異世界銭湯おっさん、転移勇者たちが凄い【戦闘スキル】なのになぜか俺だけ【銭湯スキル:せんとう】で追放された件~好きに銭湯ライフ楽しんでたら、身も心もとろけた美人聖騎士や聖女が連日押し寄せてくる~ 作:もちぎゅう
さてさて、レベル4初銭湯だ。
俺は脱衣所にて、長時間の徒歩とゴーレム戦で汗とホコリにまみれた服をかごに入れる。初ダンジョンだったが色々あったし、どっぷり疲れたな。だがそんな全てを最高に変えてくれるのが銭湯である。いやぁ~楽しみ。
そんな風に着替えを進めていると――。
『もしも~し♪』
脳内にダイレクトに響く、あの能天気な声。セウからの念話だ。
今回も例のごとく絡んできた。いちいち相手にして調子に乗らせるのも面倒なので、こういう時は適当にあしらうのが一番である。
『なんだセウ』
『今、なにしているかわかりますぅ~♪』
『知らんよ』
『ムフフ~~脱いでるんですよぉ~~♪』
『そりゃ脱衣所なんだから脱ぐだろ』
そう、冷静に返しておけばいい。過度な反応を見せれば相手の思うツボだ。大人のおっさんたるもの、ハチマキ小娘に振り回されてなるものか。
『あれぇ~~? ご主人様、ずいぶんと冷めてますねぇ~。ちなみにぃ~、いま壁の向こうの脱衣所で一緒にぬぎぬぎしてるのは~~シスターに女騎士に現役JK、さらには聖女さまと王女さまですよぉ~~♪』
ぐっ……!
言われてみれば、とんでもないメンツじゃないか……。シスター(ロイノさん)、女騎士(リリシア)、JK勇者(アヤノ)、聖女(エリーナ)、そして第三王女(リアロッテ)。ファンタジーにおけるドリームチームだ。
って、なにがドリームチームだ。いかんいかん、気にしないぞ。
『あ~~だんまりしちゃってぇ~今の微妙な間は、絶対にあんなことやこんなことを妄想してましたねぇ~♪』
『むぅ……妄想などしてない。断じてしてない』
『あやしいですねぇ~グフフ♪』
『いいからセウ、ちゃんとリアのことを見てやってくれよ』
あの子は無表情なわりに好奇心が強すぎて、わざと窓から侵入して「湯の人」に締め上げられてみるような無茶苦茶なことをするからな。暴走を止めるのは番頭であるお前の役目だぞ。
『もちろんですよぉ~この美少女番頭にお任せあれぇ~。さあさあ、おうじょさまぁ~ぬぎぬぎぃ~♪ グフフフ……』
そして念話がプツリと切れた。
……いつも思うんだが。
この念話イベントって毎回要るか?
まあいい、俺は俺で一人で男湯を存分に楽しみ尽くすまでだ。
◇◇◇
男湯の引き戸をガラガラと開け、広い浴室へと足を踏み入れた。
まずは洗い場に座り、カランを押してお湯を頭からドバッとかぶる。
「ふぁ~~気持ちえぇ~~」
シャワーから出る温かいお湯が身体を包み込み、一気に緊張がほぐれていく。シャンプーとボディーソープでしっかりと身体の汚れと汗を洗い流していると――。
壁のすぐ向こう側、つまり女湯の方から賑やかな声が響いてきた。
「さあさあ~~王女さま、キレイキレイしますよぉ~~♪」
「ん……お湯が出てきた」
「シャンプ~リンス~~さわさわ~♪」
「ん……いいかおり」
「ボディーソープで入念にぃ~~さわさわ~あらゆるところをさわさわ~♪」
「んっ……セウ」
「むふふ~~王女さまぁ、ずいぶんと大人しくなってきたじゃないですかぁ~グフフ」
「むぅ……んじゃ、私はこっちさわる」
「きゃっ! リ、リアロッテ様!?」
「ん、デカい。なに食べたらこんなになる?」
「ほっほ~たしかにエリーナさんはお久しぶりですからねぇ~♪」
「い、いけませんそこはぁああっ!!」
おいおい……なんちゅう声出すんだよ。
耳に入って来る情報しかないから確かなことは言えんが、どうやら聖女エリーナが餌食になったようだ。
「ん……セウ、つぎはあっちいく」
「は~~い、いきましょいきましょ~」
「ん……リリシアとアヤノもいい。ロイノも隠れ巨乳」
「「うへへ~~♪」」
「「「「いやぁああんッ!??!?」」」」
「ん……これクセになりそう」
……おい、何やってんだあいつら。
壁越しに聞こえてくる黄色い悲鳴と、怪しげなセクハラ合唱。完全にただのエロおやじではないか。
どうやらセウがリアの暴走を止めるどころか、リアの中に眠っていた恐ろしいスケベの才能を開花させてしまったようだ。
……まあ、仲良く(?)打ち解けているならいいか。
これ以上深く考えるのはやめだ。
「さてと……」
身体を綺麗に洗い終えた俺は、湯船に入ろうと浴室全体ぐるりとを見回した。
全体的に広くなっているな……
「ん……? あれは」
銭湯レベル4になったことで、洗い場やメインの湯船が広くなっただけではない。浴室の奥に今まではなかった新しい浴槽が増設されているじゃないか。
おおぉ、ニューフェイスか。
俺はその小さめな浴槽に近づいて、じっくりと観察した。
湯船の深さはやや浅めで、左右の対面する壁面には長方形の怪しげな金属板がぴったりとはめ込まれていた。そして、「心臓の弱い方、ペースメーカーをご使用の方は入浴をご遠慮ください」との看板がより独特な緊張感を感じさせる。
なるほど、ついにこいつのお出ましってわけか。
お湯に足を一歩踏み入れると――。
ビリリッ……!
「うむっ!」
足先から腰にかけて、電撃が走ったかのような鋭い刺激がピリピリと突き抜ける。
思わず足を引っ込めそうになるが、じっと耐えて腰まで浸かるとそのピリピリとした電気の刺激が凝り固まった筋肉をギューッと揉みほぐしてくれるのが分かった。
そう、こいつは銭湯でもなかなかの曲者――
電気風呂である。
レベル4、なかなかに銭湯心をくすぐるじゃないか。