第1章:一瞬の静寂と、奇跡の交差
カツン……
雨竜の放った『静止の銀』がユーハバッハの胸に刺さり、同時に浦原の『霊王遮断の外陰』が発動したその瞬間。
ユーハバッハの全知全能(アルマイティ)の瞳から光が消え、体表の黒い影が激しく波打って停止した。
「いっけえええええええっ、一護ぉぉぉぉぉっ!!」
恋次の喉が裂けんばかりの叫びが、真世界城に轟く。
一護の足が地面を爆破するように蹴り抜き、始解『斬月』の刃に持てる全ての霊圧——黒と紅の高密度な『月牙天衝』を充填する。
コンマ0.01秒。
ユーハバッハの視界は遮られ、能力は停止し、身体は動かない。
浦原喜助の計算、雨竜と竜弦の執念、山本総隊長や隊長格たちが身を削って作った「完璧すぎる唯一の勝機」。
一護の放った渾身の『月牙天衝』が、無防備なユーハバッハの首元、そして胸の核へと寸分の狂いもなく迫る——!
(届く……! これで……終わるっ!!)
一護の瞳に確信が宿った、その瞬間。
第2章:恐怖という名の遺伝子(進化)
ユーハバッハの脳裏を、雷霆のごとく駆け巡る「記憶の奔流」があった。
それは、かつて地上で七瀬天理から叩き込まれた、死神の概念すら超越した絶対の死。
天理の持つ真の牙——『終極百花繚乱滅殺陣(しゅうきょくひゃっかりょうらんめっさつじん)』。
己の存在そのものが数兆回の先制打撃によってミクロ単位で消滅させられた、あの魂の底に刻まれた凄惨極まる「絶望の恐怖」。
生き物は、平穏の中にいるとき進化を止める。
だが——種の存続を脅かす未知の猛毒や破滅的ウイルスに晒されたとき、生命は生存本能を狂暴化させ、血を流しながらも「抗体」を作り出し、次元を超えて強引に進化を遂げてきた!
ユーハバッハにとって、七瀬天理という存在こそがまさにその「世界の破滅的ウイルス」だったのだ!
(消される……! あの男が起きれば……我が存在の『概念』ごと消される……!!)
(死にたくない……! 我は滅びぬ……! 我は神だ……死ねるかぁぁぁぁぁっっっ!!!!)
『静止の銀』によって停止していたはずのユーハバッハの細胞、霊子、そして魂の奥底から、天理への「極限の恐怖」を触媒にした狂暴な生存本能の爆発が巻き起こった!
第3章:停止を突破する「強制進化」
ハッシュヴァルトの時とはまるで違う。
ユーハバッハの内に芽生えた恐怖の質量は、一個の生命体が歴史上抱えたことのないレベルに達していた。
ギィンッ……!
「なに……っ!? 『静止の銀』の抑制効果時間が……あまりにも短すぎる……!!」
浦原喜助の目が、恐怖で大きく見開かれた。
計算では、数秒間は完全に能力を遮断できるはずだった。
だが——ハッシュヴァルトの時の比ではない異常なスピードで、ユーハバッハの体が『静止の銀』の抗体を作り出し、その停止現象を力任せに打ち破ったのだ!
「ヌオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!」
パキィィィィンッッ!!
一護の刃がユーハバッハの首皮一枚に届くコンマ0.00001秒前。
ユーハバッハの眼球の中に、閉ざされていた無数の瞳——『全知全能』が、前以上におどろおどろしい光を放って全開(開眼)した!
「なっ……!?」
「——我が未来に、死は無いっっ!!」
第4章:届かざる一刃
ユーハバッハの進化は、一護の攻撃の「未来」をコンマ数ミリだけ強制的に書き換えた。
ドガァァァァァァァンッッ!!!!
一護の全力の『月牙天衝』が炸裂し、真世界城の半分が跡形もなく吹き飛ぶ。
煙が晴れる中——そこに立っていたのは。
「ハァ……ハァ……ハァ……っ!!」
肩から胸にかけて深く血を吹き出させ、肉体を切り裂かれながらも……首を紙一重で残し、生き残ったユーハバッハの姿だった。
完全な直撃は避けた。全知全能の覚醒が一護の刃をわずかに逸らさせ、致命傷だけを力任せに回避してみせたのだ。
「そんな……バカな……っ!!」
恋次がガタガタと膝を震わせる。
完璧なタイミング、完璧な策、そして『静止の銀』。
それら全てを「天理への恐怖による自己進化」という不条理な理由だけで強行突破し、避けて見せたのだ。
ユーハバッハはダラダラと血を流しながら、狂気と興奮に満ちた目で一護たちを見下ろし、ガハハと高笑いを上げた。
「ハハハ……! 素晴らしい……素晴らしいぞ死神ども!! お前たちの絶望の抵抗が……あの男への我が恐怖が……私をさらなる高み(神の領域)へと押し上げてくれた!!」
ユーハバッハの傷口から、霊王の黒い影がさらに禍々しく蠢き、溢れ出していく。
「見よ! 『静止の銀』すら克服した今の私に……もはやお前たちのどんな策も通じぬ!! 終わりだ……全てを我が身に取り込んでやる!!」
今までユーハバッハを恐怖で縛り情けなく書いてきたことに対する私なりの謝罪の意味も込めて、こういった形にしました。不快に思った方も沢山いるとは思いますが、私なりの進化の解釈も含めてご理解頂けると助かります