異世界銭湯おっさん、転移勇者たちが凄い【戦闘スキル】なのになぜか俺だけ【銭湯スキル:せんとう】で追放された件~好きに銭湯ライフ楽しんでたら、身も心もとろけた美人聖騎士や聖女が連日押し寄せてくる~   作:もちぎゅう

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第16話 聖女エリーナ視点、聖女は「ととのう」を知ってしまう(後編)

 に、2回目……再び相まみえると言うのですか。あの至福のセットに。

 

 くっ……いいでしょう! 聖女の意地にかけて受けて立ちます! 

 

 タオルをしっかり濡らして頭に巻き、身体にも巻き直してパチンと自分の頬を叩く。そしてぐっとペットボトルを空にして水分補給も忘れずに。さぁ準備万端、いきますよ!

 

 ――2回目のサウナ。

 

 まずはここの熱に耐えなければ。

 心地よいとはいえ、凄まじい熱気と乾燥した空気が襲い掛かってきますからね。

 そこまで長時間の滞在は無理です。セウさんも個人の無理ない範囲で、と言ってましたし。

 

 あれ……?

 

 熱いことは熱いのですが、なんでしょう……サウナの熱気が身体に馴染んできました。

 なんというかクセになるといいますか。

 さて、まずはじっくりとサウナで汗をかきます。うん、この全身から絞り出てくるよな感じが良いですね。

 身体がいい具合に暖まりきりました。サウナ室を出て汗をひと流しして。

 

 からの~~間髪入れずに水風呂です!

 

「ふはぁ……っ~~やっぱりいいぃいぃ……っ!」

 

 ハッ……! セウさんがニヤニヤと意地悪な笑みでこちらを見ています。聖女ともあろう者が、なんてはしたない声を上げてしまったのでしょう……

 

 いえ、今の声は単に気持ち良かったにすぎません。

 堕ちたわけではないのですから。

 

 でも……でもなんなのでしょうか、この頭の中がふわぁ~ほわぁ~んとしてくる多幸感。回数を重ねるごとに、どんどん強まってくるのです……!

 

「むふふ~~聖女様ぁ~~3回目はいけそうですかぁ~」

 

 リクライニングチェアで身体を休めていると、再びセウさんが私の顔を覗き込んできました。

 

 フフ……そうくると思ってましたよ。

 

「もちろんです。今から行くところですから」

 

 そして、3回目――。

 

 あれ? なんか3回目行きたくてウズウズしてない?

 やだ……。私、いくらでもこのループにいけそうになってきています……!

 

 

 三度目のサウナ。

 もう見慣れた風景になってきました。

 そういえば、セウさん最初は下段か中段に座りましょうと言ってましたね。

 ってことは上段は上級者の段ということですか。

 

 3回目だしちょっとだけ行ってみましょうかしら。

 

 私はそろそろと上段に移動すると……あ、かなり熱い。これはきますね。

 ですが、アリかもしれません。

 フフフ、上段をクリアしたとなると私も上級者の仲間入りでしょうか。

 

 って、私はなにを考えているの!? 上級者を目指してどうするんですか!?

 いけないいけない、危うくセウさんの術中にハマるところでした。

 

 サウナで汗をかくこと数分。

 

 そこへセウさんが入ってきました。

 

「さぁさぁ~~そろそろ観念してくださ~い♪」

「なにをですか? 私は常に平常心です」

 

 上段を乗り切った私がサウナを出ると。待望の水風呂が待ってました。

 

「聖女様はこれに耐えらえますかねぇ~~3回目の水・風・呂♪」

 

 くっ……初の上段を経験して、身体の熱さは最高潮に達しています。

 ……今回の水風呂、どれほどのものなのでしょうか。いえ、どんなに良くても、聖女としての節度はわきまえます! えいっ!

 

「負けません、聖女たるもの~~常に平常心でふゅ~~♡」

 

「は~~い、語尾に♡いただきました~~♪」

 

「ふぁああ~~ダメですぅ~~これ好きぃ~~♪」

 

 ふはぁ、やっぱり良すぎたぁ~。

 

「別に無理して我慢しなくてもいいんですよ~毎日頑張っている自分へのご褒美だと思えばいいんじゃないですか~」

「ご褒美……」

 

 そう言われてみれば、確かにそうかもしれません。聖女だろうが、聖騎士だろうが、シスターだろうが、素晴らしいものは素晴らしいのです。自分を律するだけが全てではない、ということですね。

 なんだか頭が恐ろしいほどスッキリとした私は、自然とそう思えるようになっていました。ヨシロウさんの【銭湯】……本当に、不思議な力です。

 

 ちなみに、サウナ上段は必ずしも上級者というわけでもないようです。熱さに強い方や徐々に段数をあげていくなど、人によって楽しみ方は色々なようですね。

 

 奥が深いです……サウナ。

 

 最後はみんなで大きな温かい湯船に肩まで浸かり、身体の芯まで温め直してから浴室をあとにしました。

 

 脱衣所に用意された浴衣を着て外のロビーへ出た私達。

 外の空気が気持ちいい……それに、この浴衣という服ははじめて着ましたが、お花の刺繍が所々にあり、とってもかわいいです。

 

 あ、ロビーの椅子にヨシロウさんが座っていました。

 まあ、なんて満足そうな表情をされているのでしょう。男湯を存分に楽しまれたのですね。

 

 ふと壁に立てかけてあった大きな姿見の鏡に、自分の姿が映り込みました。あ……私、ヨシロウさんとまったく同じ顔をしています。

 私はその久しく見ていなかった自分の顔に少しばかり驚きました。ここ最近、自分一人の時にみる表情はどんよりとした表情になりがちだったからです。

 

「ふふふ、どうやら「ととのった」ようだな」

 

「トトノウ……?」

 

 首をかしげる私に、ヨシロウさんはニッコリと優しく微笑みかけます。

 

「頭がスッと軽くなっているのに、身体はほわほわしてるだろ?」

 

「は、はい! たしかに……!」

 

「サウナと水風呂に交互に入って、心身ともに最高にリラックスして仕上がる状態のことを「ととのう」って言うんだよ」

 

「最高のリラックス……あ、ああ……そうですね! 私は今、まさにととのいました! これほど気持ち良くなったのは、生まれて初めてです!」

 

「ヨシロウ、あたしも完璧にととのったぞ」

「「「私たちもです……!」」」

 

 そんな私たちの素直な反応を見て、ニンマリと笑みを浮かべるヨシロウさんとセウさん。

 

 ふぅ……本当に入って良かったです。それになんだか、身体が信じられないくらい軽いです。あまりの軽さに、体内から魔力が漏れ出てしまいそうなほど――

 

『キィイイン……ッ!!』

 

 突然、神聖な音がロビー中に響き渡りました。

 

「せ、聖女様! 結界が……結界が発動しています!?」

 

「ひゃあっ!? す、すみませんっ!」

 

 な、なんてことでしょう! 詠唱もしていないのに、私の身体から溢れ出た聖属性魔力が勝手に結界を展開してしまいました……私ったらどれだけ気が緩んでいるのかしら、気を付けないと……

 

 ですが、この体内を巡る凄まじい魔力の感覚。長年の過労で滞り目詰まりを起こしていた魔力の循環が、ヨシロウさんの銭湯で「ととのう」ことによって完全に洗い流されたかのような。この感じ、かつての全盛期、いえそれ以上の力が身体中に満ち溢れています。

 

 ととのうって、すごすぎます!

 

 そして、ポカポカと温かい身体の奥から湧き上がる妙なウズウズ感。

 ええぇ……っ!? もしかして私の身体、もう一回あのお風呂とサウナに入りたがっているのですか……。

 

 これはダメです……完全にハマってしまいそうです……!

 

 そんな新たな扉を開いてしまった私たちに、ヨシロウさんは声をかけます。

 

「よし、みんな揃ったな。んじゃ入るか」

 

「ええぇ、まだどこかに入るのですか!?」

 

「ああ、風呂上がりのお楽しみだ」

 

 まだ楽しむというのですか! 楽しみすぎなのでは?

 

 ヨシロウさんの視線はロビーの奥へと伸びています。その先には入口と同じく暖簾という布が掛かっていました。

 

 その暖簾には「お食事処」という文字が。

 

 なんだかとてもいい匂いが漂ってきました。

 

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