絶対の先制   作:幻影の塔

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藍染コンサルティングの真相

ガラガラ……ギィ……

空座町・浦原商店。その奥深くに存在する、巨大な地下訓練場。

霊圧遮断結界が「これでもか」というほど二重三重に張り巡らされたこの空間に、死相の浮かんだ顔をした京楽春水、朽木ルキア、そして平子真子の三人がコソコソと集まっていた。

なぜなら——もしも今回の「地獄の特訓の真実」や「総隊長たちの保身」に関する話が一番隊の耳に漏れでもしたら、前回の地獄どころではない「三界を超えたリアル煉獄」が待っているからである!

「……ふぅ……ここなら……ここなら山じいや卯ノ花隊長、砕蜂の耳にも絶対に入らないはずだ……」

京楽が汗を拭いながら胸を撫で下ろしていると、暗闇の奥から呑気な足音が聞こえてきた。

トコ……トコ……

「やぁやぁ、皆さんお揃いで。えらいコソコソした呼び出しですなぁ」

そこへ現れたのは、南の島から帰国し、月一の隠密指南役としてちゃっかり無罪放免を勝ち取った男——市丸ギンである!

いつもの狐目を細め、着物の袖に手を入れながらヘラヘラと笑うギン。その視線が、三人が羽織っている「朽木家謹製・最高級絹仕立ての特注隊服」へと向けられた。

「……ほう。ええやないですか二人とも(+平子)。そんな上質な隊服着させてもらって……ほんま羨ましいわぁ。山じいにごっつ褒められたらしいやん?」

「「「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっっっっっっっっっっっ!!!!!!(激怒)」」」

その一言で、三人の血管が一斉にブチ切れた!

「市丸お前ぇぇぇぇぇっ!! 誰のせいでこんな思いをしたと思っているんだッ!!」

「そうだぶー!! 羨ましいだと!? 貴様が優雅に抹茶パフェを食っている間、我らがどれほどの地獄を味わったか!!」

「自分だけ綺麗に頭下げて無罪放免になりおってからに!! ワイらのこの血涙が目に入らんのかボケぇぇぇっ!!」

怒号を響かせて掴みかからん勢いの三人!

しかし、市丸ギンはまったく動じることなく、首をひょいと傾げて、極上の腹黒い笑顔を浮かべた。

「……えぇ? なんやそんな怒らんといてよ。……ワイは、あんさんらのこと一度も売りませんでしたけどねぇ?」

「「「(((((((((((((ギクッ……!!!!!!!!)))))))))))))」」」

三人、完璧に撃沈。

「あ……」

「……」

そうなのだ。市丸ギンは「戦友だから」と逃走策を授け、捕まった後も一切二人を売らなかった(むしろ二人が真っ先にギンを売り飛ばした)。さらに言えば平子も自分の保身とブラフで全員の居場所を暴露した犯人である。

道義的に完全に「加害者(売った側)」である三人は、ぐうの音も出ない正論を突きつけられ、膝から崩れ落ちて白目を剥くしかなかった。

「うっ……うぐ……それを言われると……ぐうの音も出ない……」

「くっ……市丸め……相変わらず口だけは減らん奴だ……」

「ククッ……相変わらず仲が良いですねぇ、皆さん」

撃沈した三人を見下ろすように、影から歩み出てきたのは浦原喜助と四楓院夜一であった。

浦原は扇子で口元を隠しながらも、その瞳には探るような光を宿している。

「さて、市丸さん。今日ここへお呼び立てしたのは……他でもありません。……京都でのあの見事な手際、そして何より『藍染さんが私をどう分析し、何をあなたに教え込んでいたのか』……それを少々、お聞きしたくなりましてねぇ」

夜一も腕を組み、ニシシと怪しく口端を上げた。

「そうじゃな。あの喜助の『義骸デコイ』を逆手にとったマユリの自動AI人形……見事じゃったぞ市丸。藍染の奴、一体喜助の何をそこまで警戒し、おぬしに何を叩き込んでおったんじゃ?」

浦原喜助という「瀞霊廷一の超絶頭脳」の喉喉から手が出るほど知りたい核心。

京都で完璧にハメられた浦原と夜一が、ついに「藍染惣右介による対・浦原コンサルティング」の秘密を聞き出すべく、真真たる顔で市丸ギンに向かい合ったのだった——!

「あはは……まあ、秘密にするようなことでもありませんし、ええですよ」

市丸ギンは地下訓練場の石段に腰を下ろすと、昔を思い出すように遠い目をして語り始めた。

「ワイもね、最初に藍染はんから『浦原喜助攻略講義』を受けさせられた時は、正直『なんでこんなことせなアカンねん』って思ってましたわ。……だって当時の喜助はんは、まだ十二番隊の隊長にすらいなってへんかった。夜一はんの権力を後ろ楯にして、地下で怪しげな機械作ってるだけの……ただの怪しい科学者くらいにしか思ってへんでしたからねぇ。要はんは『藍染さまの仰る通りだ』言うて真面目にノート取ってましたけど」

ギンは膝を抱え、苦笑いを浮かべる。

「でね、あまりにワイが嫌々に授業受けてるのを察した藍染はんは、静かにメガネを押し上げて、ご自身の『浦原喜助論』を語り始めたんですわ」

【藍染惣右介が語った『浦原喜助の恐怖』】

『いいかい、市丸。あの男(浦原)をただの変人科学者だと思っているなら、今すぐその認識を改めなさい』

藍染は薄暗い執務室で、冷徹な瞳を輝かせてこう言ったという。

『あの男の真の恐ろしさは、“知性そのものが世界の理(ことわり)と等価であること”だ。私が何か新しい概念や理論を構築した時、この三界で唯一、私と同じ高みに立ち、それを即座に理解し、あまつさえ“私の半分の時間でそれを超える対抗策を作り上げてしまう”。それが浦原喜助だ』

『彼には野心がない。世界を変えようという渇望もない。それゆえに危険なのだ。“現状を維持するためだけに、神の領域の智慧を平然と行使する”……これほど不気味な存在はないよ。だからこそ、私はあの男の思考の癖、誘導の癖、決断の傾向のすべてを解明し、完璧に先手を打ち続けなければならないのだ』

「……そこまで言われたら、ワイも真面目に受けざるを得なくなりますやん?」

ギンの言葉に、地下室の空気がピリッと張り詰める。

だが、ギンの「思い出話」はそれでは終わらなかった。

「でね? 講義が終わった後が、本当の地獄やったんですわ」

「……後?」

ルキアがゴクリと唾を飲み込む。

「そう。藍染はんはね、そこらへんの一般隊員に『鏡花水月』をかけて、自分を『浦原喜助』だと思い込ませたんです。で、そいつをワイらの前に立たせて……『さあ市丸、対・浦原喜助の実戦演習だ。あの男の裏の裏をかき、完膚なきまでに思考戦で叩きのめすまで、この結界から出られると思うなよ』って言われてねぇ……」

ギンは遠い目をして、ハハ……と力なく笑った。

「模擬・浦原喜助の裏を取るまで、何日も不眠不休で心理戦やらされて……まさに“地獄の片道チケット”でしたわ。ワイが京都で喜助はんの動きを完封できたんは、あの地獄の反復練習があったからなんですよ」

【全員の反応】

「「「「「(((((藍染惣右介、狂ってる……!!!!)))))」」」」」

あまりにも常軌を逸した「対・浦原喜助特訓」の凄惨さに、全員の顔から血の気が引いた!

「な……なんという執念だ……! 藍染はそこまで浦原殿を……そこまでの狂気をもって警戒していたというのか……!?」

ルキアがガタガタと震え上がる。

「うへぇ……。藍染の奴、裏でそんな恐ろしい講義やってたんだねぇ……。そりゃ市丸くん、浦原くんの動きが手取るように分かるはずだよ……」

京楽が冷や汗を拭いながら引きつった笑いを浮かべた。

「ワイは……ワイはそんな地獄をくぐり抜けてきた市丸を、ただのバカンス野郎だと思って売り飛ばしたんか……。なんか……ごめんな……」

平子に至っては、藍染の狂気の煽りを喰らったギンに同情すら覚えていた。

「ふん……。藍染惣右介の異常性がよく分かる話だな」

砕蜂(※隠れて盗み聞き中)も影の中で思わず戦慄していた。

【浦原喜助の考察】

そして——当の浦原喜助はというと。

「…………」

扇子をパチンと閉じ、深々と帽子を目深にかぶり直していた。

その顔にはいつもの飄々とした笑みはなく、完全な「科学者・浦原喜助」の冷徹な思考モードに入っていた。

「……なるほど。そういうことでしたか」

浦原は静かに唇を開いた。

「藍染さんは……私のことを『自分と同種の存在』として恐れ、同時に『自分を阻む最大の障壁』として愛していたのでしょうねぇ」

「……愛しておった、だと?」夜一が眉をひそめる。

「ええ。藍染さんほど孤独な男はいませんでしたから。自分の高みに誰も追いつけない世界で、唯一『自分の言葉が通じる相手』が私だった。だからこそ……彼は私を誰よりも深く研究し、分析し、自分の脳内に『仮想の浦原喜助』を完璧に構築するまでに至った」

浦原は自分の手元をじっと見つめ、苦笑いを漏らした。

「市丸さん。あなたが京都で私に見せた動きは……市丸さんの知略であると同時に、藍染惣右介が生涯をかけて私に挑み続けた『チェスの指し手』そのものだったわけです。……そりゃあ、私が動揺してハメられるわけですよ。あの人は私の心理の“癖”を、私自身以上に知っていたんですから」

浦原の言葉に、地下室全体がしんと静まり返る。

かつて三界を揺るがした超絶頭脳・藍染惣右介。

彼が遺した「浦原喜助攻略論」の恐ろしさと、それを完璧に完遂してみせた市丸ギンの怪物ぶりに、誰もが改めて息を呑むのであった。

「……ま! そんな恐ろしい特訓は二度と御免ですけどねぇ!」

市丸ギンがケラケラと笑い飛ばし、重苦しい空気を一瞬でぶち破る。

 

そう言って軽やかに去っていくギンの背中を、一同はただただ呆然と見送るしかなかった——。

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