代償があるタイプの異能持ち女の子vsチートヒーラーvsダークライ   作:らっきー(16代目)

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うお……すげぇ伸び方……


父性を感じるほど老けてないはず……老けてないよな…?

 捕食者への対応は基本代償者一人で対応することになる。

 

 これは単純に代償者の数が少ないから複数人出してしまうと連続で来られた時に対応できない、というのと、武装してようがなんだろうが普通の人間は足手まといにしかならないこと、それから今までそれで何とかなってきたから、という怠惰な思考から決まっているシステムだ。

 

 他は知らんがここの三人はローテーションで回している。別に代償の重い軽いも俺が治せるから関係ないしな。なんか予定が入ってる時なんかはアイツら同士で融通させているらしい。代わりのシフト探してから休んでねってやつ。

 

 とはいえ別に捕食者の襲ってくるタイミングに規則性があるわけでもなし、ただ単純に現れた時に行くのが誰かというだけで、別にどこかで控えておかなければいけないとか、外出できない日があるとかそういうわけでは無い。三人で外出してる時に捕食者が来ると他の二人がとても妬ましくなるっすとはアザミの談だ。

 

 そんなわけで。たった今現れたという捕食者に対応する為にと戦場までの迎えを待っているところなのだが。

 

「あの、シオンさん? こういう時って自室でこう……戦いの恐怖とかで葛藤しながら静かに待つものじゃ……」

 

「どんな待ち方をしたって何も変わらなくないで──いえ……えーん、怖いです先生。ぎゅってしてもらわないと不安で耐えられません。頭も撫でてください」

 

「せめてもうちょい心を込めて言え……!」

 

「うるさいでーす。ほら、もう一個の手はお腹」

 

 まあ迎えを待つ間当直室……俺の部屋に来るのは良い。自分で言うのもなんだが、暇潰しになるようなものは色々揃っているからな。ガキには見せられないようなものもある。見られたら俺はおそらく世間的に死ぬ。

 

 だが何故こいつの待機場所は俺の膝の上なのか。ちゃんと来客用に椅子だって用意してあるのに。まあ内面がガキだからだとは思うんだが、あんまりそういうことされると普通に勃つからやめて欲しい。お前ら少なくとも肉体年齢的には女子高生だろうがよ。シオン、お前の前に居るのは前世から貞操を守り続けた童貞だ。

 

「腹を支えてもらわないと落ちるようなところに……うお、硬……」

 

「なんか複雑な気持ちになる感想ですね……」

 

 これは……岩……? ってなるぐらい腹筋が硬い。どれだけ鍛えたらこの境地に達せるんだ。もしかして、代償者の身体能力向上って物理的にも影響出てたりする? 

 

「せ、先生……? くすぐったいのでそろそろ撫で回すのは……!」

 

「す、すまん……! 小指でいいか……? 切り落とすの」

 

「要らないで──あ」

 

 あ? マジで切り落とされる? エンコのマエストロ? 

 

「先生、薬指出してくれません? 左の……いや、切り落としませんからそんな怯えた顔しなくても」

 

 顔の前に持っていかれて、何をされるかと思えば軽い痛みが走る。

 

「うーん力加減が……嚙み千切っても」

 

「良いわけないぞ?」

 

 エンコ詰めを口でやろうとするな。当然小刀とかでやらされるのも嫌だが。

 

「歯型残ったんだが……」

 

「残念、もっと深く痕残したかったんですけど……先生、キスマークってどうやって付けるんですか?」

 

「……何する気なの? お前」

 

 ちなみにキスマークは鬱血痕だから思いっきり吸えば出来るぞ。俺はネットで見るまで普通に口紅とかの痕だと思ってた。蚊に刺されて〜とか誤魔化すの無理じゃない? って思ってた疑問が回収されたね。でも蚊に刺されたことにするのは無理があると思う。

 

「えーっと……悪戯ですかね?」

 

「どういう……?」

 

 仮にの話として首とかにキスマークを付けられたとしても別に何もならんぞ。嫉妬する彼女も妻も居ない独り身だから。ましてや指にあったところでなんだという話。俺が痛い思いするだけじゃないか? 

 

「まあ、お気になさらず。迎えが来たみたいなので行ってきますね? お風呂沸かして待っといてください」

 

「相変わらず耳良いな……了解。寄り道しないで帰ってこいよ?」

 

 俺は迎えが来た事に気が付けていないが、車のエンジン音でも聞こえてるのかね。迎えに来てる人がどんな人なのかは知らん。ただの運転手なのか、或いはソシャゲの主人公ポジなのか。指揮官とやらも見た事ないしな。コイツら曰く「戦場での状況を教えてくれる人」らしいが。あれか? 某ロボットゲーのオペレーターか? 

 

「今度菓子折りでも持って……いや、俺が貰う側じゃないか……?」

 

 でも挨拶に来たら、お前に娘はやらんぞ! って言いたくなるかもな。そもそも性別も知らんが……

 

 

 

 

 

「やる事が……やる事が多い……!」

 

 送り出して、夜。

 

 しがない町医者(チート持ち)のはずだったのに気が付けば子供の面倒を見させられているし、なんかいつの間にかそれに付随する書類業務までやらされている。なんで外出先まで俺が把握しておく必要があるんですか? ホムラに至っては外出先を近所としか書かねぇし、目的も毎回買物しか書かねぇし。外出申請却下してやろうか。

 

「せめて健康診断とかそういうのだろうがよ……この寮の管理人にする気か?」

 

 そのうち持ち物検査とかやらされるんじゃなかろうか。国は俺に何をさせたいんですか? 

 

「まあ役人に来られて噓の報告がバレるよりかマシだよなぁ……どう考えても雑に使い潰しやがるし」

 

 人道的な云々はこの際無視するにしても、どう考えても育成する方がコストかかるだろうに。それに代償者として調整するのにも金がかかるんじゃないのか? 偉い人の考える事は分からんね。

 

「あーそうだ、治療状況の進捗も報告しないとだ……シオンの分も用意しとかないとな……」

 

 別に怪我人だから捕食者との戦いに出なくていい、なんて事にはならないのだが、なんちゃら金とかいう手当てが入るようになる。

 

 金があれば何でも買えるなんて事は無くても、金が無きゃ何も買えないからな。先立つ物は多いに越したことは無いだろう。アイツら結構無駄遣いしてるが。詐欺? 馬鹿言え、富の再分配だ。

 

「ホムラは自分で怪我作るから良いとして……アザミがなぁ……アイツの代償見えねぇし……」

 

 代償による心的障害とでも書いておくか? でもあんま過大に申告して再調整とか言われても嫌だしな。いや、そんなシステムがあるのかは知らんが、ゲーム脳で考えたらありそうじゃない? 

 

「……お?」

 

 車のエンジン音。連絡が来てないって事は特に重傷とかでもないな。遠距離主体のシオンは基本無傷だし。大体ゲロビで薙ぎ払って外を更地にして帰ってくる。いいのか? 更地にして……

 

 ノックの音

 

「先生、入っていいですか……?」

 

「おう、さっさと済ませるぞ」

 

 傷一つ無い……が、精神面は別。代償が精神に来るからなぁコイツ。

 

「ほら、目閉じろ。大丈夫だ、全部戻るから」

 

「うん……」

 

 しおらしい態度をされると調子が狂う。なんか失くした事を自覚するような記憶を持ってかれたなこれ。

 

「先生、私って薄情なんですかね」

 

「なんだ急に」

 

「いくら忘れないようにって思っても、ちょっと戦うだけで家族の事も覚えてられない、友達との思い出もすぐ忘れる。私がもっとしっかりしてたらそんな事にならなかったのかなって……」

 

「お前のそれはそういうもんじゃないだろうが」

 

「そうですけど……そういう事じゃなくって」

 

「1回落ち着け。……何を忘れてたんだ?」

 

「お父さんとお母さん……」

 

「あー……」

 

 こいつ、代償者になった理由、家族に仕送りするためって言ってたもんな。しかも兄妹ならともかく両親じゃあ何も覚えてないのはおかしいってあっという間に気づくし。そりゃあキツイか。

 

「大丈夫だ。もう全部思い出せたろ?」

 

「多分……大丈夫だと、思います」

 

 何が厄介ってちゃんと治せたかが物理的に見えないことだ。不甲斐ないな。もっと信用されてりゃ『先生が治してくれたんだから大丈夫です!』ぐらい言わせられただろうに。

 

 辞めちまえよ、と思わなくはない。人類の守護者だのなんだの、子供が幸せに生きる事に比べたら無価値だろうに。でもコイツら、今更代償者辞めて一般人になれたとして、絶対気に病んで幸せになれねぇ性格してるからな……良い子すぎるんだよ。俺なんかもう両親の顔代償も払ってないのに覚えてないぞ。薄情過ぎて凹む。

 

「まあ、あれだ。少なくともここでの暮らしの事はなんとかなるだろ。ホムラもアザミも、もし全部忘れてもまた仲良くなれるだろうし……俺も何度でもやり直してやるよ」

 

「……はい」

 

 ダメだ。俺の慰めが下手すぎる。こういう時主人公サマだったらなんか心に響くようなことバシッと決めて好感度上げられるんだろうに。更に凹むぜ。

 

「あー……その、なんだ。そうだ、風呂入ってこいって。お前の為にお湯抜かずに置いてあるんだ」

 

「……一緒に入ってください」

 

「ピャ」

 

「どっから声出しました?」

 

 いや、ダメだろ……付き合ってもない異性と風呂に入るなんて……

 

 でも多分求めてるの兄とか父性とかそういうのだろ……? 一緒に居て安心させてやりたいとは思う、9割ぐらい。1割は下心。男の子だもん。

 

「ちょっと待ってろ、ホムラ叩き起してくるから……」

 

「じょーだんです。でも先生、不安なのは本当ですよ?」

 

「ウッ」

 

 これが……良心の呵責……!? 

 

「な、なんか他に無いか? それ以外なら何でも叶えてやるから……」

 

「言いましたね? じゃあ今夜一緒に寝てください。お風呂上がったらまた戻ってきますから」

 

「え」

 

「じゃあお風呂入ってきます。また後で」

 

 今回の学び。安易な約束をしてはいけない。

 

「よし……! ちょっとずるかったかな……? ……皆にもこのやり方教えてあげよっと」

 

 外からなんか聞こえてきた気もしたが、そんなものを気にする心の余裕はもう無かった。

 




落ち込んでるのも本当だけど、女の子は強かな生き物なのです


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