第1章:焦燥の皇帝と、未完全なる『霊王吸収』
霊王宮・大内裏(だいだいにり)。
「ハァ……ハァ……ッ! 時間がない……!!」
眼前に座する『霊王』を見上げるユーハバッハの額には、隠しきれない冷や汗が滲んでいた。
彼を突き動かしていたのは、絶対的な万能感ではない。「七瀬天理が目覚める」という絶対の死への恐怖だった。
「あの男が起これば、我が『全知全能(アルマイティ)』すら先制して破滅せしめられる……! その前に……何としてでも霊王を我が身に取り込み、世界を再統合せねば……ッ!!」
そこへ立ち塞がったのは、兵主部一兵衛率いる零番隊だった。
「待ていユーハバッハ! ここから先は死んでも通さんぞ——」
「失失(うせる)がいい!!」
ユーハバッハは問答無用で『全知全能』を開眼させ、なりふり構わぬ極大霊力の一撃を放った。
未来を書き換え、空間ごと零番隊を絶望的な破壊の渦へと叩き落とす。兵主部らの生死を確認する猶予すら惜しみ、ユーハバッハはそのまま霊王の胸へと刃を突き立てた!
ズババババババッッ!!!!
「ガ……グオオオオオッ!!」
天理の覚醒を恐れるあまり焦って強行した吸収。
霊王の膨大な概念エネルギーは完全に融合しきれず、ユーハバッハの肉体をミクロ単位で壊死させながら、一時的に表面へ繋ぎ止められているに過ぎない「不安定な完全体」として彼は受肉したのだった。
第2章:追いついた絆、合流した策士
真世界城の広大な玉座の間。
崩れ落ちる柱を背に、黒崎一護の前に躍り出たのは、瀞霊廷で複数の星十字騎士団(シュテルンリッター)をその新生した『双王蛇尾丸』で粉砕してきた男——阿散井恋次だった。
「一護! 遅くなったな!」
「恋次! 無事だったか……!」
「おうよ! 下の雑魚どもはあらかた片付けてきたぜ。……だが、上(ここ)の空気は別次元だな」
恋次が一護の隣に並び立ち、前方を見据える。その先には、黒い影と霊王の異形を身体に蠢かせたユーハバッハが鎮座していた。
一方、城の直下。
駆け込んできた石田雨竜の前に立ち止まったのは、浦原喜助だった。
「雨竜さん……! 無事でしたか」
「浦原さん! 間に合いました……! ハッシュヴァルトを倒し、父さんから譲り受けた『静止の銀』の特性を解析しました。これで……ユーハバッハの能力を一瞬だけ止められます!」
「素晴らしい……! やはり貴方方は最高の成果を持ち帰ってくれましたねぇ」
浦原は懐から、禍々しい漆黒の護符と空間歪曲装置を取り出した。
「ボクからはこれを託します。『霊王遮断の外陰』……ユーハバッハが不安定に取り込んだ霊王の力を、一時的に外部から強制遮断・剥離させる特製の霊具です。……参りましょう、一護たちの元へ!」
第3章:絶望の制約——「卍解」の封印
玉座の間に集結した、護廷と現世の最高峰の戦力たち。
黒崎一護、阿散井恋次、浦原喜助。
そして、無傷で戦線を駆け上がってきた山本元柳斎重國、卯ノ花烈、京楽春水の三隊長!
「ユーハバッハ……決着の時だ」
山本総隊長の放つ眼力だけで、周囲の空間が灼熱の波動で歪む。
しかし、ユーハバッハは血の滲むような嘲笑を浮かべた。
「フフフ……無駄だ、山本。いくら戦力を揃えようと……お前たちは『卍解』を使うことができん」
「なっ……!?」
ユーハバッハの『全知全能(アルマイティ)』の光が走る。
「我が未来視の前に『卍解』を解放した瞬間……その未来においてお前たちの刀は粉々に砕かれ、永遠に修復不可能な死の刀と化す! 卍解を使った者から順に、未来で切り刻んでやろう!」
「……くっ!」
京楽が冷や汗を拭う。
卍解を使えば、その瞬間に未来を書き換えられて武器を破壊され、二度と戻らない。
彼らに残された選択肢は——「始解」「鬼道」「白打(肉弾戦)」のみで、霊王を吸収した神のごときユーハバッハを抑え込むという、あまりにも過酷な超制限バトルだった!
第4章:肉弾と鬼道の総力戦
「ならば……この身ひとつで穿つまで!!」
一護と恋次が真っ先に跳躍した!
卍解に頼らず、始解の『斬月』と『蛇尾丸』を握り締め、極限の身体能力(白打)を織り交ぜた怒濤の近接連撃を叩き込む!
「ハァぁぁぁっ!!」
「砕けろぉぉぉっ!!」
「無駄だ!」
ユーハバッハの背後から伸びる黒い影の触手が、一護と恋次を吹き飛ばす。
だが、その隙を老練な総隊長が見逃すはずもなかった。
「破道の九十六——『一刀火葬』!!」
山本総隊長が詠唱破棄で放った超極大の火柱が、ユーハバッハの足元から爆発する!
「ぬうっ!?」
「逃がしませんよ……! 破道の六十三——『雷吼炮』!!」
浦原喜助と京楽春水が同時に高位鬼道を発動! 雷光と風の刃がユーハバッハの『全知全能』の防御壁を削り削りとっていく!
さらに、影のように距離を詰めた卯ノ花烈の刃が閃く。
卍解を使わずとも、千年にわたり研ぎ澄まされた彼女の斬術(始解・肉雫User)と白打の連撃が、ユーハバッハの体表を蠢く未完全な霊王の肉体を的確に切り裂いていく!
「チッ……! 鬱陶しい虫どもが……っ!!」
だが、ユーハバッハの霊圧は圧倒的だった。
未完全とはいえ霊王を取り込んだ彼の影が爆発的に膨れ上がり、山本総隊長の炎を押し返し、卯ノ花と京楽の身体を強烈な衝撃波で跳ね返す!
「ガハッ……!?」
「く……始解と鬼道だけでは……あまりにも威力が足りん……ッ!」
山本総隊長の咆哮虚しく、ユーハバッハの圧倒的な「不条理な暴力」の前に、一人、また一人と膝をついていく。
『卍解』という最大の札を奪われた死神たちは、満身創痍となりながらも、ユーハバッハの足を一秒でも止めるために必死で喰らいつく。
「フハハハハ! 終わりだ死神ども!! 私が完全に霊王を消化するまでの時間稼ぎすら、お前たちには出来ぬ!!」
ユーハバッハが勝利を確信し、全霊圧を解放して全員を消し去ろうと光を放った——その瞬間!!
第5章:反撃の足音
シュンッ……!
背後の空間を裂き、滑り込んできた一つの影。
石田雨竜!
「今だ、浦原さん!!」
「了解です……っ!!」
雨竜が放った『静止の銀』を帯びた矢がユーハバッハの胸の核を貫き、同時に浦原喜助が投げ放った『霊王遮断の外陰』が、ユーハバッハの身体に突き刺さった!
「なっ……ガッ……!? 力が……『全知全能』が……止まる……っ!?」
ユーハバッハの体表で蠢いていた霊王の黒い影が、一瞬にして暴走を起こし、彼の肉体から剥離しようと激しい拒絶反応を起こした!
「一護ーッ!! 今だぁぁぁぁっ!!」
恋次と総隊長たちの叫びが響く。
「うおぉぉぉぉぉぉっっ!!!!」
一護が渾身の力で『月牙天衝』を練り上げ、停止したユーハバッハの胸元へ向かって一直線に飛び込んだ!
未完全な霊王の吸収、静止の銀、霊王遮断の外陰、そして護廷十三隊が命を懸けて繋いだ「一瞬の隙」。
絶望の戦場に、ついに反撃の光が閃いたのだった!