代償があるタイプの異能持ち女の子vsチートヒーラーvsダークライ 作:ステラァァァァ!!!
前に本人達も言っていたが、彼女たち代償者に関わろうとする人間の数は少ない。肉体の格が違う相手にものを教えるというのも難しいだろうしな。勉強面は……まあ、数人の為に教師を派遣するのも無駄が多いし。
だから彼女らへの教育は結構雑で、格闘技訓練は一応教範通りに学んでいるが、実戦は代償者同士でしかやっていないし、変な癖があったとてそれを指摘出来るような人材は居ない。俺も当然無理。医療従事者にそんなものを期待しないでくれ。
勉学に関してはもっと酷い。リモート授業ですらないただの録画映像と自主学習だけだ。まあ『こんなんでやる気出るわけなくない?』って言い分も結構ごもっともだと思う。とはいえ。
「うー……せんせーが呼び出してくれたから期待してたのに、何で勉強……」
「むしろ何を期待してたんだお前は。ほれ、テスト解いてみろ」
流石に義務教育修了レベルの学力は身に付けておくべきかなって先生思うわけ。こいつの場合キャラ的に正しいと言えばそうなんだけども。
「せんせー間違ってるよこれ。数学に英語書いてあるもん」
「お前マジか」
文字式って何年生レベルだっけ? いやまあ、課業時間が決まってるだけで自主性に任されてるからサボろうと思えばいくらでもサボれるんだけどさ。それにしたってじゃない?
「お前中学校卒業してるよな?」
「ん? あ、先生もしかして知らない? 不登校でも卒業出来るんだよ?」
「引きこもりだったのか……?」
「そ、外こもりだもん! しょうがないじゃん、家居たらお母さん達が怖がるし学校行ったら皆怖がるしだったんだから」
「ん? 怖がるって……その頃はまだ代償者じゃないだろ?」
「そうだけど……なんか私って、調整される前から普通に異能使えたんだよねぇ」
そんなことある? 才能か何かなのか?
……代償者とは、異能に目覚めた少女達の総称である、というのは以前にも言ったが、当然ながら誰もかれもが異能を使えていたら世の中は滅茶苦茶だ。代償を払う、と言ったっていわゆる無敵の人からしたら関係ないしな。
代償者になる条件は二つ。まず異能を扱う才能がある事。次にそれを出力できるように身体をちょっとだけ弄る事。異能を制御するための云々かんぬんらしいんだが……ゲーム脳的に考えると厄モノじゃないか? って気もする。なんか政府に逆らえないように洗脳とかも一緒にされてそう。
「昔っから多少は力とか強かったんだけどさぁ……学校で喧嘩した時に私の血でボヤ騒ぎになっちゃって。そっからはもう腫れ物扱い」
「喧嘩してたんならそれ以前から腫れ物扱いだったんじゃないのか?」
「お、言ってくれるねぇ。どうだったかなぁ。怖がられるようになってからしか覚えてないや」
「こんなちんちくりんをねぇ……」
「や、平均よりは高いからね? せんせーがデカいだけだよ?」
「今俺のことを奇行種って言ったか?」
「虐められてたの……?」
虐められてないが。前世でちょっと友達が少なかっただけだが。今世? 俺の語る話に友人が誰一人出てきてない事と、急な移動に問題なく応じていることで察してくれ。友達とか作ると人間強度下がるから。
「まあそんなわけで、ホムラちゃんはグレちゃってたのです」
「思春期だなぁ……」
まあ放火魔とかになってないだけマシか? にしても、こいつの異能がまだ小規模な方で良かったな。『触れた物を崩壊させ、それを伝播させる』とかじゃなくてよかった。成長ホルモンに支配された思春期のガキのせいで世界が滅ぶところだぞ。
「ま、別に勉強できない言い訳にはならないけどな。シオンを見習え」
「や、知識の収集が趣味になってる人と比べられるのはちょっと……」
シオン曰く、記憶とか知識が無くなる心配をしなくていいなんて最高じゃないですか! とのことだ。まあ確かに比較対象にしちゃ駄目だな。あいつが一番人生楽しんでる気がする。
「お前も漫画だけじゃなくなんか技術書でも読んでみたらどうだ?」
「ふふっ、せんせーは優しいね……私にそんなものがそもそも読めるわけないのに、気を遣ってくれて……」
「なんかトラウマでもあるのか……?」
「熱力学? ってやつをちょっと……」
「ああ、異能で……」
火の使い方でもイメージするのに知識仕入れようとしたんだろうな。そもそもコイツらの異能に物理学だのなんだのが通用するとも思えんが。なんならアニメの炎使いとか見てた方が参考になると思う。400億の男とか。
「……連立方程式ぐらいから勉強してこうな?」
「そこは勉強なんてもうやめようって言ってくれるところじゃないの!?」
「まだ若いんだから役に立つだろ。代償者辞めたらどうする気だ?」
「やー、辞める時なんて来ないでしょ。せんせーのおかげで引退もしなくて済みそうだし」
「そうか? ドカッと稼いでササっと辞めちまってもいいんじゃないか?」
「す、凄いこと言うねせんせー。私一応人類の守護者なんだけど……」
「知ってるが」
でも別にそこまで無理して続けることじゃないだろ、って思ってしまうのは俺が当事者じゃないからかね? それか転生した記憶のせいで浮ついてるのか? でも俺としてはガキを犠牲に生き延びてる現状に、先が無いって思うんだよな。綺麗事かね。
「何か無いのか? やりたいことでも、将来の夢でも、勉強のモチベになるようなもん」
「あー……えー……その、笑わない?」
「セロテープに成りたいとか言わなきゃ」
「なにそれ……」
ちなみに今の俺が成りたいものは金持ちの家の猫だ。まあ今の人類社会にペットを飼う余裕は……あるんだなこれが。金持ちに限っての話だが。ちなみに食料品の生産業者とか一次産業従事者が今の金持ちだぞ。三大欲求を満たしてやれる職は強いな。
「……馬鹿にしたら怒るからね? ……その、ウェディングドレス、着てみたいなって」
「………………」
「黙られるのも怖いんだけど……!?」
そういやこいつ16なんだよな。そんで学校にもロクに通ってなきゃ、そりゃ恋に恋する年頃かぁ……なんか凹む。どうせなら戦闘能力チート貰ってりゃな。そうだったら俺が全部殴って解決なのに。俺がなんか代償払う分には別にいいしな。幸せになるのは女と子供だけでいいから。男なら死ねい!
「まあ、なんだ。結婚式する時は呼んでくれ。泣くかもしれんけど」
「……ばーか」
何故……!? 結婚式に呼ばれるにはまだ絆ランクが足りないのか……!?
親は私のことが怖くて仕方なかったみたいだけど、私は親のことは嫌いじゃない。
皆は私から離れて行ったけれど、私は一人で居るのは寂しかった。
でも周りは私が全力で触れれば壊れてしまう程に脆くて、遠くから焦がれることはできても愛することはできなかった。
私が代償者になったのはそれが理由。
自分の力を役立てたかった……なんて殊勝なものじゃなくって、ただ強い人たちなら私と一緒に居てくれるんじゃないかって思ったから。
幸い、と言っていいのだと思う。私のその考えは当たっていて、初めてできた同類の相手は同じ景色を見れる友達になってくれた。気持ちが通い合う仲間というのは初めての存在だ……けど、まあ偶には喧嘩もしてる。あれは向こうが悪かったんだもん。
……と、それは置いといて。だからまあ、私は代償者になった時点で欲しかったものは手に入れていて。戦っているのは一緒に戦う友達の為と、彼女たちに出会わせてくれた恩返しみたいなものだったのだけれど。
「強いぐらいで調子に乗るなガキ。ほれ、その傷全部消してやる。嫁入りもしてねぇやつが自分から傷物になるなよ……」
普通の女の子として接してくれる人は、初めてだった。
どうやってるのかは分からないけど、先生は他人の傷を治せる。どんなに深く切った痕だろうと、指でつつーっとなぞられれば何事もなかったかのような綺麗な肌が元通り。正直私たちの異能よりよっぽど『異能』だと思うんだけど、先生曰く違うらしい。初めてやってもらった時は「バレると解剖されちゃうから内緒にしてくれ」とチョコレートを貰ったのを覚えている。
そんなことが出来るのだから、もっとササっと治してガンガン私達を使えばいいのに、そんな早く治したら怪しまれるだとか理由を付けてよく先生の所にお泊りさせてくれてた。外泊なんて特別な理由が無きゃ許可されないから嬉しかったな。
普通に怪我を心配してもらって、普通の学生のように何でもない話をして、普通にまた会う約束をして別れる。何もかもが普通。先生に言ったら多分普通の人間なんだから当たり前だろうが、とか言われると思う。
でもね、先生。その普通は、私が16年ずっと欲しかったものなんだよ?
憧れて、夢見てるだけならそれで済んだのに、一度知っちゃったらもう二度と手放せない。
「だから……逃がさないからね? せんせー」