絶対の先制   作:幻影の塔

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狐と狸の化かし合い

「おやぁ〜〜? 京楽隊長に朽木さんじゃありませんか。こんな夜遅くに、揃って当店へ何の御用で?」

浦原喜助は扇子で口元を隠し、いつも通りのひょうひょうとした笑みを浮かべて二人を迎えた。

だが、その帽子の奥の瞳は、コンマ一秒で二人の挙動、霊圧の乱れ、そして目線の動きを完全にスキャンしていた。

(……ほう。二人とも異様に警戒していますね。特に京楽隊長、足の重心がいつでも『瞬歩』でバックステップを踏める位置にある。……なるほど、『私が裏切る』ことを100%前提で店に入ってきていますか)

対する京楽春水と朽木ルキアも、ギンの言葉を脳内で反芻しながら、全身の神経を研ぎ澄ませていた。

((市丸くんの言った通りだ……! 浦原くんの顔、完全に『何か知ってる』顔だよ……!))

ここから、【次期総隊長の狸】 vs 【瀞霊廷一の狐】による、1秒たりとも気の抜けない超・高度な心理戦の火蓋が切って落とされた!

第一手:京楽春水の「揺さぶり(ブラフ)」

「やれやれ、浦原くん。実はね、ちょっと極秘の『特別任務』で現世に来ていてね。……急で申し訳ないんだけど、『霊圧遮断の外套』を二着、貸してくれないかい? 次期総隊長命令としての正式な押収(請求)だよ」

京楽はあえて脱走や一番隊の件には一切触れず、「正式な公務」を装って外套を要求した。

(((勝負はここだ……! ここで浦原が『地下室で準備しますから』と言ったら、即座に一護の家へ逃げる……!)))

ルキアもゴクリと唾を飲み込み、浦原の手元を注視する。

第二手:浦原喜助の「裏の裏をかく返し」

浦原は困ったように眉を下げ、大きく溜め息をついた。

「いやぁ〜困りましたねぇ京楽隊長。実はですね……先ほど総隊長殿と砕蜂隊長から直接連絡がありましてね? 『脱走した二人を時間稼ぎして拘束せよ』と厳命されたばかりなんですよ」

「「「!!????」」」

なんと浦原は、「自分が山じい側から命令を受けている」という事実を、自分からあっさりと開示したのだ! これには京楽もルキアも激しく動揺する!

(な……なんだと!? 隠すどころか、自分からネタばらしをしてきた……!?)

浦原は扇子をパチンと閉じ、声を潜めて二人に顔を近づけた。

「ですからね、京楽隊長。私だって山じい隊長に睨まれて店を灰にされるのは御免です。……ですがね? 私は商人です。次期総隊長になられるあなたに恩を売るチャンスを捨てるほど野暮じゃありませんよ」

浦原はニヤリと怪しく微笑むと、懐からスッと『霊圧遮断の外套』を2着、その場で取り出してテーブルの上に置いたのだ!

「地下室に行く必要はありません。外套ならここにあります。これをお着になり、すぐ裏手からお逃げなさい。……これで『私は二人を地下室へ誘導しようとしたが逃げられた』と言い訳が立ちますからねぇ」

「「((あ……あいつ、即座に外套を出してきたぁぁぁぁぁっ!!??))」」

ルキアの目が輝く!

(京楽隊長! 市丸隊長の言っていたパターンBです! 『その場ですぐ外套を出してきたら、それを着て瀞霊廷に戻る』ですぞ!! 浦原は味方です!!)

二人の中で、「浦原=敵」の警戒が一瞬だけ緩んだ——。

第三手:京楽春水の「土壇場での閃き(狸の直感)」

(……待てよ?)

外套に手を伸ばしかけた京楽春水の脳裏に、電撃のような違和感が走った。

(おかしい……。あの浦原喜助が、山じいと砕蜂からの厳命を背いてまで、リスクを冒して僕らに外套を渡すか? ましてや『山じいから連絡があった』なんて手の内を明かしてまで……?)

京楽は帽子の庇(ひさし)をゆっくりと下げ、冷や汗を流しながらギンの言葉を思い出していた。

『あいつ、行動パターンを完璧に計算して心理誘導してくるで……』

(……そうか!! 浦原くんは、僕らが『地下室へ誘導されたら逃げる』ことまで計算に入れているんだ!! だからあえて地下室には誘導せず、外套をその場で渡すことで『安心させて、油断したところを外で待機している隠密機動に挟み撃ちさせる』気だーーーっ!!)

ぎりぎり土壇場で、浦原の「裏の裏の裏」の仕掛けを見抜いた京楽!

「……やれやれ。流石だねぇ、浦原くん」

「……おや? どうかしましたか、京楽隊長?」

京楽は置いてあった外套をスッと押し戻すと、ニタリと不敵な笑みを浮かべた。

「せっかくの申し出だけど……やっぱり外套は要らないよ。……ルキアちゃん、行くよッ!!」

「えっ!? あ、はいッ!!??」

「なっ……!?」

次の瞬間、京楽はルキアの襟首を掴むと、全力の瞬歩で浦原商店の天井を突き破り、一護の家がある方向へ向かって弾丸のように飛び出したのである!

【浦原商店・屋根の上】

「逃げられたか……! くっ、流石は京楽隊長、寸前で気づきましたか……!」

屋根の上に潜んでいた四楓院夜一と隠密機動の隊員たちが姿を現す。

浦原は破られた天井を見上げ、帽子をかぶり直しながら、ハハハと苦笑いを漏らした。

「参りましたねぇ……。私の誘導を土壇場で蹴って逃げるとは。……さてはあの三人、誰か裏で恐ろしい知恵を授けた『軍師』がいますね?」

「ふん、一護の家に向かったぞ! 追いかけるぞ喜助!」

「ええ……ですが黒崎さんの家まで巻き込むと、後で恐ろしいことになりますからねぇ……。さあ、追いかけっこ(化かし合い)の第2ラウンドと行きましょうか!」

化かし合いを制し(?)、一護の家へと超高速で疾走する京楽・ルキアペア!

しかし、その背後には浦原喜助と夜一率いる隠密機動の追撃が迫る!

 

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