絶対の先制   作:幻影の塔

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一次侵攻後の隊首会

一番隊舎、大広間。

重々しい空気の満ちる隊首会。

上座に座す総隊長・山本元柳斎重國の眼光は、いつにも増して鋭く研ぎ澄まされていた。

今回の「見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)」による一次侵攻。

本来であれば多くの隊長格が卍解を奪われ、絶望的な敗北を喫するはずだった戦局。それを破綻させ、敵の皇帝ユーハバッハを敗走へと追い込んだのは、十三番隊の平死神・七瀬天理が放った極大の卍解『終極百花繚乱滅殺陣(しゅうきょくひゃっかりょうらんめっさつじん)』だった。

大広間の壇上、雀部長次郎代理として報告に立った四番隊隊長・卯ノ花烈が、静かに一次侵攻の被害と戦果を読み上げる。

1. 惨状と戦果の報告(卯ノ花烈)

「……報告をいたします。一番隊副隊長・雀部長次郎殿は、敵の急襲を受け霊ノ臓および鎖結に壊滅的な打撃を負われました。一命は留め止めましたが……死神としての再起は不能。また、奪われた卍解『黄煌厳霊離溝』は、七瀬天理さんの介入により奪還・消滅いたしました」

長次郎の重傷に、隊長たちの間に重い静寂が走る。卯ノ花は言葉を続けた。

「敵の総戦力のうち、約8割が七瀬さんの卍解によって壊滅。残る2割も壊滅的な打撃を受け、敵首魁ユーハバッハとともに退却いたしました。我が方の隊長格の死者はゼロ。ですが……七瀬さんは常時通常隊長格の2倍以上の霊力を消費し続けたことによる極度の霊圧損耗と肉体疲弊により、現在も深い昏睡状態にあります」

2. 隊長たちの激論

報告が終わるや否や、各隊長から様々な感情が入り混じった声が上がった。

二番隊隊長・砕蜂:

「……一人の平死神に瀞霊廷の命運を委ね、あまつさえ敵を退けさせたなど、護廷十三隊の面目躍如どころの話ではない! 挙句にその男が倒れて目覚めぬとは……! 我ら隊長格は何をしていたのだ!」

三番隊隊長・鳳橋楼十郎(ローズ):

「だが、事実として僕たちは卍解を奪われ、術術(すべ)を失いかけていた。彼がいなければ、今頃僕たちの何人かは命を落としていたよ。不甲斐ないが……感謝こそすれ責められる筋合いじゃないさ」

六番隊隊長・朽木白哉:

「……七瀬天理。奴の始解が『絶対の先制』であることは耳にしていたが、これほどの『理不尽』を隠し持っていたとはな。敵の8割を壊滅させ、残り2割に『希望という名の永遠の恐怖』を植え付けて逃げ散らせた……。冷酷極まるが、戦術としてはぐうの音も出ん」

七番隊隊長・狛村左陣:

「ぬう……! 雀部殿の無念、そして天理殿の身を削る死闘……! 男として、隊長として、黙って見てはおれん! 奴らが再び現れた時こそ、我ら隊長格が肉肉(しし)を砕いてでも叩き潰さねばならんのだ!」

八番隊隊長・京楽春水:

「やれやれ……。天理ちゃんには頭が上がらないねぇ。……けど、問題は『次』だよ。敵は天理ちゃんの卍解の恐ろしさを骨の髄まで知った。2割残したことで時間を稼げたとはいえ、奴らが対策を講じて戻ってきた時、天理ちゃんが起きられなかったらどうする?」

九番隊隊長・六車拳西:

「けっ、言いたいことは山ほどあるが……まずは己の鍛え直しだ。卍解を奪われたからといって日和ってんじゃねぇぞ。素手でも始解でも、奴らをぶん殴れるように鍛え直すだけだ」

十番隊隊長・日番谷冬獅郎:

「ああ。奪われた卍解を取り戻す手立て、そして卍解に頼らない戦闘技術の確立……急務だな。天理が命を張って稼いでくれたこの時間を、一秒たりとも無駄にはできねぇ」

十一番隊隊長・更木剣八:

「ハッ! 8割も持っていかれちまったのは面白くねぇが……あのユーハバッハって頭目を追い詰めたんだろ? 次に出てきた時は、俺が一番に首を刈る。天理の野郎が起きる前にな」

十二番隊隊長・涅マユリ:

「ひっひっひ……実に興味深い。隊長格の2倍の霊力を食い潰す暴走能力。敵を完全に殺し切らず『2割』だけ残して精神を砕く思考回路……。あれはもはや斬魄刀というより『呪い』だよ。覚醒した彼のサンプルと、奪われた卍解の解析……やるべき実験が山積みで忙しくてかなわんよ」

十三番隊隊長・浮竹十四郎:

「……天理は、うちの隊でもずっと目立たないように、穏やかに過ごそうとしていたんだ。彼にこれほどの重荷を背負わせてしまったことが……隊長として情けないよ。……今はただ、彼が静かに回復してくれることを祈るばかりだ」

3. 総隊長の下す決断

隊長たちの議論が一巡した時、重厚な杖の音が響いた。

ドンッ……!!

一瞬で静まり返る大広間。

山本元柳斎重國が、ゆっくりと眼を開いた。

「——静粛に」

元柳斎の威厳に満ちた声が、張り詰めた室内を支配する。

「七瀬天理の働き、見事であった。一人の平死神の力によって護廷十三隊が救われた事実は重く受け止めねばならん。……だが、京楽の言う通りだ。奴らは必ず戻ってくる」

元柳斎の瞳に、苛烈な炎が宿る。

「天理が命を賭して勝ち取ったこの刻限……無駄にはせん。全隊、直ちに戦闘体制を再構築せよ。卍解に頼らぬ戦術の錬成、傷病者の治療、そして瀞霊廷の防衛強化。奴らが再び影より現れた時……今度こそ我が『残火の太刀』をもって根絶やしにしてくれる」

「「「ハッ!!」」」

隊長たちが一斉に礼を取る。

「……卯ノ花。天理の治療に全力を注げ。あ奴は護廷の礎だ。絶対に死なせるな」

「……御意にございます、総隊長」

死線をくぐり抜けた護廷十三隊。

昏睡し続ける七瀬天理の残した「猶予」の中で、死神たちは第二次侵攻に向けた怒りと決意を燃え上がらせるのだった。

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