異世界銭湯おっさん、転移勇者たちが凄い【戦闘スキル】なのになぜか俺だけ【銭湯スキル:せんとう】で追放された件~好きに銭湯ライフ楽しんでたら、身も心もとろけた美人聖騎士や聖女が連日押し寄せてくる~ 作:もちぎゅう
「ふぅ~いい湯だった」
俺は男湯の暖簾をサッとくぐり、ホカホカと湯気を立てながらロビーへと出た。電気風呂のピリピリとした心地よい低周波の余韻が、今も全身の筋肉を内側からじんわりと温め続けている。
ロビーに出ると、ひとりの少女が待っていた。
「ん……よかった」
リアロッテ王女だ。濡れた金髪をタオルで巻いており、その頬はいつも通りの無表情とは少し違う湯上がり特有のほんのりとした美しい赤みを帯びている。
言葉数は相変わらず少ないが、その金色の瞳を見れば分かる。心の底から銭湯を楽しんでくれたんだなと。
「ん……こしかるい」
リアは小さな手で自分の腰をさすりながら、不思議そうに体を軽くひねってみせた。
「当然です~~セウの電気風呂はそんじょそこらの電気風呂とは違いますからねぇ~~♪」
ロビーの奥からひょっこり顔を出したセウが、ハチマキのアホ毛を誇らしげに揺らしながら鼻を高くする。
うむ、まあこの異世界に電気風呂なんて存在する場所はここしかないと思うのだが、それは野暮な突っ込みというものだろう。何はともあれ、長年無茶な身体強化の反動に苦しんでいたという彼女の身体が楽になったのなら、銭湯の主人としてはこれ以上の喜びはない。
さて、初戦の激戦と長距離歩行でみんなお腹も減っているだろうし、そろそろみんなで飯でも食うかとそう思った、まさにその矢先の出来事だった。
「ん……あれ、なに?」
リアがトコトコと、小さな足音を響かせてロビーの奥へと歩いていく。
彼女の視線の先――ロビーの片隅に、なんだか少し仰々しい雰囲気を醸し出した革張りの重厚な椅子が、ズンと鎮座していた。
「ああ、あれはマッサージチェアだな」
「まっさーじちぇあ……?」
リアが足を止め、じっとその仰々しい椅子を見つめた。なるほど、銭湯レベルが4に上がったことで、ロビー設備が増設されたようだな。銭湯や旅館なんかでよく見かける、あの全自動マッサージ機である。
一見すると無表情なリアだが、その金色の瞳にはまたしても未知のなにかに対する好奇心の強い光――ワクワクとした輝きが宿っていた。
「これ、座る椅子……?」
「ああ。ただ座るだけじゃなくてな、機械の力で全身のコリを自動で揉みほぐしてくれる優れものなんだよ。試してみるか?」
「ん……やる」
リアは躊躇することなくトコトコと近づくと、革張りの深いシートの中にちっこい身体をすっぽりと沈めた。身体が小さいため、なんだか王様の玉座にちょこんと座った子供のようで見ているこちらが和む。
「よし、それじゃあスイッチを押すぞ。驚くなよ?」
俺がシートの横についている操作パネルを見て、全身おまかせコースのボタンをポチッと押した。
ブオン……と静かなモーター音が響き、まずは背もたれがゆっくりと後ろへ傾き始める。
「ん……倒れる……っ!?」
リクライニングによって一気に視界が天井へと開け、リアの身体が宙に浮くような姿勢になった。一瞬、目を見開いて硬直するリア。
だが、驚きはそれだけに留まらなかった。
ゴロゴロ……ギギギ……ッ
シートの内部から、滑らかな動きで突出してきた二つの硬い「モミ玉」が、リアの背中と腰のラインに沿ってググッと深く押し込まれたのだ。
「んんっ……!? せ、背中ゴリゴリ!」
「は~い、そこから叩きと揉みのダブルアタック入りますよ~♪」
操作パネルを横から覗き込んだセウがニシシと笑う。
直後、モミ玉が力強い円運動を描きながら、リアの凝り固まった肩の裏側そして背筋のラインを「ゴリゴリ、トントン」と絶妙な強さで叩き、揉み解し始めた。
「ん……っ、んんあぁっ……!」
押し殺したような小さな声が、リアの口から漏れ出た。人間が指先で押すのとはまた違う、機械だからこそ可能なしつこいほどに正確で力強い圧。それが、先ほど電気風呂でほぐれかけた筋肉の最深部にズドンと響いているのだ。
さらに、足元と腕の周りのエアバッグがプシューッと音を立てて膨らみ、ふくらはぎを左右から心地よい圧力でギュ〜ッと締め上げていく。
「んっ……足挟まれた……っ」
「ムフフ~エアバッグによる加圧マッサージ機能ですぅ~♪ 血行促進効果バツグンですよぉ~!」
全身を包み込む波のような揉みと圧迫。背中を叩かれ、腰を揉まれ、足元を圧迫されて解放される……その極上のリズムが繰り返される。
「ん……これ、魔法の指で……全身を撫で回されてるみたい……っ♡」
無表情の仮面が完全に剥がれ落ち、リアの瞳がトロ〜ンと蕩けていく。さっきの電気風呂に続き、あまりの心地よさに脳の奥までトロトロになりかけているようだ。
そんなリアのあられもない(?)姿に引き寄せられるように、脱衣所から髪を乾かし終えたアヤノ、エリーナ、リリシアの三人がゾロゾロと姿を現した。
「あれ……? リアちゃん、それマッサージチェアかな?」
「ん……アヤノ……これ、やばい……」
シートの上にぐったりと埋もれたまま、リアがどこか虚ろな目でポツリと呟いた。
「ひ、姫殿下! ど、どうされたのですか!?」
リリシアが警戒心を剥き出しにして、黒いシートに近づくと、セウが待ってましたとばかりに口をひらく。
「ふふ~ん、リリシアさんも試してみますかぁ~? 怖いですかぁ~~?」
セウがニヤリと笑い、リアの隣に設置されていたもう一台のマッサージチェアを指さした。
「くっ……怪しげなカラクリ仕掛けの椅子などに、このあたしが翻弄されるはずがないだろ。だが、リアロッテ様がこのような状態はいかがなものか! 安全確認としてあたしが試さねばなるまい!」
威勢よく言い放ち、ドカッとシートに深々と腰掛けるリリシア。
「は~い、パワーモード、強めコース入りますねぇ~♪」
セウがイタズラっぽくボタンを押し込んだ。
直後――。
ゴゴゴゴゴッ!!
「ぬおっ!? せ、 背中に何かが突っ込んできて……っ!?」
リリシアの背筋に、硬いモミ玉がダイレクトに突き刺さった。
「くっ……こ、こんなものに屈するあたしではない……っ。電撃の次は機械の傀儡にしようという魂胆か! だ、だが聖騎士の肉体は……ぐおっ!? つ、強い……ッ!?」
モミ玉が首筋から肩にかけて力強く「ぐい〜っ」と揉み込んでいくと、リリシアの強がりは一瞬で崩壊した。
「そこっ、コリコリ直撃してっ……あぁああっ!?」
またしてもテンプレのような屈服宣言を炸裂させ、背もたれに頭を預けて白目をむく女騎士様。
「ふふ、リリシアったら大げさですね……私も少しだけ体験させて頂こうかしら」
呆れ顔を見せつつも、興味津々な様子で三台目のシートへ腰を下ろす聖女エリーナ。
「それではエリーナさんには癒やしの和みコースをどうぞ〜♪」
セウが優しくボタンを押す。
リクライニングが倒れ、優しく滑らかな動作でモミ玉がエリーナの細い背中を撫で上げ、エアバッグがふくらはぎ周りをじんわりと包み込んだ。
次の瞬間――。
「あ……ふぁああっ♡」
またしてもロビー中に、聖女様のものとは思えない艶めかしい吐息が響き渡った。
「あ、すごいです……全身の力が……抜けちゃいますぅ……っ!」
「え、エリーナさん、 顔が真っ赤だよ!?」
アヤノが慌てて声をかけるが、エリーナはもう完全にトロトロの表情で、シートに体を預けてハヒハヒと息を吐くだけの存在と化していた。
「う、うわぁ……みんなすごい反応……。私もやってみようかな」
最後はおずおずとアヤノが四台目のシートへ。
「はいは~い、アヤノちゃんには肩こり集中ケアコースね~♪」
セウがセットすると、アヤノの身体を包み込むように機械が動き出した。
「わあ……っ、これ、すごい……! むかしやってみた痛いだけのマッサージチェアと全然違うよ! ふぁあ……気持ちいい……」
アヤノはさすが現代人(JK)だけあって取り乱すこともなく純粋にその最新技術の恩恵を噛み締め、うっとりと目を細めてシートに沈み込んでいった。
こうしてロビーの片隅に並んだ四台のマッサージチェアの上で、王女、聖騎士、聖女、勇者の四人が揃って機械のもたらす至福の快楽に身を任せ、ふにゃふにゃのトロトロに溶けていくという、なんともいえない光景が広がっていくのだった。