「……待てッ!! 京楽隊長、止まってくれッ!!」
一護の家へ向かって空を爆走していた朽木ルキアが、突如として空中(霊道)で急ブレーキをかけた!
「ど、どうしたんだいルキアちゃん!? 立ち止まったら追いつかれちゃうよ!?」
焦る京楽春水に対し、ルキアの瞳には恐怖と冷や汗が大量に溢れ出ていた。
(あ、危なかった……! 一護の家へ行くのはあまりにも危険すぎる……!!)
「京楽隊長……思い直してくれ! 一護をこの『山じいの激怒』と『一番隊の特訓』に巻き込んでみろ……! あの熱血バカのことだ、絶対面白がって首を突っ込み、最終的に山じいを煽り倒して『残火の太刀』で現世ごと灰にされる……っ!!」
「あ、確かに……!!」
京楽も顔面を蒼白にする。
一護という男は、頼もしいが「権力者(山じい)の理不尽に対して絶対に煽り返す」という凶悪なアドリブ特性を持っている。そんな男を巻き込めば、ギャグで済まない本格的な三界崩壊(バッドエンド)へと突入してしまう!
「た、確かに一護を巻き込んだら、僕らの力でももうかばいきれないよ……! 本当に僕らの命が終わってしまう!!」
「そうだ! だからルート変更だ! 私に……私に心当たりがあるっ!!」
ルキアはバッと己の額を叩き、かつて現世に潜伏していた頃の記憶を鮮明に思い出していた!
【朽木ルキアの回想:空座町・極秘秘密基地】
(そうだ……思い出したぞ! かつて私が死神の力を一護に譲渡した直後、いずれ瀞霊廷から追手が来ることなど百も承知だった……!)
当時、危険を察知していたルキアは、浦原喜助から「虚(ホロウ)退治の報酬」として、密かに霊圧遮断の外套(予備含めて3着)、さらには大量の食料と特級霊力回復薬をちゃっかりせしめていたのだ。
そしてそれらを、一護にも、浦原にらすら絶対にバレない空座町の廃ビルの地下——『ルキア特製・極秘秘密基地』に隠しておいたのである!
「3着……!? 予備も含めて3着揃っているのかい!?」
「うむ! 食料も回復薬も完備だ! あの場所なら浦原も、夜一様も、隠密機動すら絶対に知らん!!」
「でかしたよルキアちゃん!! 君は最高の死神だ!!」
二人は即座に反転! 浦原商店の追撃(夜一率いる隠密機動)の裏をかくように一護の家をスルーし、空座町の郊外に佇む雑居ビルの地下深くへと滑り込んだ!
ギィィィィ…………(暗い扉が開く音)
「はぁ……はぁ……つ、着いたぞ……! ここが私の『極秘秘密基地』だ……!」
ホコリを払いながらルキアが足元を照らすと、そこには厳重に封印された木箱が鎮座していた。
箱を開けると、そこにはルキアの思惑通り——
霊圧遮断の外套(新品同然) × 3着
長期保存用の霊力回復乾パン & 栄養ドリンク
時間を潰すためのチャッピー(ウサギ)のぬいぐるみ
が、完璧な状態で保管されていたのだ!
「す、素晴らしい……!! 完璧だよルキアちゃん!! 霊圧遮断の外套が本当に3着ある!!」
京楽は涙目になりながら外套を羽織り、ルキアもすかさず外套を身に纏う。
その瞬間、二人の霊圧は三界から完全に消滅した。
「……ふぅ。これで……これで隠密機動にも、浦原くんにも、山じいにすら僕らの居場所は探知できない……!!」
暗闇の中で膝から崩れ落ち、安堵の溜め息をつく二人。
「勝った……勝ったのだ京楽隊長……! 市丸隊長の授けてくれた知恵と、私の危機管理能力が見事に噛み合ったのだ……!」
「そうだねぇ……。とりあえず、ほとぼりが冷めるまでここで乾パンでも食べながら潜伏しよう」
「うむ! これで我らは安全だ!!」
二人はホッと胸を撫で下ろし、ウサギのチャッピーのぬいぐるみを囲みながら、暗い地下室で静かに回復薬をあおぐのだった。
……一方その頃。
【瀞霊廷・一番隊特別特訓室】
ゴォォォォォォォォォォォォォッ!!!!
「……ぬ? 春水とルキアの霊圧が消えただと……?」
残火の太刀の炎を撒き散らしながら、山本元柳斎重國が凄まじい眼光で天空を睨みつけていた。
「どうやら……現世の何処かに潜んだようだな……」
「あらあら、二人とも上手く逃げましたねぇ」
幻のスイーツの力で無敵状態となった卯ノ花烈が、うっとりと微笑みながら回道を掌で弄んでいる。(神のスイーツは食してません。幻幻いちごの方です)
そんな二人(怪物たち)の前に、冷や汗をだらだらと流しながら進み出たのは、自爆覚悟で情報を差し出す平子真子であった。
「や、山じい……! 卯ノ花隊長……! あいつら(京楽とルキア)がどこへ逃げたか、俺には分かりますよ……!」
「……ほう? 申してみよ、平子」
平子はニヤリと悪魔のような笑みを浮かべ、市丸ギンが残していった「最大のブラフ」を、まんまと大声で告げ口したのである!
「あいつら……脱走する前に『一番安全なのは無間だ! 元々入っていた市丸の霊圧で満ちているから誤魔化せる!』って言ってました!! 間違いなく、三人は今『無間』に隠れていますッ!!!!」
「「……何だと……!?」」
山本元柳斎重國と卯ノ花烈の視線が、一斉に地下深くの『無間』へと向けられた!
「長次郎!! 直ちに『無間』の総捜索を開始せよ!! 一髪たりとも逃すなッ!!」
「ははっ!!」
こうして、市丸ギンの放った「悪魔のブラフ」が見事に決まり、一番隊と隠密機動の全戦力が『無間』へと怒涛のガサ入れに向かうのであった(※当然、無間には誰もいない)。
現世の狭い地下室で乾パンをかじる京楽とルキア、
どこかの街の和菓子屋で悠々と抹茶を飲む市丸ギン、
そして無間に突入して大騒ぎする瀞霊廷。
彼らの「地獄の逃走劇」は、わずかな(?)平安を迎えるのだった。しかしその平安も音を立てて崩れて行くのであった