異世界銭湯おっさん、転移勇者たちが凄い【戦闘スキル】なのになぜか俺だけ【銭湯スキル:せんとう】で追放された件~好きに銭湯ライフ楽しんでたら、身も心もとろけた美人聖騎士や聖女が連日押し寄せてくる~   作:もちぎゅう

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第31話 ドレスを着た援軍? 王女様のばか力

「ん……きた」

 

 なんとも淡々とした口調。

 そんな突如として俺たちの前に現れたドレス姿の少女へ向けて、エリーナとリリシアが素早く片膝を突き頭をたれる。

 

 え? なになに?

 

「リアロッテ王女殿下……お越しいただき、心より感謝申し上げます」

 

「ん……エリーナもおつかれ。無事でなにより」

 

 ええぇええっ、この子が王女様!?

 

 俺は思わず二度見……いや、三度見してしまった。

 

 そこに立っていたのは、お茶会にでも向かう途中のような可憐なドレスを着た美少女だった。

 輝くような黄金色の髪はマンガに出てくるような縦ロール、そしてくりくりとした大きな瞳もまた吸い込まれそうな鮮やかな金色をしている。華奢でちっこい身体つきで、胸元はアヤノやエリーナと正反対のつつましい感じ。

 

 全体的なシルエットは完全に小さなお人形さんである。

 

「と、ところで姫様。もしかして、お一人でいらしたのですか? 騎士団の方々は?」

 

 顔を上げたリリシアが、周囲をチラチラと見回しながら尋ねる。

 

「ん……リリシアもおつ。ガストールの手回しがうざくて、騎士たちを動かせなかった。ゴメン」

 

「なっ! あの宰相め、王女殿下にまで圧力を!」

 

 リリシアが悔しそうに拳を握り締める。

 

「リアちゃん、なんでそんなドレス姿なの……ここ、ダンジョンだよ!?」

 

「ん……アヤノ。ちょっと無理やり抜け出してきたから着替える暇がなかった」

 

「無理やり抜け出してきたって……」

 

 呆然とするアヤノを余所に、マイペースの王女様。

 

 援軍が来るという話だったから、てっきり王国の精鋭騎士団か凄腕の冒険者チームでも駆けつけてくれるのかと思っていたら。まさかの第三王女様本人が、ドレス姿でたった一人で乗り込んでくるとは誰が想像できただろうか。

 

 しかも本人は「ん……」と気だるそうに鼻を鳴らしているだけで、焦る様子すらない。

 

「んじゃ……遅れた分は取り返す」

 

 そう言うと、その小さな王女様はフリル付きの日傘をパタンと閉じた。そして、華奢でほっそい腕をぶんぶんと風切り音を立てて回し始め、ドレスの裾をひらひらと揺らしながらゆっくりとゴーレムたちの方へと歩き出す。

 

「お、おいおい。王女様一人で行かせていいのか?」

 

 あんな華奢な女の子がゴーレムの鉄拳を食らったら、ひとたまりもないだろ。

 

 しかし、エリーナは落ち着いた様子で首を横に振った。

 

「大丈夫です、ヨシロウさん。リアロッテ様に関しては……下手に制止せず、自由に行かせて差し上げた方が良いのです」

「そうだな。来てしまった以上は、姫様にお任せしよう」

 

 2人ともどこか諦めたような、それでいて妙に信頼したような顔で頷いている。

 

 わけがわからん。

 

「ギギギギ……」

 

 俺たちがそんなやり取りをしている間にも、最前線に躍り出た小さなリアロッテに向かって、ゴーレムの巨大な腕が振り下ろされる。

 

 人間など一撃で押し潰す、絶望的な質量の鉄槌。

 

 しかし、リアロッテは逃げる素振りすら見せず、ただちっこい右拳を固めて迫りくる巨大な岩の拳に向かって――

 

「えい」

 

 かわいらしい掛け声と共に、ちょこんと拳を突き出した。その直後――

 

 ドコォォオオンッ!!

 

 ダンジョンを揺らすような、凄まじい衝撃音が爆発。

 砕け散り激しい土煙と共に粉々になって弾け飛んだのは、ゴーレムの巨大な岩石の腕の方だった。

 

「ええぇ……なにあれ。なんで岩を素手で粉砕してんの?」

 

 困惑しすぎて声が裏返る俺に、エリーナが苦笑いを浮かべながら解説してくれる。

 

「リアロッテ様は、生まれつき体内の魔力を外部へ放出する魔法を一切使えません。その代わり……体内で生成される膨大な魔力のすべてが、そのままご自身の『身体強化』へと自動変換される特殊な体質なのです」

 

「し、身体強化……」

 

 体質ってレベルじゃないだろ。規格外すぎるんだが。

 

「うりゃ」

 

 そんな俺の驚きなど一切気にする様子もなく、リアロッテは軽やかなステップでゴーレムの胸元へと肉薄すると、小さな拳をそのまま豪快に突き刺した。

 

 バコォオンッ!!

 

「ギギッ……!?」

 

 厚い岩の装甲を容易く貫通し、その衝撃は胸の奥にあった核にまで到達する。核を失ったゴーレムは、ガラガラとただの瓦礫となって崩れ去った。

 

「ん……もういっちょ」

 

 リアロッテは間髪入れずに二体目のゴーレムへと向き直り、今度はその華奢な足でゴレームを蹴る。

 

 ドズゥンッ!

 

「ギギギィ……」

 

 そのかわいらしいキックがゴーレムの足を粉砕する。そのまま怒涛の連続攻撃。小さな手足が動くたびに、ゴーレムの岩肌が面白いくらいに砕け散っていく。

 

 俺は一体何を見させられているんだ。おとぎ話のお姫様どころか、バトル漫画の主人公みたいな暴れっぷりじゃないか。

 

「ふぅ……これで2体目」

 

 二体目の核もあっけなく粉砕し、着地したリアロッテ。このまま最後の3体目もサクッと倒してしまうのかと思いきや――。

 

「……ん」

 

 ぴたりとリアロッテの動きが止まった。

 

 そして、小さな手で自分の腰をトントンとさすり始め、俺たちの方をチラリと振り返る。

 

「……ん。ちょっと代わって」

 

「「「「えぇえええっ!?」」」」

 

 いきなりの選手交代宣言。

 

「ち、ちょっとリアちゃん、どうしたの!?」

 

 アヤノが慌てて駆け寄ると、リアロッテは無表情のまま、少しだけ顔を歪めてポツリと漏らした。

 

「ん……張り切りすぎて腰ピキッてなった」

 

 マジか。まあ二体もゴーレム倒している時点で十分すぎる成果だが。

 

「ギギギギ……」

 

 残された最後のゴーレムが、好機とばかりに腰を押さえるリアロッテに向かって巨大な腕を振り上げる。

 

 そうはさせんとばかりに、エリーナが素早く前方へ躍り出て光の結界を展開した。

 

 ドゴォオンッ!

 

 ゴーレムの重い一撃を結界が受け止め、激しい火花が散る。

 

「リリシア、アヤノ攻撃を!」

 

 2人は攻撃に移るが、ゴーレムが激しく腕を振り回しているためなかなか攻撃の糸口がつかめないでいた。

 

 ここで俺に何かできること。

 

 俺は背中にかつがれてダウンしていた番頭少女を揺さぶった。

 

「セウ、起きろ! いつまで寝てんだ!」

 

「ふはっ? ひやぁああっ!? ご主人様ぁあ、ってゴーレム近いぃいい!?」

 

 目を覚ましたセウが、バタバタと手足を暴れさせてパニックになる。

 

「落ち着け。銭湯スキルのレベルが4に上がっただろ。なんか新しい攻撃とか応用とかないのか」

 

「え、えーっと、えーっと……あっ! 水圧調整できるようになってますぅううっ!」

 

 おおぉ、水圧の調整か。よし……

 

 俺は勢いよく飛び出る熱湯のイメージをねりはじめた。

 

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