異世界銭湯おっさん、転移勇者たちが凄い【戦闘スキル】なのになぜか俺だけ【銭湯スキル:せんとう】で追放された件~好きに銭湯ライフ楽しんでたら、身も心もとろけた美人聖騎士や聖女が連日押し寄せてくる~ 作:もちぎゅう
「さあぁ~~お待ちかねの銭湯タイムだぜ~」
「ふぉおおお! よ、ヨシロウ……っ!」
「わぁ~リリシアさん、ヨダレがたれてますよ~♪」
「こ、これは仕方ないだろ、セウ!」
(……ええぇ)
「むふふ~~すぐに堕ちちゃいますからね~リリシアさんは」
「むっ、今日はそう簡単に屈服しないからな! 前回の私は油断していただけだ!」
「はいはい、ま、入ってからのお楽しみですね~♪」
「むぬぬ……た、楽しみすぎる!」
(ちょっと……待って)
「ハハっ、やっぱ締めは銭湯だろ」
「ああ、ヨシロウ! 早く中へ案内してくれ!」
「セウも番頭としていっぱい働きますよ~~♪」
ワイワイと盛り上がる俺たちの後ろで、ある人物が声を張り上げた。
「ちょ、ちょっと、待ちなさ~~~~~い!!」
振り返ると、聖女エリーナが真っ赤な顔でこちらを見ている。
え? どしたん、そんなに興奮して。息荒いけど大丈夫か?
「よ、ヨシロウさん、待ってください!」
「どうしたんだ聖女様? はやく入ろうぜ」
「入るって何をですか!? あとリリシア! あなたも当たり前のようにその妙な建物に入ろうとしないでください!」
「そんな構えなくていいって。単にひとっぷろ浴びて、疲れをいやそうぜって話だから」
「こ、この施設は……お、お風呂……なのですか?」
聖女様がおずおずと尋ねてくる。
「そうだ。俺のスキル【銭湯】で出したお風呂施設だよ」
「す、スキルでお風呂を……?」
「まあ無理に入れとはいわけんど。入らないのはもったいないぞ」
「よ、ヨシロウ! はやく! はやく!」
「そ、そうですか……では、私たちもお邪魔させていただきます」
リリシアのがっつきぶりを見せつけられて、聖女様も興味が出てきたのだろうか。
困惑しつつも銭湯に入ることにしたようだ。
レトロ銭湯の店内へ踏み込むと、聖女ご一行の視線が周囲をせわしなく動き回る。
「こ、この空間を一瞬で作ったのですか……み、見たことないものがたくさんあります」
「よ、ヨシロウ殿。天井で首を振っている羽のついた金属の籠は何でしょうか!?」
聖女ご一行がざわめき始める。
「天井のあれは扇風機だな」
俺は壁際でブーンと音を立てて首を振る昭和レトロな扇風機を指差した。
……おお、そういえば前回は扇風機なんてなかったぞ。銭湯レベルが上がったから、中身の設備が進化しているってことか。
ざっと見る限り、ロビーには他にも設備が増設されているようだ。だが、それは湯上がりのお楽しみに取っておこう。
「じゃ、女性用の脱衣所はあっちの赤い暖簾だ。その先に女湯があるからゆっくり楽しんでくれ。セウ、聖女様たちの案内頼んだぞ」
「はいは~い。この番頭美少女セウちゃんにお任せくださ~い。グフフ……」
セウから不穏な声が漏れたが、まあ気にしないでおこう。
「……あ、あの、ヨシロウさん」
「ん?」
聖女様が少しモジモジしながら俺を見上げた。
「これからは……聖女様ではなくエリーナとお呼びください。助けていただいた命の恩人に、そんな堅苦しい呼ばれ方をするのは心苦しいのです」
「ああ、わかった。存分に楽しんでくれ、エリーナ」
「はいっ!」
俺がそう言うと。エリーナはパッと花が咲いたような、元気で眩しい笑顔を見せてくれた。年相応の女の子らしい仕草が一段とその可愛さを増した。
長くきらめく銀髪に綺麗で落ち着いた青い瞳。リリシアが凛々しい顔立ちだとしたら、エリーナは母性溢れる優しい顔立ちってとこか。
いずれにせよ、二人とも顔面偏差値は異常に高い。異世界美少女たち恐るべしだ。
とまあ、おっさんのどうでもいい感想はここまでにしてと……
女湯の暖簾をくぐっていったのは、聖女エリーナ、聖騎士リリシア、他の女性聖騎士二人、そしてシスターのロイノさん。
肩書だけ並べると、レトロ銭湯にこのメンツが入るなんてまさに異世界銭湯って感じだ。
「そして……男湯は俺ひとりと」
女子率が高すぎな気もするが、一人湯はすべてを独り占めできてる感があり、それはそれでよい。
さぁ~~銭湯に集中するぞぉ~~
青い暖簾をくぐり、男湯の脱衣所でカゴを手に取り着ている服を脱いでいると――
『ご主人様~~聞こえますか~~?』
頭の中に直接、セウの呑気な声が響き渡った。
やっぱりきたか……
俺はハァと息を吐き、服を畳みながら心の中で返信する。
『このイタズラ番頭娘め。念話で話しかけて気を散らそうとしても、その手にはのらんぞ』
『え? どの手ですか~~やだスケベ! いまからセウは番頭として大事なお仕事なんで、壁からの音声でお楽しみくださ~い♪ んじゃ念話しゅうりょうで~す。グフフ……』
んん? セウの仕事って……
直後、木壁の向こう――つまり女湯の脱衣所から、黄色い悲鳴が響き渡った。
「ひゃああっ!? せ、セウさん、いったいな、何をっ!?」
「セウは触ることで、お客様の身体の疲れをサーチできるんですぅ~♪」
「だ、だからって、そんなところまで触らなくても……ふあぁっ!?」
「ふむふむ、エリーナ様のお胸はリリシアさんに比べれば小ぶりですが、フォルムが実に素晴らしいですね~! あ、お尻もキュッと引き締まっててかわいぃ~~♪」
「ちょ、セウさん! そこは!?」
「なぁあああっ! セウ、きさま聖女エリーナ様になんという不敬を……ひあっ!?」
「リリシアさんもですよ~~ほーら、肩から背中がバキバキですね~! あと、後ろにいるお三方も逃がしませんからね~! みんなまとめて触りまくりま~~す♪」
「「「ひぃいいい~~~いやんっ!」」」
「…………」
いやいやいや、となりの壁から色々聞いちゃいけない声が漏れすぎなんだが……
何やっているんだセウの奴……番頭の域を完全に超えてセクハラ番頭になってるじゃねぇか。
よし。俺の耳は何も聞こえない。俺は無心だ――煩悩を捨てよ。
気を取り直した俺は、脱衣所から浴室へのガラス引き戸をガラガラッと開けた。
「おお……っ!?」
足を踏み入れるなり、俺は思わず声を漏らした。
湯船が増えている……!
手前には、いつも通り心地よい湯気を立ち上らせているメイン浴槽。だが、その奥にある小ぶりな浴槽からは全く湯気が上がっていない。青いタイルが透けて見える。
つまり……これは水風呂だ!
ってことは、だ。
俺の熱い視線が、浴場のさらに奥……片隅に新設された木製の重厚なドアへと向かう。
ドアには木製プレートでこう刻まれていた。
【ドライサウナ(乾式)】
「サウナまで付いてやがるじゃねぇかぁあああ!!」
水風呂とサウナだとぉ。
きたぁあああああ! これはヤバイ!!
おっさんのテンションは、サイクロプス戦以上の爆上がりを見せるのだった。