代償があるタイプの異能持ち女の子vsチートヒーラーvsダークライ 作:ステラァァァァ!!!
何が言いたいかと言うと、ハッピーエンド保証です。軽い曇らせぐらいはあるかもだけど。
監視の目こそ無いとはいえ、代償者の日課は定められている。今のところ居眠りなどこそあれサボりは無いが、果たして点呼に揃っていなかったりしたらどうなるのか。まあ、どの道代償者に懲罰を与えられるような奴はいるとも思えないが……
だが、日課が定められているということは休日も定められているということで。具体的に言えば日曜日と祝日は点呼も無く自由に過ごせるようになっている。勿論捕食者が現れた時に対応できるようにしておく必要はあるが。分かりやすく言うと最低一人は30分以内に戻ってこれるところに居る必要がある。
とはいえ逆に言えばその範囲内に居れば何をしてもいいという訳で。だから大体──
「わー! なにが『残念だったな!』なの! 残念なのはその復帰性能だよ!!」
「ふっ、どのみちマダンテで……あ、これメガンテですね……さよなら……」
「波動弾、波動弾、波動弾……!」
「ええい! 俺は仕事中なんだよ! もう少し静かに遊べ!」
「こっちだって遊びでやってるんじゃないんだよ!?」
逆ギレされました。自室を溜まり場にされているチートヒーラーです。そりゃゲーム機は最新のを揃えておいてるし、自由に使っていいって言ったけどさ……!
「大体お休みにまでお仕事してるせんせーが悪いでしょ。なにやってんの? それ」
「転校生の受け入れ準備」
「え、誰か来るんですか?」
「分からん。行けたら行くわ〜って言ってた」
「絶対来ないじゃないっすか。流石に冗談っすよね?」
本当は行かせられたら行かせるわ〜である。安易に移動させると戦力が偏って終わるので。稼働してる代償者は少ないのだ。候補はいっぱい居るらしいが。
「まあ多分ちゃんと来るぞ。曰く『もう使い物にならなくなった』代償者らしいから」
「私達の末路?」
「言い方……」
明るく言うことじゃないぞ絶対。逆にもう開き直るしかないってことかもしれんが。
「どんな子なんです?」
「えーっとな……『振動』の異能持ちだと。地震起こして雑魚を飲み込むのが専らの役割だったらしい」
「白ひげ?」
「オタクは話が早くて助かるな……」
そう聞くとなんかクソ強そうねこの子。だから酷使されたのか……? 範囲攻撃出来そうだし……
「代償はなんなんすか? 息子に刺されるんすか?」
「オヤジから離れなさい。えっとな……『歌』?」
「歌? 作曲家か何かですか?」
「分からん、そこまで書いてないし。会ったら聞いてみてくれ」
歌が代償ってなに? 異能を使う度歌わなきゃいけないとか? 急に歌うよ? 俺の歌を聞けぇ! の方かも。
「じゃあ予習としてみんなでゴリラのB下縛りで大乱闘を……」
「それは楽しいのか?」
確かに振動での攻撃だけども……いや、衝撃波では……?
「そんなわけで今日は転校生をお迎えします」
「わーい、ぱちぱち~……なんで私だけ?」
「いきなり全員で囲むのも良くないだろ。その点お前なら良い感じに場を和ませてくれそうだからな」
「お? 褒められてる?」
「おう。馬鹿が居ると明るくなっていい──やめろ、俺が悪かった。お前に殴られたら即死だぞ俺は」
ホムラと二人で正門にて転校生──というかぶっちゃけ傷病兵を待つ。なんで急にこっちに送ってくる気になったのかね……なんてとぼけるのはよそう。どうせ代償を支払った奴を治せるかの実験だ。馬鹿にしやがって。
「あ、来たっぽいよ」
「全然分からん……エンジン音か?」
「んー……気配?」
なんかこういうところで生物としての格の違いを感じる。代償者を増やしてないのってもしかして反乱されないように……? なんなら現状でも負けかねんし。コイツらに通常兵器は効くのかね。
来たっぽいと言われてからしばし待って、車から降りて来たのは……
「ちょ、せんせー、なにあれ! 凄いことになってるんだけど!」
「あー……そういう感じ?」
ホムラ達と同じ年頃の少女。ただその見た目は明らかにおかしくて。
『初めまして、アマネと言います』
真っ黒な外殻に覆われた異形の右腕。皮膚ではない、鉱物とも生命ともつかない何かで出来たその腕で、スケッチブックに書いた文字で名乗ってくれた。
……どこから突っ込んだらいいんだ? これ。とりあえず一つ聞きたいのは──
「持ちづらくないのか? ペン」
『慣れれば割と』
じゃあいっかぁ! よろしくなァ!
「アマネちゃんってどこで戦ってたの? てかどこ住み? SNSやってる? 大丈夫大丈夫、ちょっと休憩するだけだから。足疲れたでしょ?」
『えっと……』
「ええい困らせるな。すまん、頭が心底残念なだけで悪い奴じゃないんだ」
「お、せんせー喧嘩なら買うよ?」
移動中にホムラがダルがらみしている。まあこうなると思って連れてきたわけなんだが……まさか筆談主義とは思わんかった。読めなかった……! このリハクの目をもってしても……! いや、読んで会話してるんだけどな。
「あー……とりあえず荷解きしてくるといい。手伝いが要るなら俺……はまずいか、このアホで良ければ連れてってくれ」
「なんか細かい作業難しそうだしね~。せんせーは後で私の部屋来てね?」
「コンプラ違反……!」
『ありがとうございます。必要そうならお願いしても?』
「はーい。じゃあ当直室で待っとくね~」
「終わるか手伝いが必要になったら来てくれ」
と、ひとまず見送りまして。
「なあホムラ。あれって……」
「捕食者の腕だねぇ多分。ああいうの斬ったことあるし」
「うーん、厄ネタ……」
なんてもの押し付けてくれてるんですかね。なんであんな事になってるのかと考えれば、いくつか候補は思いつくが、ゲーム的に考えれば……
「代償者ってもしかして捕食者の細胞とか入ってたりする?」
「あっはっは、そんなん入ってたらとっくに死んでるって。……武器には使ってるみたいだけど」
「絶対それじゃん」
武器に飲み込まれたとかじゃんあの腕。……いや、コイツらが知らないだけでこっそり細胞埋め込まれてるとか、捕食者の血を輸血されてるとかの線もあるか? そっちな気もする。
こう……耐用限界を越えると捕食者に変貌する、みたいな。それが過去に市街地であったせいで代償者に消えない偏見があるみたいな。クソ……俺に友達の一人でも居りゃ合ってるか聞けたのに……!
「なあ、お前らって代償払えなくなったらどうなんの?」
「え? どういうこと?」
「ほら、例えばシオンが記憶全部失くしてもなお異能を使おうとしたら、みたいな」
「うーん……どうなるんだろ。使えないんじゃないかな。私の場合は、ほら。そんな状況になる前に失血死するし」
「要検証……できるわけねぇ~……」
ちょっと全部の記憶失くすまで戦って来てくんない? なんて言う奴もう生かしておいちゃ駄目だろ。吐き気を催す邪悪……!
そんな会話をしているところにノックの音。もう荷解き終わったのか? とドアを開けてみれば。
『すいません、鍵が開けられず。手伝っていただけると……』
「あー……その腕じゃあなぁ」
「よし、行くよせんせー。男らしさを見せるチャンス!」
「お前らの方が力強いんだが……?」
男らしさなんて……ねぇ……? 子供だけ戦わせてる時点でそんなものもう無いよ……
「ほらせんせー、ちゃきちゃき動いて~」
「お前も手伝えや」
「アマネちゃんと仲良くなるのに忙しいも~ん。ねー?」
『良いのでしょうか……?』
あったよ、男の仕事! 具体的には棚の上にCDとか本とか並べること。身長的にコイツらじゃ一番上に届かないからね。……じゃあここに置いちゃ自由に降ろせなくなるのでは……? 俺チョンボしてない?
『台使って取りますから』
「あ、なるほどね。……声出てた?」
とりあえず指示に従って開封&運搬・設置って感じ。アマネとやらの方が運搬は向いてそうな気もするが。よし、とりあえず次の箱を開封──
『あ、待って』
「せんせー、待ってだってー」
「あ? 何を?」
べりべりと箱を開封してみれば。
「あー……その……すまん……殴ってくれ」
『言わなかった私も悪いですから』
下着とかの男が見ちゃいけないもの。と……その、なんだ。一見リップスティックなんだけど……こんな箱に入ってるってことは、まあそういう玩具なんだろうなって。
「というか、声全く出ないのか? 咄嗟の唸り声すら出てないが」
『はい。捧げてしまったので』
「『歌』だろ? 代償。それならこう……歌えなくなるとかじゃないのか? 音痴になるみたいな……それか音楽について忘れるとか……?」
『代償の払い過ぎ……聞いたことありません?』
「無いなぁ。ホムラは?」
「同じく。シオンちゃんなら知ってるかも?」
『では、そこからお伝えしましょうか──』