パーティは脱退しました!~それでも即席鍛冶魔法使いは名を挙げるために頑張りたい~ 作:ロマンティックな王様
ヴェーマとリィゼの二人に会うのは、スキルが進化しねぇと嘆いた日以来だ。
俺が席に着くと、慣れた仕草で注文を通すヴェーマ。見た目は熱血漢という風貌のヴェーマであるが、こういう気の利くところもこいつの魅力だ。
最近ギルドでも実力を認められてきていることもあってか、女冒険者たちの中での評判はうなぎのぼり。俺も時折、そういった話を耳にすることがある。
なんなら、コレットさんからも聞いた。
そしてもう一人。
ヴェーマが注文を伝える中、ずっと目を瞑って静かにするリィゼ。
セミロングの青髪を靡かせながら魔物を斬るその姿から、一部の冒険者に《
さっき揶揄うつもりで「かっこいい名前じゃん(笑)」と伝えたのだが、誇らしげに胸を張ってドヤ顔が返ってきた。
「良いでしょ」
「……ヴェーマ、お前はどう思う?」
「俺も早くそういうのが欲しいぜ」
わりと即答されたことに驚く。
どうやら二つ名というのは冒険者における一種のステータスであり、それだけ有名になったという証左でもあるらしい。
つまるところ、リィゼは俺たち三人の中でもいの一番に名を挙げたことになる。
「私の方が上」
「あ? 模擬戦の成績は互角だろうが!」
ヴェーマの言葉にとリィゼが煽り、二人の間で睨み合いが発生する。
何を争っているのやら、と俺は呆れてため息を吐いた。
「落ち着け二人とも。似たような実力なんだ、すぐにヴェーマも二つ名くらいつくだろ」
「それはそうだろうけどよぉ……」
「ふふ……ヴェーマに二つ名がついても、私が先なのは事実。つまり認められたのは私の方が早い」
「ずっとこうやって言ってくるんだぜ!? 悔しくて仕方ねぇよ……!」
ぐぐぐ……! と拳を握りしめるヴェーマと、そんな彼を見て余計に調子づくリィゼ。しまいにはチャキチャキと刀の鯉口を斬るように、腰の細剣をちょっと抜きながら挑発していた。
「やめんかアホめ」
「アイタッ!?」
その挑発を、頭にチョップを入れてやめさせる。
二人がよく鍛錬として模擬戦をしていることは知っているが、こんな店の中でおっぱじめようとするんじゃねぇよ。
「……にしても、ずいぶんと良さそうな剣に変えたんだな?
二つ名関連の話から切り替えようと、先ほど目についたリィゼの剣について尋ねることにした。
よく見ればヴェーマの剣もリィゼと同様に新調されているようで、パッと見だとただの剣には見えなかった。
ここ最近、色んな素材を使っているせいなのだろう。ただリィゼたちの剣に使われている素材は、俺がまだ扱ったことがない物のように思える。
すると、ヴェーマは「ああ……気づいたか?」と、リィゼは「ふふん」とこれまで以上のドヤ顔を見せてきた。
「……え、なんだよ。何かあるのかよ?」
「実はここだけの話なんだがよ……近々、俺とリィゼは
「……はぁ!? おい、まじか!?」
驚いて叫ぶ俺の口を、ヴェーマが「バカ声がでけぇ!」と慌てて塞ぐ。
いや、叫んだのは悪かったが……そもそも驚くなって方が無理があるだろうが。
だって二人が
通常、
あくまでも強さではなく、依頼の達成数というところがみそだな。だからこそ
閑話休題、ここで言いたいのはリィゼたちが昇格するにはあまりにも速すぎるということだ。
おそらく、まだ昇格基準となる依頼数はまだこなせていないはず。
「羨ましい?」
「羨ましいってか、意味が分からなくて困惑してるんだよ……なにがあってそうなったんだ?」
「まぁそれもそうだろうが……料理が来たみたいだし、続きは食いながら話そうぜ。今日はその話もしたくて集まったんだからよ」
お待たせしました~、と店員のお姉さんが運んできた料理をテーブルに並べていく。
安くて美味くて量がある、いつもの料理だ。
そしてその料理を食しながら、俺は二人が経験した話を聞くことになる。
何でも二人は、とある依頼でグリュンバルト大森林へ向かった際、討伐目標であった魔物を追って正規ルートから外れて移動したそうだ。
しかし、その先にあったのは別の街へと繋がる街道で、たまたまその街道を通っていた馬車が魔物の集団に襲われている場面に遭遇。
馬車の護衛だけでは危ないと巻挙げた二人はこれに加勢し、見事その魔物たちを討伐してみせたそうだ。
「
「で、その助けた馬車ってのが、グリュンバルトを治める領主の娘さん……フォルティマ・グリュンバルト様が乗っててな。助けたお礼にってこの武器と……あとは俺たちの昇格をギルドに掛け合ってくださったんだ」
「……それなんてラノベ?」
思わず口から零れてしまった。
いや、だってそうじゃん? ラノベじゃん、展開が。助けたらたまたまお貴族の娘さんで、そのお礼にって色々と融通測ってくれるやつ。
……ラノベじゃん?
「良い武器。軽くて丈夫でよく斬れる。アーマーアルマジロも一振りでザックザク」
「聞いた話じゃ、リィゼの細剣はミスリル、俺のはアダマンタイトって金属でできてるらしいぜ」
「はぁ!? おまっ、まじか!?」
さらりと言ってのけたが、ミスリルもアダマンタイトも、めったに手に入らない希少金属。
たしか前者は鋼より頑丈なくせに非常に軽く、後者は鋼よりも優れた強靭性を持ち、さらには摩耗や腐食にも極めて強い金属だったはず。
王国の近衛騎士団の武器にそういう希少金属が使われている、とカインさんから聞いたことがある。
そんな金属を使った武器を、こいつらがもらった……だと?
「なぁ……リィゼ、ヴェーマ。頼みが――」
「「いやだ」」
「まだ何も言ってませんが?」
ふと思いついたことを口にしようとした矢先、二人が先んじて断ってきた。
「シュミット、お前のことだ。どうせこの武器を素材にしたいとか言い出すつもりだろ?」
「絶対ダメ。この武器は私の。ヴェーマのも私の」
「いや俺のは俺のだろ」
バレテーラ、と変顔で項垂れて見せれば、二人は「やっぱりそのつもりだったか」とため息を吐く。
別に武器をくれとは言うつもりはない。ただちょ~っとだけ……それこそ、もし刃こぼれとかでわずかにでも金属片が出た場合に譲ってほしいとか、そういう話である。
まぁそれを伝えても断られたのだが。
「だいたいこれは、俺たちがフォルティマ様から下賜された武器だぜ? 下手に扱えば、俺たちの首がおさらばバイバイする可能性だってある。嫌だぜ? 何も成し遂げず、そんな理由で死ぬのは」
「私にそんな可能性はない。けど、人のものを勝手に使うのは犯罪」
「今俺の剣も自分のとか言ってなかったか?」
「知らない。何を言ってるの……?」
わざとらしく視線を逸らすリィゼに呆れながら、「そんなことよりだ」とヴェーマの視線がこちらを向いた。
「シュミットの方はどうなんだよ? 知ってるんだぜ、今こそこそと動いてるだろ? スキルは進化したのか?」
「む、何か聞いたか?」
「《五葉の風》、だったか? あの
どうなんだよ、と問いかけてくるヴェーマ。
その言葉に、俺はニヤリと笑って返した。
「さぁ、どうだと思う?」
「おいおい……なにも隠さなくてもいいじゃねぇかよ。なぁ、リィゼ」
「今度はシュミットの番。赤裸々にすべて語るべき」
「まぁ待てよ、二人とも。そうだな……いうならば、今は語るべき時ではない、というやつだ」
テーブルに両の肘をつき、顔の間で手を組んだ。
そんな俺を見た二人は、「何カッコつけてんだこいつ」と言わんばかりのジト目で俺を見ている。
このままでは意味もなくただかっこつけてる奴、みたいに見られてしまう。
それはまずい、と俺は二人の視線をやめさせるべく、少し情報を開示することにした。
「はっきり言えば、俺はお前たちが思っている以上の進化を遂げている。がしかし、だ。今はできることの幅を増やし、そしてその検証を進めている段階なんだよ」
「ほーん……その検証の手伝いをしてるのが《五葉の風》ってことか?」
「そうなるな。たまたま運よく、あの人たちとの伝手を手に入れられたからな」
「……別に、私たちに言ってくれたらよかったのに。いくらでも手伝ってあげた」
俺の話を聞いてシュンとするリィゼ。
えぇ……とその反応に困ってヴェーマに助けを求めるのだが、彼もリィゼと同じ気持ちらしく、「お前が何とかしろ」と目で言われた。
迷った末に、俺は言う。
「あー……その、なんだ。お前たちに言わなかったのは……もっとすげぇことができるようになってから自慢したいって、そう思ってたからだよ」
仲間外れとか、信じられないからとか、そう言った理由じゃなく。
ただただ、もっと大きなことができるようになってから明かした方が、二人ともきっと「すげぇ!」と言ってくれる。
そう思っていたから、まだ二人には明かさないだけの事だ。
だから拗ねるなよ、と言うのが恥ずかしくてあちらこちらへと向けていた視線をリィゼの方へと戻す。
すると彼女は、ヴェーマと一緒になって「あらやだ~」みたいな表情を浮かべていた。
「ヴェーマ聞いた? うちのシュミット、私たちの事大好き過ぎない?」
「おいおいリィゼさんや。そんなの、村にいた時から知ってただろ? こいつは俺たちのことが大好きなんだぜ?」
「お前らなぁ……!」
ニヤニヤとこちらに視線を向けていた二人に青筋を立てる。
そういえばこういう奴だったよなぁチクショウめ! と、
必ずだ。
必ず、二人に恥じないすごい奴になってやると、改めてそう心に誓うのだった。