こっちは大人しくておずおずおもちゃ持ってくるような小型犬。
「えっと、改めまして──東部エリア、第零特殊作戦群所属……二等尉官のトワです。お会いするのを心待ちにしておりました、先生」
「おー、しっかりしてる……」
頑張って途中で噛まないようにいっぱい練習したのかな……? エリアも所属もさっぱり分からんが。ここって東だったんだね……関東平野なのかな……?
「というかお前らそんなイカつい所属してたの?」
「はい。まあ、名前だけ、ですが。階級も、意味は無い、ですし」
それはなんの為に付けたんだ……? って思ったら最初の頃の代償者の要望らしい。当時の代償者曰く『その方がアガるっしょ?』とのことらしい。ギャルだったのか?
あとは死んだ時の遺族年金とかその辺の為とアマネが教えてくれた。新しく制度を作るよりは過去のものを流用した方が早いからと。それはそう……なのか……? 疑問がどんどん増えていく。
「まあいいか……それで俺はお前を治せばいいのか?」
「一言で言えばそうなんですけど……私の異能ってもう聞きました?」
「未来視とだけは。他は本人から詳しく聞けって」
「うーん……どこから話しましょう……ちょっと長くなっても大丈夫です?」
「俺はいいが……アマネは?」
「泊まりでも、いいですよ? 先生と、ですし」
「俺の事安全牌か何かだと思ってる?」
「なーんか2人距離感近くない……!? ……コホン、近くないですか?」
尻尾のおかげで感情が分かりやすい。フシャーッ! って感じに持ち上がってる。
距離感……そうかな……そうかな……? まあ確かにお泊まりは距離近いかもしれんな。でもこれ信用と言うか、舐められ由来な気する。どうせ手出せないでしょ(笑)みたいな。その通りだよ。
「……まあいいです。まず前提として、私は前線にはあまり出ないで捕食者の動きを予測するのが主な仕事なんです」
軍師的なアレだろうか。この手の怪物って動きの予測とかできるのか? 精々が人口の多いところを狙うとか、文明が一定以上に成熟すると襲ってくるとかなイメージだが。
「先生のお察しの通り捕食者に規則的な動きなんてありません。だからこそ私にその役目が回ってきまして……異能で未来に襲われる場所を見れば捕食者の動きが予測出来ますから」
「なるほど……?」
「あ、分かってないですね。先生は実況動画でネタバレ見てからプレイするようなもんって言ってましたけど」
「あー、ギミックとか全部予習しとく感じね」
「これで伝わるんですねぇ……」
流石俺、俺に分かりやすく伝えてくれる。というかそりゃ国に重用もされるし廃棄とか出来ないわ。要はこの子、世界の攻略本ってことでしょ? 多少の制限はあるんだろうけど。
「……じゃあ将来捕食者に勝てるかとかも分かるのか?」
「それが難しいところで……先に言ってしまうと人類が滅んだ未来は何回も見てるんですけど」
「詰んだ……?」
バッドエンド確定ですか? というかそんなもの何回も見るの精神が死にそう。よく元気だなこの子……
「いえ、詰まないように頑張ってると言いますか……勝てる未来を探してると言いますか……えっと、バッドエンドに到達する事が分かったから、今からどうにかならないかを確かめる為にどのステータスが足りなかったか検証しまくってる、みたいな事を先生言ってましたよね?」
「言ってないが未来の俺が多分言ったんだな?」
「あれ? うん、多分そうですね……?」
滅亡の未来を見る。本来予定してなかったことをやる。もう1回未来視する。変化を確かめつつ他の事も色々やってみる。そしてまた未来視……って感じか? もしかしたら現状も騙し騙しでなんとか辿り着いた未来なのかも分からんね。
「えーっと……先生、今日って何日か分かる?」
「ん……卓上のそれはカレンダーじゃないのか? なんかメモにも手書きで今日の日付書いてあるが」
「あ、あー……先生は……今は初対面……だよね? ごめん、そのメモ取ってくれる? ……じゃない……くれませんか?」
「ほいよ」
予定のメモ……などではなく、本当にただ今日の日付だけがひたすらかかれてるメモ用紙。正直ちょっと怖い。何用なんだろうか。
「……うん。これが今で……視た物とはズレがあるけど……概ね大丈夫。私は今ここに居る。大丈夫……」
何やら自分自身に言い聞かせているっぽいが、若干不穏。未来視のしすぎでごちゃごちゃになっているのかと思ったが、それだけじゃ無さそうな気がする。
「なあ、異能の方は一旦置いといて、代償はなんなんだ? それによって俺が治せそうかも変わってくるが」
「あ、そうですね。抜けてました。んー……一言で言うと、時間感覚ですかね……?」
「時間感覚」
代償云々関係無く未来視しすぎてたら分からなくなってきそう……いや違うか。そもそもそれ以前の問題として未来視と今の区別がつかなくなってくるのか。代償がハズレすぎない? 区別できなきゃ未来視出来てるかも分からないじゃんね。異能を無価値にするような代償って……と、聞いてみたら。
「まあ、それだけならまだ使いようもあったんですけど……時計とかカレンダーとかがある所を見るようにすればある程度は分かりますし。ただ……」
「ただ?」
「そうやって無理矢理使ってたら時間感覚が完全に死んだ上で現実感も無くなりまして……」
「あー、アマネの『歌』からの『声』みたいなもんか……時間感覚と現実感が無いってどんな感じなんだ……?」
「えっとですね……こう、100個ぐらい同じゲームのプレイ動画をバラバラなタイミングで再生して、その内の1つの画面だけ私がプレイしてる……けどどの画面かは分からない、みたいな……」
「大道芸?」
こうして会話を成立させられているだけでも奇跡なのでは? さっきおかしくなったのもそれね。言葉を借りるならどの画面が自分のプレイ画面かを見失ったわけだ。
「とりあえず、俺が呼ばれたのはそれを治せるかどうかってことだな?」
「はい。ちょーっとばかり急ぎで異能を使いたいので。……最悪治せなくても使うしかないんですけど……」
「そんな追い込まれてるのか? 現状って……」
というかこのまま使ったらどうなるんだろうね? 安直に考えたら完全に捕食者になるとかだと思うんだが。代償者を無闇に増やさない理由としても割としっくりくるし。
「追い込まれてはいますけど、それだけじゃなくて。まあその、具体的に言うとこのエリアが全滅する未来が見えたと言いますか」
「詰んだ……?」
「詰まないように色々頑張ってはいるんですけどねぇ……」
そう遠くない未来……と言っても明日なのか1ヶ月後なのか1年後なのか、案外5年ぐらい余裕があるのかは分からないらしいが、ともかくこのままだと俺達は皆殺しの憂き目に会うらしい。困っちゃうね。
「それで色々試しては未来を見て、上手くいった事に注力しつつ他を試して……ってな具合にやってたんですけど、まあ私がこれになっちゃいまして」
腰をふりふり、太い尻尾がゆらゆら。ちょっとえっちだから止めないでもらいたい。もうちょっと見た目が大人びてたら危なかったな……
「まあ要は攻略本の使用回数を戻したいってわけか。欲しい情報があるのかは分からんが」
「ですねぇ。ということで先生、いっちょお願いします」
「うーん……時間感覚はともかく現実感ってどうやって治すんだ……?」
「まぁまぁ。とりあえずお手を拝借」
触れなきゃ治せないのは知ってるのね。なんで? ……未来の俺が教えてたりするのか?
「どこがいいですかね? やっぱ感覚だし頭? 五感って意味でこのまま手繋ぎます? あ、心臓とか?」
「待て待て、胸を触らせようとするな。恥じらいを持て恥じらいを」
「まぁまぁまぁまぁ」
「それで全部押し通す気か……!? うぉ、力強……!」
お、男の人呼んでー! アマネは『わぉ』みたいな顔してないで止めてー!
わぉ(エモート)
代償で過去と現在と未来がごちゃごちゃになって、離人症やら無痛症やらを併発して現実感が存在しなくなってるだけ
先生の前だからなんとか明るく振る舞ってる