代償があるタイプの異能持ち女の子vsチートヒーラーvsダークライ 作:ステラァァァァ!!!
捕食者との戦いがどんなものかを聞いたことがある。
彼女曰く、魔法少女が怪獣退治をする感じ、とのことだったが実際のところこの表現が正しいのかは俺は知らない。戦闘の様子とか見たことないからな。どうしよう、変身とかしてたら。
なんか雑魚取り巻きがいっぱい居て、統率個体が居て、その強い個体を倒せば勝ちの迎撃戦らしい。そういう意味ではシオンみたいな異能持ちがもっと居れば色々と楽なんだろうな。ゲロビで薙ぎ払えば雑魚一掃できそうだし。知らんけど。
「そう考えるとお前みたいな異能ってやりづらいんじゃないかって先生思うんだけど、実際どうなの?」
「よく分からないですけど、もしかして馬鹿にしてますか?」
「してないしてない。身体能力向上とか便利そうじゃん。ほら、焼きそばパン買いに行かされる時とか」
「虐められてた過去でもあるんすか……?」
外でタバコ吸ってたらランニング中の少女……代償者であるアザミに出会ったから気になったことを聞いてみている。こいつの異能は『全身に激痛が走る代わりに身体能力向上』。明確な傷とか疾患とかじゃないから俺のチートもあんまり意味ない。凹む。
「まあでも、シオンちゃんと比べられると流石にーとは自分でも思うっすよ。基本的にタイマン前提みたいなところありますし」
「やっぱり? 絶対頭数足りないよなぁ」
統率個体とタイマンしてる間にすり抜けられたら終わりじゃない? とタワーディフェンス好きとしては思ってしまうのだけど、どうなのだろう。ドクター神拳がアリなら話は変わってくるんだが。
「そこはまあ、それぞれのやり方と言いますか。ホムラちゃんは火の壁作りますし、私なら地面を砕きますし、ヤエちゃんなら──」
「地面砕けんの……?」
「え? はい……?」
私何か変なこと言っちゃいましたか? みたいな顔をしてる。足止めできるレベルで地面を砕くの、素手で出来ちゃ駄目でしょ。
「どうやって?」
「どうって、こう……地面を思い切り殴れば……見ます?」
ということで、所々に抉れた痕のあるグラウンドまでやってきた。なんでこんな有り様かと言えばちょっと前に代償者同士で喧嘩したから。だから冷蔵庫に入れる前に名前を書けって言ったんだよ。そんなくだらないことに代償を捧げるな。俺の仕事が増えるんだよ。
「絶対前に出ないでくださいね?」
「後ろでも近かったら駄目じゃないのか……?」
「じゃ、いきますよー? せー……の!」
轟音。土煙。衝撃波。そんな感じ。やっぱ後ろでも駄目じゃねぇか、煙草が吹き飛んだぞ。
「……とまあ、こんな感じっす」
「うお……」
地面が割れている……というのも変な言い方か? 断層って人力で作れるんだな。そりゃ一発でこんだけ滅茶苦茶にできるんなら足止めも出来るわ。というかこんだけの力で殴っても捕食者って即死しないの? どんな硬さなんだよ。
「ちなみにこれ、手は大丈夫なのか?」
「え? ああ、はい。擦り傷が出来るぐらいで」
「ばかたれ」
アザミの手を取ってみれば、確かに拳頭のあたりが少し擦れている。指でなぞってやればすぐに元に戻ったが。ふう、チートヒーラーで良かった……
「怪我してまで見せなくていいんだよ、俺の好奇心なんだから」
「この程度痛くもなんともないっすけど」
「女の子が傷作るもんじゃないだろうが」
「……ふふっ、そんな普通のこと言うんすか? 私達、何度も血まみれになってるっすよ?」
「知っとるわ。誰が治してると思ってる」
まあ最悪傷として定着した後だろうと治せるとは思うが。それはそれとして早く治しておくに越したことはない。女の子が血流してるの見るのも嫌だしな。……というか、綺麗なのは俺が治してるんだから当然としても、あんな力出せるのに手はこんな柔らかいんだな。どうなってるんだ? ぷにぷにだぞ?
「あの……先生? そろそろ離してもらえると……」
「す、すまん。キショかったな……」
「いや、そんなことは思ってないっすけど」
セクハラだったな……女子高生の手をにぎにぎしてしまうなんて……これが許されるのはいいとこ平成までだ。コンプラは守らねばならぬ。
「ちなみにここ、直さなくていいか? アスレチックみたいになってるが」
「あー……まあ、もしなんか言われたら……ヤエちゃんがいる時にやるっすよ」
「あいつ今どこ行ってんだろうなぁ」
最後に会った時はマグロ釣りに行ってくると言っていたが。下手したらカニ漁しにベーリング海に行っているかもしれない。そういう凄みがアイツにはある。
「じゃあ先生、部屋まで送ってください。夜道怖いんで」
「全然日出てるし、ここに不審者が入ってきたらもうおしまいだろうよ」
職員さんは居るけどね? 厨房の人とか、掃除のおっちゃんとか。まあ敷地内には住んでないんだけど。だから基本的には誰にも会うことはない。管理人みたいな人は居たらしいんだけどな。俺が来たらソイツは辞めたらしい。仕事を増やしやがって……!
「あ、思い出した。なんか荷物届いてたぞ? あとで受け取りに来い。印鑑持って」
「了解っす。先生はシャワー浴びて待っといてくださいね?」
「何故……?」
もしかして……臭い……ってコト?!
人の役に立てるような人間になりなさい。両親からそう教わって生きてきた私にとって代償者は魅力的な道だった。人類の守護者以上に『人の役に立てる』ものが思いつかなかったから。
とはいえ実際にそれに成ってみればロクでもないものだったのだけれど。危険、キツイ、汚い、嫌われ者の4Kだ。せめて最後の一つが無ければ随分とマシだとは思う。まさかこんなに怖がられてるとは、噂なんて当てにならないものだ。
代償者になると異能に耐えられるように身体を少しだけ弄ることになる。その結果常人を超える身体能力を手に入れるのだけど……まあ、そんなのが近くに居たら怖いよね。人型か化け物の見た目かの違いしかなくて、結局一般人からしたら気分次第で殺せる存在だということには変わりないのだから。広報映像だと巧みに隠されてたけど。
それでも誰かの役に立てると思って頑張ってきた。異能の代償は辛かったけど、身体的に害があるものじゃなかったから。根性で何とかなったというのもある。死ぬほど痛いけど、逆に言えば死ぬことは……まあ、その頃は無いと思ってたし。
それが嫌になったのは、特段劇的な何かがあったわけじゃない。
例えば、街に出かけた時。誰も彼も当たり前のような顔をして普通の生活を送っていた。そりゃ捕食者が出たら逃げなきゃいけないとかそういうのはあるけれど、逆に言えばそうじゃない限りは何も心配するようなことは無いし、そもそも『逃げる』ことが許されている時点で……うん、妬ましかった。
そうなってしまえば早いもので。普通の人が妬ましくなって、なんでそんな人の為に戦わなきゃいけないのか分かんなくなって、自分の異能の代償に耐えられなくなって。そうしてどんどん戦うのが嫌になった。
「また怪我しやがって。ほれ、全部治してやるから……なんだお前昔の俺みたいな顔しやがって。気に食わねぇから入院三日な」
先生に会ったのはそんな時だった。
「うわ、馬鹿真面目なタイプだなお前さん。もっと肩の力抜けよ。所詮仕事だぜ?」
代償者として戦うことを軽んじるような言葉。成り立ての頃だったら腹を立ててたかもしれないけど、疑問を持ってた頃だったからそれは無かった。私が返したのは、確かそう──
「そんな不真面目にやって、誰かが死んだらどうするんです?」
「あ? お前さんたちが負けたらってことか? その時は全員死ぬんだから一人ぐらい誤差だろ」
正直、訳の分からない言葉だった。何というか、価値観が違いすぎて。
「俺が何のために代償者の治療なんて厄介事を引き受けてると思う?」
「人類の滅びを食い止めるためとかじゃないんですか?」
「うんにゃ。金のため。働かざる者食うべからずってな」
「清々しいぐらいに欲まみれですね」
「おう。自分が死にそうじゃ人を助ける余裕も無いからな」
でも、この言葉は理解できた……というか、私に足りなかったものを教えてくれた。
自分に余裕が無きゃ人を助けることだってできやしない。そんな当たり前の事実。私はそれすら分からなくなっていた。
だから私は、自分の精神を立て直すことを最優先にした。守りたい物でもいい、使命感でも責任感でもいい、ただ戦う理由を一つ持っておきたい……と考えたところで、単純なものを見つけた。そうだ、私達代償者を治療してくれるこの人を守ることを最優先にしよう。この人を守れば代償者が助かる。少なくともまだ、私は同僚の為なら戦えるから。そう考えて……
「で、まさか普通に好きになっちゃうとは……我ながら単純っすねぇ……」
でも、しょうがないと思う。私達に普通に接してくれる人は貴重なのだ。怯えず、普通の子供のように扱われると、普通の女の子で居ていいんだって安心できる。
「友達と先生のためならどんな痛みにだって耐えられる。精神論でどうにかなる私の異能には丁度いい感情っすよねぇ……恋ってさ」
先生が今日治してくれた拳を触る。当然傷なんて残っていないけれど、なんとなく暖かい気がする。
「代償者全員で要望出して先生を呼びつけたって聞いたらどんな顔するんすかねぇ……」
逃がさないっすからね? 先生