絶対の先制   作:幻影の塔

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命がけの弁明

 

ドガァァァァァァンッ!!!!

重い鉄の扉が容赦なく叩きつけられ、特訓室に空調の冷気が虚しく響く。

特別特訓室の中央には、両手を縛られ、完全に魂が抜けた顔で正座させられている京楽春水と朽木ルキアの二人。

「……はぁ……結局、捕まっちゃったねぇ……」

「……平子隊長め……『魂の叫び』などと供述して、我らを完膚なきまでに売り飛ばすとは……」

二人が血の涙を流しながら愚痴をこぼしていると、横で念書を大事そうに懐へ舞い戻した平子真子が、ドヤ顔で鼻を鳴らした。

「ハッ! 命あっての物種や! ワイは自分の命と無罪放免を勝ち取っただけやからな! ……ところで、言い出しっぺの市丸の奴はどうしたんや? あいつ無間に居らんかったぞ?」

そう、山本元柳斎重國、卯ノ花烈、砕蜂の三人が無間をガサ入れした際、底に転がっていたのは「市丸ギンが残した古びた干し柿の種がひとつ」だけ。

「……逃げられた」

砕蜂が屈辱に満ちた表情で歯噛みする。

「隠密機動の全包囲網を敷き、夜一様が現世の主要な街道や店をすべて変装して見張っていたというのに……奴は最初から現世にも無間にも向かっておらず、まったく別の『抜け道』を通って姿を消した……!」

そう——市丸ギンは、京楽たちに授けた「無間潜伏説」も「浦原商店ルート」もすべて追手に流れることを見越した上で、最初から三界の捜索網の完全なる盲点(知らん街のどうでもいい茶屋の裏手)へと高飛びしていたのである!

【その頃——どこかの平和な現世の茶室】

風鈴の音……チリン♪

「ほ〜う……やっぱり現世のお抹茶とお団子は美味しいなぁ……」

ぽかぽかと温かい日差しが差し込む縁側で、市丸ギンは着物の袖を寛がせ、のんびりと団子を頬張っていた。

「そろそろ……京楽はんたち、平子あたりに盛大に売り飛ばされて捕まった頃かいな?」

ギンは狐目を細め、フフッと楽しそうに鼻で笑った。

「まあ、ワイの教えた策で少しは時間稼ぎできたんやから、感謝してほしいくらいやわ。……さて、山じいたちの怒りが収まるまで、半年くらいここでじっくりバカンスと決め込もうかねぇ」

「浦原喜助の行動心理」「京楽たちの裏切り」「夜一の待ち伏せ」すらもすべて計算に入れ、たった一人でこの狂った地獄から完璧に勝ち逃げを決めた市丸ギン。

【一番隊特別特訓室・現実】

一方、逃げられた市丸ギンへの怒りも上乗せされ、山本元柳斎重國の背後に立ち上る爆炎は過去最高温度に達していた。

「……逃げた市丸の分まで……お主たち二人(+巻き込まれた平子※なぜかまだ居る)に、たっぷりとしごきを受けてもらうとしよう」

「あらあら……市丸隊長が居ないのは残念ですが、その分お二人を『二倍』手厚く回復して差し上げますね」

「「(((二倍(物理)はやめろぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!!!))))」」

山本元柳斎重國の刀身から放たれる凄まじい熱波と、幻のスイーツを食した卯ノ花烈の底知れぬ霊圧。

二人の「怪物」が本格的に腕をぶす直前、正座させられた京楽春水と朽木ルキアの二人は、冷や汗を滝のように流しながら床に頭を擦り付けた!

「ま……待って! 待ってください山じい! 卯ノ花隊長!! 攻撃に移る前に、どうか僕らの言い分を聞いてほしいんだ!!」

「そうだ! 我らは……我らは最初から騙されていたのだッ!!」

必死すぎる二人の命がけの弁明。

元柳斎は流刃若火の穂先をぴたりと止め、鋭い眼光で二人を射抜いた。

「……申してみよ。言っておくが、見苦しい言い訳ならばその場で灰とする」

「「((ひぃぃぃぃぃっっ!!))」」

二人は息を呑むと、市丸ギンに言われた言葉、そして自分たちの思考回路を何から何まで包み隠さず吐き出し始めた!

「本来……本来は普通に浦原商店の地下室へ逃げ込んで、大人しく隠れる予定だったんです!!」

「そうだ! だが断界を通る最中、市丸ギンが怪しげな笑みを浮かべて語りかけてきたのだ……!! 『浦原は絶対に二人を売る』『自分の追跡を撒くための最高の策がある』とな!!」

京楽は帽子を握りしめ、まるで悲劇のヒーローのように叫ぶ。

「僕らだって、そんな策に乗るつもりはなかった! でも……『無間に隠れれば自分の霊圧で誤魔化せる』だの『一護の家には予備の外套がある』だの、あまりにも具体的で魅力的な策を提示されたせいで……ちょっぴり欲が出てしまったんだよぉぉぉっ!!」

「欲が出ただけか!!」と砕蜂がすかさず激怒のツッコミを入れるが、ルキアは涙目になりながらさらに重大な証言を叩きつけた!

「だ、だが聞いてくれ砕蜂隊長! 市丸ギンが浦原喜助の行動パターンを完璧に読み切っていたのには、恐ろしい理由があったのだ!!」

「……何……?」

「かつて市丸が藍染惣右介の部下だった頃……あの藍染が浦原喜助を異常なまでに特別警戒していた! そのため市丸と東仙要の二人は、藍染から『浦原喜助の行動理念と心理誘導のパターン』を、トラウマになるほど徹底的に教え込まれていたのだ!!」

「「「…………っ!!?」」」

その事実には、流石の元柳斎も、砕蜂も、そして卯ノ花すらも一瞬言葉を失った。

(((藍染惣右介による、対・浦原喜助の英才教育……!!)))

「だからこそ……だからこそ我らは市丸の『藍染直伝コンサルティング』を全面的に信用してしまったのだ! 全てはあいつの口車に乗せられた結果! 悪いのは全部、僕らを唆して自分だけちゃっかり高飛びした市丸ギンなんですぅぅぅぅっ!!」

「そうだ! 我らは被害者だ! 市丸ギンこそが真の元凶なのだ!!」

自分の減刑と引き換えに、まんまと市丸ギンの目論見通り「戦友(市丸)を完膚なきまでに売り飛ばす」という、ギンの予想を寸分違わずなぞる行動を起こした二人!

……しかし。

「………………」

山本元柳斎重國は、静かに目を閉じた。

そして、ゆっくりと目を見開くと、先ほどまでの十倍の火柱を特訓室全体に立ち上らせた!

「……話は分かった」

「ほ、本当ですか山じい!?」

「うむ。要するに……『市丸の浅知恵にまんまと乗せられ、他人のせいにして逃げ回った挙句、最後に仲間を売った』ということじゃな?」

「「……あ」」

「言い訳の浅ましさ、反省の無さ……万死に値するッ!!!!」

ゴオォォォォォォォォォォォォォッ!!!!

「ギャアァァァァァァァっっっっ!!?? 言い訳したら余計に怒られたぁぁぁぁっっっっ!!??」

「ふふ……言い分はよく分かりましたよ。では、その歪んだ根性をたたき直すためにも……『特別連続回復』を開始いたしましょう」

「ま、待って卯ノ花隊長! 私は無罪放免の血判状を持っとる! 巻き込まないでぇぇぇぇっ!!」

「黙れ平子! お前のブラフのせいでもあるんじゃぁぁぁぁっっ!!」

現世の茶室で悠々と抹茶を飲みながら「今頃ワイを売っとる頃かいな」と笑っている市丸ギンの手掌の上で完璧に踊らされたまま、三人の絶叫と極限の炎、そして神の回道光が、一番隊地下特別特訓室を永遠に包み込むのであった——

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