愛染、いつからお気に入りが100件超えたと錯覚した
天理、超えてますけど
愛染、なんだと
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「勝機」に歓喜する滅却師たち
「やった……! 天の障壁が破れたぞ!!」
一護が瀞霊廷に降り立ったことで開かれた「72の障壁」。
霊王宮へと続く道が剥き出しになったその瞬間、影の城の深遠にいた星十字騎士団の生き残り、そして親衛隊(ペルニダ、アスキン、ジェラルド、リジェ)の顔に、久しく失われていた「歓喜と安堵」が浮かんだ。
「陛下! 一護が降りてきました! これで地上に用はありません!」
「天理という怪物も眠ったまま……! 今こそ霊王宮を陥落させ、我らの『新世界』を築く時です!!」
前回の侵攻で8割の仲間を殺され、残された2割も精神を叩き潰されていた彼らにとって、この瞬間こそが唯一残された「詰みからの回避ルート」だった。
ユーハバッハもまた、不敵な笑みを口元に浮かべる。
「……クックック。そうだ。七瀬天理という無茶苦茶な理(ことわり)によって我が軍は追い詰められた。……だが、どれほど凄絶な卍解とて、本人が昏睡していれば恐れるに足らん」
ユーハバッハは漆黒の外套を翻し、霊王宮へと続く光の柱(遮魂膜の穴)へと踏み出そうとした。
「行くぞ、我が親衛隊よ! 天理が目を覚ます前に、霊王宮を——」
「我が王よ」と言いかけた、その一瞬だった。
地下深小からの「悪夢の余波」
——ドックン…………っ!!!!
突如、瀞霊廷の「全空間」が軋みを上げて歪んだ。
それは攻撃ではない。発動でもない。
ただ、四番隊地下救護所で昏睡している七瀬天理が、寝返りを打つかのように無意識に霊力を微動させただけの「ただの呼吸(余波)」だった。
しかし——その「ただの呼吸」に含まれていた霊圧の質が、ユーハバッハたちの魂に刻み込まれた恐怖を直接跳ね呼び起こした。
ズシャァァァァァァァァッッ!!!!
「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!?」
親衛隊の一人、リジェ・バロが突如として悲鳴を上げ、その場に激しく膝をついた。
攻撃など何も届いていない。しかし、彼の全身の皮膚が、まるで目に見えない千の刃で刻まれているかのように「激痛の幻肢痛(トラウマ)」を起こし、血が吹き出していた。
「ひっ……!? 痛い……痛い痛い痛いっ! 身体が……あの時のように裂ける……ッ!!」
「バ……カな……!? 攻撃の兆候すらないのに、なぜだ……っ!?」
アスキン・ナックルヴァールも呼吸を荒げ、青ざめた顔で己の腕を抱えてガタガタと震え出す。
ジェラルドも、ペルニダも、圧倒的な神の力を誇るはずの親衛隊の面々が、ただ地下から漂ってきた「天理の気配」の一端に触れただけで、過呼吸を起こしてその場に倒れ伏していた。
彼らの脳裏にフラッシュバックするのは、あの惨劇。
視界に入った瞬間、逃げ場もなく全身を打撃で砕かれた『終極百花繚乱滅殺陣』の地獄だ。
「動くな……! 殺意を向けるな……! 奴に……天理に『知られる』ぞ……っ!!」
親衛隊たちが、まるで獰猛な肉食獣の目の前で死んだフリをする小動物のように、なりふり構わず地面に這いつくばり、己の霊圧を必死に殺そうと身を縮こまらせる。
「……ッ、ハァ……ハァ……ッ!!」
そして——皇帝ユーハバッハすらも、例外ではなかった。
ユーハバッハの額から、滝のような冷や汗がドロリと垂れ落ちる。
彼の『全知全能(アルマイティ)』の瞳に映ったのは、未来のビジョンなどではない。
地下で深く眠りながらも、なお全空間に『絶対先制の網』を張り巡らせ、ユーハバッハの首元に冷たい刃を突きつけている七瀬天理の恐ろしい無意識の影だった。
(起きているのではない……! 奴は……眠っているだけだ……! 眠りながらにして、我らが少しでも牙を剥けば……即座に全滅させる殺気を垂れ流している……!!)
ユーハバッハの歯が、屈辱と恐怖で「ガチガチ」と音を立てて噛み合わさる。
「余裕」など、欠片も残っていなかった。
霊王宮へ行くのは「勝利のため」ではない。「この地獄(天理のいる地上)から一刻も早く逃げ出すため」なのだと、己の魂が理解してしまっていた。
「……立ち上がれ……! 親衛隊……ッ!!」
ユーハバッハは血を吐くようなかすれ声で怒号を飛ばした。
「奴が……奴の意識が完全に覚醒する前に……! 一刻も早く霊王宮へ突入するのだ……!!」
「は……はいぃぃっ……!!」
かつてない死相を浮かべた滅却師の頂点たちは、天理の恐ろしい霊圧の余波に背中を焼かれ、トラウマに全身を痙攣させながら、まるで「何かに追われる惨めな敗残兵」のように、慌ただしく霊王宮の穴へと逃げ込んでいくのだった。
治療を終え天理の隣のベッドで寝ていた市丸ギンは、霊王宮の方角を見て、くすりと笑った。
「……ほんま、おそろしい子やわ。寝息ひとつで、あの滅却師の王様をあんな顔にさせて逃げ出させるんやから……」
天理は静かに眠り続ける。