パーティは脱退しました!~それでも即席鍛冶魔法使いは名を挙げるために頑張りたい~   作:ロマンティックな王様

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1話

「俺、冒険者向いてないのかもしれない」

 

「「それな」」

 

 俺の故郷の村から一番近い、グリュンバルトと名付けられた街のとある酒場にて。

 一世一代! とまではいかないが、それなりの覚悟を決めて告げたはずの俺の言葉は、故郷の村を同じくする幼馴染二人によってめちゃくちゃ軽く同意されてしまった。

 

 おいおい、と俺は顔を顰めて二人に視線を送る。

 

「即答で同意とは、俺の幼馴染はひでぇ奴らだぜ……」

 

「だって……なぁ? 今日初めて俺たちで討伐依頼に行ったわけだが、お前ビビりまくってただろ?」

 

「ほとんど私とヴェーマの二人で倒した」

 

「失礼な。一匹はちゃんと討伐したっつーの」

 

 まぁ、その一匹でダメになってしまったわけだが。

 

 運ばれてくる料理に手をつける。

 俺たちのような初心者の冒険者の稼ぎでも、それなりの味で腹いっぱいに食べられる優良店だ。

 せっかく来たのだからと喋るよりも食べることを優先するのだが、そんな俺を幼馴染たちはジト目で見つめてくる。

 

「なんだお前ら、そんなに見つめたってここの支払いは割り勘だぞ」

 

「なんて図々しい奴なんだ」

 

「斬る?」

 

「酷いねぇ、幼馴染を斬ろうとするなん……待て待て待て! わかった、話すのに集中するから! だから剣を抜こうとするんじゃねぇよ!?」

 

 するり、と己の得物である細剣を抜こうとする幼馴染――リィゼの行動を見て、慌てて食事の手を止める。

 だって仕方ないじゃん。今日以降、いつ腹いっぱい食えるかわからなくなるのだ。最後に食いだめくらいはさせて欲しい。

 

 皿に大量に取り分けた自分の肉に手を付けるのをやめ、俺は改めて二人に視線を向ける。

 

 何があったのかと言えば……まぁ、あれだ。

 

 俺は所謂、転生者と呼ばれる存在……に当たるのだろう。

 前世での俺がどんな人物だったのかはよくわからないが、別の世界に生きていた記憶を持ってこの世界の小さな村に生まれた俺は、そのまま幼馴染たちとともに冒険者になって名を馳せることを夢見ていたわけだ。

 

 それこそ、前世でも今世でも話に聞いた物語のように。

 

 そして村を出て近くの街でめでたく冒険者になった俺たちは、数々の採取系の依頼をこなし、つい先日ギルドから討伐系の依頼を受けても良い一つ上の鉄級(アイアン)へと昇格。

 その勢いのまま今日、新人冒険者なら誰でも受けられる常設の討伐依頼……ゴブリン討伐へと赴いた。

 

 現れるゴブリンたちを相手に、俺たち三人は武器を手にして勇猛果敢に挑んだのだった。

 

「まぁ俺が折れちゃったわけですけどね、初見さん」

 

「こいつ何言ってるんだ?」

 

「シュミットはだいたいこう」

 

「そう言えばそうだったわ」

 

 呆れて話を聞く二人は置いておこう。

 

 幼馴染であるヴェーマとリィゼの二人がゴブリンを相手に無双を繰り広げる中、俺は一匹のゴブリンを相手に必死に戦ったわけであるが……その内容がまぁ酷い。

 

 へっぴり腰で一撃を入れては逃げ、相手が追ってきたところでさらに一撃を入れる。その繰り返しだ。

 二人が他を蹴散らしてくれているからよかったものの、もう一匹でもいたら俺は簡単に死んでいたに違いない。

 

 うん、まさかここまで戦いの才能がないとは思わなんだ。村ではアホな二人のお守りとして一緒に居たのだが、まさかここで立場が入れ替わるとは思わなかった。

 どう見たって今の俺は二人にとってのお荷物だろう。

 

 そして同時にこう思ったわけだ。

 

 武器持って生き物といのちのや取りするのめっちゃ怖い、と。

 死んだゴブリンを目の前にした俺の心臓の鼓動を、ついさっきの事のように覚えている。

 

 二人にバレないよう、鼓動が早くなる左胸にそっと手を当てた。

 

 この辺りの戦いに関する忌避感は、前世関係から来るものなのだろう。戦いとは無縁の、平和な日常を送っていたことはたしかだ。

 そういう意味では、余計なものを植え付けやがってとため息を吐きたくなる。

 

グリュンバルト(こっち)ならそれなりには役に立つと思ってた魔法も、正直なところあんまりだったしなぁ……」

 

 はぁああああああ、と天井を仰ぐ俺の口から長いため息が零れる。

 

 成人……この世界における十五歳になると、稀に発現するとされる超常の力。

 曰くこの世界を創りたもうた女神さまが、魔物という脅威に対抗するために人類へ授けた戦うための力、とのこと。

 まぁ詳しいことはわからん。これいってるのはお偉いさんたちだし、俺はそんな話を行商のおじさんから聞いただけなのだから。

 

 ともかく、そんな特別な力を、同じ村の生まれである三人が授かった。

 ヴェーマは【怪力】、リィゼは【加速】。そして俺が授かったのは――

 

「【鍛造魔法】のスキルな。もうちょっとどうにかならないのか?」

 

「俺のスキルに聞いてくれよ」

 

「無理だからシュミットに言ってる」

 

「それはそうだけどさぁ!」

 

【鍛造魔法】……俺が女神から授かったであろうスキル。

 この世界での魔法は、まず女神から【○○魔法】というスキルを授からないことには使用できないうえに、覚えられる魔法もスキルに関係する魔法でなければならない。

 

 例を挙げるなら、【火魔法】のスキルを授からなければファイヤーボールやら何やらは使えず、さらには水や風などの魔法は使用できないようになっているのだ。

 

 なので、稀に発現するスキルで、さらにその中から魔法系統のスキルを授からなければ魔法使いにはなれない。

 そんな中で俺が授かった【鍛造魔法】。当時は「よっしゃぁー! これで魔法使い確定……!」などと喜んだものだが、何ができるかと言えば文字通りである。

 

 素材を消費することで武器防具を瞬時に作成する。それが俺の【鍛造魔法】でできることだった。

 

 一見聞くと、「へぇ! そりゃすごいじゃん!」となる。

 時間もかけず、素材を用意するだけでいいのだ。まさに鍛冶屋泣かせ、鍛冶屋いらず。商売上がったりな、鍛冶屋から目の敵にされるスキルと言えるだろう。

 

 だがしかし、そんな便利なものじゃないんだなこれが。

 

「その場で瞬時に武器が作れる。まぁすっげぇ利点ではあるんだが……」

 

「数回斬ったら壊れるのは、武器としてどうかと思う」

 

「壊れるというか、壊れて消える、だな。おかげで再利用もできやしねぇ」

 

「ぐぅ!? ……ぐぅの音も出ない正論だな」

 

「出てるじゃねぇか」

 

 ジロリとリィゼの鋭い視線が俺を射抜く。

 いや、わかっているさ。採取依頼で稼いだなけなしの金。それで購入した鉄を使い、俺の【鍛造魔法】でこさえた鉄の細剣。

 

 村にいた時のように石や木を使ったのならともかく、鉄で作った剣が、たった数回ゴブリンを斬っただけでシャボン玉のように壊れて消えたのだ。

 

 いやね? ちゃんとした金属を使えばワンチャンうまくいくんじゃねぇかな~って思ってたのは本当なんだよ?

 だから二人に駄々をこねてまで鉄を買って来てもらったんだし。

 

 うん、シュミットウソツカナイ。

 

「幼児のおねだりを見てる気分だったぜ、あれは」

 

「幼馴染として恥ずかしかった」

 

「……ま、ともかくだ。そういうわけで、冒険者業は続けられねぇ。頼りのスキルも現状は役に立たず、そうでなくとも俺が戦うことに向いてない」

 

 村でこいつら二人と出会ってから一緒に語っていた、冒険者として大成するという夢。

 それが叶えられないことは申し訳ないとは思っている。だがしかし、今日の討伐依頼を受けて、こいつら二人ならそれも可能だということを確信したことも事実だった。

 

 冒険者としての俺はここで終わり。それがもっともよい選択肢なのだろう。

 

「それについちゃ、無理にパーティに残れとは言わねぇよ。命賭けることはたしかだし、そんな中でお前を残すのは俺たちとしても心配でしかねぇ」

 

「……ごめん、シュミット。冒険者、私から誘ったのに」

 

「うわ、しおらしいリィゼとか珍し。目に焼き付けとこっと」

 

 ヴェーマがリィゼを羽交い絞めして止める中、俺はその様子をゲラゲラ笑って肉を頬張る。

 だいたい、話に乗って村を出たのは俺なのだ。リィゼが変に俺を気遣う必要性など皆無である。

 いつもの剣バカらしく振舞っておけばそれでよいのだ。

 

 あ、ちょっとヴェーマくん!? なに力負けしそうになってんだよその筋肉は飾りか!?

 

 こりゃいかん、と俺はリィゼを落ち着かせるべく続きを話すことにする。

 

「まぁでも、冒険者としては終わりだが……大成することは諦めてねぇからな?」

 

「そうなの……?」

 

 ピタリと、目論見通り話を聞く姿勢に入ったリィゼの呟きに、「そりゃそうよ」と俺は頷く。

 

「知ってるか? スキルは使い続ければ進化する、なんて噂がある。今のトップの冒険者のスキルも最初は雑魚だったらしいぜ? それにグリュンバルトで魔法系統のスキルについて調べてみたが……俺のスキルは記録がなかった」

 

 そして記録がないということは、俺以外にはいない可能性が高いという事。その希少性は優位に働くに違いない。

 となれば当然、やることは一つ。

 

 このスキルを使っての成り上がり。それこそが今の俺の目標である。

 

「カカカッ、見てろよ二人とも。お前らが冒険者として成り上がるなら、俺はこのスキルで成り上がる。未来において伝説の鍛冶師と呼ばれるのはこの俺、シュミットだ! そんな俺の幼馴染なんだ、恥ずかしくならないようにちゃんとお前らも成り上がれよ?」

 

 まぁ、俺は鉄を叩いて鍛冶をするわけじゃないのだが……そこはほら、言葉の勢いってやつだ。

 

 いいな、と挑戦的な笑みを浮かべて二人を見る。

 俺の発言に、一瞬ポカンと間抜けな表情を浮かべていた二人だったが、その顔もすぐギラギラとした笑みに切り替わった。

 相変わらずの負けず嫌いの二人に、俺は内心で肩を竦める。

 

「言ってくれるじゃねぇか、シュミット」

 

「私が成り上がるのは当然。むしろ、私の名声に置いて行かれないようにするのはそっち」

 

「カカッ! そう来なくちゃなぁ!」

 

 ガンッ、と俺は手にした杯を二人の前に突き出した。

 意図を察したのか、ヴェーマもリィゼも、同じように自分の杯を突き出し合わせてくれる。

 

「村での約束は果たせないが……今日この日が、俺たちの新しい始まりの日だ!」

 

「おう!」

 

「ん」

 

 乾杯! と杯をぶつけて一気に呷る。

 そうして、今日この日をもって、俺は二人とのパーティから脱退することになるのだった。

 

 だがこれは始まりである。

 この俺シュミットが【鍛造魔法】で名を馳せる、そんな第一歩を踏み出した日となるのだ!

 

 チラと目の前の料理を見る。

 ……とりあえず、明日から頑張ろう!

 うん、そうしよう!

 

「うおおお! 俺は冒険者を辞めるぞ! リィゼェエエエエエ!!」

 

「うるさいから斬ってもいい?」

 

「助けてヴェマえもん……!!」

 

「俺の幼馴染、なんでこんなんなんだ……」

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