異世界銭湯おっさん、転移勇者たちが凄い【戦闘スキル】なのになぜか俺だけ【銭湯スキル:せんとう】で追放された件~好きに銭湯ライフ楽しんでたら、身も心もとろけた美人聖騎士や聖女が連日押し寄せてくる~ 作:もちぎゅう
セウさんに渡されたタオルを頭と身体にしっかりと巻いて、木枠の扉を開けると――
「あ、熱いですっ!?」
私の全身にぶつかってきたのは強烈な熱気の塊でした。
「ほ、本当だ! なんだこの部屋は!」
「せ、聖女様……これは私たちを蒸し焼きにするつもりではっ!?」
「みなさん、い、いったん落ち着きましょう……!」
にしても……
な、なんなのですかこの部屋、あまりにも熱すぎます!
「セウぅ、なんか想像してたのと違うぅ」
リリシアもこのサウナという部屋は初めてなのでしょうか。勝手の違いに酷く戸惑っている様子ですね。
「みなさ~~ん。サウナの中ではお静かに~♪」
「いやいやいや、セウ。これはあんまりだ! ただ熱いだけじゃないか!」
「「そうだそうだ! こんなのちっとも気持ち良くない!」」
「期待していましたのに……これじゃあ……」
リリシアに続き、聖騎士の二人やシスターのロイノまでも揃って口を尖らせる。
ですが、確かにこれは少しがっかりかもしれません……。ただ熱い部屋の中に押し込められているだけなんて……。
「だまらっしゃい!!」
ピーン! と音が立ちそうなほど、セウさんの頭の上のアホ毛が垂直に跳ね上がりました。
「サウナ初心者どもがピーピー鳴かないのです! 素直に言われた通りにしてなさい!」
なんと、あの呑気なセウさんが珍しく怒っています。
「ま、まあ……セウがそこまで言うなら」
「むふふ~~それでいいのですぅ~至福の時は必ずきますからね~♪」
私たちは釈然としない思いを抱えつつも、階段状になっている木製の段差に各々腰掛けました。
それにしても……やっぱり熱いです……。
ジリジリ……ジリジリ……ジリジリ。
乾燥した熱さが、肌から身体の奥深くまで浸透していきます。ポトリと額から汗が落ち、次第にその量が全身からじんわりと溢れ出してきました。
……あれ?
でも……ちょっと悪くない気がしてきました。
毛穴という毛穴から、これまで体内に溜まりに溜まっていた日々の疲労や重苦しさが、汗とともにどくどくと流れ出していくような感覚。それと同時に、血流が全身を凄まじい勢いで巡り始め、指先や足先までぽかぽかと温かな活力で満たされていくような。
ジリジリ……ジリジリ……ジリジリ。
でも、やっぱり熱いは熱いですね。
身体が内側からも外側からも限界までポカポカに温まり切った、まさにその時。セウさんが爽やかに口を開きました。
「は~~い、みなさん一旦外に出ましょ~~♪」
セウさんに促されるまま部屋を出た私たちは、すぐ脇にあったお湯を桶で掬い身体の汗をサッと流し落とします。
あ、ちょっと気持ちいい……
「じゃ、みなさん浴槽に入りましょ~~♪」
「おお、 待ちかねたぞ――って痛ぁっ!? セウ、何をするんだ!」
メインの大きな湯船にダイブしようとしたリリシアの耳を、セウさんが容赦なく掴んで引っ張りました。
「リリシアさん、そっちじゃないです。こっちの浴槽ですよ~」
セウさんが指差したのは、メイン浴槽の隣にある小ぶりな浴槽でした。
「でも、この浴槽って」
「はいっ、エリーナさんの予想通り水風呂ですよ~~あわてずゆっくり入ってくださいね~♪」
や、やはり水風呂ですか。
お風呂なのに冷たい水に入るなんて……。
ですが確かに、身体の内側も外側も極限まで温まりきっている今の状態なら――。
私は意を決して、ゆっくりと水風呂の中へ足を沈めました。
「あふぅんっ!?」
ヤダ……っ、また変な声が出ちゃいました!
水に浸かった瞬間、肌の表面にピリッとした冷たさが走り思わず身体が跳ね上がってしまいました。ですが次の瞬間、その刺激は柔らかく身体を包み込んでくるような心地よさへと変わっていく。
頭の中の濁りがスッキリと研ぎ澄まされ、日常のストレスや疲労がスーッと水の中に溶けて消えていくような感覚……
これ……きもちぃいいい!!
水風呂で火照りを鎮めた後は、セウさんが用意してくれたリクライニングチェアに深々と寝そべって休憩します。
目を閉じると、なんともいえない恍惚な気持ちになるぅ。
ふはぁ………………なんなのですかこれは……天国ですか。全身の力が抜け落ちて、まるで雲の上に浮いているみたいです~~しあわせですぅ~~。
チェアの上で至高の脱力感に浸っていると、私の視界の頭上にひょっこりと可愛らしい少女の顔が現れました。
「むふふ~~さすがの聖女様も完全に堕ちましたかぁ~~♪」
ハッ……いけない! 聖女たるもの常に平常心を保たねば!
「ふ、ふふん。な、なんのことでしょうか……?」
「あれあれ~~? 無理はいけませんよ~聖女様~♪」
「む、無理などしていません! もちろん気持ち良くはありますが、常に前線を戦い抜いてきた聖女パーティーを舐めてもらっては困りますよ」
そう宣言しながら横を向くと――
「ふはぁああ~~ん、これすごぃいいぃ~~♡」
リリシアは……ダメです。
口を半開きにして完全に椅子に沈み込んでいます。この子、真っ先に堕ちちゃってる。
ですが、私にはまだ頼もしい聖騎士二人とロイノがいます。聖女パーティーはこれくらいでは揺らぎませんから!
「ふはぁ~~熱いと冷たいさいこ~~♡」
「からだの喜びがとまらないんんん♡」
「もう、ここにずっといたいですぅ~~♡」
……って、こっちの三人もデロデロに溶けているぅうう!?
なんてこと、私以外は全員堕ちてるなんて……
「い、生き残りは私だけ……ですが、私はそう簡単には屈しませんよ!」
「は~~い、そのお言葉待ってました~~♪ では聖女様ご一行、2回目突入で~す♪」
はひ?
「って、2回目ぇええええ!?」