第1章:奇跡の覚醒——恐怖が生んだ絶対なる神の戦士
「ハーハッハッハッハ!! 来い死神ども! 恐れることは何もない!!」
霊王宮の広場に、天を突くほどの巨躯が立ち塞がっていた。
親衛隊筆頭、ジェラルド・ヴァルキリー。
その全身から放たれる圧倒的な神威と霊圧は、周囲の建造物を次々と粉砕していく。地上で味わった七瀬天理の「先制打撃」の恐怖——それが彼の聖文字『M』『奇跡(ザ・ミラクル)』を最悪の形で覚醒させていた。
「我が能力は『奇跡』! 死神どもへの恐怖、我が身に刻まれたダメージ、それら全てが我が力となり、我を『絶対に倒せぬ神の盾』へと進化させるのだ!!」
「……ふん、能書きの多い大男だ」
巨人の足元に立ち、不敵に笑う男が二人。
更木剣八と、その傍らで静かに刀を抜く四番隊隊長——卯ノ花烈である。
「更木……あの巨躯、斬り甲斐がありそうですね」
「ああ……卯ノ花。余計な手出しはすんじゃねえぞ。俺が真っ先にあのデカブツを叩き斬る!」
「くっくっ……相変わらずですね。ですが、あの男の放つ『奇跡』の理……一筋縄ではいきませんよ」
さらに上空には、千本桜を纏う朽木白哉と、背中に巨大な氷の華を咲かせた日番谷冬獅郎が静かに舞い降りていた。護廷十三隊が誇る、まさに「最強の陣容」が集結したのだ。
第2章:氷結の完全咲きと、双頭の『剣八』
「行くぞ……『奇跡』とやらを叩き潰す!」
剣八が地面を蹴り、巨人の顔面へ一直線に飛び跳ねる。
同時に、卯ノ花烈が影のようにジェラルドの懐へ滑り込み、その巨大な足の腱を一瞬で数千回裁断した。
「ぬうっ!? 早い……! だが無駄だ!!」
傷を負った瞬間、ジェラルドの肉体がさらに一回り巨大化し、傷口から凄まじい光の刃が噴き出す。ダメージを受ければ受けるほど巨大化し、攻撃力が増す不条理な能力!
「ハハッ! それでこそだ!!」
更木剣八の興奮が頂点に達する。草鹿やちるの導きにより、剣八の肉体が真っ赤に染まり、理性を吹き飛ばした凄絶な『卍解』が発動する!
ガァァァァァァァンッ!!
赤鬼と化した更木剣八の一撃が、ジェラルドの大剣『希望の剣(ホーフヌング)』ごと、その巨躯を縦真っ二つに叩き割った!
「やったか……!?」
白哉が目を見張る。だが、二つに割れたジェラルドの肉体は、光の粒子となって再び結合を始めた。
「ハハハハハ! 無駄だと言ったろう! 『奇跡』とは成し遂げ難きを成すこと! 斬られれば斬られるほど、私は神の姿へと近づくのだ!!」
光輝く真の姿(光の巨人)へと変貌を遂げたジェラルドが、天から巨大な光の拳を振り下ろす。
その拳を正面から受け止めたのは、大人へと成長した日番谷冬獅郎の完聖状態——『大紅蓮氷輪丸』の真の姿であった。
「——四歩の間に凍てついたものは、すべてその機能を停止する」
日番谷が放つ絶対零度の氷が、ジェラルドの巨大な拳、そして全身の『地・水・火・風』のあらゆる元素を一瞬で凍結させていく。ジェラルドの『奇跡』という概念すらも、氷の中でその思考を停止させられた。
「な……能力が……凍りついて……運動を停止して……いく……!?」
第3章:奥義・残桜の極致と、初代剣八の皆尽
「今だ、朽木!!」日番谷が叫ぶ。
「——言われずとも」
上空で待機していた朽木白哉が、数億枚の刃を一点に凝縮させる。
「卍解・一景——『吭景千本桜影厳」
白哉の放つ桜色の光刃の嵐が、凍結したジェラルドの頭部を、ミクロ単位の微粒子になるまで完全に噛み砕き、破砕した!
頭部を完全に喪失し、崩れ落ちる光の巨人。
誰もが「勝負あった」と確信した——その時。
グググググ……ッ!!
「何……!?」
頭部を失った首元から、異様な「光の核(心臓)」が脈打ち始めた。
ジェラルド・ヴァルキリーの本質——それは『霊王の心臓』。
頭部を破壊されようが、氷漬けにされようが、胸の中央で脈打つ「心臓」が存在する限り、奇跡は無限に湧き出し、何度でも再生するのだ!
「我は不滅……! 死神ごときの刃で、神の心臓を止めることなどできんのだぁぁぁぁっ!!」
首なき巨人が絶望の光線を全方位に撒き散らし、白哉と日番谷が吹き飛ばされる。
「ハッ……どこまでも死なねえ概念ってわけか。最高じゃねえか……!」
膝をつきながらも立ち上がる更木剣八。
そして、その隣で血の惨劇を纏う女——卯ノ花烈が、穏やかな笑みを消し、初代剣八「卯ノ花八千流」としての狂気の顔を覗かせた。
「更木……見せてあげましょう。私たちが積み重ねてきた『斬り合い』の真髄を」
卯ノ花が刀を構え、その刃からドロリとした黒い血が溢れ出す。
「卍解——『皆尽(みなづき)』」
戦場全体が、すべてを溶かし尽くす酸と血の海へと変わる。
「更木! あの『心臓』……二人で同時に断ち切りますよ!!」
「おう死ねぇぇぇぇぇっ!!」
第4章:終焉の極大火力——奇跡を穿つ二条の刃
双頭の剣八が、血の海を蹴って上空へ跳躍する!
卯ノ花烈の『皆尽』が放つ「全てを溶かし尽くす死の血流」が、ジェラルドの再生しようとする光の肉体をリアルタイムで削り取り、その再生速度を殺す。
「ぬおおおっ!? 肉体が……再生の先から溶けていく……!?」
そして、露わになった胸の中央——『霊王の心臓』。
「そこだぁぁぁぁぁっ!!」
更木剣八の圧倒的超火力の斬撃と、卯ノ花烈のあらゆる隙を突く絶対の刺突。
歴史上最強のふたりの『剣八』の刃が、寸分の狂いもなく、ジェラルドの胸の中央に輝く『光の心臓』へと同時に突き刺さった!
ズババババババババババッッ!!!!
「ガ……ハッ……!? 心臓が……我が『奇跡の源』が……砕ける……!?」
日番谷の絶対零度で概念を停止させられ、白哉の千本桜で肉体を微粒子にされ、そして二人の剣八によって『心臓』そのものを直接粉砕されたジェラルド・ヴァルキリー。
「バカな……この私が……滅びるというのか……! 天理という悪魔の前に……届くことすら……許されずにぃぃぃぃぃっ!!」
神の巨人は、天理への無念の叫びを残し、膨大な霊子のチリとなって霊王宮の空へと散っていった。
静まり返る戦場。
「ハァ……ハァ……。まったく、しぶといデカブツだったぜ……」
刀を収め、大の字に倒れ込む更木剣八。
「お見事でしたよ、更木」
返り血を拭い、静かに微笑む卯ノ花烈。
白哉と日番谷も着地し、消えていく巨人の霊子を見つめていた。
「これで……親衛隊は全員撃破した、か」
「ああ。……だが、本番はここからだ」
死神たちの視線の先。
霊王宮の最深部——ユーハバッハが待つ『真世界城』の扉が、重々しく開き始めていた。