【京都・嵐山——渡月橋のほとり】
「ほ〜う、やっぱり京都の抹茶ソフトは格別やなぁ……」
秋風が心地よく吹き抜ける桂川のほとり。
八ツ橋を片手に、市丸ギンは風情たっぷりに着物の袖を揺らしながら観光を楽しんでいた。
だが——その表情の裏にあるのは、油断などでは一切ない。
(……そろそろ、あの二人が山じいの前でワイの暴露話(藍染直伝コンサル)を全部吐き散らかした頃かいな)
ギンは狐目を細め、ソフトクリームをペロリと舐めた。
そう、京楽とルキアが土壇場で己を裏切り、「市丸は藍染から浦原喜助の行動パターンを骨の髄まで教え込まれている」と白状することすら、すべてギンの計算内!
(あの二人から話を聞けば、浦原喜助は間違いなく気付く。『自分の行動パターンが完全に読まれている』とな。……普通なら警戒して引き足を踏むところやけど……ワイがこんな目立つ場所で優雅に観光しとったら、どう動く?)
「『罠と分かっていても、見逃すわけにはいかない』……あの性格なら、絶対に首を突っ込んでくるわ」
ギンは、わざと己の霊圧を「京都観光を満喫しているギリギリのレベル」で微弱に垂れ流していたのだ。
【現世・浦原商店】
一方、一番隊地下特訓室から戻った浦原喜助と四楓院夜一、そして隠密機動総司令・砕蜂の三人は、モニターに映し出された「京都での市丸ギン目撃情報」を前に、深刻な顔で腕を組んでいた。
「……喜助。市丸の奴、完全に京都を楽しんでおるぞ。八ツ橋を食べ、清水寺で写真を撮り、今は渡月橋におるらしい」
「……あいつ、舐めてやがる」
砕蜂が額に青筋を立てて拳を握りしめる。
「京楽とルキアの証言で、奴が藍染から貴様の思考パターンを徹底的に叩き込まれていることは判明した。これは絶対に『罠』だ。貴様をおびき出すための見え透いた誘導だぞ、浦原!」
「ええ……完璧な罠ですねぇ」
浦原は扇子で顔を半分隠し、帽子の陰から冷徹な瞳を光らせた。
「私が『罠だから無視する』と踏んで放置すれば、奴はそのまま京都でほとぼりが冷めるまでバカンスを決め込む。逆に私が動けば、こちらの裏の裏をかいてハメにくる……。完全にこちらを試していますよ、市丸さんは」
「で、どうするんじゃ喜助?」
夜一がニシシと凶悪な笑みを浮かべる。
浦原はパチンと扇子を閉じると、ニタリと不敵な笑みを返した。
「決まっているでしょう。目撃報告を無視して逃げるような野暮な真似、この浦原喜助がするわけありません。……乗ってあげましょうよ、市丸さんの『京都観光(罠)』に」
「ふん! 言われるまでも無い! 隠密機動の全戦力を以て、京都で奴を袋のネズミにしてくれる!」
砕蜂が影のように消え、浦原と夜一も即座に黒腔(ガルガンタ)を展開!
瀞霊廷と現世の超・頭脳派たちが、市丸ギン一人のために京都へと一斉になだれ込んだ!
【京都・清水寺の舞台】
「おや……? 随分とお賑やかなお客さんがお越しになりましたねぇ」
清水の舞台から京都の街並みを眺めていた市丸ギンが、ゆっくりと振り返る。
そこには——
竹林の陰、屋根の上、そして参道の混雑の中に完璧な配置で潜む砕蜂率いる隠密機動。
そして、舞台の正面から堂々と歩み寄ってくる浦原喜助と四楓院夜一の姿があった!
「やぁやぁ市丸さん。京都観光とは優雅なものですねぇ? お土産に八ツ橋でも買って帰りますか?」
浦原が扇子を揺らしながら歩み寄る。
「ふふ……おおきに、浦原はん。……せっかくの京都どすえ? そんな殺気立ったお連れさん(隠密機動)大勢連れてきたら、舞妓さんも怯えてまうわ」
ギンは狐目のまま、静かに袖の中から神鎗(しんそう)の柄に手をかけた。
「藍染はんから教わった通りの行動パターン……ホンマにブレへん人やなぁ、浦原はんは」
「ククッ……藍染さんに私の何を教わったかは知りませんがねぇ……今の私は、そのパターン通りには動きませんよ?」
京都の歴史ある名所を舞台に、
【藍染直伝の知識でハメようとする市丸ギン】 vs 【その裏をかいて力ずくでも捕縛しようとする浦原・夜一・砕蜂】の、三界最高峰の化かし合いがいよいよ開戦する——!