零番離殿・「鳳凰殿」。
立ち込める水煙と響く槌の音の中、霊王宮に集められた面々は息をのんでその光景を見つめていた。
山本元柳斎重國、京楽春水、浮竹十四郎、朽木ルキア、志波海燕、黒崎一護、阿散井恋次、石田雨竜、浦原喜助、四楓院夜一、市丸ギン、卯ノ花烈、更木剣八、平子真子——(※藍染は無論、無間にて留守番である)。
護廷十三隊の柱石たる面々と現世の傑物たちが一堂に会する中、奇抜なサングラスをかけた男が派手なステップを踏みながら前に出た。
「イエァ! 集まってくれてサンキューな! 刀神・二枚屋王悦だバカヤロー!!」
いつものノリで煽る王悦だったが、ふとサングラスを指で押し下げると、その瞳に見たこともない重々しい光を宿した。
「……今日はな、お前さん方の胸を叩き割るような『真実』を教えてやるYO。あの男……七瀬天理が持っていた斬魄刀、『百花繚乱』の正体をな」
■ 刀神が語る『百花繚乱』誕生の真実
「みんな思ってたハズだ。なんでただの一平隊員の刀が、あんな次元の違う【絶対先制】なんて理不尽を叩き出せるのか……ってな」
王悦は火床の傍らに立つ巨大な鉄槌に手を置いた。
「答えはシンプルだ。あれは元々、霊庭や護廷のために打たれた刀じゃねぇ。太古の昔……この俺が『霊王様を護り抜くための最後の剣』として、己の魂と技術、刀神としての持てる全てを注ぎ込んで打ち上げた——俺自身の専用(プライベート)斬魄刀だったんだYO」
集まった面々に衝撃が走る。一護や恋次が息を呑み、浦原や京楽の目が細められた。
「霊王様を守る最後の砦……だからこそ、敵が認識した瞬間に未来の攻撃すら先回りで粉砕する【絶対の先制】が必要だった。概念そのものを斬り裂く、規格外中の規格外。俺の最高傑作になるはずだった……」
王悦は静かに目を閉じ、あの日を思い返すように首を振った。
「だがな……完成した直後、俺が『百花繚乱』を手に取り、その解号を唱えて解放しようとした瞬間——刀自体が俺を激しく拒絶した」
「……創造主である王悦さんを、ですか?」
浮竹が静かに問いかける。
「そうさ。俺は意地になってな、刀神の力で無理やり従わせようとしたんだ。そしたらどうだ……『百花繚乱』の刀身から、全霊王宮を吹き飛ばさんばかりの凄まじい絶望的な剣気が溢れ出した。そして……俺の脳内に直接、あの刀の『意思』が響いたんだYO」
王悦は噛みしめるように、その言葉をなぞった。
『——我が主は己が決める。誰の命令にも従わぬ。たとえそれが、我を生みし創造主であろうともな——』
「……流石の俺も察したね。これ以上触れれば、俺自身が切り刻まれる。断腸の思いで、俺は『百花繚乱』を解き放ち、ソウル・ソサエティの浅打の潮流へと流すしかなかった……。その後、刀神の誇りをかけて『百花繚乱』を超える刀を打とうと何度も槌を振るった。……だが駄目だった。あれ以上の刀は、この世に二度と生まれない」
王悦は静かに告げた。
「あの気高き理不尽な刀が……数千年の時を経て自ら主として選び、その真価を預けた唯一無二の死神。それが……七瀬天理だったのさ」
■ 語られた真実への反応
静寂が鳳凰殿を包み込む。
「……へえ」
沈黙を破ったのは市丸ギンだった。いつもの狐の笑みを浮かべつつも、どこか誇らしげに目を細める。
「刀神様すら振れんかった最高傑作が、ただの平隊員の手の中で大人しく掃き掃除に付き合ってたっちゅうわけですか。天理はんも罪な男どすな」
「……ふん」
更木剣八は獰猛な笑みを浮かべ、野晒の柄を叩いた。
「親の顔すら知らねぇ暴れ馬が、ようやく乗りこなせる男を見つけたってわけだ。ますます気に入ったぜ……あの野郎も、その刀もな」
「……つくづく、あの男には驚かされっぱなしだな」
志波海燕は腕を組み、空を見上げて苦笑した。
「霊王様を守るための刀が、巡り巡って護廷の仲間を守るために振るわれたってわけか。……天理らしいじゃねぇか」
「……」
朽木ルキアと阿散井恋次は言葉もなく、己の斬魄刀の柄に手を置いた。
自分たちがどれほど凄まじい「覚悟」と「存在」に守られていたのかを、改めて肌で感じていた。
京楽春水は菅笠を少し上げ、王悦を見つめた。
「王悦ちゃん……教えてくれておおきに。天理がどれだけ凄まじいものを背負って、ボクたちの隣でへラッと笑っていたのか……よく分かったよ」
山本元柳斎重國は静かに杖を突き、厳格な声を響かせた。
「……理不尽な刀に、理不尽なまでの慈悲を持つ男が応えた。それだけの話よ。……二枚屋、天理と『百花繚乱』の物語は、護廷の歴史に永久に刻まれる」
王悦はサングラスをかけ直し、フッと笑った。
「オーライ……! これで種明かしは終わりだ。あいつが命を懸けて遺したこの世界、お前さん方がしっかり守り抜きなYO!!」
二枚屋王悦の口から語られた『百花繚乱』の真実。それは集まった者たちの魂に、天理という男への更なる誇りと絆を強く焼き付けることとなった。