王家の異端者   作:ゲダツ

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また!  思いついたのでやります 今度こそは簡潔に突っ張らせたいけどとりあえずお試しでやります お願いします


1 なんで?

 僕──アラン・レイスは、生まれつき少し頭のねじが外れた子供だった。

 

 世の中は「なぜ?」に満ちている。

 

 空はなぜ青いのか。なぜ人は嘘をつくのか。そして──なぜ僕と双子の姉のヒストリアは、この広い牧場から一歩も出てはいけないのか。

 

 幼い僕は、その「なぜ?」を抑えきれず、母さんに毎日毎日しつこく問い詰めた。

 

『ねぇ母さん、なんで僕たちはここにいるの?』『なんで僕たちにはお父さんがいないの?』

 

 僕の狂気的な質問責めに根負けした母さんは、ある日ヒステリックに叫びながら事情をぶちまけたのだ。

 

 ──お前たちはロッド・レイスという貴族の隠し子(妾の子)であり、存在すら許されない邪魔者なのだと。

 

 すっきりした僕は、その事実をヒストリアや、こっそり会いに来てくれる腹違いの姉のフリーダ姉さん、果ては牧場の柵の外にいる村の子供たちにまで「ねえ知ってる? 僕たちって邪魔な存在なんだって!」と無邪気に聞き回ってしまった。

 

 当然、街には良くない噂が広まりかけたが、焦った王政の大人たちが即座に噂を揉み消した。

 

 この騒ぎで僕は初めて理解した。

 

(ああ、僕の家族って普通じゃないんだな。すごく異常なんだ)

 

 ◇

 

 ウーリ叔父さんとの出会いも、僕が自分から突撃したのが始まりだった。

 

 父であるロッド・レイスは僕たちの存在を隠していたから、ウーリ叔父さんも最初は僕たちの存在を知らなかった。だが、フリーダ姉さんから「本家」の存在を聞きつけた僕は、屋敷に忍び込んでウーリ叔父さんに絡みに行ったのだ。

 

 ある日、ウーリ叔父さんに抱っこされている時、恐ろしい雰囲気を纏った黒帽子の男──ケニーが現れたことがある。

 

 「おい、ウーリ。そいつは誰だ?」

 

「……ロッドの子だよ、ケニー。あいつには隠し子がいたんだ」

 

「あぁ……? あの野郎、裏でそんな汚ぇ真似してやがったのか」

 

 ケニーは露骨に呆れ顔になり、ロッド父さんのゲスさに引き倒していた。

 

 ウーリ叔父さんは僕の頭を優しく撫でながら言った。

 

 「だが、この子は何も悪くない。ただ……私と同じように『世界を知りたい』だけなんだ」

 

 ケニーがフンと鼻を鳴らしたその時、うたた寝から目を覚ました僕は、目の前の大男に食いついた。

 

 「ねえ! おじさん誰!? なんでそんなヘンテコな帽子かぶってるの!? 殺し屋!? ねぇ何してる人!?」

 

「……チッ、なんだこのガキ。質問が多すぎてウザってぇな……」

 

 凄腕の殺し屋であるケニーすらドン引きさせる。それが幼い頃の僕だった。

 

 ◇

 

 「アラン、今日はこの本を持ってきたよ」

 

 日常の牧場。フリーダ姉さんが来る時は、僕が喜びそうな難解な本を持ってきてくれる。だからその時だけは、僕はおとなしく牧場で本を読んでいた。

 

 「ねえ、フリーダ姉さん。アランはなんでそんなに『なんで?』って聞くの?」

 

 ヒストリアが不思議そうに尋ねると、フリーダ姉さんは困ったように笑った。

 

「さあね……私にもよくわからないわ」

 

 僕は嬉々とした目で新しい本のページをめくる。わからないことがわかるようになっていく、その感覚がたまらなく好きだった。

 ──この時はまだ、純粋に「知ること」を楽しめていたのだ。

 

 ◇

 

 ある日の朝。

 

 珍しく早く目が覚めた僕は、フリーダ姉さんに会いに行こうと本家の屋敷へ向かった。

 

 驚かせてやろうと物陰に隠れていると、屋敷からフリーダ姉さん、ウーリ叔父さん、ロッド父さん、そして本家の人々が一斉に出てくるのが見えた。

 

 (どこに行くんだろう……?)

 大人たちの雰囲気がいつもと違う。探求心が抑えきれなくなった僕は、息を殺して彼らの後を追った。

 着いた先は、古い礼拝堂だった。

 

(大人数でお祈りでもするのかな?)

 扉の隙間から覗き込むと、本家の人々は祭壇を動かし、床の絨毯をめくり始めた。そこには重厚な石畳の地下扉があった。

 

 罪悪感が胸を刺す。だが、それを遥かに上回る好奇心が僕の背中を押した。

 大人たちが地下へ消えた後、僕はそっと扉を開け、長い階段を降りていった。

 地下の扉を開けた瞬間、僕は息を呑んだ。

 

 「……すごい……」

 そこに広がっていたのは、青白く発光する巨大な結晶の洞窟だった。無数の光る柱が天井を支え、息を呑むほど幻想的な世界が広がっていた。

 僕は柱の陰に身を隠すと、屋敷からくすねていた単眼鏡(遠眼鏡)を取り出し、筒を覗き込んだ。

 

 (何をするんだろう! ワクワクする!)

 だが、単眼鏡のレンズ越しに見えた本家の人々の顔を見て、僕は凍りついた。

 

 みんなの顔が、最悪なほど暗く、悲痛に歪んでいたのだ。

 洞窟の奥で、本家の人々がウーリ叔父さんを太い鉄の鎖で壁に繋ぎ固定し始めた。

 

 (……え? なんで? ウーリ叔父さん、何も悪いことしてないのに……なんで?)

 

 周囲の悲壮な空気に、遅まきながら気づいた僕の胸に、嫌な汗が吹き出す。

 その時、フリーダ姉さんが前へ出た。彼女は透明な液体の入った注射器を取り出すと、自らの腕にその針を刺し込んだ。

 

 次の瞬間──

 

 ────ッ!!!! 

 

 視界を焼き尽くす黄色い閃光と、鼓膜を裂く爆音。

 あまりの衝撃に吹き飛ばされ、僕は単眼鏡を握りしめたまま岩の陰に倒れ込んだ。

 

 「ハッ……ガハッ……!」

 

 煙が晴れ、恐る恐るレンズを覗き込んだ僕の目に飛び込んできたのは──悪夢だった。

 そこにいたのは、叔父さんでも姉さんでもない。

 

 見上げるほど巨大な化け物だった。

 巨大な化け物は、逃げようともしないウーリ叔父さんを腕ごと引きちぎるように掴み上げると──そのまま大きな口の中へ放り込んだ。

 

 バリ、ボキッ────

 

 嫌な音が洞窟に響き、赤い血が飛び散る。

 

 (……なんだあれ。なんだあれなんだあれ!!!)

 恐怖で全身の毛穴が開き、胃液が逆流する。

 僕は人生で初めて、「知りたいなんて思わなければよかった」と、追求したことを心底後悔した。

 

 だが、地獄は終わらない。

 ウーリ叔父さんを喰らった巨体が倒れると、背中から猛烈な白い蒸気が噴き出した。

 

 シューシューと音を立てる蒸気の中から、ぬらりと出てきた人物。

 濡れた黒髪。見覚えのある服。

 

 ──フリーダ姉さんだ。

 

 あのでかい化け物は、姉さんだったの……? 

 

 姉さんは、なんでウーリ叔父さんを食べたの……? 

 

 単眼鏡を持つ手がガタガタと震える。頭の中が「なぜ?」でぐちゃぐちゃになり、感情が崩壊した。

 耐えきれなくなった僕は単眼鏡をポケットに突っ込み、弾かれたように走り出した。

 

 逃げた。必死で暗い階段を駆け上がり、礼拝堂を抜け、朝の牧場へと逃げ帰った。

 

 ◇

 

 部屋のベッドの上で、僕は毛布にくるまりガタガタと震えていた。

 

 冷や汗が止まらず、吐き気が込み上げる。身内が身内を喰らい、化け物に変わる狂気の世界。恐怖で狂いそうだった。

 だが──毛布の中で震える僕の頭の奥底から、ドロリとした冷たい熱量が湧き上がってきた。

 

 (……知りたい)

 

 ガタガタと震えていた手が、ゆっくりと自分の顔を覆う。

 

 (あの巨大な化け物はなんだ? なぜアレで人がでかくなる? なぜ叔父さんは喰われた? あの世界の仕組みは、一体どうなっているんだ……!?)

 

 恐怖の底から溢れ出したのは、抑えきれない狂気的な「好奇心」だった。いや恐怖を無理やり好奇心へ置き換えていた

 

 分からないから、恐ろしい。なら、全部解明すればいい。

 

 「……ふ、は……ッ」

 

 暗闇の中、僕の口元から漏れたのは、恐怖の悲鳴ではなく狂気的な笑みだった。

 

 あの化け物の正体も、王家の隠されたルールも、この狂った世界の仕組みも──わかりたい 理解して全てわかりたいんだ。

 

 『王家の異端児』アラン・レイスの、世界を解明するための「理解」が、ここから始まった




 
アラン・レイス  7歳  842年当時

ヒストリアの双子の弟
ロッド・レイスの妾の子供の1人 本来なら牧場から出てはいけないはずだが 子供達に石を投げられても柵を飛び越えてやり返したり 異母姉のフリーダや叔父のウーリによくあって叱られているけど、頻度がまして呆れたのか相手している
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