パーティは脱退しました!~それでも即席鍛冶魔法使いは名を挙げるために頑張りたい~ 作:ロマンティックな王様
「ふふふんふーん、ふんふふーん」
速報。シュミット氏、スキルが進化し新たに効果の【付与】が可能となった件。
いやはや、まさかスキルが進化するというのが本当だったとは。一応それらしい報告や資料などは残されてはいたのだが、眉唾なものも多かったためはっきり言って賭けではあった。
つまり、俺はその賭けに勝ったという事。さすが村一番の神童と謳われたシュミットくんである。カカカッ!
はてさて、そうしてスキルが進化し、無事に可能性というものが無限大に広がりまくりんぐしている俺であるが……この事実を、しばらくリィゼたちには伏せておくことに決めた。
理由はもちろんお分かりですね。そう、カッコつけである。
現状俺が付与できる【縮小】だけでも十分凄いし、あいつらが知れば喜んでくれるという確信があるのだが、どうせならもっと強い効果を付与できるようになってから自慢したい。
例えば……炎を吹き出す剣、とかか?
見栄えが良く、かつ派手でカッコイイ。そういった物の方が、あいつらも驚くことだろう。
ハイテンションで貸してくれとねだってくる姿が容易に目に浮かぶ。
懇願しながら土下座してくる妄想上の二人を煽りながら、どんな効果を付与すれば二人の力を十全に引き出せるかも考える。
ヴェーマは【怪力】、リィゼは【加速】。どちらも強力なスキルだ。
そのスキルの特性を伸ばすか、あるいは欠点を補うか。
「……ま、今のままじゃダメだわな」
【
あいつらに並び立ち、そして追い抜いて行くのなら、さらにここから進化させねばなるまい。
つまるところ、スキルを使った修行である。
作っては壊してまた作るという作業なので、あまり修行感はないのだけれども。
「とはいえ、
そんなわけで、いつもの採取依頼からスタートである。
お仕事だから仕方ないね。きっちりやらなければ、依頼元が困るのだ。
とはいえ、せっかくスキルが進化してできることが増えたというのに、昨日までと同じことを繰り返すというのも芸がない。
なので今回の採取依頼は、いつもの薬草とはまた別の薬草が採取対象となっている。報酬が高い、というのもあった。
そして採取する物が変われば、当然目的地だって変わるものだ。
「だからこういう事も起きるってなぁ……! ヒィッ!?」
『GYAGAY!』
緑色の、幼子程度の体躯を持つ魔物――ゴブリン。
先日俺が冒険者として戦う道を諦めた要因が、木を荒く削っただけであろう棍棒を掲げて後ろから追いかけてきていた。
運の悪い遭遇だった。
いつもの薬草の群生地であればこうはならなかっただろう。あそこは森の奥へ向かう冒険者もよく利用している道であるため、依頼ついでに魔物を狩ってくれる冒険者も多いのだ。
無視しようにもゴブリンなんかは人を見たら襲い掛かってくるため、片手間に討伐されることの多いこと多いこと。
しかし今回俺がやってきた場所は、そこから少し外れた道の先。森の浅い場所であることに変わりはないのだが、いつもの道に比べれば危険度は増す。
その結果が、今の背後にいるゴブリンであった。
はっきり言おう。めちゃ怖い。
「だ、だがしかぁし……! 何の対策もなく、この依頼を選んだ俺ではない!!」
ザザァ! と急停止をかけ、腰のポーチに手を伸ばしながら背後を振り返る。
ゴブリンというのは、一度で大量に生み、生まれてから成体になるまでの期間が短い。そのため、基本的には数が一番の脅威とされる魔物である。
だが反面、個体の能力という部分に目を向ければそれほど脅威ではない。なんなら農家の成人男性が桑で殴り殺せる程度の強さである。
そして、そんな相手にめちゃくちゃビビる俺である。やだ、俺冒険者向いてなさすぎ……
「まぁ、そんなことは置いておいてだ」
幼子程度の体躯を相手に全力で走ったのだ。彼我の距離はそれなりに空いており、振り返った時には十メートルほどの距離があった。
剣を振り回して追っかけてくるリィゼから逃げ回っていた幼少期の自分に感謝しつつ、俺はポーチの中身を適当に掴み取る。
数は……五つ。
それをゴブリンに向けて思い切り投げつけた。
「喰らえやクソゴブリン……!!」
『GYA!?』
投げつけたのは、そのどれもが手で握り込めるくらいの石の剣。
傍目から見れば小粒な石を投げつけたように見えるだろう。事実、一瞬警戒を見せていたはずのゴブリンは、すぐにニヤリと笑って突き進むことを選択した。
棍棒を持つ手とは逆の手を顔の前に掲げる。
防御のつもりなのだろう。そして、その程度で防ぎきれると思ったのだろう。
ならば良し。
「【解除】ぉ!!」
呪文を告げる。
たった一言。そう告げただけで、石の剣にかけられていた【付与】の効果が解除され、宙を不格好に飛ぶ石はその姿をみるみるうちに元の大きさへと変貌させた。
その光景を前にしたゴブリンは、『GI!?』と短い悲鳴のような鳴き声を上げ――その直後、五つの内の一つがゴブリンの腕をすり抜け、見事に顔面へと突き刺さった。
ゴブリンが倒れて石剣が消滅する中、俺は「運後良かったな……」と安堵の一息を吐き出す。
「できるだけ作っておいてよかったぜ」
チラとポーチに視線を落とせば、そこにはびっしりと詰め込まれた石剣の数々。どれもこれも、俺が【縮小】を付与してストックしているものだ。
付与した効果を使用しても、実際に武器として使用されることがなければ消滅はしないらしい。
また重さも【縮小】によって減るのもありがたい。でなけりゃ、こんな数も持てないからな。
そのためこうしてストックし、 いざいという時に投げつけることができるのだ。
小石なら俺でも投擲はできるし、それが宙を進む中で元のサイズに戻せるのなら十分に使えると言える。
だからこそ、今回俺はこうしていつもとは違う場所までやってきた。
「まぁ、怖いしゴブリン程度にしか通じないだろうがな」
改めて、己の戦う才能のなさに涙が出そうだ。
まだポーチの中身に余力はあるが、そう何度も戦いたいとは思わないし、ゴブリンが二匹同時に現れたら対処できるか怪しいだろう。
さっさと依頼を済ませて帰るが吉だ。
報酬もいつもより高いため、いくらかは素材の購入にも使えるはずだ。
だがしかし、いつもとは違う場所。そしてゴブリンを倒した高揚感で、ムクムクと欲が膨らんだ。
何かいい素材とか落ちてないかなぁ……と。
「……採取ついでに、何か探してみるか?」
依頼の薬草を採取し終えて、そのまま周囲を慎重に散策する。
奇襲に対応できるよう常にポーチに手を伸ばし、体勢を低くしながらあちこちを見て回った。
そして見つけたのは、切り立った岩壁の一部に空いた罅割れた穴だった。
「お、ラッキー! ちょうど入れそうな隙間じゃんか」
こんな岩壁に空いた穴だ。少し奥の方へと進めば、もしかしたら何かしらの金属片でも落ちているのではないだろうか?
そんな淡い期待を胸に、俺はヒョイとその穴へ体を滑り込ませる。
入り口部分は少々手狭ではあったが、中は立って歩けるくらいの広さがあった。
こりゃ期待大だ、と中を進む。ランプなどの光源は用意していなかったため、入り口から差し込む光だけが頼りだ。そこまで奥には進めないだろう。
だがしかし、俺が見つけた
「……え」
ワクワクしていた心が一瞬で冷めていく。
そこにあったのは……いや、居たのは、皮鎧を身に纏った白骨だった。
ここで死んだ冒険者……のものだろうか。思わず「うへぇ」と顔を顰めるが、これが『もしかしたら』の先にある俺の未来かもしれないと気を引き締める。
「こうはなりたくないもんだな……ん?」
あまりジロジロと見るものでもないか、ととりあえず荷物を漁っていると、少し離れた場所に転がっている剣が目についた。
誰もいないことはわかっているが、左右を見回してからその剣に駆け寄る。
「素材、ゲットだぜ……!」
基本的に、冒険者が拾ったモノはその冒険者のものとして扱ってもよいということになっている。
つまり、これは泥棒ではない。ないったらない。
だって、ギルドがそう認めているんだもん……!!
「まぁ、ギルド証くらいは持ち帰りますか」
白骨の首にかかっていたのは、この元冒険者が
裏面には『ケイン』という名前が彫られていた。
彼の名前なのだろう。
「……あなたの剣、使わせていただきます」
パン、とケインさんの前で手を合わせる。
前世では、たしかこうして死者の冥福を祈っていた。それに倣う。
「さてさて……【
思いがけず今この場で試すことができることに笑みを浮かべる。
ケインさんがすぐ傍にいるのが……申し訳ないが、少し不気味ではある。
がしかし、周囲の警戒をせずに魔法を使えるのは利点だろうと、俺はその場でケインさんの剣を素材にして【鍛造魔法】を発動した。
「鍛造、開始。
石や木を使うだけだと【縮小】しか付与ができなかった。
では素材を鉄……それも鍛えて剣にされた鉄にすれば、いったいどんな変化が現れるのか。
もちろん、何も変化がないという可能性もあるが……俺の中に新たに刻まれた【鍛造魔法】の情報は、目の前の素材に対して新たな可能性を示してくれた。
「――【縮小】、【飛行】」
二つだ。
付与できた効果は二つ。
さらに【縮小】に関しては、何度か繰り返して使用しても問題ないという実感があった。
効果がより強くなり、そして付与できる数も増える。
「……積極的に試していくべきだな、これは」
カカッ、と小さく笑った俺は、ケインさんのギルド証を回収して穴を抜ける。
そして先ほど作ったばかりの剣を足元に置き、その上に飛び乗った。
前世で言うところの、スケボーのような体勢だ。
一言、「【飛行】」と呟けば、呪文に反応した剣が俺を乗せたままフワリと浮かび上がる。
飛行という割には、浮いたのはせいぜい地面から三〇センチほどの高さだった。
だがそれでも、新たに付与された効果に俺はにんまりと笑みを浮かべる。
「まぁせっかくなんだ。街までひとっ走りしようってなぁ……!」
自由自在、思うがままに俺は森の中を剣に乗って駆け抜ける。
上への上限は一メートルほどだが、それ以外は問題はない。思わず、「イィイイイイイイヤッホォオオオオオオオ!」とか叫んで森の中を走り回った。
なお、剣が消滅する五秒前の出来事である。
感想、評価ともにお待ちしております。
ええ、ええ。いっぱい、どしどしと!