異世界銭湯おっさん、転移勇者たちが凄い【戦闘スキル】なのになぜか俺だけ【銭湯スキル:せんとう】で追放された件~好きに銭湯ライフ楽しんでたら、身も心もとろけた美人聖騎士や聖女が連日押し寄せてくる~ 作:もちぎゅう
「おおぉ……た、たからばこぉおおお~~!」
「ご、ご主人様ぁあ~~開けましょう、早く早く~ッ!」
ダンジョンの通路の隅にひっそりと置かれた箱。俺とセウは目を輝かせ、吸い寄せられるように宝箱へと手を伸ばした。
だが――。
「ヨシロウさん、セウさん! ちょっと待ってください!」
ガシッと強い力で肩を掴まれ、エリーナに強引に制止された。
「え? どうしたんだエリーナ、宝箱だぞ? ロマンの詰まりまくった箱だぞ?」
「宝箱は、必ずしも武器や道具が入っているとは限りません。魔物である可能性もあります」
「えっ……魔物?」
おおぉ、魔物というとミミック的なやつが潜んでいると。
つまり浮かれてうっかり開けてしまうと、そのままガブリとかもあり得るわけだ。
「ヨシロウ、セウ。それ、たぶんミミックだぞ」
リリシアが、剣の柄に手をかけながら警戒露わに呟いた。エリーナも「私もリリシアの意見に賛同します」と真顔で頷いている。
「ちなみに、なんで分かるんだ?」
「ここは第一層だ。基本的に浅い階層に置かれている宝箱は、探索者を嵌めるための魔物(ミミック)であることが多い。仮に本物の宝箱だったとしても、中身はどこにでもあるような薬草とか、ハズレばかりだからな」
う~~む、そうなのか。
いや、しかし……それでも開けてみたいじゃないか!
なんといっても人生初の宝箱なんだぞ。これは相当にテンション上がるだろ。
それに、必ずしもハズレと決まったわけじゃない。
ん……待てよ?
熱湯をかけてみたらどうだ。
もし中身がアイテムなら、頑丈な木箱の隙間から多少お湯が入る程度なら大丈夫だろう。もし魔物(ミミック)なら、熱湯を浴びせられればタダじゃ済まないはずだ。
「よし、ちょっと試してみるか」
水量出しすぎに注意してっと……
ジャ~~~
宝箱に向けて、熱湯をかけてみた。
すると次の瞬間――。
「――シャァアアッ!?」
ガバァッと宝箱が生き物のように上空へ飛び上がり、パカッと蓋が開いく。内部にはズラリと並んだ鋭いギザギザの歯と、赤くヌメつく巨大な舌。
「うぉおおおっ!?」
「ひぃあぁあああっ!? ご、ご主人様ぁあああッ!」
ミミックだったぁああ!
悲鳴をあげてパニックになるセウの襟首を掴んで後ろへ引っ張りつつ、俺は熱湯をミミックのデカい口にぶち込む。
「――キシャッ!?」
内部から一瞬で茹で上げられたミミックは断末魔の叫びをひとつあげると、ボトリと地面に落ちてピクピクと痙攣した後に動かなくなった。ふぅ~~直に開けなくて良かったよ。
こうして俺の期待に満ちた初宝箱体験は、見事なハズレ(熱湯茹でミミック)として幕を閉じたのだった。
◇◇◇
気を取り直して、さらにダンジョンを進むこと数時間。
途中で殺風景な石畳の通路が終わり、とんでもなく開けた空間へと飛び出した。
「うおっ……。え、外に出たのか!?」
思わず天を仰ぐ。頭上には天井が見えないほど高い空のような空間が広がり、足元にはどこまでも続くかのようなだだっ広い平原と巨岩が転がっている。ダンジョンの中にいるはずなのに、まるでいきなり地上に放り出されたような錯覚を覚える。
「ふふ、そう勘違いしてしまいますよね。ですが、ここも正真正銘ダンジョンの内部ですよ」
エリーナが優しく微笑みながら教えてくれた。
「各階層には、このように物理的な常識を超えた広大な大空間が存在するのです」
ふはぁ~~凄すぎるな、ダンジョン。
おっさんファンタジーのスケール感に圧倒されっぱなしだ。
広大な平原の岩陰でみんなと昼食をとり、少し休憩挟んでからさらに数時間ほど先へ進んだ頃。
「さて、そろそろ第一層の終わりです。もう一踏ん張り頑張りましょう」
エリーナがみんなを鼓舞するように言った、まさにその時だった。
ズシ……ズシ……
前方から、地鳴りのような重い足音が響いてきた。
俺たちの前に姿を現したのは、ゴツゴツした不気味な岩石が組み合わさってできた巨大な人型モンスター。
「え、エリーナ様……ゴーレムです!!」
リリシアが素早く剣を構え、緊張感ある声を張りあげる。
「ゴーレム……!? なぜ一階層に、そんな上位の魔物が……」
エリーナが驚きの声をあげる。どうやらこのゴーレム、本来ならこんな一階層に出てくるような魔物ではないらしい。
「はぁああッ!」
動きがゆっくりなゴーレムに対して、先手必勝とばかりリリシアが凄まじい踏み込みで肉薄し、一閃を叩き込むが――。
ガギィィンッ!
「くっ……硬い!」
リリシアの鋭い斬撃が、表面の岩を少し削るだけで弾き返されてしまった。
続いてアヤノの光矢やエリーナの光弾魔法が降り注ぐが、ゴーレムは痛がりもせずブーンと腕を振るって俺たちを叩き潰そうとしてくる。
俺も試しに【熱湯(100℃)】を勢いよくぶっ放してみたが、岩の表面からジュウジュウと湯気が立ち上るだけでダメージになっている気配がない。まあ相手は生身の生物じゃなく動く岩石なんだからあまり効果がない。
しかもタチが悪いことに削られた表面の岩が、周囲の土や砂を吸い寄せてジワジワと再生し始めているのだ。
「ギゴゴゴ!」
不気味な音をたてて、その巨大な腕を振り下ろしてくるゴーレム。
あんなので殴られたら即死だぞ……
「核だ! ゴーレムの胸の奥にある『核』を直接破壊しなければ、永久に再生し続けるぞ!」
リリシアが叫ぶ。
「私が狙います!」
アヤノが光の弓を限界まで引き絞った。
「――――
拡散させるのではなく、すべての威力を一点に集束させた一矢。
一筋の光線と化した矢が、一直線にゴーレムの胸部を穿つ。岩の装甲が激しく破砕され、その奥で妖しく光る核が露わになった。
「よし、アヤノ殿――!」
その一瞬の隙をリリシアが見逃すまいと闘気を練り上げた剣を振り下ろす。
「――――
「ゴ……ガ……」
露出した核が真っ二つに分断され、内部から粉々に砕け散った。核を失ったゴーレムは一瞬で動きを止め、ガラガラとただの岩石の山となって崩れ落ちる。
「ふぅ……やった」
アヤノとリリシアが肩で息をする。だが、安堵の息を漏らしたのも束の間――
ズシ……! ズシ……! ズシ……!
地鳴りのような異音が重なり合って響いてくる。巨体を揺らすゴーレムが3体、ゆっくりと姿を現した。
おいおい冗談だろ……!?
「な、ばかな……」
「ひぃいい、いっぱいきたぁ……」
リリシアの眉間に皺が入り、セウはパクパクと口をひらいてビビりまくる。
「くっ……ここは一旦後退して、態勢を立て直しましょう……!」
エリーナの指示でうごきはじめるみんな、俺が放心状態のセウに起きろと揺さぶっていると聞きなれない声がうしろから聞こえる。
「ん……待たせた」
どこか気怠げでいて綺麗な声。
声のした方へ視線を向けると――。
ひらひらとした純白のレースと高級そうなフリルがたっぷりあしらわれたドレスに身を包んだ、人形のように美しい少女がポツンと立っていた。
場違いすぎるドレスの裾を少しだけ持ち上げ、少女はフリル付きの日傘を優雅に肩に立てかけている。
「……え?」
あまりの光景に、俺は思わず間抜けな声を漏らしてしまった。
てか、誰?
なんでダンジョンにドレス? この子、社交会と間違えて迷い込んできたの?
混乱する俺たちをよそに、ドレス姿の美少女は無表情のままトコトコとゴーレムの群れの前へと歩み出た。
そして、俺たちの方をチラリと振り返り、ポツリと呟いた。
「ん……待望の援軍とーちゃく」
……いや、援軍がドレス姿の少女ってどういうこと?