異世界銭湯おっさん、転移勇者たちが凄い【戦闘スキル】なのになぜか俺だけ【銭湯スキル:せんとう】で追放された件~好きに銭湯ライフ楽しんでたら、身も心もとろけた美人聖騎士や聖女が連日押し寄せてくる~ 作:もちぎゅう
ふはぁ~~【銭湯】スキルのレベルアップによるサウナと水風呂の増設は、マジで最高だったな。サウナで汗をかき水風呂で締めゆったりと休憩。この覚醒しつつも頭がほわほわとした心地よい感覚、一度味わったらやめられん。
そしてそして……今回のスキル進化のレベルアップは、サウナと水風呂だけにとどまらない。
ロビーの奥に見える、真新しい暖簾。
実は銭湯に入った初手の段階でしっかりチェック済みだった増設施設だ。
俺はみんなを促し、ロビーの奥へと移動を開始した。
「ヨシロウ様、足の痛みが綺麗さっぱり無くなっています!」
歩きながら、シスターのロイノさんが自分の足をペタペタと触りながら驚きの声をあげた。サイクロプス戦での怪我で足を痛めていたはずだが、どうやら銭湯で疲労が抜けたようだな。
「おお、そりゃ良かった」
「すごいです……お風呂に入っただけで、足の痛みが完全に治るだなんて……」
聖女エリーナが驚きと同時に少しばかり肩を落とす。
「でもエリーナの
「そ、そうですね」
実際エリーナの
その治癒があったからこそ、銭湯で疲労を取ることができたんだろう。
そして、聖女の興味は強制的に別なものへと移される。
ガココン! ゴットン! ジャラジャラジャラ……!
「ひゃあっ! な、なんですかこの大きな箱は?」
「ああ、これは全自動洗濯機といって、服を洗う魔道具だ」
「服どころか、聖騎士たちの鎧が豪快に洗われていますよ!?」
セウが全部ぶち込んだようだな。相変わらず頑丈な洗濯機だ。
「もう……ヨシロウさんといると、ビックリすることしか起きませんね……」
エリーナは呆れと感動が混ざったような溜息をついた。
「まあまあ、さあ入ろうぜ」
「おしょくじ……どころ……?」
俺たちが立ち止まったのは、ロビーの最奥に設置された真新しい暖簾の前だ。
【銭湯】スキルのレベルアップによって増設された新施設――それは「お食事処」である。暖簾に書かれた文字は俺には日本の漢字に見えるが、スキルに翻訳機能があるのか、みんなにもちゃんと読めているようだ。
「分かりやすく言うと、ごはんを食べるところだな」
入浴後の飯。俗にいう、サ飯(サウナ飯)。それこそが銭湯における最大の楽しみのひとつ言っても過言ではない。とくにサウナの後の飯は最高なのだ。
俺がワクワクしながら暖簾をくぐると――
「いらっしゃいませ~~ようこそ、温井お食事処へ~~♪」
元気に手を振っていたのは、セウだった。
「てか、セウが店員さんなのかよ……」
「当然です! セウは万能番頭美少女ですから~~♪」
テーブル席につくと、セウが人数分のお冷を運んできた。全員でコップを手に取り、一気に飲み干す。
なにはともあれ水分補給だ。
「……お、おいしいです」
「サウナの後は味覚が鋭くなってるからな。水だけでも美味いだろ?」
「はい!」
思わず声をあげたエリーナたち。いきなりご飯をお腹に入れるのは良くないしな。
「さてさて~~ではメニューを見てみるか」
俺はテーブルの上の卓上メニューを開いた。
おおぉ……カレーライスにラーメン、各種定食まで……しっかり銭湯飯の王道と定番を押さえているな。
「ヨシロウさん、なんだか見たことのないお料理ばかりです……」
メニューを覗き込むエリーナが首をかしげる。
「安心してくれ、どれも飛び上がるほど美味いぞ」
「そうですか……なら、たまには少し刺激のあるものも食べてみたいですね」
「なら、このカレーなんてどうだ? スパイスが効いててサウナ後に最高なんだよ」
「ヨシロウさんがおススメするなら、私、それにしてみますね」
フッと柔らかく微笑む聖女エリーナ。
……あかん、普通にかわいすぎる。さっきまでサウナでデロデロに溶けていたとは思えない可憐さだ。
「あたしはこのラーメンというのにしてみようかな。熱いスープと麺……実に興味深い!」
「おお、そいつも超お勧めだ。絶対に後悔させないぞ、リリシア」
「そ、そうか……では、ラーメンにする!」
こうして各々が注文する料理が決まったところで、再び店員さんを呼ぶ。
「はいは~い。やっと決まりましたかぁ~~? 待ちくたびれましたよ~♪」
まあ店員さんって言ってもセウなんだがな。
いつの間にかトレードマークのハチマキを外し、頭にフリルたっぷりのメイドカチューシャを装着して現れた番頭娘。和風銭湯の暖簾の下でメイドカチューシャ……和洋折衷もはなはだしい。
「え~~っと、聖女様ご一行はみなさんカレーですね。あとリリシアさんがラーメンと」
どうやらエリーナに釣られて、他の聖女パーティーご一行さまたちも全員カレーにしたようだ。その彼女たちに向けて、セウのアホ毛がピーンと垂直に立った。
「んじゃ、カレーの人たちは辛さを決めてくださ~い♪」
ほう、辛さを選べるのか。
なになに……普通、中辛、辛口、激辛、地獄の5段階と。ま、今回俺はカレーにしてないがこれは嬉しいオプションだな。
基本的にこの異世界では、強い刺激物は主流ではないらしい。なので、エリーナをはじめほとんどのメンバーは安全策で「普通」をオーダーした。
ただ一人――その人物を除いて。
「わたくしは、「地獄」でお願いします」
静かに挙手したのは、シスターのロイノさんだった。
「ろ、ロイノ……! だ、大丈夫なのですか……!?」
エリーナが目を丸くして心配の声を上げる。
「はい、聖女様。わたくし、実は辛いものが大好きなのです」
マジか……この店の基準はわからんが、さすがに「地獄」はやめといた方がいいと思うんだが。
「ふっふ~ん、ここの地獄は生半可な辛さじゃありませんよ~本当に大丈夫ですか、シスター?」
セウがニヤニヤしながら煽るように尋ねる。
「はい、もちろんでよセウちゃん。わたくしの故郷は唐辛子料理で有名でして、子供の頃から毎日激辛を食べて育ちましたので」
「ほう……? セウの地獄カレーに真っ向から勝負を挑むというわけですね、ムフフ」
「ええ、教会に入ってからは刺激的な食べ物が少なくて、楽しみだわ、ウフフ」
なんだかよく分からない辛味のバチバチな戦いが始まってしまった。
「……で、最後にご主人様は……へぇ~~いかにもなおっさんコースですねぇ~でもセウ、そういうの大好きですよ♪」
俺の注文内容を見て、セウがグッと親指を立てる。
サウナ上がりのおっさん注文だ。ああぁ、楽しみ。
「では~~これより調理に入りますので、今しばらくお待ちくださ~い♪」
そう言うと、セウはメイドカチューシャを外し、どこからか取り出した真っ白なコック帽を速攻でかぶり直した。
「え? ちょっと待て……セウが調理するのか?」
「当たり前です~~セウは万能番頭美少女なのですよ♪」
盛大なドヤ顔を見せつけたあと、セウはそのまま厨房の方へと消えていった。すげぇな……もはやスキルガイドのサポート枠を大幅に超えた万能すぎる番頭少女だ。
しばらくすると――
厨房の方からあたたかな湯気と、食欲を激しく刺激する芳醇なスパイスの香りが漂ってきた。
ああ、早く来ないかな……サ飯タイム、楽しみすぎるわ。