異世界銭湯おっさん、転移勇者たちが凄い【戦闘スキル】なのになぜか俺だけ【銭湯スキル:せんとう】で追放された件~好きに銭湯ライフ楽しんでたら、身も心もとろけた美人聖騎士や聖女が連日押し寄せてくる~   作:もちぎゅう

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第5話 風呂上がりのコーヒー牛乳と全自動洗濯機

「なあヨシロウ。ここは本当に貴族の屋敷とかではないのか?」

 

 風呂上がりの火照った身体を浴衣に包んだリリシアが、不思議そうに首をかしげた。

 

「ちがうぞ。ここは俺のスキルで出した建物だ」

 

「す、スキル……!? この建物がお前のスキルだと!?」

 

 リリシアの黒い瞳が限界まで見開かれる。

 

「そうだ。俺のスキルは【銭湯】っていうんだよ」

「いやいやいや……! 聖剣とか剛力といったスキルは聞いたことがあるが、お風呂を丸ごと召喚するスキルなんて聞いたことがないのだが!?」

「まあ、世の中には変わり種もいるってことさ。俺にとっては最高のスキルだけどな」

「た、確かにヨシロウは色々と変わってはいるが……ううむ、古代の失われしスキルなのだろうか、あたしの常識が追いつかん……」

 

 腕を組んでうんうんと唸る美人聖騎士。彼女にとって既存の概念にない【銭湯】は理解のキャパシティを超えているらしい。

 

「そんな細かいこと気にすんなって。それよりも……リリシア、こっちに来てみろ」

 

 俺は頭を抱えて唸っているリリシアをロビーの一角にある売店コーナーへと連れて行った。

 

 おお~~これこれ。

 ガラス張りのリーチイン冷蔵庫の中にずらりと並ぶ、色彩豊かなガラス瓶。

 

「ふむ、ビールはないか」

 

「むふふ~ご主人様~【銭湯】スキルのレベルが上がれば、キンキンに冷えた生ビールも出せるようになりますよ~♪」

 

 横からひょっこり顔を出したセウが、ニシシと小悪魔的に笑う。

 

「マジか……! レベルアップすれば、風呂上がりの生ビールまで開放されるのか!?」

 

 夢が広がりまくりじゃねぇか、このスキル。

 これは是非ともスキルレベルを上げていきたいぜ。

 

 が、とりあえず……

 

「ならば、今出せる最高かつ最もベタなこいつでいくか……お、あったあった」

 

 俺は宝物を見つけた子供のように目を輝かせ、冷蔵庫から茶色いガラス瓶を取り出す。

 そしてさらに、その隣に並んでいた鮮やかな黄色い瓶も二本取り出した。

 

「ほら、リリシア」

「ひゃっ、冷たい!? よ、ヨシロウなんだこれ?」

「それはフルーツ牛乳だ」

 

「フ、フルーツ……ギュウニュウ……? 牛乳なのか? なぜ黄色いのだ?」

 

「セウもほら」

「わーい! いただきますご主人様~♪」

 

 俺は王道のコーヒー牛乳でいく。

 

「リリシア、風呂上がりのドリンクにはな、正しい姿勢ってのがあるんだ」

 

「し、姿勢……? 飲むのに儀式が必要なのか!?」

 

「ああ。まず左手は腰に当てる。そして右手に瓶を持ち、胸を張って少し頭を後ろに反らせる。そのまま一気に喉へと流し込む」

 

「こう……か……?」

 

 リリシアは半信半疑ながらも、俺の真似をして左手を腰に当て仁王立ちになった。浴衣の胸元が少しだけはだけて色っぽいのだが、本人は至って真剣な表情だ。

 

「よし、じゃあ……乾杯!」

 

「「「か~んぱ~い♪」」」

 

 俺たちは瓶を軽く突き合わせ、一気に口へと運んだ。

 

 ぐびっ、ぐびっ、ぐびっ……!

 

 

「ふあぁぁあああっ……!?」

 

 

 一口飲んだ瞬間、リリシアが目を丸くして声を上げた。

 

「な、なんだこれは……!? 冷たくて、甘くて……柑橘類のような爽やかな酸味と、ミルクの濃厚なコクが口いっぱいに広がる……美味しい……美味しすぎるぞコレは!」

 

「だろ? 湯上がりで熱を持った身体と乾いた喉に、この冷たい甘みが一気に染み渡っていく快感……くぅ~~っ、たまらん!」

 

 俺もコーヒー牛乳を半分ほど一気に喉へ流し込み、至福の息を吐き出した。ほろ苦いコーヒーとミルクのまろやかさ。これぞ銭湯の醍醐味、風呂上がりのご褒美だ。

 

 リリシアは目を輝かせ、もはや姿勢も忘れてごくごくとフルーツ牛乳を喉に流し込んでいる。

 まあ、ぶっちゃけ姿勢についてこれ以上あれこれ言う気もない。本人の好きに飲めばいいからな。

 

 プハァーッ! と、ダイナミックな吐息を漏らし、空になった瓶を愛おしそうに見つめている美人聖騎士さま。

 

「凄まじいな……セントウに入って終わりではなかったのだな……」

 

「ハハハ、だろ? 銭湯は奥が深いんだよ」

 

 異世界の住人に日本の銭湯文化が刺さっているのを見るのは、なんとも気持ちが良い。

 

 と、ここでリリシアがふと自分の浴衣を見下ろし、首をかしげた。

 

「そういえば……あたしの服や鎧はどこへ? 森で返り血と泥でだいぶ汚れてしまったから、少しばかり手入れをしたいのだが」

「リリシアさんのお洋服一式なら、奥の洗濯機に入ってま~す♪」

 

 セウがさらりとロビーの奥を指さした。

 視線を向けると日本で見慣れた設備一式が、ガタゴトと元気な駆動音を鳴らしている。

 

「おお、洗濯機に乾燥機もあるんか! 十分すぎる設備が整ってるじゃないか」

 

「せ、センタクキ……?」

 

 この世界の文化レベルを考えると、おそらく全自動洗濯機のようなものはないだろう。

 リリシアの常識では想像が追い付かないのも頷ける。

 

「服を洗う魔道具みたいなもんだ。まあ、驚くのも無理はないよな……んん?」

 

 俺はふと、奥から聞こえてくる異音に気づいた。

 

 ガココン! ゴットン! ジャラジャラジャラ……!

 

「セウ、なんかすごい金属音が聞こえるんだが、こっちの洗濯機に入ってるのって……」

 

「は~~い! リリシアさんが着ていた白銀の鎧と、剣もまるごとぶち込んで洗ってま~~す♪」

 

「いやいや、なんちゅうもん洗濯機にぶち込んでんだ!?」

 

 俺の想像も超えてたわ……【銭湯】スキル、恐るべし……

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