絶対の先制   作:幻影の塔

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卯ノ花烈の痛烈な指摘

「……まったく、お手上げですわね」

京都の大混乱が収まり、一番隊特別特訓室に漂う重苦しい静寂の中、四番隊隊長・卯ノ花烈が静かにため息をついた。

あの山本元柳斎重國も、四楓院夜一も、そしてあの瀞霊廷一の智謀を誇る浦原喜助すらも、今回の市丸ギンの手口には手も足も出ず、完全に沈黙するしかなかった。

かつて日番谷冬獅郎に、藍染惣右介が「僕が副隊長と認めたのは、後にも先にも君だけだ」と言わしめた男——市丸ギン。その真骨頂たる「圧倒的知略と悪知恵」の前に、最高幹部たちが総出で手玉に取られたのである。

「冗談ではありません!!」

静寂を破り、憤りを隠せない隠密機動総司令・砕蜂が拳を激しく床に叩きつけた。

「市丸ギンは護廷十三隊を、我々をコケにしたのだぞ! 捕縛して死罪に処さねば、隠密機動の……護廷の面目が立ちません!!」

「……砕蜂隊長」

感情を露わにする砕蜂に対し、卯ノ花烈は凛とした佇まいのまま、静かに、しかし絶大な重圧を込めてその言葉を遮った。

「元々は……あなたがたの些細な愚痴と、くだらない意地から始まったことです。もう充分ではありませんか?」

「なっ……! 愚痴とは何ですか! 私はただ総隊長閣下と護廷の規律を——」

「ここまでの知略、そして護廷十三隊をここまで鮮やかに欺ける優秀な隊長を……あなたは些細な愚痴が原因で始まったこの事件を引きずって、この後どうなさるおつもりですか?」

卯ノ花の言葉は、鋭利な刃となって砕蜂の核心を射抜く。

「そもそも、捕まえるチャンスなど何度もあったはずです。それをことごとく取り逃がしたのは、ご自分の無能さゆえ。それに怒り狂っているだけではありませんか? ……私ならば、あなたの立場の隠密機動総司令であれば、あえて市丸隊長に頭を下げてでも、その密密たる隠密術と知略の教えを乞いますけれどね」

「〜〜〜〜っっっ!!!???」

「む、無能……頭を下げる……っ!?」

あまりにも的を射すぎた、そしてぐうの音も出ない痛烈な指摘に、砕蜂は屈辱で顔を真っ赤にして絶句する!

さらに卯ノ花は、特訓室の床にボロ雑巾のように転がっている三人——京楽春水、朽木ルキア、平子真子を冷ややかな目で見下ろしながら続けた。

「それに……そこの転がっている三人(+平子隊長)と市丸隊長には、決定的な違いがあります」

「「「……え?」」」

「市丸隊長は、一度でも仲間を売りましたか?」

「「「((ギクッ……!!))」」」

「そこの転がっている三人は、保身と恐怖のあまり、自分たちを助けようとした市丸隊長を易々と売り払いました。ですが市丸隊長は、自分だけが逃げ切れたにもかかわらず、二人を『戦友』と呼び、彼らのために知恵と逃走策まで授けて去ったではありませんか。……これこそが、護廷十三隊の誇る『高潔な意志』だと、私は思いますけれど」

言いたい放題言われ、床に転がる三人は「ぶーぶー」と見苦しく文句を垂れ流し始めた!

「 騙されてるよ卯ノ花隊長ぉぉ! あいつ自分だけ南の島でバカンスしてるんだよ!?」

「高潔でも何でもない! 奴は最初から我らを囮(デコイ)にするつもりだったのだ!!」

「そうや! あいつ絶対に一番悪質や! ワイらの純情を弄んだ悪魔やで工藤(だれ)!!」

口々に「騙されている」「あいつが一番悪い」と醜い言い訳を重ねる三人。

その見苦しい姿を見た瞬間——。

スッ……

卯ノ花烈の目元から光が消え、般若も恐れなす【絶対零度の笑顔】が静かに降臨した。

「……あら? 何か……ご意見でもおありですか?」

「「「「ヒィィィィィィィィィィィィィィィィっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!(超恐怖)」」」」

その一言と、部屋の温度を物理的に50度下げたかのような暗黒の圧の前に、ぶーぶー文句を言っていた三人は完璧に沈黙。ガタガタと歯の根を鳴らしながら、速攻で床に額を擦り付けて「あ、何もありません! 卯ノ花隊長の言う通りです! 市丸最高!」と平伏するのだった。

山本元柳斎重國も、静かに流刃若火を収め、深々とため息をつく。

「……うむ。卯ノ花の言う通りじゃ。……これ以上の追討は不毛。今回の特訓および大騒動……これにて『終幕』とする」

「……御意にございます」

こうして、一番隊の地下深くで始まった「地獄の罰ゲーム&大脱走劇」は、市丸ギンの完全勝利と、卯ノ花烈の絶対的な鶴の一声によって、ようやく(?)幕を閉じるのだった——。

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