ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー~アナザーワンの記録~   作:睡眠タイム

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と言う訳で、本編です。
因みに再投稿するにあたって、加筆修正をしました。


青いオンリーワンパン職人

 

 

俺の名は青葉健二郎。

 

 

56歳のしがないパン職人だ。

 

 

子供の頃にあんパンを食べて、『世の中にはこんなに美味い物があるのですか!』と感動した事が切欠で、『自分もこんなに美味しいパンを作って沢山の人を幸せにしたい』と言う気持ちを抱き、パン職人を志した。

 

 

そして14年前の2011年に独立して自身の店----『大パン神』を持ち、自身の好物であるあんパンを始めとした様々パンを作って売り、人々に幸せを届ける日々を過ごしている。

 

 

「おはようございます、青葉さん」

「おはようございます。 今日も早いですね」

 

 

常連の1人である主婦の赤城さんが買い物袋を下げて暖簾をくぐったので、俺はエプロンの紐を結び直しながら、にこやかに振り返った。

 

 

「あんパン、焼けたかしら?」

「はい。 ちょうど今、二回目が焼き上がった所です」

 

 

ショーケースから、湯気の立つあんパンを一つ紙袋に入れる。

 

 

「やっぱりここのが一番だわ。 うちの子、青葉さんのあんパンじゃないと食べないんですよ」

「嬉しいこと言ってくれますね。 じゃあ、これはおまけ」

 

 

つぶあんの小さなパンを、そっと袋に足した。

 

 

「え、いいんですか?」

「新作の試作なんです。 お子さんに感想、聞かせてください」

 

 

赤城さんは笑顔で頭を下げ、朝の光の中へ戻って行くその背中を見送りながら、俺は今日も焼き上がるパンの匂いにそっと胸を膨らませた。

 

 

 

 

今から語られるのは、そんな俺が体験した不思議なある日の出来事の記録である。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

とある夏のある日。

 

 

俺は何時も通りパンを作って売り、その後一時店を閉めて休憩時間を過ごしていた。

 

 

店の奥の小さな休憩スペースには年代物のエアコンが一台、まるで老人が咳をするようにゴゴゴと唸りながら冷気を吐き出し、窓の外では朝から容赦なく照りつける太陽がアスファルトを融かさんばかりに熱し、蝉の声が耳を劈くように鳴り響いていた。

 

 

「あぁ暑い。 全く……昔はこんなに暑くなかったんだよなぁ……」

 

 

俺は額に浮かんだ汗をエプロンの裾で拭いながら、過去を懐かしんでいる。

 

 

「……? 何だ?」

 

 

その時外が騒がしい事に気付いた俺は外に出ると、皆の視線が空の方を向いていたので其方を向くと、その先には背中に巨大な翼を生やし、鳥の様な意匠の青白い全身の一つ目の化け物がいた。

 

 

「我が名は疫病のペスティス。 深淵なる厄災・クラディスの一角!」

 

 

その青い化け物----ペスティスが聞かせたのは、『ユニバース大戦』と言う厄災とスーパー戦隊達の大規模な戦い、テガソードという神と指輪の争奪戦の事だった。

 

 

その話を聞いた俺は、唯愕然とするしかなかった。

 

 

俺達が平穏に過ごしていた日常やこの地球の裏で、そんな大変な事が起きていた何て……。

 

 

「人間共の願いが汚れ、テガソードは弱体化した。 だから、その身勝手さで、貴様達は滅ぶのだ!!」

 

 

その言葉を聞いた俺は、胸の中の激しい感情を打つけた。

 

 

「勝手な事を言うな! それじゃあ……俺の『自分の作った美味しいパンで沢山の人を幸せにしたい』と言う願いは……それも御前等にとっては『悪』なのかよ!?」

 

 

最初に満たしたのは、理解の追いつかない茫然と日常の足元が音もなく崩れる恐怖だったがそれ以上に沸き上がったのは怒りだった。

 

 

俺の願い——美味しいパンを焼き、人を幸せにしたい——。

 

 

それが身勝手の証のように断じられた事が許せなかった。

 

 

「下等な人間よ。 所詮御前達の大半は、指輪に選ばれなかった時点で『主役にすらなれず、願いを叶える権利すら無い負け組連中共の集まり』なのだ! スーパー戦隊の主人公以外のメンバーの様にな!」

 

 

ペスティスが手を翳すと、俺達の目の前に黒い煙と共に異形の集団が現れた。

 

 

「キャアアアアー!」

「助けてくれーー!」

 

 

あまりの恐怖と混乱から俺も思わず逃げ出そうとする。

 

 

「キャア!」

 

 

その時、耳に届いた悲鳴の方に視線を向けると、其処には大鎌を構えた数名の骨の様な黒マスクの異形が、小さな少女と彼女の母親と思われる女性に、少しずつ迫ろうとしている光景が飛び込んできた。

 

 

俺は見捨てられずに駆け出す。

 

 

「ウオオーー!」

 

 

そして距離が近付いたのを見計らって、俺はその儘跳び蹴りをその内の1人にお見舞いし、他の奴等も巻き込まれる形で倒れる。

 

 

「早く逃げて下さい!」

「は、はい!」

 

 

母親は自身の娘を抱き抱え、急いで逃げる。

 

 

それを見届けた俺は、再び黒マスクの異形達と戦う。

 

 

「オリャアー!」

 

 

しかし倒しても倒して減る事無く、逆に増えていく異形の前に、歳の所為もあって少しずつ追い詰められていく。

 

 

(……こんな事で諦めるもんか! 若し此処で倒れたら……俺はもうどんなに美味しいパンを作っても、沢山の人を幸せに何か出来ない……!)

 

 

あんパンを買いに来る親子、常連の笑顔焼き立ての湯気。

 

 

それらは決して汚れた物ではない。

 

 

『恐怖』よりも、『守りたい』という想いが勝る。

 

 

確かに俺は唯のパン職人だ。

 

 

それでも、この手で誰かを幸せにしたいと願う心は誰にも貶めさせない。

 

 

その静かな決意が、五十六歳の男の胸の奥で確かに火を噴いていた。

 

 

 

 

(……だから、諦めるかーー!)

 

 

 

 

その時俺の手が眩い光を放ち、やがて光が収まったので見ると、右手には銅のガントレッドソードが装着され、左手には銀色の指輪が存在していた。

 

 

「これは……あの5人が持っていた……!」

 

 

俺の脳裏に、あのペスティスに捕まった5人の戦士----ゴジュウジャーが所持していた物が浮かぶ。

 

 

唯一違うのは、彼等が所持していた物は銀色だったのに対し、俺が今所持している物は銅色であり、指輪の方も銀色であると言う事だった。

 

 

でも何故か分からないが、胸の奥に熱い物が込み上げて来る感じがあった。

 

 

意を決した俺は、立ち上がる。

 

 

 

 

「指輪の力よ! 御前が少しでも俺の願いを支えてくれる力になるんなら……俺と共に戦ってくれ!」

 

 

 

 

そして俺は右手の銅のガントレッドソード----銅のテガソードに銀色のセンタイリングをセットして、叫んだ。

 

 

 

 

「エンゲージ!」

 

 

 

 

「一・二・一・二」の手拍子を行った後、光に包まれた俺の体が変わる。

 

 

其処にいたのは、額に六角形、胸にDの意匠の付けた青色の戦士だった。

 

 

 

 

「デンジブルー!」

 

 

 

 

それに反応して、あっという間に異形の連中が取り囲む。

 

 

正直、恐くないと言えば嘘だ。

 

 

でも此処で逃げたら、俺は今まで関わった人達の信頼。

 

 

そして……自分の願いを裏切る事になる。

 

 

『ナンバーワン』何かになれなくても良い。

 

 

 

 

それでも、この願いだけは守り抜く!

 

 

 

 

「見やがれ! 俺の願いに込めた力を!」

 

 

 

 

異形の連中が飛び掛かる。

 

 

「六段蹴り!」

 

 

俺は無我夢中で連続キックを浴びせる。

 

 

次の異形が大鎌で襲い掛かるが刃の付いたスティックを取り出して、迎え撃つ。

 

 

「ブルースクリューキック!」

 

 

次に俺はジャンプからのきりもみ回転を加えた飛び蹴りを放ち、異形の連中を吹っ飛ばした。

 

 

「ハァ……ハァ……! ウオオー!」

 

 

徐々に疲労が体に溜まるのを感じつつもそれを振り払い、異形の連中共へ立ち向かって行く。

 

 

 

 

化け物共。

 

 

 

 

確かに御前達からすれば、俺は『指輪の戦士の劣化版』……願いを叶える権利も無い『負け犬』だろう。

 

 

 

 

俺は震える拳を握り締め、迫り来る異形の連中の1人を力強く殴り飛ばす。

 

 

 

 

でもそんな俺にだって。

 

 

 

 

譲れない物が……守りたい物があるんだ!

 

 

 

 

御前達がナンバーワンなら、こっちはオンリーワンだ!

 

 

 

 

何故なら『青』だって、戦隊の歴史の主人公の1人なのだから。

 

 

 

 

その時、剣でも銃でもない強い力が体中から湧き出てきた。

 

 

 

 

そうか、これが。

 

 

 

 

『戦隊』か。

 

 

 

 

俺は自身の体に宿った『想い』を青い光に変えて、空に放出する。

 

 

 

 

そしてその直後、俺の意識は遠退いて行った。

 

 

 

 

☆☆

 

 

 

 

「合計、580円です」

 

 

会計を済ませて商品を受け取った客が、店のドアを開けて出て行く。

 

 

 

 

『あの出来事』から1ヶ月が経った。

 

 

 

 

あの後目を覚ますと、『あの指輪』は俺の手から消えていた。

 

 

『あの指輪』が何だったのか。

 

 

何故俺を選んだのか。

 

 

其れは、もう今となっては分からない。

 

 

変身する事は出来無いけど……それでも俺の願いとそれに掛ける強い想いは、今でもこの胸の中に残っている。

 

 

その時店の扉が開き、1人の青年が入店してくる。

 

 

「邪魔するぜ、店長」

「やぁ、弩城(どき)君。 いらっしゃい」

 

 

この店の常連さんの1人である青年を、何時もの様に温かく出迎える。

 

 

「今日のお勧めは何だ?」

「今日お勧めのパンはだな……」

 

 

俺は今回の一件で、改めて自分の願いについて考える。

 

 

『美味しいパンを作って、沢山の人を幸せにしたい』

 

 

子供の頃、あんパンを一口食べて世界が変わって見えたあの瞬間。

 

 

それが俺の原点だ。

 

 

願いを叶える権利なんて、誰かから与えられる物じゃない。

 

 

それは、自分の中から湧き上がって来る物だ。

 

 

俺はパン屋の職人。

 

 

あんな怪物と戦う力も、世界を救う力も無い。

 

 

でも俺の作ったパンを食べて誰かが笑顔になり、それが明日を生きる力になるのなら。

 

 

 

 

ナンバーワンになれなくてもいい。

 

 

 

 

誰かに認められなくてもいい。

 

 

 

 

だから俺は。

 

 

 

 

これからも美味しいパンを作って、沢山の人を幸せにしていきたい。

 

 

 

 

何故なら。

 

 

 

 

それが俺だけの『オンリーワン』……『願い』なのだから。

 

 

 

 

 




設定解説①(主な登場人物)


・青葉健二郎(あおば けんじろう)

イメージCV&演者:串田アキラさん
年齢/56歳
指輪/オンリーワン戦隊リング デンジブルー
職業/パン職人
願い/自分の作る美味しいパンで沢山の人を幸せにしたい


この話の主人公。

子供の頃に食べたあんパンの美味さに感動した事が切欠でパン職人を志し、その後2011年に独立して自身の店----『大パン神』を持ち、自身の好物であるあんパンを始めとした様々パンを作って売り、人々に幸せを届ける日々を過ごしている。

『復活のテガソード』の時のペスティス率いるモリス軍団の市街地への侵攻時に、『オンリーワン戦隊リング デンジブルー』と『銅のテガソード』を使ってデンジブルーに変身してモリス軍団と戦う。

その後は再び『自分の作る美味しいパンで沢山の人を幸せにしたい』と言う願いを胸に、パン職人としての日々を過ごす。


余談&小ネタ
・名前の由来は、原典のデンジブルーの変身者である『青梅大五郎』+演者の『大葉健二』氏から。
・あんパンの件は、青梅が『あんパン中毒』と揶揄される程のあんパン好きである事が元ネタ。
・店名である『大パン神』の由来は、『パン』+デンジマンの1号ロボである『ダイデンジン』から。
・職業がパン職人なのは、青梅が『ゴーカイジャー』の『199ヒーロー大決戦』に客演したり際にパン屋台をを曳き、近所の幼稚園でアンパンを配って回っていた件が元ネタ。
----更に言えば独立して自身の店を持った『2011年』は、客演した『ゴーカイジャー』及び『199ヒーロー大決戦』の放送&公開された年が由来となっている(また年齢が56歳なのも、大葉健二の『ゴーカイジャー』客演時の年齢が由来である)。

因みに『イメージCV&演者』が串田アキラさんなのは、この作品を最初に書く時から既に決めていました(私の中での、『若しデンジブルーのオンリーワン(ユニバース)戦士を演じるなら、串田アキラさん以外は考えられない』と言う個人的なイメージが主な理由です)。


・赤城(あかぎ)

青葉の店の常連の1人であるご近所の主婦。
作中には登場しなかったが、小学生の息子が1人いる。
名前の由来は、本家『デンジマン』でのデンジレッドの変身者である『赤城』一平から。


・弩城(どき)

青葉の店の常連の1人である青年。
作中では触れられ無いが、刑事である。

余談
イメージコンセプトは、『ゴジュウジャー世界の元ネタキャラ』。
その為、本家の元ネタキャラとはあくまで同姓同名の別人です(由来の理由に関しては、大葉さんと串田さんのとある『繋がり』から取っています)。
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